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60.冒険者ギルド


 カイムとティー、ミリーシア、レンカ。四人は街の中央にある冒険者ギルドに向かった。

 そこは一見すると酒場のように見えた。入口はスイングドアと呼ばれるバネ式の扉になっており、建物の内部には広々とした空間にたくさんの丸テーブルが並べられている。

 テーブルの各所では鎧やローブを身に着けた者達が酒瓶を傾けており、ガヤガヤと賑やかな喧騒が空間を包み込んでいる。


「おお……!」


 ギルドの中に足を踏み入れ、俺は思わず感嘆の声を漏らす。


(ここが荒くれ者達の住処……冒険者ギルドか! 力と腕っぷしがすべてを決める戦士の集い。まさかここを訪れる日が来ようとはな……!)


『呪い子』として侮られて故郷でくすぶっていた頃は、まさか自分が冒険者になる日が来るだなんて考えられなかった。


「カイム様、中に入りましょう?」


「ん、ああ。そうだな。受付に行こう」


 入口に棒立ちになっていたカイムは後ろのミリーシアに背中をつつかれ、カイムは奥にあるカウンターに向かって足を進めた。


「へえ……」


「いい女じゃねえか」


「男一人に女三人とはいただけねえな」


 複数の美女を引きつれたカイムの登場にあちこちのテーブルから視線が集中する。

 大半は興味本位と嫉妬の視線だったが、実力を値踏みするような油断ならない目を向けてくる人間もいた。

 受付カウンターにはスーツ姿の女性が立っている。茶色のショートカットの受付嬢は男一人、女性三人という珍しい組み合わせに不思議そうな顔をしながら、すぐににこやかな営業スマイルになって口を開く。


「ようこそ、冒険者ギルドへ。依頼ですか、それとも冒険者登録ですか?」


「あー……依頼だ。護衛と道案内として冒険者を雇いたい」


 カイムはわずかに緊張しながら目的を告げた。

 実のところ、冒険者に憧れを持ったカイムはギルドに登録もしたかったのだが、今回の目的はリュカオンの森を案内してくれる人間を探すためである。

 内心で残念に思いながら護衛依頼を出す。


「護衛の期間、目的をお聞きしても構いませんか? 危険度によって依頼料の基準値が変わってしまうのですが」


「期間と目的か……」


「目的地は帝都。リュカオンの森を通る最短距離での移動になります。森に精通した冒険者をお願いします。日数については相談で」


 考え込んだカイムの代わりに、ミリーシアがハキハキとした口調で答える。


「私以外の三人は武術に精通していますので、道案内だけでも結構です。帝都まで案内してもらえるのなら護衛としての戦闘能力は求めません」


「戦闘能力は不要、ということですか……うーん」


 受付嬢は難しい表情になって首を傾げる。


「リュカオンの森は危険地帯です。護衛を雇うのであれば、かなり高額の報酬が必要となります。道案内だけならば比較的安くはなりますけど……命の危険がある道案内を引き受ける者がいるかどうか……」


「命の危険はない。戦闘は俺達がやるからな」


 カイムが断言する。そこは迷う必要もない当然の事実だった。


「俺もここにいる虎人のティーもそれなりの腕があるつもりだ。ついでにこっちのレンカも少しはできる」


「私だって弱くはないぞ! カイム殿が無茶苦茶なだけではないか!」


 後ろのレンカが反論する。

 圧倒的な強さを持つカイム、戦闘民族としてわかりやすい腕力を持ったティーに対して、レンカの実力は微妙だった。

 ミリーシアの護衛騎士としてそれなりの力は持っているのだろうが……はっきり言って、この旅の中でまるで見せ場がない。


「クッ……私だって戦えるはずなのに……!」


 レンカが悔しそうに顔をうつむける。ミリーシアが従者を慰めるように肩を叩いた。


「うーん……護衛は不要と言われましても、私も冒険者の皆さんも貴方達の実力を知りませんから。ギルドに登録している冒険者の方でしたら、ランクが力量を証明してくれるのですけど……」


 護衛は不要と言われても、ギルド側としてはカイムらがそれだけの力を有していることを知りようがない。

 本当に自分の身を守れるだけの実力があるかもわからないのに、一緒に危険地帯に足を踏み入れるなんて不安な依頼を受ける者はいないだろう。


「うーん……困りましたね。今は路銀に余裕がないのですが……」


 ミリーシアは皇女とはいえ、現在は流浪で追われている人間。そこまで懐が温かいわけではなかった。

 逆にカイムはファウストからもらった金、盗賊から奪った金品があるので余裕があるのだが……カイムが代わりに支払うことをミリーシアは了承しないだろう。


(うちのお姫様は変に律儀な奴だからな。雇われているはずの俺の方が報酬を出すだなんて、受け入れはしないだろう。こっちは別に気にしてないんだけどな)


 ミリーシアが困り果てて考え込み、ショートカットの受付嬢も困った顔になっている。

 依頼を出す側、受ける側がどちらも落としどころを見失って沈黙が生じるが……予想外の方向から助け舟が出された。


「なあなあ、だったら……実力を証明してみたらいいじゃねえか」


「あ?」


 背後からかけられた声に振り替えると、そこには武装した三人組の男が立っていた。


「ギルドの裏に鍛錬場があるからよ。そこで俺達と勝負しようぜ? 俺達に勝てたら、護衛が不要だって証明できるかもしれないぜ?」


「こっちが勝ったら……ヒャヒャッ! どうして犯ろうかなあ!」


 冒険者らしき男達はニヤニヤと下卑た笑みを浮かべており、彼らの目はカイムの連れである三人の美女に向けられていた。


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― 新着の感想 ―
[一言] ああ、良い噛ませ犬が来た
[一言] 軽く撫でた程度で終わりそうな底辺を相手に証明なんで出来るのか?位は煽っても良いわなw 後、掛けの対象が見合って無さすぎ。
[一言] 依頼人にこんな態度の人間が居るようではギルド自体の程度が知れるな。
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