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136.大蛇の襲撃

「レンカ!」


 突如として現れた大蛇によって、レンカが丸呑みにされてしまった。

 レンカが剣を振り下ろした茂みに一瞬だけ視線を向けると、そこには切っ先が突き刺さった蛇の尾がある。


(デコイ)か……!」


 狡猾なことに、その大蛇は自分の尾を利用して二人の注意を引いたらしい。

 長い尾で茂みを揺らして攻撃させて、その隙に喰らいついてきたのである。


「グウウウウウウウウウウウウウウウッ……!」


 レンカを丸呑みにした大蛇が喉を鳴らして、そのまま食べた獲物を喉の奥へと押し込んでいく。


「させるかよ!」


 もちろん、カイムもいつまでも静観はしていない。

 素早く踏み込んで大蛇に肉薄して、拳を振るった。


「吐きやがれ!」


「グリュウッ……!?」


 ドス、ドス、ドスと、サンドバックでも叩くように何度も大蛇の胴体を殴打した。

 すると……完全に呑まれかけていたレンカが押し出されて、大蛇の口から吐き出される。


「グゲエエエエエエエエエエエエエエエッ!」


「ウグッ……ああっ……」


 レンカはどうにか生きていたようだ。

 唾液やら消化液やらでベチョベチョになりながらも、地面に転がって呻いている。

 蛇の身体は全身が筋肉。呑み込んだ獲物を絞め殺して消化してしまうと聞いたが……救出が早かったために事なきを得たらしい。


「シャアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」


 レンカを吐き出した大蛇がカイムを睨みつけて、高々と鳴く。

 激しい殺意を湛えた真っ赤な瞳に、カイムの顔が映し出される。


「殺す気満々なのはこっちも同じだ。人の女をムシャムシャと喰ってんじゃねえよ」


 カイムが圧縮した魔力を身に纏い、冷たく宣告する。

 仲間が……恋人が食い殺されそうになったのだ。怒りと殺意に脳が沸騰してしまいそうだった。


「コイツを喰って良いのは俺だけだぜ? 懇切丁寧に殺してやるから、さっさとかかってこいよ!」


「ギイイイイイシャアアアアアアアアアアアアッ!」


 カイムの殺意を受けて、大蛇がますますヒートアップした。

 顔の周りがブワリと広がり、扇状になった。

 明かな臨戦態勢であったが……そのまま、飛びかかってくることはなかった。

 大蛇は先ほどのように喰らいついてくるのではなく、口から水鉄砲のように奇妙な液体を噴きつけてきたのだ。


「ウオッ……!?」


 カイムが思わず、驚きの声を漏らした。

 てっきり噛みついてくるか、呑み込んでくるものだとばかり思っていたのだが……おかしな液体をかけられてしまった。


「ギイイイイイシャアアアアアアアアアアアアッ!」


「これは……毒か!?」


 コブラの中には牙に空いた穴から毒液を射出するものがいる。

 ライオンやハイエナといった敵に向かって吹きつけられた毒液が目に入れば、激痛必至。最悪の場合、失明してしまうこともあるのだ。


「ああ、畜生……酔っぱらいにゲロかけられた気分だ……」


 しかし、カイムは不快そうに顔をしかめただけで苦しむ様子はない。

 当然である。カイムは全ての毒を支配する『毒の王』なのだ。

 大蛇の毒など、カイムにとっては臭くて堪らないだけの水に過ぎなかった。


「シャアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!?」


「五月蠅え、来ないのならこっちから行くぞ!」


 カイムが地面を蹴って、大蛇に飛びかかった。


「【青龍】」


 闘鬼神流・基本の型――【青龍】

 圧縮魔力を刃に変えることにより、敵を切断することができる技だった。


 大蛇に飛びかかったカイムが両腕を振るう。

 スパンスパンと鋭い風切り音を鳴らして、大蛇の身体がいくつかのパーツに輪切りにされた。


「キシャッ……!」


「首だけで生きているとは器用なことだな」


 カイムが苦笑しながら、大蛇の頭に向けて右足を上げた。


「死ね」


「ギッ……」


 振り下ろされた踵が大蛇の頭を叩き潰すと、赤黒い染みが腐葉土の地面に広がっていった。


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