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優しい世界

 



 ◆(かえで)視点




「ちょっとエルちゃん!?」

「ぇぇえええええ!?」


 私と葵ちゃんがエルちゃんを追い掛けるもエルちゃんはステージへ上がってしまいました。みくるちゃんのおもちゃの杖を持って真剣な表情を浮かべています。


【お、おい。あの可愛い女の子は新キャラか?】

【まぢかよ……でも、あの杖はみくるちゃんの杖……】

【うひょおおお!! やべ、興奮しそう】

【あの子めっちゃ可愛いくない?】

【ロリエルフのコスプレ、キタァァァ!!】

【尊い……うぐっ……】

【お、おい! ここに心肺停止してる奴が居るぞ!】

【AEDは何処だ!?】

【天使が舞い降りた……俺、あの子の推しになるぞ!】


 周りが騒然としています。オタクの格好をした人達は、皆んな一斉に手を合わせて拝み、女性客からは黄色い声が上がっていました。


「エルちゃん! 早く降りて来て!」

「邪魔したら駄目だよ!」


 私と葵ちゃんは、ステージの下からエルちゃんに声を掛けるもエルちゃんはニコッと笑みを浮かべて杖を構い始めたのです!


「お、お姉ちゃん! 私エルちゃんを抱っこして連れて来るよ!」

「待って下さい! あの子の御家族の方でしょうか?」

「あ、はい! この度は、妹が大変ご迷惑をお掛けしてすみませんでした!」


 私は慌てて駆け寄って来たスタッフさんに深く頭を下げて謝りました。葵ちゃんも私と同様に頭を下げます。しかし、ここでスタッフさんは、何とこのまま劇を進めると言い始めたのです! 


「ここはあの子に任せて見ましょう……監督がこのまま続行せよとの事なのです」

「ええぇ……エルちゃん大丈夫かしら? 何でステージに上がっちゃったのかな?」


 やっぱりエルちゃんを私の膝の上に乗せてしっかりと抱いておくべきでした……まさかこんな事になる何て1ミリも思っても見ませんでした。


【頑張れ! 幼女ちゃん!】

【頑張れ! 敵なんて倒しちまえ!】

【スパチャがあれば満額投げたい気分だぜ!】

【幼女ちゃん! 行っけええええ!!】

【おい皆んな! 声援が足りねぇぞ!】

【洗練されたオタクの応援を見せ付けてやろうぞ!】

【オタダンスで応援するぜ! キエェェェエエェェェぇぇえ!!】

【誰が奇行種の物真似しろと言った!こうするんだよ!】

【うおおおおぉ幼女ちゃん♡】

【はぁ……はぁ……♡ ぺろぺろぺろぺろぺろぺろ!!】


 何この熱量は!? 会場の皆がエルちゃんを応援してる……エルちゃんが怯えながらも一歩ずつ敵の方へと歩んで行きました。



 《ごほんっ……定時には必ず帰る! 嫌いな言葉は休日出勤と残業! 魔法少女みくる華麗に参上!》

 《―――――――――!?》

 《さあ、我が妹よ。私と共に悪を滅しましょう!》

 《なぬ!? 魔法少女みくるに妹が居たのか!?》


 エルちゃん……多分何が何だか分かってない顔してる。しかも、みくるちゃん役の人気声優、南雲飛鳥ちゃんがアドリブでエルちゃんの事をみくるちゃんの妹と言う設定に……


【みくるちゃんきたあああ!!】

【飛鳥ちゃんこっち向いて!】

【みくるJrの爆誕よ!】

【俺の顔にサインして欲しい】

【あんらぁ? あちしがお尻にサインしてあげるわね♡】

【や、やめろ……やめてくれ! ぎゃあああああ!?】

【幼女ちゃんとみくるちゃんに踏まれたい……】

【おいおい、SNSのトレンドに幼女ちゃんが!】

【今日からあの幼女ちゃんの親衛隊の結成だ!】

【その名も幼女ちゃんに踏まれ隊!】

【幼女ちゃんとみくるちゃん抱きたい!】


 これはもう終止符が付きませんね。エルちゃんを信じて見る事にしましょう。信じる事も姉の務めです。


 《こちょこちょ男爵! 黒炎竜(こくえんりゅう)ニート田中! 3人がかりで潰すぞ!》

 《《ははっ! 大魔王ハローワーク様!》》


 あぁ……エルちゃんが泣きそう。抱きしめてあげたい。


 《幼女ちゃん、力を合わせて敵を倒すわよ!》

 《あ、あぅ……》

 《ぐはっ……か、可愛い♡ 尊いわね……》


 これは行けません! みくるちゃん役の声優さんが、エルちゃんの可愛さによってもう目がハートです。会場の盛り上がりも異常と言って良い程に熱気に満ち溢れています!


 《喰らえ! こちょこちょ攻撃だ!》

 《――――――!? ぐぬぬっ……ん!》


 こちょこちょ男爵に向かって、エルちゃんは思い切り杖を振り下ろしてお互い接戦と言って良い程の戦いです! こちょこちょ男爵の役の人も空気を読んでいるのかエルちゃんの攻撃に合わせています。


【てぇてぇ……】

【尊い……】

【この光景見ながらご飯15杯は行ける】

【おいおい、そんなに食べたら太るぞ?】

【大丈夫だ。もう太ってる……】

【oh…………】

【良いぞ! 頑張るんだ幼女ちゃん!】

【私、母性に目覚めたかもしれない……】

【頭なでなでしてあげたい……抱きしめたい♡】

【持ち帰りしたい……】

【こちょこちょ男爵羨ましい、俺も殴られたい……】


 会場の変態達……お客さん達は、子猫を愛でる様な暖かい視線でエルちゃんの事を応援しています。エルちゃんの人気はそこらへんの芸能人よりも凄いかもしれませんね。


 《ぎゃあああああぁぁぁ……!?》

 《こちょこちょ男爵! お主やりおるな……おい! 黒炎竜ニート田中! ボケーッと突っ立て無いで早く攻撃するんだ! 働け!》

 《ぐはっ……ニートに働けと言うのは……む、無念》

 《クソ! ニート田中に働けと言うのは酷だったか……吾輩の四天王を2人も倒すとはな。正直想像以上だったよ……》


 こちょこちょ男爵はともかく、黒炎竜ニート田中は、大魔王ハローワークの攻撃によりノックダウンです。ニートに働けと言う言葉は、確かにキツイのかもしれません。てか、敵陣営弱過ぎないかしら? 大丈夫?


 《おのれ……こうなれば、吾輩の奥義【世界の消滅(ワールド・エンド)】を使うしか無いな!》

 《なっ!? 我が妹よ! ここは連携して……え? あれ?》

 《うぅ……ぐすんっ……》

 《幼女ちゃん!? どしたの!? 大魔王が怖かったのかな? よしよし〜怖くないですからね〜》

 《あ、あの……何かすみません……》


 あぁ……やっぱりか。何となくエルちゃんが泣いてしまうのではと予想していましたが、本当に的中してしまいました。南雲さん……すみません。私の妹がご迷惑を……


【幼女ちゃんが泣いている!】

【大魔王! 幼女ちゃん泣かしたら分かるよな?】

【大魔王空気読めよな!】

【早く幼女ちゃんの為にも負けなさい!】

【幼女ちゃん大丈夫やで、俺達が付いてるからな♪】

【みくるちゃんが幼女ちゃん抱いてる……】

【これは写真に収めるしかないわね!】

【俺も抱いて良いかな?】

【捕まるぞ?】


 何だか大魔王さんが可哀想になって来ました。後ですみませんと謝りに行こう……


 《うぐっ……》

 《幼女ちゃん今よ! その杖で大魔王を滅ぼして!》

 《……んにゅ?》

 《ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!?》


 出ました! エルちゃんの必殺技、上目遣い! これを見たら大抵の人は一発KOです! 私も家で何度この必殺技でやられたことやら……


 《えいっ!》

 《グフォッ……!? わ、吾輩が敗れるだと……無念……》


 エルちゃんが大魔王ハローワークを倒した直後観客席や周囲の人達から大きな暖かい拍手と歓声が鳴り響きました。エルちゃんは目を大きく見開いた後にぴょんぴょんと飛んで喜んでいます。可愛いです♡







 ◆みくるちゃん役・南雲飛鳥 視点





「私の出番、ほとんど無かった……」


 でも幼女ちゃんが可愛いかったので全て良し!



こんばんみー! 二宮です!


ブクマと高評価ありがとうございます! 私の拙い作品を読んでくれて感謝です!



少しでも面白い、続きが読みたい、と思っていただけましたら、ブックマーク登録や、下の☆☆☆☆☆でポイント評価をいただけると嬉しいです。感想も頂けると作者は泣いて喜びます!


書く意欲に繋がりますので、よろしくお願いします!


次回は【変態掲示板③】の予定です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ツッコみとテンポの良さ、優しい世界に加えて不憫な大魔王に吹きましたw  あ、でも美幼女の為なら本望か(*´-`)
[良い点]  更新されたタイミングで見つけて一話から一気に読んだら、一話毎の濃度が濃くてびっくり。。  一話毎の文字数少ないのにキャラが濃いので一話毎の満足感が大きいです。。 [気になる点]  偶に出…
[一言] かわいい現実でもあり得そう
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