表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

131/266

120.勝利すれども道先は暗い

新作小説『異世界召喚されて捨てられた僕が邪神であることを誰も知らない……たぶん。』の連載を開始いたしました!

こちらの作品もよろしくお願いします!

https://ncode.syosetu.com/n5482il/

 カイムがオーズドの町に到着して数時間後。アトラウス伯爵配下の領軍の騎士が到着した。

 その頃には、カイムは隠れていた町の住民と合流して、建物の下敷きになっていた人間達を救出していた。


「よお、遅かったな」


「これは……何ということだ! ワイバーンは……!?」


「そこに転がっているぞ。まあ、町に残っていた奴らだけだがな」


 カイムはこの町にやって来てからのいきさつを説明する。

 自分が到着したときには、すでに町は破壊されて廃墟のような有り様になっていたこと。

 三体のワイバーンが残っていて、住民を襲っていたこと。

 ワイバーンを倒したが、逃げ遅れた人々が残っていること。

 無事な住民と協力して、人命救助を行っていたこと。


 事情を聞いた騎士が救助作業に加わった。

 人手が十分に増えたおかげで、作業は滞りなく進んでいく。

 日暮れの時間になると、瓦礫に埋もれていた人達をおおよそ救助することができた。

 すでに町の住民の半分以上は別の町に避難していたようだが、それでも被害は軽くない。

 仮にワイバーンを残らず退治することができたとしても、復興には長い時間を要することだろう。


「おのれ、ワイバーンめ……何という酷いことを……!」


 建物から引っ張り出されたのは生きた人間ばかりではない。すでに息絶えていた人間もいた。

 ワイバーンに襲われ、食われてしまったものも含めれば、被害者の数はさらに増えることだろう。


「今回、俺が三匹ほど殺ったわけだが……あとワイバーンは何匹残っているんだ?」


 カイムが問うと、救助作業を手伝ってくれた町民が答えた。


「全部で何匹かは知りませんけど……この町に現れたのは、七、八匹ほどです」


「七か八ね……」


 問題なく殺れる数だ。

 もちろん、真っ向から戦ったのであれば。

 あくまでもこの町を襲ったワイバーンがそれだけという話なので、全体数はもっと多い可能性はある。


(領内にワイバーンが散っているとして……俺一人が動いたところで限界があるな。だからと言って、騎士共がどこまで戦えるんだ?)


「なあ、お前らは何人いたらワイバーンを倒せる?」


 考えても仕方がないので、騎士に直接訊いてみることにした。

 騎士のリーダー格である年配の男性に確認すると、少し考えてから答えが返ってくる。


「そうですね……精鋭の兵士であれば、十人いれば一匹は倒せると思います」


「十人か……もうちょっと頑張れないか?」


「無理を言わないでください。相手は単体でも『伯爵級』の魔物ですよ。ベテラン冒険者がパーティーを組んで戦う相手です。単独で倒せる人間は少ないでしょう」


「俺は殺れるけどな。三匹相手でも」


「……そうですか。せめて、特殊な武器でもあれば違うんですけどね」


 騎士のリーダーはわずかに顔をしかめて、首を振る。


「ワイバーン、あるいは竜に有効な武器でもあれば優位に戦えるかと。もちろん、『竜殺し』のマジックアイテムは稀少。市場にも滅多に出回るものではありませんが」


「竜に有効な武器か……そんな都合の良い物、そうそう手に入らないよな」


 カイムは考え込む。

 ワイバーンに有効な武具を領軍の騎士や兵士に配備して、あちこちの町を守ってもらえば、被害を大きく減少させることができるだろう。

 カイムが一人で伯爵領を走り回るよりも、ずっと効率的である。


「あとは原因究明でしょうか……どうして、山に棲んでいるワイバーンが人里に下りてきたのか原因がわかれば、あるいは打開策が浮かぶやもしれません」


「原因ね……調査はしていないのか?」


「ワイバーンの巣がある北方の山は険しく、危険な場所です。現状では、そこに割けるだけの人ではありません。冒険者ギルドの協力が得られてから、改めて調査隊を送るつもりだったのですが……」


 アーサーとランス。

 帝国の時代皇帝を巡る兄弟喧嘩の余波を受けて、冒険者ギルドも迂闊に動けないとのこと。

 カイムがティー達を連れて調査に出ても良いのだが、その間、領内で暴れまわるワイバーンを対処できなくなってしまう。

 完全な手詰まり。

 襲ってくるワイバーンを倒して減らしていくしか、方法はないのだろうか?


「まあ、俺達だけで考えていても仕方がないな」


 ミリーシアやアトラウス伯爵に相談して、今後の対処は決めてもらうとしよう。


「とりあえず、俺はルーズベンの町に帰るとしよう」


「我々は生存者を安全な場所まで連れていきます。領主様への報告をよろしくお願いいたします」


「ああ、後は頼んだ」


 カイムは騎士達に後始末を任せて、オーズドの町を後にした。

 この町に来た時と同じように【朱雀】を使用して天を駆け、ミリーシア達を置いてきたルーズベンの町へと戻っていくのだった。


11/1

HJ文庫より『毒の王 2 最強の力に覚醒した俺は美姫たちを従え、発情ハーレムの主となる』が発売いたします!

メロンブックス様で購入いただけると、をん先生描き下ろしB2タペストリーが付いてきますので、こちらもよろしくお願いします!

挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
書籍6巻、好評発売中!
画像をクリックすると作品紹介ページにジャンプします
i000000
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ