【ロスモンティス】のフィーネとクリス、一ノ瀬家へ到着
◆【ロスモンティス】エメラルダ・クリスティーネ(葉月)視点
「うひょおおおお!? すごーい! クリスお姉様! 見てくださいよ! お庭に池がありますよ! この支柱、大理石で出来てる! エルちゃんのお家デカ!」
「こら、フィーネ落ち着いて」
やれやれ。一ノ瀬家に着いた途端これだよ……今日はエレナが他の用事があるとの事で、代わりに暇そうにしてた【ロスモンティス】の執行者No.Ⅳ 【白銀の戦姫】、フィーネ・アガスティアを連れて来たんだ。
「良いなぁ……私もこんな豪邸に住んでみたい。ううっ……私なんて、家賃2万2000円のボロアパートですよぉ。ぐすんっ……悲しみぃ」
今日のフィーネはいつものポニーテールを解いて髪をストレートに流している。腰まで届く綺麗な銀髪に愛らしい八重歯が目立ち、まさに明るい元気っ娘と言った感じだ。
まあ、フィーネも楓さん達とはまた違う方向での美人さんである。おっちょこちょいで単純な裏表の無い性格をしており、そこがまた彼女の魅力の一つなのだろう。部下からの人気が高いんだ。
「クリスお姉様……ロスモンティスって、儲かってる癖に下の者への給料安すぎませんかね?」
「フィーネ……」
「だって、こう見えても私達幹部なのですよ!? 幹部! 交通費やその他は経費で出るとしてもプライベートでの使えるお金は雀の涙……ボスは私達を何だと思ってるのですか!」
「まあ、気持ちは分かる。フィーネ大丈夫だよ、僕がトップになった暁には、皆の給料を大幅に引き上げるから」
今日のフィーネの服装は、完全にプライベートで黒のジャケットに茶色の厚底ブーツと黒色のミニスカートと言う際どい姿。更には白のニーソックスを穿いており属性がてんこ盛りだ。イタズラな風が吹けば下着が見えそうなくらいにフィーネは太腿を顕にしている。
「ええ!? 本当ですか! クリスお姉様大好き♡ クリスお姉様に一生付いて行きます! あぁ……給料上がったら、お洒落で可愛い服に香水、スイーツ巡り、夢と絶望の国、デスティニーランド等の遊園地にも行きたいですぅ! クリスお姉様はお金が沢山あったら、何がしたいです?」
「う〜ん……僕はそんなに欲は無いかなぁ。お洒落とか食事や恋愛もそこまで興味無いし……あるとすればタバコを吸うくらいかな」
最初はタバコを吸っている女性を見て、かっこいいなぁ……と僕もタバコを吸って貫禄を出せるようになりたいなぁ〜と漠然に思ったのが、タバコに手を出したきっかけだった。
そして、気付けばタバコ無しでは生活に支障をきたす程になってしまったんだ……安易に手を出した事に関して後悔はしているが、もう手遅れだ。今の僕からしたらタバコは光熱費や水道代を払うのと同じ、言わば公共料金だ。
「フィーネ、少し待ってくれ。一ノ瀬家にお邪魔する前に一服するから」
クリスはポケットからマルメラの箱を1つ取り出した。箱の中から、タバコを1本取り出して口に咥える。
「なぁ!? クリスお姉様! タバコはお身体に悪いです! いい加減やめるべきです! なので、これは今直ぐにでも捨てましょう!」
「えっ……ちょっとフィーネ!?」
「このおタバコは没収です! それに一ノ瀬家でタバコは吸ったら駄目ですからね! エルちゃんも居るんだから!」
「う、うん……だから入る前に吸って……」
「クリスお姉様、最近吸う量が多くありませんか? と言うかタバコをそんなに吸って、良くその美貌を保てますね……タバコは百害あって一利なしですよ?」
「そ、そんな事無いよ……ちょっとだけだから。ほんの先っちょだけ……」
「駄目ですぅ!!!」
フィーネ……僕の健康を気遣ってくれるのは有難い事だけど、そのマルメラは買ってからまだ1本しか吸ってないんだ。マルメラ最近値上がりして高いのに……勿体ないよ。タバコ吸いたくて、今の僕は身体がウズウズしているんだ。
「とにかく! これは没収! 私の方で処分しますから!」
「そ、そんなぁ……フィーネ、お願いだ。せめて一本だけでも……一口だから」
「ふふ……クリスお姉様の咥えたタバコ、私が涎まみれにしてやるもん!」
そう言うとフィーネはクリスが咥えたタバコをぺろぺろと舐める。
「フィーネ、そのタバコ僕が口付けたやつだけど良かったの?」
「はっ……!? も、もしかして……これはクリスお姉様と間接キス……ごくり」
ん? 急に顔を赤くしてどうしたのかな? 別に僕が咥えたタバコにそこまで動揺する程なのかな? 別に異性が咥えた物では無いし……
「クリスお姉様、参りましょう!」
「う、うん……何で僕の咥えたタバコだけポケットにしまうの?」
「こ、細かい事は気にしてはなりません♪ さぁーて、今日はエルちゃんと何して遊ぼうかなぁ♪ エルちゃんの年齢ならおままごとかな♪」
「……」
あぁ、僕のマルメラが……仕方無いな。また後で買うとしよう。人間とは中毒性あるものに抗うのが難しい……
「ふふ〜ん♡」
フィーネは年齢的には立派な大人だが、彼女は元から顔立ちが幼く、超が付く程の脳筋でアホなのだ。多分、脳の栄養が全て胸に持ってかれたのだろう……男性から見ればフィーネの身体は魅力的で、電車に乗ると良く痴漢の被害にあうらしい。フィーネは喋らなければ、大人の色気やフェロモンを醸し出す良い女だと思う。喋らなければセクシー女優だって夢では無いだろう……喋らなければ。
「しかし、クリスお姉様の今日のお姿は、とっ〜てもお美しいです♡ やはりこちらにして正解でしたよ〜男装よりそちらの方がお似合いですよ!」
「そ、そうかな?」
「絶世の美女と言っても過言では無いです! 私がもし男であれば、絶対にプロポーズしてましたよ! あ、でも〜クリスお姉様にベッドに誘われたら私の純潔捧げますぅ♡ クリスお姉様と私で子作りしましょう! きっと最強の子が産まれますよ!」
「はいはい、お世辞として受け取っておくよ。それと僕は女だ。フィーネとの間には子は産まれない」
やれやれ……フィーネも大袈裟だな。
「ふふ……愛さえあれば問題ありませんよぉ♡ クリスお姉様♡」
「引っ付かなくて良いから、離れなさい」
まあ、僕は男装をするのはもうやめることにしたんだ。ありのままの自分……なので今日はその第一歩として、足元がスースーと冷えるけど、膝丈くらいの黒色のスカートを穿いてみた。
まあ、これもエレナやフィーネが僕をコーディネートしてくれて結果だ。今の僕は、耳にピアスと黒のジャケットに髪型も地毛の金髪の毛先に白色のメッシュも入っている。何だか地雷系女子みたいなファッションになってしまったけど、これはこれで悪くは無い。
「へへ〜クリスお姉様、男装を卒業したと言う事は……えい!」
「んぴゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁ……!? ち、ちょっとフィーネ!?」
突然の出来事にアニメ声みたいな変な声が出ちゃったじゃないか。スカートの下は下着一枚しか身に付けて無いから無防備なんだ。僕の好きな白と青のストライプ柄……は、恥ずかしい。
しかも、僕あそこの毛……処理をしっかりとしてないから少し下着からはみ出てるんだ……あぁ、恥ずかしくて穴があったら入りたい気分だよ。
「ほほう〜クリスお姉様、まさかの青と白のストライプ柄ですかぁ♪ しかも布面積だいぶ強気な物を穿いてますねぇ……可愛い、可愛いです! そしてエロい! はぁ……はぁ……スラッとしたモデル並みの白くて綺麗な足。何だか以外……ですが、クリスお姉様もちゃんと乙女だったのですね〜今の美少女アニメ声も素敵♡ さあて♡ あぁ♡ クリスお姉様のお尻素晴らしい触り心地ですねぇ♪ 安産型の素晴らしいケツ……おや? おやおや!? クリスお姉様! もしかして、下着少し濡れていま……ぐへっ!?」
「…………」
本当に騒がしい女性だよフィーネは……いきなりフィーネにスカートを捲られお尻を触られたので、思わず驚いて蹴ってしまったよ。フィーネは蹴られてもタフだから、まあ大丈夫だろう。問題は一ノ瀬家の門を破壊してしまった事だ……
「はひっ……あふっ……」
フィーネは顔を地面に突っ伏して、お尻をピクピクと震えさせ痙攣している。僕の立っているこの位置からだとフィーネの穿いているパンツが丸見えだ。
フィーネの身に着けてるのは、純白のTバックだった。しかも、パンツのサイズが合って無いのか、フィーネのあそこにパンツが思いっ切りくい込んでいるぞ……これじゃ下着の意味が無いじゃないか。
「クリスお姉様……わ、私を殺す気ですかぁ!」
「ごめんフィーネ、やり過ぎたよ。次は優しく蹴るよ」
「いやいや!? そう言う問題ではありません! 蹴らないで下さいよぉ!」
「ううっ……だって、僕はこのスカートにまだ慣れてないんだ」
ここに来る途中も色々な人の視線を感じたんだ。僕はもう20代後半……この服装は10代の子が着るような服装ではなかろうか? 僕も若くは無い……
「て、てきしゅーか!?」
「あらまぁ……」
「何か凄い音したけど……ふぁ!?」
家の中からエルちゃん、楓、葵が何事かと慌てた様子で出て来たのである。クリスとフィーネはそれはもう見事な土下座を決めて何度も楓達に頭を下げた。
―――――――――
「まあ♡ クリスさんたら……可愛い♡」
「か、楓さん……申し訳無い。勿論弁償させて頂きます。何なら、下働きでも何でもする所存です」
何とか楓さん達からお許しは頂けたが、破壊した箇所はしっかりと弁償するつもりだ。幸い、僕は日頃そこまでお金を使って無いので余裕はまだある。
「と言うかフィーネちゃん、良く無事だったね」
「そうなのよ葵ちゃん! クリスお姉様もパンツ見られたくらいで大袈裟ですぅ! 私じゃなかったら、致命傷でしたよ!」
フィーネちゃん……と言うか、君達いつのまにそんな仲良くなってるんだ……フィーネは一ノ瀬家に来るのが今日が初めてだと言うのに……葵さんとフィーネのコミュニケーション能力の高さに驚きを隠せない。
「細かい事はさて置き〜クリスさん、フィーネさん、この後彩芽さんと氷華さんも来るから、皆が来たら焼肉しましょうか♪」
「焼肉!? ヒャッホーイ! お腹ぺこぺこのペコなので嬉しいです!」
「フィーネ、少しは遠慮しないと……楓さん、すまない」
「いえいえ! 好きなだけ食べて下さい♪」
申し訳無い気分で一杯だよ。と言うか楓さん器がデカイ女性だな。あんなに派手に門を壊してしまったのに【細かい事はさて置き〜】とはね。
「クリスねーたん! みてみて! くまたん!」
「あらあら、エルちゃん? レディがそんな真似したら駄目だよ?」
エルちゃんはクリスに見せ付けるかのように、ドヤ顔で自分のスカートを捲って、熊さんのおパンツを披露したのである。
「こら、エルちゃん〜お外でそんな事したら駄目でちゅよ? さあ、クリスさん、フィーネさん、外は冷えますので取り敢えず中へあがって下さい」
「お、お邪魔します……」
「お邪魔しまぁ〜す!」
「クリスねーたん、こっちなの! おもてなちするの♪」
「あ、エルちゃんちょっと待って……エルちゃん!?」
僕はエルちゃんの小さな手に引かれながら、一ノ瀬家のリビングへとお邪魔した。改めて辺りを見ると一ノ瀬家の大きさに驚愕してしまった。恐らく億は超えてるであろう豪邸何だろうな。
「そっちのおねーしゃんも!」
「あらぁ♡ そうえば、ちゃんとエルちゃんに自己紹介してなかったね。私の名前はフィーネ・アガスティア。ピッチピチの25歳だよ♡ 私とお友達になってくれるかなぁ?」
「んみゅ! ボク、えりゅなの! いちのちぇ……えりゅ! おほもだちなの!」
「あらあらぁ♡ ちゃんと自己紹介出来て凄いねぇ♪」
あぁ……可愛い♡ エルちゃんが喋る度に僕のお耳が幸せになる。見てるだけでも可愛いのに……これぞ、2度美味しいと言うやつか。こんなの反則級だよ……フィーネもエルちゃんの可愛さにやられて、頬に手を当ててウットリとしてるし。
「ふぃーたん!」
「ふぃーたん!? ク、クリスお姉様! 聞きましたか!? エルちゃんが、私の事ふぃーたんですって! ふぃーたん! あぁ、何と言う甘美な響き……エルちゃん、もう一度お姉さんの事、ふぃーたんと言ってくれるかな?」
「んみゅ! ふぃーたん!!!」
「あぁん♡ もおぉぉ♡ 何よ! この子可愛すぎぃ! マジ天使♡ 抱いても良い? 良いよね!? 良いわよねぇ!? ぺろぺろしたいなぁ♡ ねぇ、お姉さんの妹にならない? エルちゃんむぎゅう♡」
「んみゃあ!? ふぃーたん! く、くるちいの!」
「やっべ……モチモチの赤ちゃん肌だよ! エルちゃんの頬っぺた、ぷにぷにさせて♡」
「こらこら、フィーネ落ち着いて」
フィーネは普段やかましいけど、こんなにデレデレのフィーネの姿を見るのは初めてだ。可愛いはこうも人を狂わせるのか……エルちゃん。何と恐ろしい子……こう見えてもフィーネは、裏社会でも有名な危険人物だぞ?
「あ、そうだ。エルちゃんお土産持って来たよ〜ほら」
「んみゅ? クリスねーたん、それなぁに?」
「ふふ……僕の所へおいで♪」
エルちゃんはクリスが持って来た袋の中身を興味津々と言った感じで覗いた。するとエルちゃんは大輪の華が咲いた様な笑顔で、その場でぴょんぴょんと飛び跳ね興奮する。
「ああ! おかち! しゅごいの! いっぱいありゅの!」
「エルちゃんの好きそうな物沢山買って来たよ〜♪」
「くりしゅねーたん! あいあと!」
「くりしゅねーたん……フィーネ、今の聞いたか? 僕の事、くりしゅねーたんって! はぅっ……♡」
「うふふ……クリスお姉様たら♡」
何でこの子はいちいち可愛いんだ!? お菓子見てその場でぴょんぴょんと飛び跳ねる姿を見たら、僕の心もぴょんぴょんと飛び跳ねて、三途の川を超えて行きそうだよ!
「ごほんっ。楓さん達にはこちらを……」
「あらぁ♡ これメルドーバの高級シャンプーとリンスじゃないですか! クリスさんありがとうございます♪」
ふぅ……喜んでくれて何よりだ。昨日、スマホで女性にオススメのケア商品は何かと調べて見たら、それがたまたま上位に上がって居たんだ。お値段はえげつなかったけど……まあ、そこを気にするのは野暮と言う物。タバコが2カートン変えるくらいの金額だ。2カートン……やばい、タバコ吸いたくなって来た。
「にゃあ♪」
「おお! クリスお姉様の大好きな猫ちゃんだぁ♡」
「にゃーお!」
「えぇ!? めっちゃ居るじゃん!」
タイミングを見計らったかのように一ノ瀬家に住んでいる猫達がリビングへと尻尾を立ててやって来たのだ。
「て、天国か……ここは」
僕の大好きな猫ちゃんがこんなにも……凄い数だ。これだけの猫ちゃんが居ると面倒を見るのも大変では無いのかな?
「うふふ♡ 今、クリスさんの足元に居る白い猫ちゃんはタマちゃんと言うの♪ 女の子だよ♪」
「にゃあ♡」
「あ、あぁ……何と美しい純白の毛並み。気品に満ちて尚、愛らしさも兼ね備えている。素晴らしい……」
余りの可愛さに思わず語彙力を失ってしまった。白猫のタマちゃん……可愛いくて美しい。しかも、僕にこんなにもスリスリと甘えて来る猫ちゃんは初めてだ♪ 僕は猫ちゃんが大好きなのだが、悲しい事に向こうがいつも拒絶するんだ……
「にゃ〜ん♪」
「お、おおぉぉ……フィーネ、僕の足元に猫ちゃん達が擦り寄って来たぞ!」
「クリスお姉様! 私の足元にも猫ちゃんが!」
クリスとフィーネは顔赤くしながらウットリとしていた。その様子を見てた楓達はクスクスと笑いながら見守っている。
「あ、クリスさん……塀の弁償とかは良いので、1つお願いしたいことがあります」
「ん? ぼ、僕に出来る事であれば……」
何だか嫌な予感がする。楓さんって、見た目は美しい穏やかな女性だが、目の奥に獣を飼っているかのように目がギラギラと輝いているのだ。
「ここではあれなので……私の部屋に来て貰えますか?」
「は、はい……フィーネはここで待っててくれ」
「らじゃ〜私、猫ちゃん達とエルちゃんと遊びたい!」
「ふぃーたん! こっちなの!」
「おおぉ〜エルちゃんやる気だねぇ! よしゃあ! フィーネお姉ちゃんと遊ぼ♡ お姉さんの上に乗るのだぁ!」
「んみゅ!」
そう言うとフィーネは四つん這いになり、エルちゃんを背中の上に乗せてテクテクとリビングを周り始める。エルちゃんは嬉しそうにキャッキャとはしゃいでいる。
「お姉ちゃん、クリスさんに変な事教えたら駄目だよ? 私はお茶菓子用意するから」
「葵ちゃん大丈夫♪ 大丈夫だからぁ……ぐへへ♡ 綺麗な外人さん……じゅるり♡」
ねぇ!? 楓さんボクに何をするつもりなの!? 何故か僕の危機感が激しく警鐘を鳴らしている。今の僕を例えるなら、蛇に睨まれた蛙だろうか。何故だか楓さんに見られるだけで、服を全部脱がされたような感覚に陥る。まるで僕の敏感な場所を指先でなぞられているかの様なそんな感覚。
「クリスさん♪」
「は、はい……」
クリスは楓に案内されて、2階の楓のお部屋【魔界】へと連れて行かれるのであった。そして、数分後……クリスは未だかつて無い程の甘くて飛ぶ様な体験を味わう事になる。




