二話:平凡女の情報収集
「申し訳ありませんでしたーーーっ!」
そう言って土下座せんばかりに勢い良く謝るのは、赤髪をした端正な顔をした青年。
つまり、美形外人。
ワタシはソレをずぶ濡れになった髪の水気を絞りながら聞いていた。
「ま、まさか只単に崖下を覗いているだけなんて思いもよらなかったんです。
ここは観光の名所であると共に自殺の名所でもあったんで‥‥」
「‥‥例え自殺志願者だって、さっきのアンタの行動は問題有りだと思うんだけど」
「‥‥っあうぅ」
青年はワタシが自殺志願者だと思い、止めようとしたがつまづいてしまい、結果的にワタシを海に突き飛ばしたらしい。
どんなドジッ子キャラなんだアンタは。
自然と青年に向ける視線も冷たくなる。
「ワタシが泳ぎが得意だったから良かったものの、そうじゃなきゃ完璧溺死だったよねぇ。
何?それともアンタ溺れてる人助けられる位泳ぎ得意だったの?」
「‥‥いえ、火の加護を受けているせいで水の精霊に嫌われているので全く泳げません。
僕も即効で溺れると思います」
あれ?と気になる発言には即座に、それでいてそれとなく話しを掘り下げます。
「水の精霊に嫌われている奴が何でこんな海っぺりにいるのよ」
「‥‥偶々潮風にあたりたくなったんです、僕直ぐそこのデリアに住んでるんで」
青年はそう言って後ろを指差した。
目を細めなくても見える程近くに町があるのが分かった。
「まぁデリアなら近いからね」
知ったかぶり此処に極まれり。
取り敢えず、そう言って頷いておいた。
それにしても、全身ずぶ濡れで服や下着が身体に張り付いて気持ち悪い。
不快感から自分の眉間に皺が寄るのが分かる。
すると青年が目に見えて分かるほど怯えた顔をした。
「すすっ、すみません!
直ぐに服を乾かしますねっ!」
どうやって、というワタシの言葉は発する前に消え失せた。
何故なら青年がワタシに手を翳したかと思った、次の瞬間には服が乾いていたからだ。
流石に驚いて暫し無言でいたら、青年はその事を何を勘違いしたのか一言二言謝りその場から去ろうとした。
だが、この状況でこのワタシがまさか逃がす筈が無い。
逃げ出そうとする青年の片腕を掴み、そのまま青年の腰辺りに抱き着いた。
青年の「ヒィィ」という情けない悲鳴が聞こえてきたが、スルーで。
結構な長身だった青年に抱き着きながら、精一杯背伸びをして青年に囁いた。
「‥‥何逃げようとしてんの?
ワタシ、アンタのせいで荷物が海の底なんだけど?」
ハッとした様にワタシを振り向く青年にワタシは、飛びっきりの笑顔を見せこう囁いた。
「暫く厄介になるからヨロシクね、青年?」
ワタシはそう囁いた時の青年の顔色が、真っ青を通り越して土気色をしていたのを忘れられない。
勿論、面白かったとかそう言う意味で。
今回分かった事
①青年が美形外人
②青年がヘタレ
③青年が押しに弱い
④青年がドジッ子キャラ
⑤どうやら魔法が存在してるっぽい
取り敢えず今の所はこの位で勘弁してやろう、とワタシは青年の後ろを付いて歩きながらニンマリと笑った。