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自称元プロミュージシャンであるガブリエルはいろいろあって田舎に帰って楽器屋の雇われ店長になった。

自称元プロミュージシャンの話


 自称元プロミュージシャンであるガブリエルはいろいろあって田舎に帰って楽器屋の雇われ店長になった。 普段は控えめ口数は少ない。 しかし酔うとどうでもいい自慢話たとえばゆずの栄光の架橋のレコーディングのとき同じスタジオに自分もいたとか言い出すのでスナックの客に嫌がられママさんには客が少ない時だけなら店に入れてあげてもいいと言われ家族からは恥ずかしいから外で呑まないでくれと言われる始末。


 粗末な夕食をたべてるとき妹が口を開いた。 うちの子供も来年中学生になります。長男の勉強部屋が欲しい。 嫁に行った妹、 義理弟と実家に居座り続けること13年ついに長男の俺を追い出すべく行動を開始したのだった。


 両親は義理弟が家のことをよくやってくれてると言う。 まさに俺はこの家に不要な人間。


 俺は荷物をまとめてこの家を去ることにした。


 トラで行った先でディレクターだかプロデューサーだかに『ひよっこですがよろしくお願いします』とボーカルが挨拶してるとき横で『ひね鶏』と言ってしまった。 寡黙なガブリエルだが余計な一言はとても多い。 事務所の仕事は少なくガブリエルの仕事も当然少なかった。 そして社長には売れっ子をマネジメントする能力がなかったから売れっ子になった者は躊躇なく退所した。


 デパートの屋上の着ぐるみのバイトの休憩で控え室の菓子を食べ尽くした後ため息をついた。 あー。


 ミュージシャンとしてパッとしない日々を過ごすガブリエルであった。


 ガルリエルのレコードデビューは戦隊モノのオープニングテーマの録音であった。 ディストーションで白玉を弾いただけであったけど5000円もギャラをもらってしまった。 正直音源を聞いても自分のテイクなのかわからない。


 この業界でやっていけるのだろうか。 社長はユーは才能があると言うが…


 ガブリエルがまだ専門学校のギタークラフト科の学生だった頃池袋のマイルスカフェとかいう店の初心者ジャズセッションでウエスモンゴメリのフレーズをコピーして弾いたらユーいけてるよと言われて帰りにラーメンを奢ってもらって今の事務所に入った。 国立卒とか言うてる先生のレッスンを2回受けて初仕事だった。 


 下手くそすぎて外音を切られた。


 森山則夫。 彼は大手鉄鋼メーカーのエンジニアである。 しかしミュージシャンになる夢を捨てきれず夜な夜なラウンジでピアノのバイトをしていた。 モノマネタレントのバンドのトラでガブリエルと知り合い同情と哀れみで貧しい彼をサポートしていた。


 俺がいうのもなんだけどもうちょっと練習しろ。 


 同業者から見てあきらかにガブリエルのギターの腕は劣っていた。 


 そしてセンスがなかった。


 微妙なプロになって5年の月日が経っていた。 相変わらず貧乏で毎日腹を空かせていた。 いつものごとく則夫の家にたかりに行くことに。 則夫の妻は嫌な顔ひとつせず白飯を出した。


 中学受験の息子が図形の問題で苦戦してたのでガブリエルは解いてついでに解説までしてやった。 ガブリエルはあまり言葉というものを発しない。 しかし教えるのが異常にうまかった。 その評判は則夫の息子の通う塾にまで轟いだ。 しぶしぶ不定期で講師をすることになった。 乗り気ではなかったが小金がたまり、たまに後輩にマクドを奢るぐらいになっていた。 そんなある日ポケベルに実家の電話番号が表示された。 やっと黒電話からプッシュに変わったんだなとガブリエルは思った。 それにしてもなんの用事だろう。 


 妹の結婚式の日取りが決まったとのことだった。 実家の両親、妹と会うのは何年ぶりだろう。 


 ガブリエルは親父が脳梗塞で倒れても帰らなかった。


 

 二次会でガブリエルがテレビに出たときの話が出た。 確かにガブリエルは則夫とモノマネ王座とかいうのに出演した。 ただし音だけ。 ステージにはタレント様しか出れないのである。


 妹は言う。 ドリカムのサインをもらってきて欲しい。 仕事で一緒になったこともなければそもそもドリカムを生で見たことすらないガブリエルであった。 ところがドリカムのチケットが手に入った。 珍しく社長のコネで。 そして楽屋にも通してもらった。 名前は忘れたけどドリカムのボーカルが謙虚によろしくお願いします、と言うてた。


 ドリカムの仕事は一回もこなかった。 


 しばらくぶりに再会したボーカル加代は舞台女優に転身してた。 ガブリエルにも世話してやると言うてきたが絶対無理だから断った。 


 ブラウンのCMに秒で落ちるぐらいセリフのある仕事はダメだ。



 ある女の話


  朝から怒鳴りちらしてしまった。 同居の男は髭を剃っていた。


 あんた何時だかわかってるの?、と女。

 時間には間に合う、と言いたいが言葉が出ないので無言の男。

 時間に間に合ったとしてギリギリだと思うんだけど。だいたい新人は早く入って先輩に挨拶するものだ、と女が。


 男は世話女房面するこの女にうんざりしつつ髭剃りを中断して着ぐるみのバイトに出て行った。


 男の出て行った部屋でひとりコーヒーを飲みトーストをかじると差し歯が取れた。 女になにかしらのスイッチが入った。


 部屋から男の私物を放り出し業者を呼んで鍵を換えると気分転換にジブリの映画を見に行った。


 女の名は加代。 男の名はガブリエル。



 なんじゃかんじゃいろいろあって三流ミュージシャン業界も人が入れ替わりガブリエルは古株になった。 日本経済の停滞とともに音楽業界で食べていくのは厳しくなり貧しさに耐えられない者は去って行った。


 ガブリエルは思った。 バンドやろうぜ。


 後輩のキョンシー(ds)とカオリン(b)を誘ってバンクバンド、バンクゴーゴーを結成し活動を開始した。


 やる気のないユルユルのガブリエルのボーカルは業界関係者の間で話題になった。 ライブは常に満員。 ガブリエルの音楽人生初の快挙であった。


 レコード会社やその他諸々の態度の豹変ぶりに驚いた。 今までさんざんひどい目にあわされてきたガブリエルはへいこらしてくる奴らに恨み節を喰らわした。 へんこちゃんスイッチの入ったガブリエルはメジャーを目前にしてパンクゴーゴーの活動を止めた。


 次の月には事務所の新人中元愛子のバンドで姫路キャスパホールの楽屋で弁当を食べていた。


 カオリンは大食いタレントの仕事が忙しくて不参加。 キョンシーは一緒だった。 新婚のキョンシーは妻に定時連絡をかかさなかった。


 キョンシーの妻メグミは愛子がエロすぎるから嫉妬の炎を燃やしまくった。 ツアーが終わり新婚生活でやつれきったキョンシーは過労死した。


 ガブリエルは慣れ親しんだ実家の3畳の部屋を出て1Kのアパートに引っ越した。 


 大家がえろかった。 興奮した。



 中元愛子の話


 愛子は使い古したSONY WALKMANで音楽を聴きながら地元長野と同じボリュームで熱唱した。 都内のマンションのピロティで。 


 ユーイケてるよ。


 知らないおじさんに声をかけられた。 この人は隣の人から聞いていた変質者に違いない! 愛子は隙を見て通報、得意の柔道で締めあげた。 大男二人に引き渡し検挙にご協力ありがとうございますと感謝された。


 もらった名刺を母に見せたら知ってる人だと言った。 ふたりでミスドを持って名刺に書いてある住所に挨拶に行った。


 キョンシーの話


 キョンシーは端正な顔立ちでモテモテだった為男どもから嫉妬がすさまじかった。 そして女の戦いも熾烈を極めた。 小学校低学年の頃映画キョンシーのヒット。 キョンシーのモノマネがうまくあだ名がキョンシーになった。 イケメンでイキリのイメージをある程度払拭できて男友達もでき本命彼女ができて女の戦いも終わった。 


 カオリンの話


 アイドルグループを体型を維持でないことを理由にクビになったカオリンは暇を持て余していた。 友達に誘われたライブアンダーザスカイでマーカスミラーに感動してフェンダージャズベースを購入。 趣味のお稽古感覚で始めたが筋が良くて2年でプロになった。 パンクゴーゴーの活動がストップした時社長にユー大食いのオーディション受けなよ、と言われダメ元で行ったら合格した。 体調が良かったのかいいとこまで行った。 そして番組プロデューサーと付き合っている。


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