表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

156/266

145.骨と炎

 屋根から屋根に飛び移り、カイムとミリーシアは町の中心部へとやってきた。

 そこには広場があって、無数のスケルトンが集まっている。

 数十、数百ものスケルトンが密集しており、地獄の釜の蓋が開いたような有り様となっていた。


「何というおぞましい光景……!」


 その光景を目にして、カイムの腕に抱かれたミリーシアが息を吞んだ。


「これほどの数のスケルトン……いったい、『骨喰い将軍』という殺し屋はどれほどの人間を犠牲にしたというのですか……!」


 ミリーシアの声には、普段にはない強い怒りが込められていた。

 基本的に温厚で淑やかなミリーシアにしては、珍しいことである。


「許せません……『骨喰い将軍』……!」


「ああ……心配せずとも、俺がちゃんと殺してやる。それよりも……どこにいるかな?」


 おそらく、広場のどこかに『骨喰い将軍』がいるのだろう。

 しかし、大量の骨のせいで見つからない。

 見たところ人質の姿もないが、『骨喰い将軍』らしき老人もいなかった。


「さっさと討ち取って、こんな陰気な町から立ち去りたいところだが……下に降りるのは自殺行為だな」


 カイムはともかくとして、抱きかかえられているミリーシアはタダでは済まないだろう。

 無数のスケルトンに掴まれ、なぶり殺しにされてしまいかねない。


「広場に生きた人間の姿はないし……ここは派手にやらせてもらうか!」


「カイム様? どうするんですか?」


「まあ、見ていろよ」


 カイムは空中に魔力で足場を作った。

 ミリーシアの身体を片手に抱いて、空から広場を見下ろす。

 そして……体内で毒の魔力を練り上げて、ガス状にして広場に吹きつけた


「紫毒魔法――【死爆(ポイズン・フレア))】!」


 いかに毒ガスを散布したところで、すでに死んでいるスケルトンには通用しない。

 だが……カイムは指を弾いて火花を起こして、撒き散らした可燃性のガスに引火させる。


「ヒッ……!」


 途端、大爆発が生じた。町の広場が真っ赤な炎に包まれる。

 ミリーシアが引きつった悲鳴を上げて、カイムの首に縋りついてきた。


「オオッ……予想していたよりもすごい爆発になったな。ここまで火力を強くした覚えはないんだが……?」


「か、カイムさん? やり過ぎでは?」


「あー……これくらい、問題ないだろう? 思ったよりも派手な爆発になったが、吹き飛んだのは広場だけだぞ。たぶん」


 実際には、そんなことはない。

 広場の周りにある建物もいくつか爆発に巻き込まれており、崩壊してしまっている。

 それでも……スケルトンが巣食った町を助けるためならば軽いものだろうと、カイムは自分を納得させる。。


「それよりも……『骨喰い将軍』とかいう爺はどこにいるんだ?」


 爆発により、広場にいたスケルトンは残らず消し飛んだ。広場には骨の残骸が無数に散乱している。

 あちこちで爆炎の残り火が揺れているが、動く物の姿はない。『骨喰い将軍』はどこにいるのだろう?


「オノレエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエッ!」


「あ?」


「やってくれたなあ! 小僧オオオオオオオオオオオッ!」


 突如として、野太くしわがれた怒声が響く。

 不気味な声だ。人間が発しているとは思えないような悪意と怨念を内包している。


「まるで地面の底から響いてくるような声だな……」


 カイムが思わずつぶやくが……その予想は正鵠を射ていた。

 広場の地面が大きくひび割れたかと思うと、土煙が巻き上がって何かが這い出してきたのだ。


「これは……!」


「オオッ……デカいな」


 ミリーシアが恐怖の表情になり、カイムもわずかに緊張を顔に出す。


「よくも我が眷属を破壊してくれたなあ! 若造共がアアアアアアアアアアアアアッ!」


 地面から出てきたのはワイバーンよりもさらに巨大な魔物の姿である。

 人間の形をしているが、人間よりも遥かに巨大。頭頂部から足底まで、全長二十メートルものサイズがあった。


「まるで神話に登場する巨人だな……アレが全部、骨なのか?」


「儂を怒らせてタダで済むと思うなよ! 骨までしゃぶってくれるわアアアアアアアアアアアアアッ!」


 巨大な骨の装甲を纏って、老人が怒りのままに叫ぶ。

 大量の骨を使って巨人を象っているのか、それとも神話時代に存在したという巨神兵(タイタン)の骨でも発見して使役しているのか。

 圧倒的なサイズと重量の人骨が、カイムとミリーシアめがけて拳を振り上げた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
書籍6巻、好評発売中!
画像をクリックすると作品紹介ページにジャンプします
i000000
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ