227.ロズベットとのデート
翌日のお相手はロズベットである。
カイムとロズベットは二人で腕を組んで、街中を歩いていく。
「この間、面白そうな店を見つけたのよ。一緒に行ってみましょう」
「ああ、別に構わないが」
構わないが……思えば、ロズベットと二人きりというのも珍しい。
腕を組んで、こうしているとまるで恋人同士のようだ。
(いや……別に『まるで』ってわけじゃないんだけどな。実際、何度も抱いているわけだし)
出会ってから日は浅いが、もう恋人と呼んでも良いだろう。
一緒にいて違和感やぎこちなさを感じなくなっている。
(それは良いんだが……改めて、胸の感触が寂しいよな)
腕を組んだことではっきりと感じられるが、ロズベットは胸が小さい。
ティーやレンカ、ミリーシアと比べると胸部の感触が明らかに不足しており、どこか悲しい気持ちになってきてしまうのだ。
(まあ、小さい分だけ感度は良いんだよな。弄っている時の反応も良くて苛め甲斐があるんだが……)
「……ねえ、貴方。変なことを考えていないかしら?」
「痛っ!」
ロズベットが腕をつねってくる。
カイムの内心にある邪な心を見抜かれたようだ。ジットリとした横目で睨まれてしまう。
「いや、冗談だ冗談。胸が小さいとか考えてないから安心してくれ」
「考えてるじゃない。さんざん、弄り倒しておいて良く言うわ」
ロズベットが拗ねたように唇を尖らせる。
しかし、腕を離すことはなくより強く押しつけてきた。
重量感はやはり寂しいが、これはこれで悪いとは少しも思わない。小さい胸には小さい胸の趣があるものである。
そんなことを考えていると、目的の店に到着した。
どうやら、そこはダーツバーのようだった。
「ダーツか。やったことはないな」
「そう、私は得意だから教えてあげるわ」
腕を組んだまま店に入ると、中には数組の客がいた。
ダーツを本格的に楽しんでいる者達もいれば、酒を飲むことをメインにしている者達もいる。テーブル席でイチャイチャとしているカップルもいた。
「昼間から酒を飲んで良い御身分だな」
「そのセリフ、完全にブーメランになっているわよ。私達も似たようなものでしょう?」
ダーツ台の一つについて、酒を注文する。
グラスの酒をお互いに一杯ずつ飲んでから、ダーツの矢を手に取った。
「カウントアップで良いわよね?」
「知らん。どうせルールもわからないし、好きにしてくれ」
「そう、それじゃあ始めましょう」
ロズベットからルールを教わりながら、ゲームを進めていく。
カウントアップはダーツの基本的なルールだ。
0点からスタートして、1ラウンドに三本ずつ矢を投げていき、8ラウンド終了後の得点を競う。
的の当たった場所によって点数が異なっており、最高で20のトリプルが60点となっている。
「へえ、中心が一番高いわけじゃないんだな」
「ええ、ブルは50点よ。だけど、ここが面積が広くて狙いやすいから、初心者はそこに向かって投げた方が良いわよ」
「なるほどな」
ロズベットから手本を見せてもらい、カイムの番。
カイムが投げた矢は三本ともブルに命中。合計150点だ。
「こんな感じか?」
「……可愛げないわね。いきなり当てないでもらえる?」
ロズベットが嫌そうな顔をする。
初心者がいきなり三本もブルに当てたのだから、さぞや嫌味に見えることだろう。
「的当ては苦手じゃない。毒をぶつけたりしているからな」
敵を毒で狙撃することと比べれば、矢を投げるくらいだいぶ簡単である。
落ち着いて投げさえすれば、狙い通りの場所を射貫くことができそうだ。
「いいわ、だったら素人扱いは必要ないわね。ここから本格的に勝負といきましょう」
ロズベットが投げた矢が20のトリプルを射貫く。三回連続で。
「負けた方が一杯ずつ飲むというのでどうかしら?」
「それはむしろご褒美だけどな」
言いながら、カイムが矢を投げる。
綺麗な放物線を描いた矢が20のトリプルを射貫き、さらに60点が加算された。




