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245.帝都の封印

「怪物め……」


 ランスの告白を聞いて、カイムが心から寒気を覚えた。

 アーサーと戦った際、化物じみた強さを持った男だと感服したものである。

 だが……ランスの内心を聞いて、それ以上の衝撃と畏怖を抱いた。


(この男は人間ではない……強さは普通の人間と同じかもしれないが、精神が人を超越している……!)


 どうやったら、どんなふうに育ったら、こんな人妖(じんよう)が生まれるというのだろう。

 目の前の男とわかりあえるヴィジョンがまるで浮かばない。理解することを脳が拒絶している。

 カイムは生まれて初めて、心底、一人の人間に対して恐怖した。


(この男はやる。自分の目的に必要であるのなら、世界中の人間を殺し尽くすことだって顔色一つ変えずにやってのける……!)


「さあ、おしゃべりはこれくらいにして本題だ……ここが何の部屋だかわかるかい?」


 座り込んでいるミリーシアにそれ以上触れることなく、ランスが問いかけてくる。

 カイムは背中に冷たい汗をかきながら、肺から絞り出すようにして言葉を紡ぐ。


「……知るわけねえだろうが」


「ああ、そうだろうね……この中にはね、魔王がいるんだよ」


「魔王……?」


 喉がカラカラに乾いており、声がかすれてしまう。

 ランスが何をするつもりかはわからない、その部屋が何かもわからない。

 一つだけ、ハッキリしているのはどちらも危険であること。一刻も早く、ランスを殺すべきだと本能が訴えかけてくる。


「世界を滅ぼす大災害。七つの『魔王級』の魔物の一つ……『美猴王』。それがこの扉の向こうに封印されているんだ」


「…………!」


『魔王級』……それは単独で国を滅亡に追いやることができる魔物であり、カイムの中にいる『毒の女王』もその一体だ。


「馬鹿な……どうして、城の地下にそんな物がありやがる……!?」


「厳密には……帝城の地下に魔王がいるんじゃなくて、魔王がいるからここに帝城があるのさ。封印の上に都を築いて、そこで暮らす大勢の人間の魔力を吸い上げて封印を維持しているのさ。ああ、まったく……封印の場所を突き止めるのには苦労したよ」


 ランスが懐に手を入れて、何かを取り出す。

 それは薄汚れた銀製の鍵だった。


「まさか、お前……!」


「ああ、そうだとも。僕はこれから『彼』を解き放つ。『彼』が地上に出てくれば、きっとガーネット帝国を滅ぼしてくれる。アイオライト王国の仇を取ることができるよ」


「【飛毒】!」


「死になさい!」


 カイムとロズベットが同時に動いた。

 カイムの指先から毒の弾丸が、ロズベットの手からナイフが投擲される。


「ハハッ……」


 ランスは避けなかった。毒と刃をまともに喰らう。

 次の瞬間、ランスが手にしていた鍵が極光のような光を放った。


「ありがとう……そうしてくれると思ったよ」


「なっ……!」


「この魔道具は死と引き換えにあらゆる魔法を解除する。しかも、自殺では発動しないという厄介な代物でね……君達は本当に僕の役に立ってくれたよ。ミリーシアを殺し損ねて、本当に良かった……」


「ランスお兄様……ッ!」


 倒れるランス。ミリーシアが叫ぶ。

 地面が激しく揺れて、天井が崩れる。

 崩落がどんどん広がっていき、瓦礫が周囲に落下してきた。


「ごめんね。先に逝くよ」


 ランスがつぶやき……床に落ちた鍵から漏れた極光が鎖を断ち切っていく。

 千々に霧散した封印。扉が開け放たれて、身の毛もよだつような絶叫がカイム達に打ちつけられる。


「GYAOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!」


「ッ……!?」


 身構えるよりも先に、目の前が真っ赤になる。

 次の瞬間、凍えるような魔力を感じて……カイム達の意識が吹き飛ばされた。


(異界より来たる狂える猿神……『美猴王』)


 意識が閉じる寸前、誰かがそんなことをつぶやいた声を聞いた。



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