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四話:平凡女のお家拝見

「‥‥え、コレが自宅?」

ワタシが戸惑いながら目の前にある物を指差しそう言うと、青年はソレを何か勘違いしたらしく申し訳なさそうな顔をした。


「はぁ‥‥、小さい家ですみません。

でも必要最低限の物は揃ってるんで、安心して下さい」


ワタシは目の前に鎮座する、サザエさん一家が二三家族は入りそうなくらい大きな二階建築の家を見上げため息を一つ溢した。


―――コレを小さいって言えるアンタにワタシは安心出来ないんだけど‥‥‥


此処に来る途中あった民家とこの家を比較し、内心でそう突っ込みを入れておいた。

クルド君の家は海寄りの郊外にあったので街中を横断する事は無かったが、街が段々近づくにつれチラホラと畑らしき物と民家らしき物が見えてきていた。

そこで見た民家は高さと広さは有りそうだったが、総じて平屋造りで断じてこんな二階建築では無かった。

稀に二階建てを見かけたがそういった時は、大体軒先に絵が書かれた看板が吊るされていたので何か商売事をしているのだと勝手に辺りを付けた。

地球では昔、何処に行っても農家の人達は余り良い生活をしていない事が多かったらしい。

生かさず殺さずが基本で上から搾取されてきた時代も長かったと祖母から聞いた事がある。

昔のお偉いさんも流石に農家の人達がいないと生きていけないという自覚はあったらしい。

必要最低限生きれる位の生活はできたと聞くから、この世界の最低標準を農家の人達と考えるのなら、街中の建物も良くてあの稀にあった商店らしき物位ではないかと思った。

それらの事から考えると、やはりこの家は大きかった。

広かった。

そして

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人がいなかった。

重そうな扉を開け青年に付いて中に一歩足を踏み入れれば、そこは驚く程人気が無く閑散としていた。

外から見た窓の数は二十近くあり部屋数も同程度あると考えたら、それを維持する為には結構な人出が必要な筈だ。

だがしかし、この家にはそういった人のいる気配が全くせず、不気味な程静かで薄暗かった。

けれど取り敢えず、そのまま中にはいった。

クルド君はコチラへどうぞ、と言い広い内玄関?に幾つかあった扉の一つを開いた。

扉を片手で開いたまま待つクルド君に一言礼を言い、ワタシは進められるまま中に入り部屋を見て少しばかり安心した。

ワタシが入った部屋はいわゆる台所っぽい所だったからだ。

ダイニングキッチンの様に台所を仕切るカウンターがあり、その前には対面式で食べる所であるテーブルが置かれていた。

広さは中央に十人掛けのテーブルを置き、それでもテーブルの周りは人が三四人横に並んで歩けそうな位広い。

初めて来る客を最初に連れて来る所が食堂って、常識的に問題有りなんじゃ‥‥とか思っていたのが顔に出ていたらしい。

クルド君が頭を掻きつつ謝ってきた。

「すみません、こんな所に案内して。

でも、他の部屋って使ってないもので‥‥‥」

「いや、別に大丈夫だよ。そんな気取った部屋とか案内されても、ワタシ寛げないから。

だから気にしないでよ、クルド君」


ワタシがそう言うと、クルド君は何故か微妙な表情をした。

取り敢えず、スルーで。

気にしてたって仕方がない。

ワタシがテーブルの何処に座ろうか悩んでいると、クルド君が入り口近くの椅子を引いてくれた。

又一つ礼を言い、素直にそこへと座る。

「ちょっと待っててくださいね」

クルド君はそう言って台所へと向かって行った。

クルド君の背中が台所に見え水音がした頃、ワタシは力無く項垂れテーブルに額を付けた。

冷たいテーブルの温度に少しばかり癒される。

「‥‥‥マジで、疲れた」

久しぶりに全力で被服水泳をして根こそぎ体力を持ってかれた上に、その後も知らない場所で少しでも何か知ろうと頭を使ってきた。

仕事後にこの運動量と頭脳労働はかなりキツイ。

年齢的な物もあるが日頃使わない身体と脳味噌が酷使され、悲鳴を上げている。

その証拠に椅子に座った途端、両手両足ていうか全身がジワンジワンしている。

やっと取れた休息に全身が喜びの声をあげているのだ。

そして、瞼も酷く重く開けているのが難しくなってきた。

段々と暗くなる視界と思考にワタシは逆らわず、逆らおうともせず、遂には全てが闇に染まった。

 

 



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