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146.三人の戦い

 カイムとミリーシアが『骨喰い将軍』と相対している一方。

 他のメンバーは町の城壁を乗り越えて、内部に侵入していた。


「がう、ここならば大丈夫ですの」


 先陣を切って町を覆っている柵を乗り越えて、ティーが後ろの仲間達に合図を送る。

 ティーに続いて、レンカとロズベットが策を越えてきた。


「思った通り。彼は囮としての役目を果たしてくれているようね」


「姫様が心配だ……」


 ロズベットは涼しい顔をしているが、レンカの表情は曇っている。

 片時も離れずに護衛をするべき主人から離れているのが不安なのだろう。


「大丈夫ですわ。カイム様が一緒ですから」


 ティーが励ますように言う。


「私達と一緒にいるよりも、カイム様と一緒の方が安心ですの。いざという時は抱えて逃げると言っていましたわ」


「……そうだな。カイム殿を信じよう」


 ティーの言葉に、レンカが頷いた。

 自分を鼓舞するかのように両手で頬を叩いて、顔を町中に向ける。


「それじゃあ、行きましょう……人質になっている人達を助けに!」


 三人が別行動をとっているのは、『骨喰い将軍』に捕まっている町民を救出するためである。

 町で暮らしていた人々……女性ばかりが捕らえられており、とある場所に幽閉されているとのこと。

 幽閉されている場所は襲ってきた男の町民から聞いている。

 彼らは苦渋の表情で、自分の妻や恋人、娘、姉妹が閉じこめられている場所について教えてくれた。


「姫様は優しい……もしも人質のことを出されたら、手を出すことができなくなってしまうかもしれない……」


 だからこそ、人質を助ける必要がある。

 相手は『骨喰い将軍』。一世紀以上も殺し屋をやっていて、生き残っている宿老だ。

 標的を殺すため、生き残るためならば、どんなことでもやってくるだろう。


「がう、こっちですの。人の匂いがたくさんしますわ」


 ティーが先頭を駆けて、閑散としている町中を移動する。

 やがて到着したのは憲兵の詰め所だった。


「ここならば、牢屋があって人を閉じ込めるのに苦労しないものね」


「さすがに見張りがいるな……」


 ロズベットとレンカが建物の陰から詰め所を窺い、眉をひそめる。

 詰所の前には見張りの骨がいた。おまけに……その骨は明らかに普通ではない。

 腕が三対六本もあったり、人間の胴体にトカゲの頭部がついていたり、脚がやたらと長くて三メートル以上の体長があったり……既存の生き物とは逸脱した骨格のスケルトンが詰め所を見張っている。


 異形のスケルトンを見つめて、ロズベットが口を開いた。


「おそらく、アレは特別に作られたスケルトンね」


「特別?」


「どういうことですの?」


「『骨喰い将軍』はただ骨を操るだけじゃなくて、複数の人間や動物の骨を組み合わせて怪物を生み出したりもできるのよ。高度な死霊魔術で生み出された精鋭だから、タダのスケルトンとはわけが……」


『ミーチュケタ』


「「「ッ……!」」」


 上から聞こえた声に、三人の背筋が凍りつく。

 弾かれたように頭上を見上げると……壁にトカゲのように貼りついて、三つ首のスケルトンが彼女達を見下ろしていた。


『ミチュケタ、ミチュケタ!』


『ココニイルゾ!』


『イキタニンゲン……オンナガイルゾッ!』


「不味い……!」


「仕方ないわね……!」


『『『ギャアッ!』』』


 ロズベットがナイフを投げつけると、壁に貼りついていた三つ首のスケルトンが地面に落下する。

 すぐさま、ティーが三節棍を取り出して叩きつけ、三つの頭蓋骨を叩き割った。


『敵が、イルゾオ!』


『ツカマエロ、ツカマエロオ!』


 三つ首のスケルトンの叫びに気がついて、他の改造スケルトンも三人が隠れているのに気がついてしまった。


「こっちに来ますの!」


「仕方がない……やるぞ!」


 ティーが三節棍を、レンカが剣を構えて、ロズベットも両手でナイフを手にして建物の陰から出た。

 呪われた魔術によって生み出された異形の骨達へと、怯むことなく戦いを挑んだ。


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