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8.養女




 アルマロス様を連れて、私達は地上に戻ろうとするも途中冒険者達から攻撃を受けそうになってしまった。


「お前たち!アンデッドに取り憑かれているぞ!」


 と言われて水魔術をぶっ掛けられそうになった。

 流石大魔導師よね。

 魔力物理の混合結界を余裕で発動していた。


「あの、この人骸骨ですけど仲間なんです・・・。」

 

 大魔導師のローブと、黒では無く白い骨で喋るという事もあり何とかその場をやり過ごしたのだが・・・


「宿とかどうしましょう。このまま宮殿にお連れした方がいいのでしょうか?」


 私が今後を心配していると、アルマロス様がぽんっと手を打ち自分に魔術を掛けていた。


 闇属性の魔力がみるみる骨を覆うと、かつて肖像画で見た宮廷魔導師長の姿がそこにあった。


「認識阻害の応用、便利じゃろ〜!」

「それ出来るなら上層戻る時にやって下さいまし!」


「ゴーレム作成の手順で肉を補うと言うのもアリじゃな。」


 とんでもない技術力を見せつけられ、これだから大魔導師は・・・と言いたくなるが、歴代最高と言われた彼の魔力操作はとてつも無く繊細で精密な物だった。

 だが出来上がったお顔は、三十代位に若返っていた・・・

 しかも見た目も完璧人!土魔術とは思えない!


「実家帰るのも嫌じゃし。取り敢えず帝都の屋敷にでも行ってみるかの。」


 そう言った後思い出したように、儂の家まだ有る?

 と問いかけられた。


 その問いにはティルが答えた。

 そして、アルマロス様のお屋敷は状態保存を掛けられ大事に保存されているのだと教えていた。


 何でそんな事知ってるのかしら。


 親御さんが帝都で政治の中枢にでも居るのだろうか?

 もしや帝都貴族か!?シティー派令息か!!


 

 その後直ぐに帝都への便を取り、待ち時間は発着場のカフェへ。

 アルマロス様は当時高級品だったコーヒーが気軽に飲める事に驚きつつも喜んでいた。

 中身骨なのに飲めるし味も分かるらしい。不思議!


 途中、神官や聖女とその取り巻き達が次々とヴィーグリーズに到着したようで、ぞろぞろと通りすがる一団を目にする事になってしまった。


「なんじゃ、ヴィーもヤツらが嫌いか?」

「ええ、まぁ。故郷と大渓谷で色々ありまして・・・」


 つい顔を顰めてしまっていたので聖女嫌いを見抜かれてしまった。


「俺も苦手。ギラギラしてて怖いよね。神託だからと言って、結婚を迫ってくる人もいるし、凄く迷惑な人達なんだ。」


 どうやら三人共、聖女や神殿に酷い目に遭わされている同士だったみたい。

 より一層親近感が湧くけど、わたくし結局お金稼げなかったのですわぁあん!!


 でも、一人でアルマロス様を連れて行くのが不安だと言うティルの力になってあげたいし。

 それに飛行船の運賃を払って貰ってしまったし。

 しっかり付き添いますとも!






***



 帝都に到着すると、ティルがプチーツァを放つ。

 おうちの人に連絡かな?

 そう思っていると、アルマロスさんもプチーツァが欲しいと言う。

 前の個体はダンジョンに閉じ込められる直前に契約を切って逃したのだそうだ。


 優しい方なのですわね。ちょっとだけ見直しましてよ。


 そうこうしているうちに、空には竜騎士の編隊。

 あれはロイヤルガードの色だから、近衛騎士達も騎乗している筈。

 百年振りの帰還だし、そう言う待遇になるわよね。


 ドラゴン達が次々と発着場に降り立つと、近衛騎士達が降りてくる。


「カスパー殿下、お帰りなさい。」


 そうティルに向かって言うノアさんと、バッチリ目が合ってしまった。

 

 あああああ!!

 カスパー・テルティウス・オルテア!!

 継承権第二位の皇子やないかああああああ!!!


「その・・・身分を偽ってごめんなさい。」

「い、いえ!わたくしこそ存じ上げずご無礼を。お許しください。」


 そう言うと、ティルもといカスパー殿下が寂しそうな顔をしていた。

 くっそ!しょんぼり顔も尊い皇子やでぇ!


「ああ、大丈夫大丈夫。ヴィー君も身分を偽ってるから。伯爵令嬢だからね。」

「ちょっと!ノアさん!」


「どうせそこの失踪大魔導師見つけるまで一緒に冒険でもしていたんだろう? 仲間って事で、これまで通り仲良くしてれば良いんだよ。」


「折角友達になれたんだし、仲良くしてくれると嬉しい!」

「ティル・・・。わ、分かりました!」


 ボッチ同士の冒険仲間だもんね。

 帝都に友達が増えたと思えば・・・って!!

 この方皇子ですわよ!!



「所で、何でアルマロス様若返ってんの?肖像画はもっとじーさんだったよな?」

「あれは土魔術です。本体は白骨化しちゃってます。」


 ヒソヒソとノアさんと情報交換すると、これから皇帝の住まうアクィラ宮殿にアルマロス様をお連れするのだと言う。


 そして私は生まれて初めてドラゴンに騎乗した。


 って、わたくしも一緒に行くんですのぉ!?





***


 宮殿に着くと、ティルは一先ず自室に戻り謁見の準備をすると言う。


 従軍手続きの為に行政府にしか行ったことのない私が宮殿に!?


 無理無理無理!!


 それに実家に問題があるのだ。第二位の皇子と友達になったと知れたら、ルナリア姉様に何をされるか分からない!

 両親だって怖いよ!ポイ捨てした癖に、コレ絶対家に戻されるヤツですわよ!


「ノアさん、実家の事情でこれ以上は・・・。きっと皆様にご迷惑をお掛けしてしまいます。」


 ふう、と一息吐く思案顔のノアさん。

 ど〜したものかねぇ。と悩んでくれるのが有り難いが、私はこのまま街に帰りますわ。


「パーヴェル様。どうしたら良いんでしょうか。折角カスパー殿下にも同世代の友達が出来た様ですし。」


 おおい!ティルのボッチは秘匿してやってくださいましぃ!


「友達・・・ふむ、よろしい。私に考えがあるのでついて来なさい。」


 このお方って、パーヴェル・モルゲンシュテルン宰相だよね・・・?


 長い道のりをトコトコついて行くと、宰相府にある執務室に案内される。



「掛けなさい。」


「はい、失礼します。」

「ほー、宰相府も立派になったものじゃて。」


 アルマロス様は暇だからと言って何故か私について来てしまった。


「なに、簡単な事だ。フォルトーナに降格の圧力を掛け、三女を差し出せと脅せばよい。若しくは取り潰してもよいな。」


 ひええ!

 従者さんの入れてくれた紅茶を吹き出す所だったのですわ!

 実家問題が綺麗さっぱり更地に!?宰相様おっかなすぎ!


「フォルトーナか、レモンの産地じゃなぁ。」

「レモンの件ですが、今ではガリア沿岸部が有名産地になってしまってます・・・」

「百年でトレンドも大分変わってしまった様じゃな。」


 領地経営がね、そんなに上手くいってないのよフォルトーナ。


「では儂が引き取ろう。心根の良い娘じゃしの。」


 アルマロス様はそう言ってくれたが、宰相さんとしては彼の存在を暫く隠したいのだと言う。


 理由は、神殿勢力を潰す為だそうだ。


 第一位の継承権を持つルートヴィヒ・ノルト・ブルーム・アインスレーヴェや第二位のカスパー殿下。そして第三位のアルブレヒト・プリムス・カルデア。


 次代を担う彼らの為、悪しき風習と野望を持つ様になってしまった神殿を一掃する計画があるのだそうだ。


 とんでもない継承祝いですわね!

 って、神殿と聖女をぶっ潰そうとしているわたくしが言うのもアレですけれども!


「私が養女として迎えよう。ジークも妹ができたと喜ぶであろうからな。」


 未婚なのに息子さん?

 そう思っていると、“甥を養女にした”と訳の分からない事を言っていた。


「では、ヴィーには儂の助手と言う職をやろう。就活辛いと嘆いておったのが不憫での。これ程優秀なのに流石に百以上落ちたと言うのは可哀想じゃて。」


 そう言って私の水魔術を褒めてくれると、多属性優位の風潮を嘆いていた。


「ではヴァイオレットを弟子とするおつもりか?」

「左様。弟子を持ちたかったがダンジョンに幽閉じゃったからのう。」


 魔術で精神を汚染された者から受けたのは、強固な幽閉結界式。

 しかも槍を突き刺され毒を撒かれたそうだ。

 治癒と解毒に時間が掛かり、結界を解いた頃には魔物が群がっていた。ようやく結界を展開して上層へ戻ろうとするも、魔物達によって結界ごと更に下層へ落とされたそうだ。


 因みに最下層のラスボスはスケルトンドラゴンだったそうだ。

 怪我が治りきらず、弱っていたアルマロス様はダンジョンが踏破されるのを待ちつつ、救助を期待して最小限の結界を張って待機していたと言う。


 無理ゲーですわね!

 あと、言い難いけど死んで無い?それって一度死んで無い?



 そんな訳で、わたくしはヴァイオレット・モルゲンシュテルンとなり、大魔導師の助手兼弟子という事になりましたの。


 侯爵令嬢にレベルアップですわ!


 コレであの実家や姉と縁が切れたのだと思うと、嬉しさが勝る。

 前世の記憶を取り戻す前から、容姿も人格も能力も全てを否定されて来た。

 しかも最後は死にに行けと言わんばかりだったものね。


 そして何より嬉しいのは121回目で就職先が決まった事かな!


 やっと、就職先決まったよ!

 応援してくれた喫茶店クローリクの皆!ありがとう!!




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