122.光明の夜
本日、連載作品である「毒の王」の書籍2巻が発売いたしました!
書籍版では大幅加筆。
特にネット版よりもエッチなシーンを大量追加!
電子書籍版には限定特典エピソードも追加しています!
皆様、今後も本作をよろしくお願いします!
「先に寝てても良かったんだけどな……」
「ご主人様が戦いに出ているというのに、メイドが先に休んでどうするですの?」
「そうだな、役立たずでも無事を祈ることくらいはできる」
「二人の言う通りです。カイムさんだったら、すぐに戻ってくると思っていました」
ぼやくカイムに、三人が嬉しそうに答える。
ちなみに、彼らがいるのはベッドの上。
帰って来て早々に行われた『それ』の直後。
つまり……この会話はいわゆるピロートークというやつである。
帰って来て早々、カイムは身体を清める暇さえ与えられずに彼女達に襲われてしまったのだ。
別に久しぶりというわけでもあるまいし、そんなに待ち焦がれていたのだろうか?
「ところで……カイムさん。ワイバーン対策でふと思ったことがあるのですが」
隣のミリーシアがそんなことを話してきた。
すでにオーズドの町での出来事は三人に説明してある。
三人とも被害を受けた住民の死を嘆き、悼んでいたが、それはそれとしてしっかりと喘いでいた。
「カイム様の毒を使えば、ワイバーンを倒すことも難しくないのでは?」
「俺の毒を?」
「はい。カイム様にワイバーンに有効な毒を作っていただき、それを領軍の兵士に配備する。あとは弓矢や槍に毒を塗って攻撃すれば、簡単にワイバーンを倒せるのではないでしょうか?」
「…………」
盲点である。
カイムはあらゆる毒を使いこなすことができる『毒の王』だったが、自分の毒を他者に使わせるという発想はなかった。
本来、ワイバーンのような亜竜種の魔物には毒物が効きづらい。
しかし、カイムであれば、彼らに有効な毒薬を生成することも可能である。
「明日にでも、アトラウス伯爵に言ってみるか?」
「はい。カイム様の能力を明かすことになってしまいますが……」
「それくらい、別に構わない。すでにバレては困る奴には握られている情報だからな」
敵対しているアーサーの前で、すでにカイムは紫毒魔法を披露している。
アーサー配下のマーリンという魔法使いには、それが『毒の女王』と同じ力であると見抜かれていた。
今さら、隠しておく意味はない。
それが必要であるというのならば、使うだけである。
「ただ……心配ですの。カイム様の毒にあてられる人がいないか」
ティーがカイムの耳元に囁いてきた。
吐息でくすぐるように、耳朶をしっとりと舐めてくる。
「カイム様の毒は女性を魅了しますから。たくさん毒を使って新しいライバルが出てこないか、ティーは心配になりますの」
「いや……大丈夫だろ。さすがに」
カイムは無意識で汗や唾液を媚薬に似た毒に変えており、体液を摂取した女性を発情させる力を持っている。
発情してしまうのは相性の良い異性だけなのだが、ティーやミリーシア、レンカ、すでに三人の女性が泥沼のように毒に浸かっている。
「殺すための毒で発情するってことはないだろ。正直、俺もよくわかってないんだが」
カイムの体液を摂取したからと言って、必ずしも魅了されるとは限らない。
どういう女性が虜になるのか、カイム自身もわかってはいなかった。
とはいえ、竜殺しの毒を生成してあちこちで使ってもらったとしても、中毒になる女性が出ることはないだろう。
同じ意見だったようで、レンカが行為中にぶたれた尻を撫でながら口を開く。
「あちこちで毒をばら蒔いたからと言って、新しい牝豚……じゃなくて、女が出るとは思えないな。心配無用だろう」
「念のため、竜だけに効く毒にした方が良いかもしれませんね。そんな毒があるかはわかりませんけど」
レンカに続いて、ミリーシアも言う。
「そうだな……竜の血に反応する毒薬にすれば、竜殺し専用の毒が作れるはず。まあ、いろいろと試してみるさ」
幸い、『毒の女王』の記憶の中にも竜殺しの毒は存在した。
それを応用させれば、ワイバーンだけを殺す毒だって作れるだろう。
毒が完成したら、ワイバーン狩りも飛躍的に進むはず。
今回の騒動を一気に解決することができるだろう。
「それじゃあ、悩み事が一つ無くなったところで……良いですよね、カイムさん?」
「……またかよ」
ミリーシアが淫靡な笑みを浮かべてキスしてきた。
仕方がなしに、カイムも舌を絡める。
「ティーも足りないですの! やりますの!」
「今度は窓のところでやろう。外から見えそうになると興奮するぞ」
対抗して、ティーとレンカも加わった。
結局、その日も朝近くまで三人と身体を重ねることになってしまった。
遠征帰りだというのに、夜も重労働を強いられたのである。




