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190.マウントの取り合い

 翌日、カイムとレンカの二人は兵士達の演習に呼び出された。

 共に戦場に立つにあたって、実力を確かめたいと言われたのだ。

 演習場には多くの兵士がいて、剣や槍を振るっている。一週間後に迫ってきている戦いに備えて、最後の調整をしているようだ。


「改めて……私の名前はルイヴィ・イルダーナ。青狼騎士団の団長をしている」


 演習場にやってきたカイムとレンカに、会議でもあった三十代くらいの男性が名乗る。


「一週間後の戦いでは、将軍として軍全体の指揮を任される予定だ。もちろん、総指揮官はランス殿下だがな」


「随分と若いな……その年齢で騎士団のトップなのか?」


「帝国は実力主義だ。年齢に関係なく、実力で序列が決まる」


 つまり、イルダーナという男はそれだけ優秀なのだろう。

 年功序列を押しのけて、一軍のトップに立つことができるくらいには。


「君はミリーシア殿下の恋人で、戦場では遊撃兵として自由に戦うことになっていると聞いた」


「ああ、俺もそう聞いている」


「だが……果たして、それができるだけの実力があるか。それを試させてもらいたい」


 イルダーナが淡々とした口調で言うと、レンカが眉を顰めて口を挟む。


「イルダーナ卿、それはどういう意味だ? ミリーシア殿下の言葉を疑うつもりか?」


「レンカ殿が金獅子騎士団の団員として活躍していたことは知っている。だが……私は彼のことは知らない。実力のわからない人間に、戦場で命は預けられない。レンカ殿ならばわかるはずだが?」


「それは……」


「特別扱いをされるのは特別な人間だけだ。彼にその資格がないようならば、たとえミリーシア殿下の推薦であろうと戦いに出ることは認めない。ランス殿下にもそのように進言をするつもりだ」


「……なるほど、わかった」


 斬りつけるような言葉にカイムは唇を吊り上げた。

 遠回しの言葉を使ってはいるが……要するに、ケンカを売られているわけである。


「だったら、どうするって言うんだ? 殴り合いでもするのか?」


「私はしない。だが……都合が良いことに、君と戦いたいと言っている人間がいる」


 イルダーナが後ろを振り返ると、訓練をしていた兵士の中から一人が進み出してくる。


「……俺が相手になる」


「お前は確か……?」


 何という名前だっただろうか。

 会議にも参加しており、イルダーナの隣に座っていた若い男性だ。


「青狼騎士団副団長、オーディー・イスコーだ!」


「ああ……そんな名前だったか」


 カイムがミリーシアの恋人として紹介された際、いきり立っていた人物だ。

 今もカイムに憎々しげな目を向けてきており、視線で射殺そうとしているかのようである。


「お前がミリーシア殿下に相応しい男であるとは思えない! 化けの皮を剝いでやる!」


「……完全に私怨だな。大丈夫か、コレが副団長で」


「…………」


 イルダーナの方に目を向けると、視線を逸らされた。


「オーディーは優秀な騎士だ。少なくとも、戦場ではな」


「そうかよ……それで、俺にコイツと戦えって言うんだな?」


「その通りだ」


 イルダーナが溜息混じりに説明を続ける。


「実戦同様に刃引きされていない武器を使用して、模擬戦闘を行ってもらう。ただし、殺しは無しだ」


「フシュー、フシュー……絶対に殺す。ミリーシア殿下を穢しやがって、生かしちゃおかねえ……!」


「無茶苦茶、殺す気になっているが?」


「大丈夫だ、たぶん」


 イルダーナが目を逸らしたまま、気まずそうな表情をしている。


「ミリーシア殿下から、貴殿は無双の武勇の使い手であり、ガウェイン卿やマーリン女史とも渡り合ったと聞いている。ならば、どうにかなるだろう」


「……まあ、別に良いけどな」


 カイムが頭を掻く。

 模擬戦をするのは別に構わない。

 人間関係というのは最初の第一印象が重要だ。最初に舐められていたら、その後もずっと舐められてしまうことになる。


「だったら……そいつ一人じゃ足りないな」


「何だと……?」


「俺の参加に不服な奴らを全員、集めろ」


 カイムが猛獣のように牙を剥いて笑い、傲然と笑う。


「まとめて相手になってやる……心配せずとも、戦場に出れないような大怪我はしないように手加減してやる。安心してかかってきやがれ!」


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― 新着の感想 ―
私怨で動く戦場では役に立とうが副団長にするには不適格(団長の不在の時に冷静な判断できない
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