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極道達と打ち解けるエルちゃん

 




 ◆ロスモンティス・葉月透(はづきとおる)視点





「ぐすんっ……けんかだめぇ。なかよくちないと、メッなの! ぐずっ……」

「わ、分かった。エルちゃん、お姉さん達が悪かったから、もう泣かないでくれ。な?」

「エルちゃん、落ち着いて。ほら、もう喧嘩してないよ〜神楽坂彩芽と僕は仲良しだよ♪」


 エルちゃんの乱入により、葉月と彩芽は一時停戦をする事に決めたのだが、エルちゃんは余程この中に入って来るのが怖かったのか、身体をプルプルと震えさせながら泣いてしまったのだ。葉月と彩芽は協力してエルちゃんを宥めようと試みる。


「んぅ……ぐすっ。もう、けんかちない?」

「うんうん。ほ〜ら、彩芽お姉さんとこのお姉さんは仲良しやで〜♪」


 彩芽は葉月に握手しろと目で訴えている。葉月は肩を竦めて、苦笑いしつつも彩芽と握手を交わした。その様子を見てた神楽坂組の極道達は、エルちゃんの周りに集まって穏やかな表情を浮かべエルちゃんに話し掛ける。


「お嬢ちゃん……凄いな。あの2人の喧嘩の中に突っ込んで行くとはな。お嬢ちゃんの勇気、ホンマ凄かったでぇ〜俺には真似できへんよ」

「可愛ええなぁ〜お嬢ちゃん、良かったら飴ちゃんいるか?」

「おいおい、お前らお嬢ちゃんが怖がってるぞ? 幼い子には優しく接しないとあかんで」

「俺の娘と同い歳くらいか? おい、誰かこのお嬢ちゃんにジュース買って来たりーや!」

「お嬢ちゃん、お名前は何て言うんや? 良かったらお兄さん達に教えてくれるかい?」


 エルちゃんは強面のお兄さん達を前に産まれたての子鹿のように身体をプルプルと震えさせて居るが、極道達は意に介さず笑顔でエルちゃんを怖がらせない様に接しようと試みた。

 しかし、元々極道達の顔が怖いと言うのと、身体が大きい者ばかりなのでエルちゃんは内心慌てふためきながら超絶ビビっている。


「え、えりゅなの……い、いい、いちのちぇ、えりゅ!」

「お〜可愛ええ名前やなぁ♪ ちゃんとお名前も言えて凄いじゃないか! エルちゃん♪ よしよし♪」

「ううっ……ふにゅ」


 エルちゃんは怯えつつも辺りをキョロキョロと見渡しながら、意を決した様に葉月の元へと駆け寄りピタッと引っ付いた。

 エルちゃんは少し恥ずかしがる様な仕草で葉月の胸に顔を埋める。葉月は驚いた様な表情を浮かべてから、彩芽に対してドヤ顔を決めエルちゃんを優しく抱きしめ、まるで我が子と接するかの様に可愛がった。

 裏社会で有名な葉月こと、エメラルダ・クリスティーネを知る者が見れば、この変わりようには驚愕する事だろう。


「ううっ……ひといっぱいなの……はづきねーたん、ぐすん」

「ふふっ……エルちゃん、よしよし♪ 怖くないからね〜僕の事はママと思って甘えると良いよ♪」

「あぁ!? おい、てめぇ! どさくさに紛れてエルちゃん抱いてるんじゃねーよ!」

「エルちゃんは僕のお師匠さんだからね。神楽坂彩芽、嫉妬は見苦しいよ? エルちゃんは君では無く()を選んだんだ。残念だが……つまりはそういう事だ」

「あぁ!? あたいもエルちゃんの弟子だ! さあ、エルちゃん〜彩芽お姉さんが抱っこしてあげるからこっちにおいで♪ こんな男装した胸が寂しい女よりもあたいの方が胸も大きいし包容力や母性強いぞ〜♪」

「ふん、僕は胸にサラシを巻いてるだけ。実際は結構あるんだ。包容力なら僕も負けない。それに女は胸が全てじゃない……」


 むむっ……この女だけにはエルちゃんを渡したくないな。何だろう……この僕の中で渦めくこの気持ちは。しかし、エルちゃんは凄いな。僕達の喧嘩を止めようと、この強面の極道達が多く居る場へ勇気を出して止めに入ったんだから。


 カタギの奴でもこの場に入って来る豪傑はそうは居ないだろう。普段は甘えん坊さんで、臆病で怖がりな幼いエルちゃん……だけど、いざとなると周りも目を見張る様な勇気を持つこの子は、将来どんな風に成長するのだろうか。


「んぅ……」

「ふふ……エルちゃんは甘えん坊さんだね。神楽坂彩芽、もう僕は君達と争う気は無い。エルちゃんのお陰で自分を改めて見つめ直す良い機会になったよ。部下を連れて母国へ帰る」

「ほう、そらどう言う風の吹き回しや? あたいも今まで色々な奴を相手にして来たが、あんたは根っからの悪では無いな。剛田や煌坂を殺ろうと思えば殺せた筈だ。わざと手加減して、煌坂には脇のダメージの少ない部位をわざと狙って……それに」

「もう良い。それ以上言わなくても良いから。それとエルちゃんの事やその他諸々色々聞きたい事がある。エルちゃんは何者? 最初は神楽坂組が大層な護衛を付けて居たから、やんごとなき身分のご令嬢か神楽坂組の幹部の娘かと思ったが、エルちゃんと話してる内に色々と疑問が湧いてね」

「ふっ……まあ良いだろう。椅子に座って話そうや」


 エルちゃんは葉月に抱かれながら、彩芽達と共にフードコートの椅子に座った。葉月の両隣りには、フィーネとエレナ。その後ろにはロスモンティスの構成員達が並んで立つ。彩芽の周りには神楽坂組の極道達が並び葉月と彩芽は対面同士で座る形となった。


 最初は穏やかに話しが行われて居たが、次第に葉月と彩芽はエルちゃんの弟子と言うポジションについて、侃侃諤諤(かんかんがくがく)の論争を講じたのである。ロスモンティスの構成員と神楽坂組の極道達は、冷や汗をかきつつもそれぞれのトップを宥めるのであった。





 ―――――――――





「なるほど、神楽坂彩芽が勘違いして、一ノ瀬家を巻き込んだと言う訳か」

「あたいの事は彩芽で良い。楓さん達や周りに迷惑を掛けてしまった……後日、一ノ瀬家には改めて詫びを入れに行くつもりだよ」

「ふむ、なら僕の事は葉月……いや、クリスで良いよ。僕らも迷惑を掛けた。僕も改めてお礼をしにエルちゃんのお家にご一緒しよう」


 フードコートで侃侃諤諤(かんかんがくがく)の論争へと発展してしまったが、意外と僕と彩芽は気が合うのかもしれない。最後に僕が思ってる事を素直に伝えたら、彩芽はロスモンティスへの謀反に協力してくれると言ってくれた。



 ―――それに、僕や彩芽も同じ小さなお師匠さんを戴いてる身だ。可愛いお師匠さんが仲良くしないとメッ……って言うんだ♪ そう、これは仕方無い♪



「痛てて……おん? 姐さん、戦いは終わったのですかい?」

「あ、剛田、目覚めたんか。もう全て終わったで……相手さんとは和解や」

「へへ……そうでしたか。お? 可愛い嬢ちゃんやな♪ あっしは剛田言うんで、よろしゅうな♪」


 剛田は角刈りで顔には幾つもの大きな傷が有り、見た目はこの場に居る極道達よりも遥かに貫禄があって、強面の見た目をしていた。

 その顔を見て気を張りつめていたエルちゃんは目をウルウルとさせて、ついにダムが決壊するかの如く泣いてしまうのであった。それはもう見事な号泣で、葉月や彩芽達は大慌てである。


「ヒィイ……!? ううっ……ぐすっ。ふぅえええんんんん!!! かえでねーたん! あおいねーたん! うわぁぁぁああああああんんんんん!!!」

「え!? ちょっ……あの」

「剛田! てめぇ、何エルちゃんを怖がらせてるんや! このど阿呆!!!」

「論外だよ……不死身の剛田!!!」

「姐さん!? あっしは別に……ぐへっ!?」


 彩芽と葉月は阿吽の呼吸の如く、剛田の脇腹に左右から同時に回し蹴りを入れると、再び剛田はその巨体をシスタードーナツの壁に頭からめり込ませるのであった。


「よしよし〜エルちゃん怖くないよ〜」

「そうだ! エルちゃん、後で彩芽お姉さんが美味しい物買うたるで〜」

「ううっ……ぐすっ。おいちいもの?」

「せやで〜とびっきり美味しい物やで♡」

「ふふっ……エルちゃんは泣き虫さんだね〜ん? 怖かったのかな?」


 葉月はエルちゃんの背中をトントンと優しく叩いて何とかあやそうと試みる。葉月は自分の顔をエルちゃんの顔に近付けて、頬っぺたにそっとキスをした。その様子はまるで、王子様がお姫様に口付けするかのような尊くも美しい光景であった。


「んにゅ……」

「エルちゃん、疲れたなら僕の腕の中でお寝んねして良いよ」


 ふぅ……幼い子は感情の起伏が激しいな。しかし、おめめをウルウルとさせたエルちゃんもヤバい……ヤバすぎる! 最早可愛いとかで言い表せるレベルでは無い!


「クリスお姉様、子供をあやすの上手いですね」

「そんな事無いよ。フィーネ、エルちゃんを抱いてみるかい?」

「ええ!? 良いのですか!? で、では……是非♪」


 葉月はウトウトして今にも寝ちゃいそうなエルちゃんをフィーネに預ける。しかし、エルちゃんは知らないお姉さんに抱かれたせいか、目を覚まして再び泣きそうな顔をしていた。


「ふぇ? おねえしゃん……だぁれ?」

「そんな怯えなくても良いよ〜私はクリスお姉様のお友達なの♪ フィーネ・アガスティアって言うんだ♪ 宜しくね〜エルちゃん♪」

「ふぃーね?」

「うんうん♪」

「はづきねーたん!」

「えっ……そ、そんなバカな!?」

「あらま、フィーネ。残念だが、エルちゃんは僕が良いみたいだ。さあ、エルちゃんをこちらへ」


 フィーネはショックを受けた様な顔をしてから、膝から崩れ落ち撃沈する。フィーネは意外にも子供が好きで、孤児院に多額の寄付をする様な温厚で優しい一面を持つ明るい女性だ。

 エルちゃんは涙目になりながらも、再び葉月の胸に顔を埋めたのである。その様子を見てた葉月は内心興奮しそうな気持ちを抑えるのに必死だった。


「エルちゃん、大丈夫。ここに居る人達は誰もエルちゃんの事を襲ったり、傷付ける様な事はしないから。ふふ……」

「こわいちといっぱい……んぅ? むむ!?」

「ん? エルちゃんどうしたのかな?」


 エルちゃんの視線の先を追って行くと神楽坂組の【剣聖】九条氷華へと視線が釘付けになっている。


 エルちゃんは目を大きく見開いてから、【みくるたん! けんせーひょーかだ!】と目をキラキラと輝かせながら興奮している。みくるたんとは何だろうか?


「エルちゃん、うちの氷華の事が気になるのか? おーい、氷華〜」

「はい、何で御座いましょう。ボス」

「エルちゃんがお前に興味津々みたいやで〜みくるたんがどうの言ってるで〜」

「なるほど、そういう事ですか……子供向けのアニメ、魔法少女★みくるちゃんの事ですね。さしづめ、それに出て来るキャラと私が似てると言う事でしょう」


 氷華は葉月に抱かれてるエルちゃんの近くへと行き、エルちゃんにニッコリと微笑んだ。普段表情を崩さない能面の様な氷華が笑うのは非常に珍しかった。


「ほ、ほんものなの……はわわ!?」

「ふふ……アニメキャラと勘違いしてるのかな?」

「ふぇ……あ、あくしゅ、ちてくだちゃい!」

「…………!?」


 エルちゃんが興奮しながら氷華に握手を求めると氷華は笑顔でそれに応えた。しかし、エルちゃんの純粋な笑顔に剣聖とも言われる氷華はもうデレデレで為す術無く…………


「か、可愛い……こんなの反則。流石、楓さんと葵さんの妹……チート級。将来SSS級の美少女確定ですね」


 氷華を始め周りの極道達もエルちゃんの可愛さにもうデレデレだった。成り行きを見守っていた葉月や彩芽達もウットリとした顔でエルちゃんの事を見ている。


「初めましてだね。私の名前は九条氷華と申します。宜しくね、エルちゃん♪」

「んみゅ! ボク、いちのちぇ……えりゅ! しょーらいぼーけんしゃになるの! これ、みてみて!」


 エルちゃんは伝説の杖(楓に買って貰ったおもちゃの杖)をこの場に居るみんなに自慢するかのように見せ付けた。

 その様子を見てた極道達はエルちゃんの近くへと近寄り、怖がらせ無いように視線の高さをエルちゃんと同じに合わせ優しく話し掛ける。


「おおぉ! 立派な杖じゃないか!」

「これ、うちの娘も好きなんだよなぁ。お嬢ちゃん、魔法少女★みくるちゃん好きなのかい?」

「んみゅ! みくるたんはボクのちしょうなの!」

「ほほ〜お師匠さんかい。良かったら、おじさん達にその杖見せてくれるかい?」

「ふふ〜ん。あっちでみせてあげるの♪」


 エルちゃんはその場で葉月に降ろして貰い、周りに物が無い開けた場所にて皆に杖を披露した。エルちゃんの周りに極道達が集まり、エルちゃんをひたすらに褒める。


「よ! 魔法少女★エルちゃん!!」

「ふ! へ〜んちん!」



 ―――「「「ぉぉおおお!!! エ〜ルちゃん! エ〜〜ルちゃん!!!」」」




 極道達に持ち上げられて気分を良くしたエルちゃんは、スイッチを押して杖をブンブンと振り回して楽しそうな表情を浮かべていた。かなりご機嫌の様子で、先程まで怯えていたのがまるで嘘であったかのようだ。


「ふふ〜ん♪」

「へぇ〜最近のおもちゃは凄いなぁ」

「お嬢ちゃんのその杖、カッコええな!」

「おじさんも変身しちゃおうかな〜?」

「うわ、増田の兄貴キツいっすよ。38歳の魔法少女って……」

「ええやろ! 38歳の毛深い魔法少女がおっても!」

「通報されますよ!!」


 エルちゃんはみんなに愛でられながら、極道達もエルちゃんのごっこ遊びに付き合い、氷華もエルちゃんと一緒に修行と言う名目でお遊びに最後まで付き合った。


「んみゅ! ここおすの! へんちんしないとだめなの!」

「え、私が変身をするのですか?」

「ひょーかねーたん! はあく!」

「ひょ、ひょーかねーたん……!? ごほんっ。う、うん。分かったよエルちゃん……見てて」


 剣聖と呼ばれた神楽坂組の武闘派である氷華は、皆の前で恥じらいながらもみくるちゃんの変身ポーズを決める。齢28歳、メイド服を着用している氷華ではあるが、流石に変身するのは恥ずかしいのか顔を赤くしていた。


「は、恥ずかしい……」

「ぷっ……あはははははは!!! これは傑作や!!」

「氷華ちゃん……草。あ、もう無理。笑いが止まらないわ!!」


 彩芽と美玲は氷華の変身ポーズに爆笑をし、それを機に周りの極道達やロスモンティスの構成員達も笑う。エルちゃんは満足した様な表情をしていたが、氷華は涙目になりながらその場で撃沈してしまう。


「ひょーかねーたん? だいじょーぶ?」

「うん、大丈夫です」

「んぅ……よちよち♪」

「!?」


 エルちゃんはその場で蹲る氷華の頭を撫で撫でするが、氷華は唐突な不意打ちをくらい……


「ぐふっ……(白目)」

「ひょーかねーたん!?」

「えっ……ちょっと氷華ちゃん!?」

「嘘だろ……あの剣聖が初めて負けた!?」

「お、おい! 誰か闇医者に連れて行け! まだ傷は浅いぞ!!」

「おい待て……心臓が止まってる!!!」

「何だって!?」


 エルちゃんの思わぬ行動に神楽坂組の【剣聖】とも呼ばれた九条氷華(くじょうひょうか)は、目をハートにしながら倒れてしまった。いきなりの出来事に極道達も大慌てで、直ぐに担架が用意され氷華は闇医者へと運ばれる事になるのであった。





 ――――――――――――――――――




「ふにゅ……むにゃむにゃ」

「あらあら、エルちゃん気持ち良さそうにお寝んねしちゃったね」

「ふぅ……先程、闇医者の方から連絡があった。氷華は無事一命を取り留めたそうや……ほんと、エルちゃんはある意味危険やな。今まで敗北知らずで、地に背を付けた事の無いうちの氷華が倒れる何て……うちの組織も尊いと可愛いに耐性が無い者が案外多いのかもしれへんな。神楽坂組の弱点やな」

「そか。それは良かったね……でも、気持ちは分かるよ。ルちゃんは麻薬よりも中毒性がありそうで、気付けばエルちゃんのペースに乗せられてしまいそうだからね」


 エルちゃんは疲労がピークに達し、葉月の腕の中で今はスヤスヤと眠っている。葉月のあやすのが上手いのかエルちゃんは目をトロンとさせてから、寝るまでそこまでの時間は掛からなかった。


「さあ、クリス。そろそろエルちゃんを楓さんの元へ連れて行くぞ。危険だと思い、楓さん達には念の為護衛を付けて自宅で待機してもらう事にしたんや。楓さん達は今頃エルちゃんの事を心配して首を長くして待ってるで。特にエルちゃんのお姉さん……楓さんは防弾チョッキやテーザー銃を持ってエルちゃんを助けに行こうと必死やったからな……止めるのに苦労したでぇ」

「あぁ、そうだね彩芽。これ以上ご家族に迷惑を掛ける訳には行かない」

「んにゅ……むにゃむにゃ……えへへ。おにくぅ……すぅ……すぅ……もう、たべられにゃい……ぐふふ♡」


 夢の中で美味しい物を食べてるのかな? エルちゃんは相変わらずの食いしん坊さんだね。涎垂らしちゃって♡


「はぅ……♡ 彩芽お姉様、エルちゃん抱きたいです♡」

「美玲、おまえは駄目だ。エルちゃんが危ない……それに今の美玲の顔、決して乙女がする様な顔じゃないぞ?」

「ええぇぇ!? なんでぇ!? 穢れの無い純粋なリアル幼女ちゃんですよぉ!? こんなきゃわわな子を前にしたら……こうなりますよ! 涎の1つや2つ垂れちゃいますよおおぉ! はぁ♡ 天使の様な可愛い寝顔……自室に連れ帰って沢山愛でてあげたいですね♡ 首輪繋げて私が養ってあげるの♡ この子を私の色に染めて差し上げたいわぁ♡」

「美玲落ち着け。お前はロリコンか」

「いえ、ロリコンではありません。私は純粋に幼い女の子が大好きなだけです!」

「お巡りさんこいつです!」


 葉月はエルちゃんを抱っこしながらそっと周りを見渡した。そこは先程まで殺気に満ちた空間では無く、極道達もロスモンティスの構成達もみんな穏やかな表情を浮かべほのぼのとした場となっていた。


 ロスモンティスの執行者エレナとフィーネもエルちゃんの近くに来て、寝ているエルちゃんの頬っぺたをツンツンとしてみたり、頭を撫で撫でしてご満悦の様子だ。2人ともエルちゃんの可愛さに手を頬に当てながら、うっとりとした表情を浮かべている。まるで恋する乙女の様に……


「この子凄いわね……クリスお姉様の腕の中でスヤスヤと爆睡するとは……しかも、こんなに強面で屈強な人達に囲まれて熟睡出来るなんて、私でも出来ませんよ。エルちゃんは大物ですね」

「そうだね。まあ、僕のお師匠さんだから♪」



 そして、葉月は遠い目をしながら溜め息を付いた。



「はぁ……今回の件、蓋を開けてみれば、ただのエルちゃんの初めてのお使いだ何て……僕らも含め、周りが大事にしてしまったね。日本の警察や沢山の人達まで動いて……」


 まあ、結果的に僕と彩芽は和解。しかも、協力関係となり、今後は更なる友好を深める事が出来るだろう。エルちゃんには本当に色々と感謝してるよ。


「あれ、クリスお姉様……それは髑髏のイヤリングですか? 付けてましたっけ?」

「フィーネ、これは……僕の小さなお師匠さんからプレゼントして貰ったんだ♪」

「そ、そうですか……ふふっ。クリスお姉様、何だか昔の優しいお姉様に戻りましたね。私はそっちの方が好きですよ?」

「そうかな? エレナ、フィーネ……それに皆にも伝える事がある」


 感情の無い瞳をしていた葉月だが、エルちゃんと出会ったことにより、その目は水を得た魚の様に暖かな感情の籠った瞳をしている。葉月は部下達にロスモンティスに対して謀反を起こす事を打ち明けるのであった。


「ふふ……私達は葉月様。いえ、クリスお姉様に付いて行きます。そうだよねみんな?」

「はい、我等が忠誠を誓うのはクリス様のみ。それに現在のボスには、まるで魅力が無い」

「何処までもお供致します」



―――色々と波乱に満ちたエルちゃんの初めてのお使いはこうして幕を閉じたのであった。



こんばんみー! いつもお読み頂きありがとうございます( 'ω')


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