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214.ロズベットの戦いー悪逆非道

「さてさて……次はどうしようかしらね」


 ロズベットは戦場を駆け抜けて敵将の首を獲っていく。

 遊撃兵であるロズベットの役割は、敵の指揮官を暗殺すること。

 いくら兵隊の数を揃えたところで頭が無くなってしまえば意味がない。

 ロズベットは暗殺者としてのスキルをフル活用して敵軍の中に滑り込み、次々と首を狩っていった。

 ネイビーブルーの髪が揺れ、鈍色の刃が閃くたびに血の花が咲く。西軍の兵士が次々と殺されていく。


「理想はアーサー皇子の首を狩ることだけど……まあ、ちょっと無理よね」


 以前、ロズベットは帝城に忍び込んでアーサーの首を狙ったことがある。その時は『双翼』の邪魔もあって返り討ちに遭ってしまった。


「今回も同じようになるでしょうね。アーサー皇子の傍には今日も『双翼』がいるだろうし…………あら?」


 ふと不穏な気配を感じた。

 ロズベットは怪訝そうな顔をしつつも、気配の方向に足を向ける。


「あれは……?」


「現れよ、高位デーモンよ! 我らが敵を打ち倒したまえ!」


「ここに贄を用意した! 彼らの命を受け取るが良い!」


 戦場の片隅で不穏な儀式が行われていた。

 地面に魔法陣が描かれており、そこに縛られた男達が寝かされている。

 魔法陣を囲んでいるのはローブ姿の年齢性別不詳の者達。しきりに呪文を唱えながら、この場にはいない何かに向けて呼びかけていた。


「もしかして……『湖の乙女』って奴らかしら?」


 物陰に身を潜めて様子を窺いながら、ロズベットが怪訝そうに眉を顰める。

 カイムから彼らのことは聞いている。アトラウス伯爵に奇襲を仕掛けようとしていた連中だ。


「もしかして……もしかしなくても、悪魔召喚でもしているのかしらね」


 その予想は正鵠を射ていた。

『湖の乙女』の魔術師達は捕らえた敵兵を生贄にして悪魔を召喚し、戦わせようとしていたのだ。

 余談であるが……この悪魔召喚の魔法を生み出したのはファウストという名の研究者。カイムと因縁深い人物だった。


「とりあえず……邪魔した方が良いわよね」


 ロズベットは即座に決断して、行動に移す。

 物陰から飛び出すや数本のナイフを投げて、魔術師達を攻撃する。


「ム……!」


「何奴……!」


「あら?」


 だが……投げたナイフが魔術師達の身体に命中するや、見えない壁に衝突して弾かれる。

 どうやら、事前に守りの魔法を使っていたようだ。魔術師達が振り返った。


「敵の刺客か……!」


「我らの邪魔をするつもりか!」


 魔術師達がロズベットに向き直る。

 ロズベットは新しいナイフを取り出して構えた。


「だが、今さら来たところで遅い! すぐにでも術式が完成する!」


「高位悪魔だぞ! お前達のような凡愚など虫けらのように踏み潰してくれるわ!」


「そう……まあ、させないけどね」


 ロズベットが再びナイフを投擲した。

 魔術師が先ほどと同じように何らかの魔法を発動させようとするが……ナイフは彼らとは見当違いの方向に飛んでいく。


「フハハハハッ! 何だ、どこを狙っている!」


「愚かな女め! いったい何をしに出て…………あ?」


「ギャッ……」


 短い悲鳴が上がる。

 魔術師が振り返ると……そこには、急所にナイフが刺さって死んでいる死体。

 魔法陣の内側に転がされていた捕虜、生贄にされるはずだった人間達である。


「生贄ということは死んでしまったら失敗よね?」


「な、なななななななっ! 貴様、何ということを!」


 儀式の触媒が無くなってしまったことで、発光していた魔法陣が力を失ったように消えていく。


「貴様……味方の兵士を、それでも人間か!」


「いや、貴方達にそれを言われたくないのだけど……ねっ!」


「ッ……!?」


 相手が動揺した隙にロズベットが懐に飛び込む。

 大型ナイフの切っ先に魔力を込めて突き刺すと、魔術師の身体を囲っていた障壁ごと相手の身体を貫いた。


「カハッ……!」


「よ、よくも……ギャアッ!」


「首を狩るわね」


 ロズベットがスパスパと小気味よいリズムで魔術師の首を切断していった。

 儀式に集中していたようで魔術師らは魔力を消耗しており、ろくに抵抗することも討たれていく。

 大魔術師マーリンの弟子……『湖の乙女』の残党は何の戦果も挙げることができずに壊滅したのであった。


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