葵お姉ちゃん
◆葵視点
「んんっ〜配信楽しかった♪ あ、もうこんな時間か」
ただいまの時刻は、夜の7時38分です。今さっき西園寺モモネちゃんとしての配信が無事に終わりました。途中でちょっとしたハプニングはありましたけど、これでしばらくはVTuberとしての活動はおやすみですね。
「さてと、リビング行こ〜♪ 今日の晩御飯は何かな〜♪」
私は自室を出て、るんるん気分でリビングへと向かいました。
「あら、葵ちゃんお疲れ様〜♪ 丁度今晩御飯出来たよ〜♪ ハンバーグと野菜スープだよ〜」
「おお! 私の大好物のハンバーグだ! お姉ちゃんの作るハンバーグ大好き♡」
「あらあら、そう言ってくれると嬉しいわね〜♪」
「――――――!!」
私は自分の席について、辺りを見渡しました。正面には楓お姉ちゃん、お姉ちゃんの真横にはエルちゃんが目を輝かせながら料理を見ております。食卓の上には白いご飯、野菜スープにハンバーグが並んでます。飲み物はエルちゃんの大好きなオレンジジュースです。
「エルちゃん、涎垂れてるからお口ふきふきしましょうね〜」
「――――――♪」
楓お姉ちゃんがハンカチを取り出して、エルちゃんのお口をふきふきと拭いております。普段は凛々しい楓お姉ちゃんがこんなにもニヤニヤとだらけ切った顔をするようになったのは、エルちゃんのおかげなのかもしれませんね。楓お姉ちゃんはただでさえ妹に対して過保護なのに、最近ではその過保護に更に拍車がかかっている気がします。
「葵ちゃん! 今日この野菜スープの野菜をエルちゃんが丁寧に洗ってくれたんだよ♪」
「おぉっ! エルちゃんお手伝いするなんて、良い子だね♪」
「――――――!!」
エルちゃんはフォークを使って、ハンバーグをとても美味しそうにモグモグと食べております。私とお姉ちゃんでエルちゃんの食べっぷりをしばらく眺めておりました。お口一杯に詰めて、リスさんみたいに膨らんでおります♪
「エルちゃん、喉つまらせないようにゆっくり食べましょうね〜良く噛んでね〜んふ♡」
「――――――♪」
エルちゃん……妹に世話を焼く楓お姉ちゃん。とても微笑ましい光景です。そして私も人の事言えませんね……恐らく私も今、人には見せられないような表情をしているかもしれません。こんな尊い光景見たら仕方の無い事です。
「葵ちゃん、ご飯食べたらエルちゃんお風呂入れてあげてくれる?」
「お風呂! もちのろんだよ! エルちゃんと一緒にお風呂嬉しいな♪」
「お姉ちゃんはご飯食べたら、茶碗とあそこの隅に置いてある荷物片付けるわ」
視線を向けるとリビングの隅っこの方に何やら大量の荷物が置いてあります。何を沢山買ったのかな?
「また沢山買ったんだね」
「うん♪ エルちゃんの為に沢山買っちゃったのよ〜♪」
「なるほどね〜お姉ちゃん! 後でお風呂上がったら見せて!」
「良いわよ〜エルちゃんの喜びそうな物沢山あるからね! 後でエルちゃんに着せたい服もあるし……ぐふふ」
あ、お姉ちゃんのこの表情……きっと良からぬ事を考えてるんだろうな〜まあ、とりあえずご飯食べちゃおっかな。
「にゃ〜ん♪」
「あら、タマちゃんおかえり♪ ご飯準備してあるよ〜♪」
窓の方から白猫のタマちゃんが我が家に帰って来ました。エルちゃんもタマちゃんを見て、笑顔で手を降っております。どうやらエルちゃんもタマちゃんの事がお気に入りの様子です。
「――――――!!」
「あ! エルちゃん!? タマちゃんにお野菜あげるのはメッだよ!」
「――――――。」
エルちゃんが、自分のお椀に残ってる野菜スープの野菜をタマちゃんにあげようとしていました。タマちゃんは猫なので、人間の食べ物は食べれません。
「うふふ……エルちゃん? お野菜まだ沢山残ってまちゅね? 楓お姉ちゃんが食べさせてあげるよ♪」
「――――――!? ――――――!!」
「好き嫌いはだめでちゅよ? お野菜食べないと大きくなれません! はい、あ〜んして♡」
お姉ちゃん物凄く笑顔だけど……これは……完全に楽しんでいますね。エルちゃんは引き攣ったような顔をして、楓お姉ちゃんから差し出されたお野菜を食べていました。エルちゃんは半泣きで食べております。可愛いです♡
――――――そして30分後――――――
「にゃ〜ん♪」
「――――――!」
「「ご馳走様でした♪」」
私達はご馳走様をした後、お皿を台所へと運びました。楓お姉ちゃんは、早速お皿洗いの作業に入ります。エルちゃんは魔法少女みくるちゃんのおもちゃをタマちゃんに見せ付けてドヤ顔をしておりました。エルちゃんは本当に可愛いの暴力です! 私までロリコンになってしまいそうですよ!
「エルちゃん〜お遊びは後にして、葵お姉ちゃんと一緒に歯磨きとお風呂済ませるよ〜♪」
「――――――?」
「おもちゃはそこに置いとこうね〜よいしょっ!」
私は首を傾げているエルちゃんを抱っこして洗面所へと向かいます。そして廊下を歩いているとエルちゃんは急に慌て始めて、私の腕の中でじたばたと動きます。
「そんなに顔を赤くしてどうしたの〜? チュッ♡」
「っ!?」
エルちゃんの頬っぺたにキスをしたら、エルちゃんは借りて来た猫のように大人しくなりました。何で恥ずかしいのか良く分かりませんが、エルちゃんの年齢くらいならもっと甘えて来てもおかしくないお年頃の筈です。エルちゃんが甘えん坊さんだと言うのは知ってます。なので、もっと遠慮せずに甘えて来て欲しいのです。
「エルちゃん? もっと私や楓お姉ちゃんに遠慮せずに甘えて良いんだよ? よしよし♪」
「――――――。」
「は〜い、洗面所に着いたよ♪」
私は洗面所の棚から、新しい歯ブラシを取り出して早速エルちゃんに使い方を教えようとします。
「これはね〜歯ブラシって言うの。これでお口の中の歯を磨いて綺麗にするんだよ〜」
「んぅ? ―――!!」
エルちゃんは早速歯ブラシに興味津々です。私はエルちゃんの目の前で、歯磨き粉を付けて実演して見せます。
「エルちゃん、葵お姉ちゃんの真似してみよう! このチューブ上のものを歯磨き粉って言うんだよ〜♪」
「―――はみゅ……が……き?」
「うわ〜惜しいね! そう、これは歯磨き粉♪ こっちは歯ブラシ♪ まあ、ややこしいよね」
私がエルちゃんの目の前で実演して見せるとエルちゃんも私の真似をして、歯ブラシを口の中へと入れました。
「―――!? おぇっ!」
「あ、しまった! エルちゃんには子供用の歯磨き粉が良かったかな? ごめんね、苦かったよね?」
不覚でした……私達が使ってる大人用のやつだと苦味があります。エルちゃんには、まだ早かったですね。また子供用の物を買っておかないと行けません。
「エルちゃん、じゃあ……ぺっしてからお水でお口くちゅくちゅしよっか〜そしたら、葵お姉ちゃんが磨いてあげるね♪」
「おぇっ……ゲホッ……ゲホッ」
―――5分後―――
「はい、良く出来ましたね♪ エルちゃん良い子良い子だね〜♪」
「――――――。」
エルちゃんは少し疲れたような顔をしております。でも今後歯磨きはしないと行けないので、エルちゃんには頑張って覚えてもらいます。歯磨きをしっかりしないと虫歯で後に痛い思いをしちゃうので……まあ、しばらくは私や楓お姉ちゃんでエルちゃんの歯を丁寧に磨きますけどね。
「さてと……エルちゃん〜服ぬぎぬぎするからこっちにおいで〜♪」
「――――――!?」
「あっ! エルちゃん!? どこ行くの!?」
私は入口へと逃げようとするエルちゃんをがっしり後ろから抱っこして、逃げられないようにしてから服を脱がします。エルちゃんは恥ずかしいのか必死に抵抗していますね。そんな女の子同士、別に問題無いのに……
「――――――!? ――――――!!」
「はいはい♪ よいしょっと! じゃあ、私も脱ごうかな〜」
私が服を脱ぎ始めるとエルちゃんは、顔を真っ赤にして下を向いて、指をモジモジさせております。今なら楓お姉ちゃんの気持ちが良く分かります。エルちゃん……めちゃくちゃ可愛いすぎますっ! そして私も服を脱ぎ、生まれたままの姿になりました。
「はぁ……もう少し胸小さくならないかな? 大きいと肩凝っちゃうよ〜」
「――――――。うぅ……んんっ!?」
丁度その時、洗面所の入口の扉が大きな音を立てて開きます。
「やっほ〜い♪ エルちゃん、葵ちゃん! 楓お姉ちゃんが来ましたよ〜♪ 可愛い妹達とお風呂に入る為に来ちゃった♡ てへ♪」
何と突然洗面所のドアがバンッと開いて、お着替えを持っている楓お姉ちゃんが乱入して来たのです! 流石に私もびっくりしてしまいましたよ……
「お姉ちゃん、一緒に入るのは良いけど普通に入って来てね」
「は〜い♪ 私も直ぐに服を脱ぐね♪」
楓お姉ちゃんと一緒にお風呂に入るのは、久しぶりです。昔は良く一緒に入っては胸を揉まれたりしました。楓お姉ちゃん外では、クールで頼れるお姉ちゃんと言う感じなのですが、家ではそれはもう変態を極めております。そして私と楓お姉ちゃんとエルちゃんの3人で浴室に入りました。
「あらあら? 葵ちゃんまた胸大きくなった? お姉ちゃんがお胸チェックしてあげるよ♪」
「そんな事無いよ♪ 気のせいだよ〜それは遠慮しとくね!」
「ぐへへ……良いではないか良いではないか♪ きゃっ!?」
私はお姉ちゃんの顔目掛けて暖かいシャワーを掛けて、目を覚まさせようと試みたのですが、ここから楓お姉ちゃんの暴走は更にエスカレートして行きました。
「葵ちゃんのいじわるぅっ! お姉ちゃんの胸も揉んで良いから揉ませてよ〜えっ!? 良いの!? やったー!」
「何も言ってないのですけど!? ちょっ!?」
「葵ちゃん♪ ぐへへ……お背中流すついでに、背後から〜揉み揉み!」
楓お姉ちゃんは私の背後に周り、泡まみれのタオルで私の背中を優しく洗ってくれましたが、胸も沢山揉まれてしまいました。
「――――――。」
「エルちゃんごめんね〜じゃあ、私の上によいしょっと!」
私は裸のエルちゃんを自分の太ももの上に乗せて、暖かいシャワーをゆっくりと掛けてあげました。エルちゃんは気持ち良さそうに、目をトロンとさせております。そして私の背後では、楓お姉ちゃんがエルちゃんと私を見て興奮しております。今日のお風呂は大変な事になりそうです。
「あらぁ〜♪ エルちゃん気持ち良いでちゅか?」
「お姉ちゃん、エルちゃん何だか寝ちゃいそうかも」
エルちゃんは暖かいお湯が、気持ち良いのかウトウトしております。私とお姉ちゃんでその様子を暖かい目で見守っておりました。そして私達は身体や頭を丁寧に洗い終わったのですが、ひとつトラブルが発生しました。シャンプーを洗い流す際に、エルちゃんのおめめに泡が少し入ってしまいエルちゃんが泣いてしまったのです……もっと気を付けなければ行けませんね。
「さてと、そろそろみんな身体も綺麗に洗った事だし〜3人で湯船に浸かりましょう♪」
「3人だとちょっと狭いけど、たまには良いかな♪」
「あぁ……お姉ちゃんは妹と一緒にお風呂に入れて幸せです♡ エルちゃんも葵ちゃんも大好きよ!」
「うわあっ!? お姉ちゃんったら……危ないよ〜もう」
「――――――!?」
楓お姉ちゃんが私とエルちゃんに抱きついて来て、もう手に負えません。お姉ちゃんからの愛が凄まじいのなんの……
「ぐぬ……ぐぬぬっ!?」
「あ、エルちゃん大丈夫? ごめんね」
湯船の中には左右に私とお姉ちゃん、真ん中にエルちゃんが座っているので、エルちゃんは私の胸とお姉ちゃんの大きな胸に挟まれて顔を胸で押し潰されるような形となってしまいました。エルちゃんは表情がコロコロと変わり本当に可愛いくて面白いです♪
「お姉ちゃんの胸と私の胸で、エルちゃんのお顔サンドイッチしちゃったね。エルちゃん〜楓お姉ちゃんの胸はデカすぎるから私の所においで♪ 窒息死しちゃうから〜」
「葵ちゃんも大きいじゃん〜ちゃっかりエルちゃんを抱こうなんて、ずるいじゃない♪」
「ええ〜お姉ちゃんいつもエルちゃん抱いてるじゃん! 今は私が抱かせてもらうからね!」
いくらお姉ちゃんでも、譲れない戦いがあるのです! 私もエルちゃん抱きたいの! エルちゃん抱いてると心が落ち着くのです。これが癒しというのでしょうか。
「あらあら? じゃあ、3人でもっと密着しましょ♪ ね? よしよし♪」
「もう〜私はもう大人ですぅ! 頭なでなでは流石に恥ずかしいよぉ〜」
「うふふ……まあまあ〜しかし、3人でお風呂良いわね〜今度はタマちゃんも一緒に入れたら良いのだけど……タマちゃんはお湯苦手かしら?」
「タマちゃんなら大丈夫そうな気がするけどな〜お姉ちゃん……しれっと私の胸揉まないでよ」
お姉ちゃんは日に日に変態度が増してるので、もうやれやれですね。
「あっ! そうだ、あれ持って来てたの忘れてた」
「ん? お姉ちゃんどうしたの?」
「お風呂でもエルちゃんが楽しくお勉強できるように、平仮名の覚え表を持ってきたの♪」
そう言うと楓お姉ちゃんは、一旦洗面所に戻り再び平仮名表を浴室に持って来ました。
「エルちゃん〜お姉ちゃん達と一緒にあいうえおのお勉強少ししよっか♪」
「あぁ、お湯を掛けると文字の色が変わる特殊な紙のやつだね。壁に貼り付ける事が出来るやつ」
「そうそう♪ エルちゃん少し興味持ってくれると良いけどね〜」
楓お姉ちゃんが浴室の壁にあいうえお等と書かれた平仮名表をエルちゃんの目の前の壁に貼りました。エルちゃんは首を傾げて、全く分かって無さそうな様子です。
「葵ちゃん! 今日ね〜エルちゃんが私の名前を呼んでくれたんだよ! かえでねーたんって!」
「ええぇっ!? お姉ちゃんズルいよ! 私もエルちゃんに葵お姉ちゃんって呼ばれたいのに!」
何と……私が配信してる間にエルちゃんがお姉ちゃんの名前を……羨ましい限りです。
「――――――!?」
「うふふっ……エルちゃん驚いてるね〜お湯掛けたら、文字が赤色から青色に変わるんだね。よし、文字の前に私の名前エルちゃんに是非覚えて欲しいの♪」
私は自分を指さしながらエルちゃんに対して、自分の名前を何回か言ってみます。ジェスチャーで何とか伝わらないかあれやこれやと試してみました。
「エルちゃん、私の名前は〜葵お姉ちゃんだよ♪ さあ♪」
「んぅ? あにょ……きねいちゃ?」
「あ〜惜しいな♪ 私の名前はあおいお姉ちゃんだよ♪」
「んぅ……あにょきねいちゃ!」
「おおっ!? エルちゃん凄いね! 私の名前良く言えたね♪」
エルちゃんは天才です! 可愛い、尊い! ついに私も語彙力を失ってしまったみたいです。
「あらあら〜葵ちゃんもニヤニヤしちゃって〜」
「エルちゃん♡ ムギュっ!」
「聞いてない!?」
エルちゃんの全てが愛おしいです♪ 後で一緒に遊んであげよう♪ 何して遊ぼうか楽しみです♪




