オマケSS 街道の初夜(?)
書籍発売を記念してオマケ小説を投稿させていただきます。
カイムがミリーシアとレンカと会ったばかりの頃のエピソードになります。
それはカイムがレンカとミリーシアと出会った日の夜の出来事である。
「スウ……スウ……」
「クー……」
「…………眠れねえ」
深夜、野営のために張ったテントの中でカイムがつぶやく。
テントの真ん中に横になったカイムであったが、その左右にはそれぞれ見目美しい女性が眠っていた。
右側に寝ているのはミリーシア。金髪をなびかせた可憐な女性であり、細身でたおやかな雰囲気なわりに身体はちゃんと成長している。
左側に眠っているのはレンカ。赤髪を肩の上で揃えた利発的な女性であり、鍛え上げて筋肉をしっかりと付けた肉体にはミリーシアよりも一回り大きな果実を実らせている。
タイプは異なるものの、いずれも凄まじいまでの美少女と美女であった。
二人は左右からカイムを挟み、無意識なのか両腕に抱き着いている。
おかげでたわわに育った乳房がしっかりと押しつけられ、カイムのことを魅了してくる。
三人が『川』の字になって眠っているのには理由があった。
隣国の帝国を目指して街道を旅していた彼らであったが、野営するにあたってミリーシアがカイムに一緒に寝て欲しいと頼み込んだのだ。
それというのも、ミリーシアは数時間前まで盗賊に拉致・監禁されており、あと少しで貞操を奪われそうな目に遭っていた。
護衛のレンカもまた同じ目に遭わされていたが、やはりお嬢様育ちの少女には耐えがたい出来事だったのだろう。
命の恩人であるカイムに隣で寝て欲しいと頭を下げてきたのである。
本来であれば護衛のレンカが止めるところだが、弱々しく震えるミリーシアの姿に思うところがあったのだろう。カイムと同衾することを許可したのであった。
「んんっ……カイムさん……そんなところを触ってはダメです……」
「クー……んあっ、やめろ。尻を叩くな……くっ、殺せえ……」
「……どんな夢だよ。お前ら、本当は起きてるんじゃないか?」
やけにハッキリと寝言を口にする二人にカイムは顔を引きつらせるが、左右から抱き着いてくる二人が眠っているのは間違いなかった。
怖がっていたミリーシアはまだしも、カイムに頑なな態度をとっていたレンカまでもが抱き着いてくるのは予想外である。気丈に振る舞っていても、盗賊に捕まったことがトラウマになっているのかもしれない。
「頑張れ、俺……耐えろ、俺……」
カイムは『毒の女王』と融合することで肉体的に成長しており、それには『性』の成長も含まれている。
腕を包み込んでくるマシュマロのような感触に反応して、どうしても身体の一部が固くなってしまう。
こんな状態が一晩中続くだなんて蛇の生殺しである。いっそのこと、こみ上げてくる熱い衝動に身を任せてしまった方が楽なのかもしれない。
「ム……?」
カイムが理性と本能の狭間で揺れていると……ふとテントの外から不穏な気配を感じた。
カイムは安堵が半分、残念が半分で溜息をついて、二人の腕をそっと引き剥がす。
「んんっ……」
「悪いな、どうやら来客のようだ」
むずかるミリーシアの手を軽く叩いてから、カイムはテントの外に出た。
事前にテントの周りには『魔物除け』を撒いている。魔物が嫌がる匂いを放つ液体であり、旅の必須アイテムとされている薬品だ。
「魔物は追い払えても、馬鹿な人間には効果なしか」
「ッ……!」
テントから出てきたカイムの姿に、今まさに夜襲を仕掛けようとしていた男達が驚きの表情を浮かべる。
いつの間にか、テントの周りには武装した男が数人集まっていた。
粗野な服に身を包み、武器を構えた男達にも息を潜めて襲おうとするだけの知恵はあったようだが、如何せん殺気が隠しきれていない。
「昼間の盗賊の残党か? 仲間の仇討ちでもしにきたのか?」
「俺達は……!」
「いい、喋るな」
カイムは名乗ろうとした男の間合いに踏み込み、目にも止まらぬスピードで顔面を掴む。
「…………ッッッ!?」
声が出せないように口をふさぎながら、魔力で生み出した毒を体内に流し込む。
男がガクガクと激しく痙攣しながら地面に倒れ、そのまま絶命する。
「連れが寝ているんだ。あまり五月蠅くするなよ」
ミリーシアとレンカは盗賊に薬を飲まされ、発情させられていた。カイムの毒によって中和したことでどうにか助かったが、体力も気力もかなり消耗している。
今晩くらいはゆっくり眠らせてあげたい。安眠を邪魔する人間は排除しなければいけなかった。
「テメエ……!」
「やりやがったな!」
「だから騒ぐなって言っただろうが……静かに、音もなく死んでくれ」
「ッ……!」
叫びながら襲いかかろうとする男達……おそらく、昼間にミリーシアらを襲った盗賊の残党らしき連中をカイムは淡々と片付けていく。
できるだけ音を立てず、叫び声も上げさせず……眠っている二人を気遣って静かに抹殺していった。
当然のように翌日は寝不足になってしまったが……そのおかげで、二人の眠り姫の安眠は無事に守られたのである。
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