僕は虎《かのじょ》を愛してる
新年一発目、書き上げた恋愛小説です!
よろしければ是非ご一読を(/・ω・)/
僕が好きな動物は「虎」だ。
なんでかっていうと、まずかっこいい。
そしてライオンと違って獲物は自分で狩るし、ネコ科特有の可愛さをかけもつまさに理想の動物だ。
ただ一つだけ苦手なことがある。
「ああ、怠いなー、、、、」
本当に一つだけ、ただ一つだけ虎好きの僕が苦手なこと。
「あ、虎徹丸。ご飯まだ????」
「うるさいなぁ!!ご飯はさっき食べたでしょ!!」
「おーなーかーすーいーたー!!!」
「ああもう!わかったから少し待って!」
「わーい!愛してるー!!」
「うるさい!」
そう、僕が虎に対して一つだけ苦手なのはこの喋る虎だ。
彼女と出会ったのは僕が海外に動物の写真を撮りに行った際、重傷を負った彼女を助けた時だ。
今でもあの時の衝撃は忘れられない。
瀕死の重傷のくせして「楽して暮らしたい、、」などのたまっていたのを、、、、。
それからというもの僕は海外に国籍を移し、残していた貯金全てをはたいて 広場がある家を買って
彼女と暮らしている。
食費は馬鹿にならないが、喋れるおかげかポージングをお願いして僕が写真をとり、それを売って
生活費を稼いでいる。
箸をもってご飯を食べる写真は大人気となりその写真だけで100万円稼いだ時は僕と彼女は飛び上がって喜んだ。
「ねぇアイリス」
「ん?何虎徹丸??」
「僕の隠してた黒毛和牛、、、、知らない?」
「、、、、、知らないよ?」
「そっか。じゃあその黒毛和牛が入ってた袋が君の近くにあるんだけど、説明いる?」
「、、、、、、、」
目線をめちゃくちゃに泳がせながら言い訳を考えているであろう彼女を見ながら僕は思う。
「こんの、バカ虎がぁぁぁぁぁ!!!!」
「うわぁぁぁぁごめんなさいぃぃぃぃ!!!」
これからも彼女とこんな毎日を過ごしていきたいと。
「、、、、、、むにゃむにゃ」
「、、、、ふふ、可愛い」
虎徹丸の寝顔を見ながら私はつい微笑みを浮かべる。
まぁ、虎だから笑顔なんて作れないんだけど。
「ここの生活は、うん、やっぱりいいな、、、」
縄張り争いに負けて瀕死の重傷を負わされた私を必死に助けてくれたあの時のことは今でも忘れられない。
なんで「楽して暮らしたい、、、」なんて言ってのかはいまだにわからないけれど(笑)
それからというもの、私は満たされた毎日を送っている。
馬鹿みたいに笑い、心から信頼した相手と過ごす毎日は私の心を癒す。
けれど、そのせいで彼が、虎徹丸が周囲から非難と罵声を浴びせられていることを私は知っている。
動物愛好者と言われてものと投げつけられ、彼の親族からは結婚はまだか?人間の相手をしないから非常識なんだ、恥を知れ!などと罵声を浴びせられる。
彼の本業の写真活動も私のせいで非難を浴びている。
合成だの偽物だの、死んだ虎をはく製にして写真を撮っているなど様々だ。
そのたびに強くない彼の心は傷つき、壊されていく。
夜、寝るたびに彼が泣きながら寝ているのを私は知っている。
だからこそ、私にはやるべきことがある。
この生活を守るために、何より、、、、愛する虎徹丸のために!!!
日が昇る。
太陽が顔を出し、温かな日差しが地球を照らしていく。
そして私はその日差しを背中に感じながら広大な荒野、私と虎徹丸が出会った場所に来ていた。
「ここに来るのも久しぶりだなぁ、、、」
「、、、、、貴様、どのような顔をして戻ってきた?」
周囲には私と同じ、大勢の虎が周りを囲んでいた。
「お久しぶり、長老。ちょっと野暮用があってね」
「ふん、貴様に今更長老と呼ばれる筋合いはない。何故戻ってきた?」
眼光だけで私を殺しそうな視線に耐えながらも私は口を開く。
「前に長老言ってたよね?過去に人間になった仲間がいるって」
「貴様、、、、まさか」
「うん、そのまさかだよ。私はその秘薬を奪いにきた」
そう、私達は他の虎達とはちがい、人間の言葉も喋れるのはこの秘薬のおかげなのだ。
ただし数は少ないうえ、人間の言葉を喋れるようにするだけならこの秘薬を舐めるだけでいいのだが。
人間に変化するとなると話が変わってくる。
数少ない秘薬を体内に吸収するしかないのだ。
そして当然、、、、
「それは我が一族を敵にまわすということで間違いないな?」
虎達の敵意が私に向く。
唸り声をあげ、今にも襲い掛からんとしている。
それでも私は不敵に笑う。
「間違いないよ。だって私は」
なんで命をかけてこんなことをするのか、、、決まっている。
「愛する彼との生活を邪魔されたくないから!!!!!!!」
私は咆哮を上げてとびかかる。
「八つ裂きにしろぉぉぉ!!!!!」
「やってみろやぁぁぁぁ!!!!」
私と虎の一族がぶつかり合う。
「はぁ、はぁ、、、、、どこだ、どこに行ったんだよアイリス!?!?」
今朝起きたら朝ご飯のお肉にも手が付けられていなかったから不思議に思って探してたけど見つからなかった。
どんなに探しても見つからなかった。
不安に押しつぶされそうな心を奮い立たせて僕は無い知恵を絞りだし、彼女と出会ったこの荒野に来たのだが、彼女はどこにもいない、、、、。
「アイリス、、、、どこにいるんだ、、、、」
「グルルルル、、、、」
「っ、アイリス!?、、、、いや、違う」
虎の唸り声を聞き、即座に振り向くとそこにはアイリスと同じ姿をした虎がいた。
アイリスと同じ仲間なのだろうが僕の心臓は警告を発していた。
食われるかもしれない、、、その恐怖が僕の頭を支配する。
しかし、、、
「来い、、、」
「、、、、え?」
低い声が僕の鼓膜に突き刺さる。
虎はそのまま踵を返し歩いていく。
しばらくボーっとしていた僕だったが慌ててついていく。
彼女の生い立ちについて、過去についてこれまで一切触れていなかったが、もしかして彼女達は全員喋ることができるのだろうか?
頭の中であれこれ考えながらついていくと大勢の虎達の群れに合流した。
全部で20頭はくだらないその数に僕は怯えながらついていくとそこには
「、、、、あい、りす、、?」
そこには、血まみれで倒れるアイリスを見つけた。
「アイリス!?!?どうして、ああ、、こんなにも傷が、、、、どうして!?!?」
「こ、てつ、、まる??」
「アイリス!!!」
途切れ途切れの声を出しながらも意識をもっていたアイリスに安堵する僕。
と、同時に言いようもない怒りが頭を支配する。
「なんでアイリスにこんなことを!!仲間じゃないのか!?」
「黙れ小僧!そもそもの原因は貴様にある!!」
「、、、、え?」
まさかの切り替えしに間抜けな声を出す僕に憤怒の形相で虎が声を荒げる。
「貴様が我が一族の仲間をたぶらかし、あまつさえ人間になりたいなどとほざいたせいで我らに粛清されたのだ。それもこれも、貴様というゴミが我が一族を、娘をたぶらかしたからにならん!!!」
「僕の、せい、、、、」
人間になるなど気になることは多々あったが、何よりも僕のせいだということが心に突き刺さる。
「僕が、僕のせいで、、、、そんな」
「ふざ、けんなクソじじぃ、、、、!」
アイリスが傷だらけの身体を無理やり起こし、睨みつける。
しかし満身創痍の身体からは夥しい血が溢れ、今にもその微かな命が崩壊しそうだ。
「ダメだアイリス!!これ以上動いたら君が死んじゃう!!!」
「、、、、虎徹丸、私ね。幸せだったよ。毎日バカみたいなこと言いあって、笑いあって、、、、幸せだった」
「それなら今まで通りでよかったじゃないか!これまで通り、いつものように、、、、!!!!!」
涙をボロボロこぼしながら僕は彼女に訴えかけるが、アイリスは静かに首を振る。
「ダメだよ。だって私は欲張りだからなんでも欲しがっちゃう。だからね、だから私は」
虎徹丸から視線を外し、目の前の長老に集中する。
「人間になって貴方と結ばれたい」
「アイリス、、、、」
アイリスの想いに、覚悟に、僕は言葉を失い呆然と立ち尽くす。
「長老、ここは一騎打ちで決着としませんか?」
「その満身創痍の身体でか?」
「ええ、いい条件でしょ?」
「、、、よかろう、我に勝利することができたのならばその願い、叶えよう」
「約束、違えるなよ長老ぉぉぉぉ!!!!」
「黙れ小娘がぁぁぁ!!!」
巨大な身体をぶつけ、虎同士による激突が始まった。
なんとか食らいつくアイリスだがいかんせん、満身創痍の身体では力負けしすぐさま押され始める。
「くっ、このぉぉぉ!」
「甘いわ!」
地面に倒され喰らいつかれそうになるも何とか必死に耐えるアイリス。
僕はそれを見ていることしかできない。
野生の本能をむき出しに戦う姿に、僕は、僕は、、、、、!!
「人間、貴様はそれでいいのか?」
「え?」
言葉が僕に突き刺さる。
「目の前で伴侶が死力を尽くし、己が為に命を燃やしているというのに、貴様はそれでいいのか?」
僕は静かに、ゆっくりとその言葉を飲み込み、涙を吹く。
「おのこなら立ち向かえ。勇気を絞り出し、己が魂に恥じぬ行いをしろ」
「はい!!!」
「人間も動物も同じ生き物だ。ならば立ち向かえ!!愛するものを救え!!!!!」
「はい!!!!!」
僕はアイリスの首元に嚙みつこうとする長老に向かって走り出す。
怖いものはない、僕を奮い立たせる君が、君への想いがあるから。
「うおおおおおおおお!!!!!」
僕は拳を思い切り長老の顔面に突き刺す。
いくら虎といえども生物の弱点である鼻を殴られればたたらを踏む。
「ぐぬっ!?」
「っ!おらぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
アイリスはその隙をついてマウントポジションから逃れ襲い掛かるが相手は長老、百戦錬磨の手練れ。
「甘いわ!!」
強烈な猫パンチならぬ虎パンチに殴られるアイリス。
「覚悟はできているんだろうな、小僧おおおおおおおお!!!!!」
巨大な牙が僕めがけて襲い掛かる。
けれど、今の僕に怖いものはない。
あるとすれば、それはアイリスを失うことだ!!!!!
「ぐっ、、、、!!!!」
「!?貴様、わざと腕を!?!?」
深々と僕が犠牲にして盾にした左腕に牙が食い込む。
けれど、あらかじめ覚悟をして犠牲にした虎徹丸の眼は死んでいない。
「いまだ、アイリス!!!!!」
「ナイスダーリン!!!!」
決死の虎徹丸の覚悟に歓喜しながらアイリスは渾身の虎パンチを長老の頭に放つ。
生物において重要な、けれど最も弱点をもつ頭部へのダメージ。
ボクサーがなぜ顔を殴るのか、それは相手の脳を揺らし倒すことができる唯一の急所。
当然脳が揺らされる経験があるはずもなかろうこの野生で、長老は初めての脳震盪を起こす。
「ぐはっ、し、視界が、、、揺れている!?」
そのまま地面に倒れこむ長老にアイリスは頭を押さえつける。
「私達の勝ちだ、長老」
「ぬぬ、、、、認めよう、貴様らの勝利だ」
長老が敗北を認めた瞬間、アイリスが雄たけびをあげる。
それに釣られた他の虎達も一斉に咆哮をあげる様はまるで祝福のようだった。
「アイリス!」
「虎徹丸!!、、っと、あれ?」
「アイリス!?」
血を流しすぎたせいかアイリスはそのまま横向けに倒れる。
「やったよ!勝ったよ僕たち!!」
「うん、これで一緒にいられるね虎徹丸」
「うん、うん、、、、!」
感極まった虎徹丸はそのままアイリスの鼻にキスをする。
ドクンッ
「、、、か、身体が、あつい、、、、!!」
「あ、アイリス!?」
突如、アイリスの身体から膨大な煙が溢れ出す。
その勢いは虎徹丸を吹き飛ばし、そのままアイリスを覆いつくす。
しばらくして煙は止み、そこにいたのは
「「え?」」
美女がいた。
「こ、虎徹丸、、、もしかして私、、、、、」
「もしかして、、、、アイリス???」
「やったぁぁぁ!!私人間になったよぉぉぉ!!!!」
「え、ちょ、どわぁぁぁ!!?!?!」
裸のまま飛びついてきたアイリスに困惑しながら倒れこむ虎徹丸。
「と、とりあえず服着て服!ほら!!」
「ええー?いいじゃん別にぃぃ!!」
「いいから!!!!」
「はーい」
しぶしぶながら虎徹丸から受け取った服をはおるアイリス。
「ゴホンッ、虎徹丸、と言ったか?」
咳払いをしてこちらに話しかける長老。
脳震盪も収まり、今は立ち上がっている。
「え、あ長老!?はい、虎徹丸です!!」
「あ、長老!どういうことこれは!秘薬がないと人間になれないんじゃなかったの!?」
「騙して悪いが、それは嘘だ」
「はぁぁぁぁ!?!?!」
長老の言葉に切れるアイリスだが、長老は楽しそうに続きを話す。
「まず秘薬などというものは存在せぬ。それはまやかしだ。我ら一族は単純に種として他の虎より優れているだけだ」
「何それ!?私の努力は!?!?!」
「放蕩娘への仕置きだ馬鹿垂れが」
「クソじじぃ!!息の根止めてやる!!」
「虎徹丸よ、こんなバカ娘だが、なにとぞよろしく頼む」
「え、いやそんな、こちらこそというかなんというか、、、」
娘を心配する虎、もといアイリスの父親の眼に僕は息を吸って宣言する。
「必ず幸せにします」
「、、、、うむ、よいおのこの眼だ。また会おう、婿殿よ」
そうしてアイリスの父親についていく虎達。
しかし去り際に一頭だけ、僕の方に近づいてくる。
「あ、あなたは!」
「、、、、よく頑張ったな」
「あなたのおかげです!ありがとうございました!!」
「って、兄貴じゃん!」
「え!?」
「、、、、ではな」
そしてすべての虎がいなくなり、残ったのは僕とアイリスだけ。
改めて二人きりになると緊張が顔を出すが、僕はこれだけは言おうと口を開く。
「アイリス!!」
「子供は3人は欲しいなぁ!あと虎徹丸の家族にも会いたい!!」
「ぶふっ、こ、子供は気が早くないかな!??!あと僕の家族に会うの!?!」
「だってそれが私の夢なんだもん!」
眩く、輝かんばかりの笑顔に僕の心が満たされる。
ああ、やっぱり僕は、、、、、。
「アイリス」
「なに?」
「愛してる」
「私もだよ!大好き!!」
やっぱり、僕は虎を愛してる。
これからも色々書いていきますのでどうぞよしなに!!