双子の婦警のお姉さん。瑠璃奈と魅音
◆エルちゃん視点
「よち、だいじょーぶ!」
どうやら黒づくめの怪しい人達を撒くことに成功したみたいです。日頃かえでねーたんが、1人でお外に出るのは危ないから駄目だと言う意味が良く分かります。お外は沢山の危険で満ち溢れているのだ。目的地のホモネコバリューまでの道のりはまだまだ遠い。引き続き警戒を怠らず進んで行こう。
「んにゅ……あ! こーえんなの!」
あそこの公園は見覚えがあるぞ! 前にあおいねーたんと寄り道した公園だ。あそこにある魔のブランコや滑り台なる拷問器具は僕の記憶にも新しい。僕をブランコに乗せ押して喜ぶあの時のあおいねーたんは、まさにサイコパスか何かと思っちゃいましたよ。僕が半泣きになりながら助けを求めるとあおいねーたんはニヤニヤしながら更に押すのです!
かえでねーたんやあおいねーたんは優しくて素敵な女性ですが、時折僕に意地悪をして楽しむと言う反面があるのだ。本当に困ったものですよ……
「ピーポーピーポー♪」
「な、なんだ……!?」
いや、落ち着け……冷静になるんだ僕。この音は確か……救急車かパトカーなる物だとかえでねーたんに教えて貰った事がある。おまわりさんと言うのは、悪い人を捕まえる正義のヒーローだと聞いて居ます。ならば怖がる必要は無い。
「…………」
あれ、あそこの公園の木に隠れている女性……服装から見ておまわりさんではなかろうか? 僕の方を見てる? ま、まさか!? おまわりさんに変装した変態不審者かもしれない! テレビで見た事があるぞ……誘拐犯が警察や刑事に変装して、幼い子を誘拐すると言う事件。
―――エルちゃんは公園をダッシュで抜けようと試みた。
ふぁっ!? やっぱりあのお巡りさんに変装したお姉さん、僕を追い掛けて来てる!? 僕の熊さんのお財布が狙いなのか!? 何処で僕が大金を持ち歩いて居るとバレたんだ!? この5千円は絶対に渡してなるものか!
「うぎゃあっ!?」
エルちゃんは走った際に、公園のグランドで思いっ切り転んでしまったのである。
「ううっ……ぐすんっ。いたいの」
「お嬢ちゃん大丈夫!?」
「あうっ……」
エルちゃんの様子を木陰から見ていた黒髪の女性が走ってエルちゃんに近寄った。アホ毛が特徴の長い黒髪の美しい婦警である。
「よしよし〜痛くないからね♪」
詰んだ……何でこんな時に限っていつも転んじゃうのかな。これから僕はきっと、このお姉さんにボコボコにされて、熊さんのお財布を持ってかれるのだろう。
「あらあら、お嬢ちゃん。絆創膏と消毒液丁度持ってるからお姉さんが手当てしてあげるね♪」
「んぅ? へんたいふちんしゃ?」
「うふふ♡ 私は変態不審者ではありませんよ。本物の警察だよ♪ だから安心してね♪」
何だ……良かった。このお姉さんは大丈夫な人でした。なりすましとかで無く本物の警察……いや、待てよ? 本物の警察であれば、何か証明する物がある筈だ。僕がテレビで見た時に「この紋様が目に入らぬか!」と言った後に悪人達が絶望した顔で土下座をするのだ。確か……【みとこーもん】なるものだった気がする。
「あ、瑠璃奈!」
「魅音お疲れ様〜」
「およよ? この金髪ロリちゃん可愛いわね♡」
「魅音、この子が例のあの子よ」
「あ、なるほどね〜上からお達しが会った時は疑問しか浮かばなかったけど、もしかしてこの子……何処かのご令嬢なのかもしれないわね」
「恐らくそうかも。今日の護衛対象よ」
ふぇ? このお姉さん達……顔が同じ!? 分身したのか!? まさか……テレビで見た忍者!?
「お嬢ちゃん、私の名前は冴島瑠璃奈って言うんだ♪ こっちは妹の魅音だよ」
「お嬢ちゃん宜しくね♡ お嬢ちゃんのお名前は何て言うのかなぁ?」
「んみゅ、いちのちぇ……える!」
「おー! エルちゃん言うんだね♪ 可愛い名前♪」
2人の容姿を見ても……いや、良く見ると瑠璃奈お姉さんの方には、目の下に小さなホクロがあるぞ。パッと見だと判断が難しいけど、良く見れば雰囲気や前髪が違う。魅音お姉さんは左目を前髪で隠しており、瑠璃奈お姉さんは右目を前髪で隠しています。どちらもお淑やかな雰囲気の美人さんだ……
「んにゅ!」
「ごめんね〜エルちゃん、ちょっと染みるかも」
「あいあと……」
「あらあら♡ ありがとうがちゃんと言える何て凄いわね♪ そんな良い子には、お姉さんが撫で撫でしてあげる♪」
「あ! るり姉ずるい! 私も!」
エルちゃんは2人の婦警さんに愛でられ割とご満悦の様子である。
「少しベンチに座って休憩しよっか♪」
「ぐぬぬ……でも、おかいもの……」
「お菓子あるんだけど食べる?」
「おかち!? たべゆ!」
「うふふ♡ 向こうのベンチまでお姉さんが抱っこしてあげるね〜」
瑠璃奈はエルちゃんの身体を軽々と持ち上げた。
「ホントこの子可愛いわね♪ 気が狂いそう」
「それな! めっちゃ庇護欲がやばい……これ警察署に連れってたら、婦警の皆んなが一挙に押し寄せるよね」
「…………」
「ん? エルちゃん顔を赤くしてどうしたのかな?」
「なんでもないの……」
このお姉さんから物凄く良い匂いがする。かえでねーたんやあおいねーたんとは違う大人の女性の匂い。ほんのりと甘くてずっと嗅いでたくなるような匂いだ。更には僕の身体にお姉さんの柔らかなお胸が……
「るり姉! エルちゃんをこっちに頂戴よ!」
「はいはい、エルちゃんごめんね〜魅音お姉さんの膝の上に座りましょうね♪」
毎度思う事なのですが、僕には普通に座ると言う選択肢は無いのでしょうか? 家でもご飯食べる時は、あおいねーたん、かえでねーたんの膝の上です。前に僕が普通に椅子に座ると言ったら、かえでねーたんが泣きそうな顔をして【お姉ちゃんの膝の上嫌なの?】と有無を言わせない様な圧が凄かったのだ。
「エルちゃん、1人でおつかいする何て凄いなぁ♪」
「んぅ? ボク、しゅごい?」
「うんうん♪ だけど、気を付けないと駄目だからね? 外に出ると危険は沢山あるからね。私達みたいな悪い婦警とか……うふふ♡」
「んみゅ? ボク、がんばゆ!」
「魅音……やばい、私ロリコンになりそう」
「るり姉……涎が出てる! はしたないよ!」
何だかこの2人……かえでねーたんやあおいねーたんに何処か似てる気がする。見た目や声とか全然違うけど、胸に秘めたる物が同じなのかもしれない。
「何てスベスベな肌なの♡」
「んみゃあ!?」
「ごめんね。少しだけ触らせて♪」
「私も触りたい!」
瑠璃奈と魅音はエルちゃんの頬っぺたを探るように両手で触る。指先でエルちゃんの長い耳をなぞったり、髪の毛を触って匂いを嗅いだりとまるで飢えた獣の様にエルちゃんの事を貪り尽くすのである。
「この匂い……魅音、エルちゃんの髪に使ってるこのトリートメント【ガレンティーナ】の一本10万円はする超高級品よ!」
「マジか! エルちゃんごめん、近くで匂いもっと嗅がせて!」
何の事かさっぱり分からないですが、さっきから耳元で息を吹きかけられたりお姉さんの甘い吐息が……は!? 駄目だ! 僕にはかえでねーたんと言う婚約者が居るのだ! こんな所をかえでねーたんに見られでもしたら……ごくり。
◆楓視点
「ちょっと! 何よあの婦警さんは……!?」
「お姉ちゃん、落ち着いて!」
「私のエルちゃんに色目を使うなんて良い度胸してるじゃないの! しかも、エルちゃんはエルちゃんで満更でも無い様子で甘えてるわ! 私と言う者がありながら……くやちい!!! 浮気よ、浮気!!」
あんな美人婦警さんが2人も出て来る何て聞いて無いわよ! ここは私が出るしかなさそうよね!
「お姉ちゃん! 私達は遠くからそっと見守るって決めたでしょ!」
「ぐすんっ……だって! 何だかエルちゃんを寝取られた気分よ!」
ああぁ!? あのお姉さん達、今エルちゃんにキスした! エルちゃんが他の女とイチャイチャしているのを見ると胸にドス黒い何かが生まれそうな気がします。
「!? 葵ちゃん、あの婦警さんこっちに向かってドヤ顔してるわ!」
向こうの婦警さんも私達がこっそりと追跡している事は知っているのでしょう。今回はキララさん経由で警察の方達が協力して下さるのは嬉しいけど……あの婦警さん、見せ付けてくれるじゃないの!
「やれやれ……別に女性に抱かれるくらい良いじゃん。男がエルちゃんを抱いてる訳では無いし」
「ううっ……だってぇ」
楓は物陰から悔しそうな表情を浮かべてエルちゃん達のイチャイチャしている様子を見ていた。こう見えて楓は嫉妬や独占欲が強めな女性でもあるのだ。
「今日の夜、一緒にお風呂に入りながらエルちゃんに聞いてみるとしましょう♪ 他の女性に抱かれるのは気持ち良かった?って……うふふ♡」
「はいはい……ほら、お姉ちゃん行くよ。エルちゃんが歩き始めたよ」
「良し、引き続き追跡よ!」
こんばんみー! 二宮です。
現在、私の母親が乳癌でかなり侵攻しているとの事だそうで……ここでは多くは語りませんが、6月に手術が決まりました。めっちゃ心配です……




