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9話 平凡女のお勉強

お久しぶりです。そして、今回長いです。色々スンマセンです。

※お金の単位修正します。


「だーかーら、悪かったってゴメンって言ってんじゃんクルド君」


「‥‥」


無言。


「まさかあんなんになるなんて思わなくってさ~、ほんっっっとゴメン。ゴメンナサイ」


「‥‥」


又も、無言。

ここは先程の生地屋さんから近い所にある食堂(夜は飲み屋)である。そこで狭いテーブルについた、終始無言のクルド君にひたすら頭を下げ続ける私。

店内は昼時からか騒がしく込み合うお陰でそんなに目立ちはしない。


「‥何度も言いましたよね、僕は行かないって」

「あー‥‥うん、言ってたねえ。」


わたしは相槌を打ちつつ近くにいたウエイトレスさんを呼んだ。


「ガラシャさんは‥あの人は、僕と同僚だった時からあんな人だったんですよ。ああいった状況じゃ間違いなくああなるのは分かってました。

だから、だから言ったじゃないですかっ!一緒に行かない‥‥って、僕の話聞いてますかっ!?

ナーガさんっっっ!」


「あっ‥‥‥ウン、モチロンキイテルヨー」


「あってなんですか!あって!

答えるまでの間の長さが全てを物語ってますけどっ!?

その上棒読みっ!?」


ウエイトレスさんにオススメ聞きながら注文してたら流石にクルド君に突っ込まれた。

でもまぁ注文は無事完了したので良しとしよう。

ガラシャさんという店主さんは紫髪紫瞳のファンキーな20代前半のお姉ちゃんで、噂好きらしくクルド君にワタシとの事を根掘り葉掘り聞きまくっていた。

それを店員さんと服を眺めながら聞いていたワタシだが、取り敢えず全てスルーしていた。話しの矛先を此方に向けて欲しくは無かったからだ。例え話を振られようと直ぐ様クルド君に丸投げした。

え?酷いって?

いえいえ、大人の対応だって言って下さい。


「いやまぁとにかくさ、お疲れさま。

今日はありがとうね?この服とかさ」


そう言って着ている服の袖を引っ張った。

綿っぽい生地の服は織り目がやや粗いが、そんなに悪くはない着心地だった。逆に織り目が粗いからこそ通気性が良く涼しかった。ここら辺の服は膝下まである長い半纏の様な上着の中に、貫頭衣のシャツを着込み腰帯で半纏を固定するという物だった。下半身は普通にパンツを履いてもいいし、ワンピースの上にその上着を羽織ってもいいそうだ。王都辺り迄行けば、又ちょっと違うらしい。この世界は郷土に合わせた服装をしているそうで、同じ国とは言え服装が違うのは辺り前なのだそうだ。

因みにワタシが今着ているのは、パンツタイプである。色は全体的に目立たない淡い色合いにしてもらった。知らない場所でワザワザ動きづらく目立つ恰好をする程、ワタシは馬鹿ではない。


ワタシの素直なお礼に面喰らったのか、クルド君は「いえ」とだけ言うと押し黙った。


「さて、話しを元に戻そうか」

「ナーガさんってマイペースですよね」


それまでの何とも言えない雰囲気をサクッとぶった切るかの如く話しを進めるわたし。

クルド君はそんなわたしに脱力しきった身体と眼差しを向けた。


「は?マイペース?違う違う、ただ単に(あえて)K(空気)Y(読まない読んでない)だけだから」

「マイペースよりタチが悪いですからソレッ!」

「大丈夫、人と場所は選んでるから」

「‥いや、選んでる時点である種空気読んでませんか?」

「ふぉっふぉっふぉ」

「ていうか人選んでる‥‥って事は、僕ならAKYでもいいって事なんですかっ!?ナーガさんっ!」

「もー、クルド君がさっきからわたしの話にチャチャ入れるから、話が全く進まないじゃん」

「えぇっっ!?無視された上に僕のせいなんですかっ?」

「それでさぁ‥‥」

「又無視ですかっ!」

「この国の貨幣‥通貨?価値が知りたいんだけど?」

「‥‥もぅいいです」


スンッと鼻をすする音が聞こえたり、クルド君の眼が潤んでいたのは気のせいだと思う事にした。

だって、ホントに話が進まんし。 


「‥通貨価値、ですか。そうですね、まず種類としては四種類あります。それぞれ下から銅貨、白銅貨、銀貨、金貨です。

因みに、これはドコの国に行っても同じ物が使われていて、単位は全てナンで統一されていて‥」


「はっ!?まさか世界共通通貨なの?」

「えっ‥えぇ、そうでないと不便じゃありませんか?」


何で驚くんですかと首を傾げるクルド君。


「いやまぁそうだろうけど‥‥、あぁいいや疑問は後で纏めて聞くわ」


続けてと言って先を促した。


「単位は銅貨4000枚で銀貨一枚

銀貨4枚で金貨一枚

銅貨には他に白銅貨といって一枚で銅貨100枚分のものがあります、実物見てみますか?」


「お願いします」


「えぇ~と」と呟きながら腰元辺りにくくりつけていた革の小袋を取り出し、テーブルの上に中身をザラザラとあけた。

金銀銅の様々な色合いが混じっている。


「色で大体種類が分かると思うんですけど、この白銅貨と銀貨は色の区別がつきにくくなっていますんで気を付けて下さいね。

大きくて重いのが銀貨で、軽くてそれよりも小さいのが白銅貨です。なので硬貨は、大きくなるにつれて高価になるって憶えておけば大丈夫です」


何か言ってるけど、本人もきっと気付いてないからスルー決定。

ワタシは一円玉大のナン銅貨をつまみ上げた。


「‥あのさぁ、この銅貨‥1ナン?で何が変える?」


「1ナン、ですか?

‥確か、何も買えなかった様な気が‥‥」


宙に視線をさ迷わせながら答えてくれたクルド君に、ワタシは「ゴメン」と言って片手をヒラヒラと振った。


「聞く人間違えたわ」

「ひっ酷い!酷すぎですよナーガさんっっ!」


半泣きで叫ぶクルド君を内心「うるせえな」と思いつつ、「じゃあさ」と話しを振った。


「この店のメニューってさ、平均的な価格設定なん?」


脇に置いたメニュー表らしき物をクルド君に渡した。

それは木簡に絵柄(恐らく料理の絵)が描かれ、その絵柄の下には数字が焼き付けされていた物だった。

木簡は上部に一つ孔が空けられており商品を注文する際はその木簡を店員に渡し数量を告げる、そして注文した商品が来たらその都度代金を支払う仕組みになっていた。

代金支払い時に木簡をテーブルに返すらしい。

そのせいかウエイトレスさんが歩く度にチャリチャリと、小銭が触れ合う音がしていた。

そこで物騒だな、と思うワタシは根性が捻れ曲がっているねだろうか。

いや、だってさぁか弱い女の子が結構な大金持って目の前ウロウロしてるんだよ?

生活に困ってる奴だったら、くみ易しとひったくっちゃうでしょうよ、多分。

だから、この世界って実は結構平和なのかなぁ‥‥なんて検討違いな事を思っていた。


「‥‥っあ‥あのですね」

「うん、あの?」


随分長い時間考えてたなオイッ、と思いつつ優しく先を促す。


「分かりませんでした‥「そんだけ考えて分からんかったんかーいっ!」っイデッ!?」


スコーン!と軽い音をたて木簡が、クルド君の眉間にぶち当たり跳ね返った。


「だから言ったじゃん、聞く人間違えたってさ」


何も言えないクルド君は怨みがましい眼差しをワタシに向け、少々紅くなった眉間を静かに撫で擦っていた。

ワタシはそれをスルーし、木簡に視線を戻しているとフワッと食欲をそそる何とも良い匂いがしてきた。

キュルル、と控え目で奥ゆかしい腹の虫が鳴った。


「は~いお待ちどうさまでー‥って、お客さん!」

「はっはいっ!?」


何故かウエイトレスさんが焦った様子でワタシに声をかけてきた。

ウエイトレスさんは周りを不安げに見渡し、数段声を落としてワタシ向かい囁いた。


「不用心よお客さん、そんな大金こんな見える所に広げてたら厄介事を引き起こしますよ?」

「‥あー‥‥、それもそうだね。さっさとしまうよ、ありがとう」


やっぱり不用心だったかー、と呟きつつ忠告に従いクルド君に回収させた。


「それじゃお客さん、これがご注文のパンとデリア牛の煮込み。そしてこのサラダにはこのタレをかけてね、しめて‥49ナンになります。」

「あぁはい、えー‥‥と‥どうぞ」


「はいどうも~」


支払った小銭をポーチに入れるウエイトレスさんは、「それにしても」と言葉を続けた。


「こんな場末の食堂に、お客さんらみたいなお大尽様が来るなんてもぉ驚きですねえ」


呆れた様に続いた言葉に、これは常識を知るチャンスだと思った。


「場末ってそんな‥‥こんなに盛況なお店なのに」


「まぁ安さと味が売りの店ですからねえ、デリア牛の煮込みをこの味で20ナンで出せる店はそうそうないですよ?」


「うんうん、そうだよねえ。その上パン2個で1ナンだっけ?」


ピタパンの様に平べったいパンを眺めホントに安いよねと呟けば、その通りだウエイトレスさんが頷いた。


「その辺の店ならパン1個で1ナンだなんていうけど、この店は儲け度外視だからねえ」


そう言ってカラカラと笑うウエイトレスさんに好感が持て、ワタシも微笑んだ。

ウエイトレスさんが立ち去った後、ワタシは机につっぷすクルド君を見下ろした。


「この店‥激安なんだって」


―――ビクッ!


クルド君の肩が揺れた。


「1ナンで、普通ならパン1個買えるんだってさ」


―――ビクビクッ!


又々クルド君の肩が揺れた。


「クルド君って本当に‥‥‥‥まぁいいや、いただきます」


「ちょっと待って下さいっ!「本当に」の次は一体何なんですかっ!?」


ホントウッセエなコイツと思いつつクルド君を横目に眺めた。


「‥言ってもいいの?

言わないであげた折角のワタシの優しさ、無駄にしちゃうの?」


「‥‥アウゥゥ」


その場に泣き崩れてしまったクルド君。

トドメはワタシが刺してしまった様だ。

スルー決定なので然程気にせず、スプーンを手に取りいただきますと呟いた。

スパイシーなこの煮込みはカレーに近い味をしていてとても美味しかった。ピタパンモドキにタレをかけた野菜を挟みかぶりつく。ピリ辛なタレと葉物野菜の自然な甘さに、ハフゥと感嘆の吐息を吐く。

やっと食べれたまともな物に幸福感が募った。

チラッとクルド君を見れば、もう回復してピタパンモドキを手にとる所だった。

ワタシはそれを生暖かい眼差しで見守りつつ、又食事へと意識を戻したのだった。


*********

まだ次も似た様な感じでお買い物しますよ‥‥‥‥多分。

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