至高の変態達
◆女子大学生 優花視点
「エルちゃん美味しいですか?」
「――――――!!」
「うふふ……コーラシュワシュワするもんね。エルちゃんはコーラ初めてなのかな?」
それにしても……エルちゃんちょろすぎませんか? さっきはあんなにも警戒心剥き出しだったのに、今ではそんな様子は見受けられません。小さい子はみんなこんな感じなのでしょうかね? まあ、私としては懐いてくれる方が嬉しいですけど♪
「さてと……エルちゃんの親御さんを探すとは言ったけどこの後どうしよう。真奈はどうすれば良いと思う?」
「うん……闇雲に探しても見つから無いだろうし……やっぱり交番に行った方が良いんじゃない? ここから距離はあるけど」
「やっぱりそれしか無いよね……それが確実ね」
エルちゃんを交番に連れて行こう。ここから歩いて40分くらい掛かるけど、その方が確実ね。エルちゃんを私が抱っこして行けば問題無いかな。
「んぅ……ふにゅ!」
「エルちゃん? ジュースはお金入れないと出て来ないよ?」
「――――――!!」
エルちゃんが自販機のボタンをポチポチと押しながら首を傾げています。この子は何でこんなにも可愛のでしょうか? 隣りで真奈が頬を赤くしながら悶えております。真奈とは長い付き合いですが、友人のこんな姿は初めて見ましたよ。目が完全にハートです。エルちゃんを見つめるその姿はまさに変態の鏡ですね。
(エルちゃん……お願いだから大人しくしてて、可愛い過ぎて本当の変態不審者さんが襲う前に私が襲いたくなっちゃうよ! いえ……エルちゃんは何もしなくても可愛いわ!)
私はエルちゃんの小さなおててを優しく握りました。柔らかくてモチモチスベスベで、もう何もかもが最高です! 今ならロリコンの気持ちが分かります。私もロリコンになってしまいそうです……
「お姉さんがお巡りさんの所へ連れて行って上げるからね♪ エルちゃんの家族の方と会えるといいね!」
「んぅ……うぷっ」
「あらあら、コーラがぶ飲みしちゃうからだよ」
私がエルちゃんと手を繋いでいると隣りから羨望の目でこちらを見ている真奈が居ました。
「優花ずるいよ! 私もエルちゃんのきゃわいいおてて繋ぎたい!」
「分かったから、落ち着いて! じゃあ3人でおてて繋ぎましょう!」
エルちゃんは片手におもちゃの杖を持って居ますが、私が鞄の中に入れて持ってあげよう。持ちながら歩くと恐らく邪魔になるでしょうから。
「エルちゃん、ちょっとごめんね。エルちゃんの大事なおもちゃ私が持ってあげるからね♪」
「――――――!?」
「え、エルちゃん? お姉さん別にエルちゃんのおもちゃ取ろうとしてないよ? ちゃんと返すから……ね?」
言葉が通じないと言うのは本当に不便ですね。エルちゃんが涙目になりながらおもちゃの杖を大事に持っています。見てるこちらが物凄く罪悪感を感じてしまいます……
「ねえ、優花。この子の持ってるおもちゃの杖って……もしかしてあれじゃないかしら!?」
「魔法少女みくるちゃんのやつじゃないの?」
「そうなんだけど、ここ見てよ! 私も気が付かなかったけど、この形状……デザイン……間違いない。特注限定版、しかも幻の0番の杖だよ!」
私は魔法少女みくるちゃんを見た事無いので分かりませんが、真奈は魔法少女みくるちゃん毎週みてるくらい好きだと言うのは知っています。隠れオタクみたいな所がありますからね……しかし、このおもちゃの杖がそんなにレアな物だとは……
「これ値段結構するの?」
「しかもこれ、プレミアムよ……この伝説の杖を欲しい人達は沢山居るわよ。だって私も欲しいもん! 現在の相場は約650万よ!」
「650万!? こ、こ……このおもちゃが!? 何で……何でそんなに値段するのよ!? ありえないわ……」
真奈に詳しく話しを聞いてみると、この杖のおもちゃは中身が見えない箱に入っており、全部で30種類の杖がランダムで封入されているそうだ。しかも1つ7980円と高価で、リッチなおもちゃである。
普段は売り切ればかりで普通に買う事も難しいらしい。その中でも幻の0番と呼ばれるシークレットが存在し、封入率も恐ろしく低く手に入れる事は容易では無いそうだ。そして、0番の中でごく稀に出ると言われる素材がゴールドやプラチナで出来ている特別プレミアム仕様と呼ばれる伝説の杖があるらしい。
(そして、エルちゃんが持ってる杖が……特別プレミアム仕様の魔法少女みくるちゃんの伝説の杖……ごくりっ)
このおもちゃの杖1つだけで、最早財産だ。こんな恐ろしい物をエルちゃんが持ち歩いてたら、間違い無く危ない事件に巻き込まれるかもしれない。世の中は善人ばかりではないのだ。悪い人達も多数いるのが現実である。
「んぅ?」
「「…………」」
おもちゃの杖をもし、エルちゃんが落として傷を付けたり壊してしまったら……この子の親御さんに何て言われるのだろうか……もし弁償してくれと言われでもしたら……
「「650万……ごくりっ」」
私と真奈の声が見事に重なりました。思っている事はどうやら同じ見たいですね。エルちゃんと伝説の杖……
「エルちゃんを守りつつこの伝説の杖も傷も1つも残さぬように……」
「――――――! ――――――あっ」
「エルちゃん!?」
エルちゃんが笑顔で杖をキャッキャと振って、エルちゃんの小さなおててから杖がスポンっと見事に飛んで行きました。その様子を見てた優花と真奈は顔を青ざめながら飛んで行った杖を身を呈して守ります。
「真奈!」
「任せて!」
真奈は上に飛んだ杖を両手で見事にキャッチして見せた。こうしてエルちゃんの伝説の杖は、壊れる事無く無事でした。
「心臓に悪い……エルちゃん、気を付けないと駄目ですよ?」
「――――――!!」
「よしよし♪」
エルちゃんの愛らしい笑顔を見てると全てが吹き飛んでしまいます♪ この子本当にお持ち帰りしたい……私の妹にしたい。
◆楓視点
「エルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃんエルちゃん……」
私は葵ちゃんと合流すべく、急いで家に戻りました。ここまで全速力で走ったのはいつ以来だろうか。私の頭の中はエルちゃんの事でいっぱいです。
「葵ちゃん! 帰ったよ!」
「お姉ちゃん! うぅ……ごめんなさい……私が付いていながら」
私は葵ちゃんの頭を優しく撫で撫でしました。私にだって責任はあります。葵ちゃん一人のせいではありません。
「警察にも連絡したけど、エルちゃんらしき小さな女の子の情報は無いみたい……警察の方でも捜索してくれるみたいだけど」
「そっか……手分けして探そう。エルちゃんが行きそうな場所……というかエルちゃん多分土地勘無さそうだから、何処で迷子になっているか分からないわね……あぁ、無事かしら……きっと今頃一人で震えながら泣いてるかもしれないわ」
葵ちゃんと二手に別れて、私は近場の公園や堤防、お店の方なども探して見ようと思います。
(早乙女キララさんにも聞いてみよう。時は一刻を争う……)
私はキララさんの明智商店に電話を掛けました。電話に応対してくれたのは、百合好きの同士である一ノ瀬 奏さんでした。
「はい、明智商店でございますぅ〜」
「あ、お世話になっております。一ノ瀬 楓です。キララさんいらっしゃいますか!」
「おお! 楓ちゃん……さんですか! 待ってて下さい、店長は今お花摘みに行っています。直ぐ戻るかと」
そして少し待っていると早乙女キララさんが電話に出てくれました。
「あんらぁ? どうしたの楓ちゅわん〜」
「すみません、エルちゃんを見てませんか!?」
「ん? あぁ、楓ちゅわんの愛らしい妹ちゃんね。見てないわよん」
明智商店にも居ない……か。
「その、エルちゃんが行方不明でして……」
「ええぇっ……!? それは一大事じゃない!」
私は葵ちゃんから聞いた話しをキララさんに簡潔にまとめて話しました。キララさんは私の話しを親身に聞いてくれて、私は途中から涙を流してしまいました。エルちゃんに何かあったらと思うと怖くて涙が止まりません。
「エ"ル"ち"ゃ"ん"……」
「楓ちゅわん、落ち着いて。私達も協力するから、ね? 泣かないで。きっとエルちゃんも見つかるわよ!」
「す"み"ま"せ"ん"……あ"り"か"と"う"こ"さ"い"ま"す"」
キララさんと電話を終えた後、私は早速エルちゃんを探す為に走りました。空を見ると暗雲が立ち込めて来ています。これは大雨が降るかもしれませんね。早く見つけないと。
「キャッ……!? あちゃ……足挫いたかも……」
こんな時に限って……最悪です。転んで右足を痛めてしまいました。更に不幸は続きます。雨がポツポツと降ってきたと思えば土砂降りの雨が降って来たのです。私は会社に荷物をほとんど置いてきてしまったので、手元にはスマホ一つしかありません……傘も無いのでびしょ濡れですね。
「こんな事では挫けない……例え足が骨折しようとも台風が襲って来たとしても……」
私の脳内には愛する妹達の顔が過ぎります。私の大切な家族。エルちゃんとはまだ出会ってから日は浅いけど、そんなの関係無い。エルちゃんと過ごす時間は濃密で一つ一つがかけがえの無いものです。私の幸せはエルちゃんや葵ちゃんと一緒に居る事。
楓はびしょ濡れになりながら、足を引きずってゆっくりと歩を進めたのであった。この土砂降りの雨は、まるで楓の今の心情を表しているかのような天候だ。
◆早乙女キララ視点
「奏ちゅわん……今日はお店を閉めるわよ」
「店長……私もエルちゃんを探します!」
「ありがとね……私も本気出しちゃうわよん!」
キャンディーちゃん達を総動員しよう。エルちゃんはまだ幼い女の子。一人で出歩くには危ないわん、もしかしたら最悪の場合何か事件に巻き込まれている可能性があるわね。
「もしもしローズ? アタシだけど」
「キララお姉たまぁん! 尊敬するお姉たまの声を聞けて嬉しいわぁん! そうそう、こないだお姉たまにオススメして頂いた黒のラグジュアリーのおパンツ履いて外出したら、あらやだ! 意地悪な風さんが吹いて、あちしのメイド服のスカートが捲れてその付近にいたチェリーボーイ達が白目剥いて倒れたのよぉん〜あちしの魅力が上がったのかしらぁね?」
「ローズ落ち着いて! 今はそんなことより一大事なのよん!」
「一大事でございますか!? お姉たま、プロテイン飲み終わったらそちらへ向かいます!」
電話に出たのはローズと言うキララのオネエ仲間だった。ローズはキララの右腕にして、筋骨隆々の純白のメイド服を着た救いようの無い変態だ。
「今日は全店ゲイバーはお休みよん! 緊急事態が発生してね。葵ちゃんの所の妹さん……エルちゃんが行方不明なの!」
「お姉たまが言ってたきゃわわな子ですね! 分かりました。四天王に招集を掛けましょう! お店の子達を総動員して捜索に当てましょう」
オネエ界隈で重鎮として名を馳せている早乙女キララ。そんな彼女?には4人の至高の変態達……四天王がキララを支え補佐している。
【おゲイの帝王ベリアナ】
【悩殺のローズ】
【男喰らいのステファニー♡】
【両刀のマルビッチ】
みんな方向性は違えど変態な乙女(男)達である。




