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「僕の描く君の世界」

作者: ニニギ

春の陽射しが暖かったあの日、僕と彼女の世界にも一筋の光が差し込んだ。

 その日、僕は休憩時間の程よい喧騒の中、窓際の席でいつも通り小説を書いていた。誰にも見られることのない端の方でひっそり、のんびりと書き綴っていた。別にコンクールに出すわけではない自己満足の小説。それを書いている僕は周囲から見れば異質な存在だっただろう。だが、誰もそんなことは気にしていなかった。まるで僕など初めから存在していないかのように、その場の誰もが僕の存在など意識の隅にすらなかっただろう。たった1人を除いて。彼女はまるで好奇心旺盛な少女のような目でこちらを見つめていた。僕はそれに気づいてすらいなかった。まして、近づいていることなどわかるはずもなく、唐突に声を掛けられびっくりした。彼女は自分が何をしているのか気になっていたようだった。僕は日記を書いていたのだと答えた。咄嗟に出たものではない。昔からこういう人間は一定数いた。それを乗り越えるために僕は必ずこの嘘をつく。そうすればその人たちは興醒めしたかのようにすぐに自分の持ち場へと帰っていく。僕を揶揄いたかったのか、はたまた単純な好奇心からなのか、それは今となってはとうにわからないが一つだけ言えるのは「僕は誰とも関わりたくない」ということ。しかし、彼女は想定外の行動をとった。僕からパソコンを奪り、中身を直接見たのである。あまりにいきなりのことで僕はただ唖然としていた。そして何が起こったか気づいた時にはもう遅かった。そこに開かれていたテキストファイルを彼女が見てしまった。彼女は物珍しそうにそれを読んだ。そして突然ペンと紙を自分の机から持ってきて何かを描き出した。しかし、そこで休憩時間は終わってしまった。彼女はおずおずと自分の机に戻りながらも何かを考えているようだった。僕は何が起こったのかさっぱり理解できなかったが授業もあるので準備を始めた。授業も終わり再び休憩時間に入った。僕は先程あった出来事など、とうに授業に上書きされておりすっかりいつもの調子でまた小説を書き始めた。すると、再び彼女がやってきた。彼女は紙を1枚僕の目の前に置いた。一体なんなのかと見てみるとそこには自分の小説の登場人物の1人が、まさに自分が思い浮かべていたままの姿で描かれていた。僕は驚いた。自分の世界にしかいなかったキャラクターが絵とはいえ、この世界に現れたのだから。そして彼女から提案があった。彼女がこの小説に挿絵をつける。だから、一緒にこれを投稿しないか?と。


 それから僕たちはいろんな小説を書いた。ロマンスもSFも時には古典文学も書いた。しかしどんな内容の小説であっても彼女は自分の思い通りの挿絵を書いてくれた。まるで僕たちは一心同体だった。そんな中、彼女はネットに小説を投稿することを提案してきた。僕は驚いた。自分の書いた小説を投稿することもそうだったが、何より自分にない発想だったからだ。早速僕は小説投稿サイトを探してみたその中でも最も人気の高いサイトが挿絵つきで投稿できるものだったのですぐさま登録し、過去作の中でも自信作だった数作を投稿してみた。すると思っていた以上にPVがついた。ついたコメントを見てみると「挿絵と内容があっていて面白い」「挿絵がここまでしっかりしてる小説がここで見れるなんて」など、挿絵と内容を合わせて評価してくれている内容が多かった。彼女もほんの一瞬暗い表情を浮かべたような気がしたが、すごく喜んでいた。僕は彼女の表情には一切気付くことなく一緒に喜んでいた。


 2年が経過し、様々な変化があった。僕たちは約20作品も投稿していた。過去に書いていた作品も都度投稿していたが多くは新作だった。しかし、受験期に入り僕たちは受験勉強に専念していく中で次第と関わらなくなっていた。僕は元々1人が好きだったし、彼女から話しかけてこない限り普段は話すことがなかったので、大して気にしてもいなかった。そんな中、僕に一通のメールが届いた。作品の書籍化に関する打診だった。僕は嬉しくなり、まず1番に彼女にメールした。しかし1時間経っても、一日が経っても彼女から返事が来ることはなかった。僕と彼女の世界は別れてしまった。

 僕が事実を受け入れられたのはメールを送ってから一週間後だった。僕は彼女のことを何も知らなかった。このことは学年でも大きな噂になっていたらしい。それもそうだ、なんせ生徒が自らこの世界を離れたのだから。僕はその事実を知ってから何も手につかなくなった。だが、一週間経ったある日、僕はふと思い立ってしまったのだ。「彼女がこの世界にいないのなら僕が彼女になればいいのではないか?」と。それから僕は取り憑かれたかのようにイラストの練習を始めた。その頃にはメンタルもだいぶ安定してきていたので受験勉強も同時に進めながらひたすらに絵を描いていた。そして、ある程度絵が描けるようになってきたら、今度は彼女の絵をひたすらに模写し始めた。そうして、彼女の絵風を身につけ、本当に彼女のような絵が描けるようになってきた頃、僕は再び小説を書き始めた。小説とイラストと受験勉強全てを同時に進行するのはとても大変だった。だが、思いのほか苦だとは感じなかった。そしてまたネットに小説の投稿を再開した。読者からのコメントは投稿再開を喜ぶものばかり。誰もこの挿絵が彼女の書いたものだとは気づかない。それを見て僕は嬉しいような、でも何か満たされないようなそんな気分だった。


 受験も終わり、いよいよ新学期。僕は第一志望には届かなかったものの、第二志望になんとか合格し、新しい生活が幕を開けた。相変わらず僕は教室の端の方の席だったので、いつものように休憩時間の程よい喧騒の中小説を書いていた。ただ、今までとは少し違うこと、それはその小説が自己満足の小説ではなく、見ず知らずの誰かのための小説であるということだ。それが僕と彼女の最初で最後の書籍。


タイトルは「僕の描く君の世界」


第二作目ですね。今回も前作と同じ、あるルールで書いています。これが自分の作品の特徴とも言えますし、こだわりとも言えますね。そういった点では僕と主人公には共通点があるとも言えますねwさて、今回の作品はいかがだったでしょうか?構想段階とはだいぶ違った小説になってしまいましたし、この小説のジャンルを問われると僕でもわかりませんwただ、主人公が今後幸せな人生を歩めることを願ってあとがきとしたいと思います。彼の人生に幸多からんことを

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