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三話:平凡女の自己紹介

街へと続く街道?らしき路を黙々と歩く青年。

そして、その後ろを同じ様に無言で歩く二人。

もう結構な時間会話がされていない。

だけど気まづいなんて欠片も思いません。

何故ならワタシは今とっても忙しいからです。

例えば路の直ぐ側にある森について考えたり、青年の服装について考えたり(ワタシにとって青年は最早風景の一つと化している)とか色々考える事があるのだ。

森について言えば、植物が青々とよく繁っていた、ていうかジャングル並に鬱蒼としていた。

マジでパない程木がデカイ。

数百メートルは離れているはずなのに、大きいって分かる程デカイって‥‥‥‥


ここら辺の気候が熱帯と迄はいかないまでも亜熱帯に近い気候のせいだろうと予測した。

雪が積もる様な地域であればあんな大きさの木は育たないし、あんな鬱蒼としたジャングルは中々出来ない。

そんな気候だからか第一印象は暑苦しいなテメエ、な青年の服装は良く見れば涼しげな恰好だった。

マントっぽい黒のフード付き外套を羽織り首元は良く見えないが、外套の下に着ていたのは袖無しの前合わせタイプのシャツっぽい物で生地が凄く薄い麻の様に目の粗い物で出来てある事が分かった。

そして、足元は足首までのパンツにサンダルだった。

直射日光が当たらない様にしているだろうその服装は、熱帯か亜熱帯地域の気候辺りで着られていそうだ。

とは言え、今の時期が夏だったりすれば今まで予想、ぜーんぶ無駄に終わるんだけどね。

アハハハ

いや、待てよ直射日光に当たらない様にするくらい日差しが強いって事は‥‥‥‥!

すっぴんだから日焼けする!?

紫外線にやられちゃう?!

ワタシは直ぐにカーディガンを脱ぎ、頭の上に被せ顔に日差しが当たらない様にした。

もうすぐ三十路の微妙なお年頃のワタシとしては、近い未来に必ずくるシミの原因を少しでも排除しなくてはならないのだ。

だったらすっぴん止めろよ、と言われる事が多いがスルーで。

日焼け止めをいつも塗っているから大丈夫、それに職場は近すぎて化粧をしてもあんまり意味がないのだ。

女性のたしなみ、なんて言葉は数年前に忘れ去りました。


しかし、暑い。

本当に、暑い。

何度も言うが、とても暑い。

体感温度で30度以上ありそうだ。

平熱35度以下のワタシにとっては地獄に等しい、その上長袖だし海水が乾いて何か身体がベタベタするし。

そのせいでさっきのずぶ濡れの時より、不快指数が増しているぐらいだ。

八つ当たり的な意味を込め、その原因の一端を担っている青年の後頭部を睨み付ける。

艶々と輝く赤髪を睨み付けていると、そのキューティクルに更に怒りが湧いてきた。

―――何なんだ、その髪の艶やかさは!羨ましすぎるぞっ!


「‥‥あ、あの~僕に何か御用でしょうか?」


「‥‥‥‥いや、アンタにじゃなくて、アンタの髪に用が」


「は?」


熱い視線に気付いたらしい青年が後ろを振り向きワタシに話し掛け、ワタシの思わず漏れた本音に首を傾げる青年にワタシは何でも無いと言った。

訝しげな顔をして此方をみる青年。

だが、歩みは止めない。

よっぽど家に帰りたいらしい。

「そう言えばさぁ」

「はい何でしょうか」

ワタシはたった今気付いた事実を青年に告げた。

「ワタシ、君の名前知らないよね。

それにワタシの名前も」


「‥‥あっ!」


どうやら青年も気付いて無かったらしい。

そりゃああんな出会い方してりゃそんな余裕も暇も無いわ。

ワタシも結構気が動転してたし。

あの場でお別れだったら必要ないだろうけど、これからこの青年のお世話になる予定なのだから名前を知らないと結構不便だ。

青年が立ち止まりちゃんとワタシに向かいあった。


「僕の名前はクルディルド=ウェルディと言います。クルドって呼んで下さい。

貴女のお名前を伺っても良いですか?」


そう言って柔らかく微笑む青年の顔を見上げ、ちょっと見惚れた事は秘密だ。


「ワタシは、那賀木祭‥いや、マツリ=ナガキって名前だよ。

‥‥あぁ、出来ればナガキって呼んで貰えると嬉しいな」


ワタシも笑顔を見せ名前を告げたが、青年との間に明確な線を引く事を忘れ無かった。

出会って数十分

やっと自己紹介が出来ました。




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