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7.冒険者と骨





 安宿に戻り、さっきの話を纏めていく。


 馴染むまで時間が掛かった・・・、ね。

 もっと早く馴染めば皆を救えたのに。


 それにしても、私の願いか〜。

 やっぱ神様だし心の中まるっと読まれたんだろうね・・・


 私の願いは・・・

 聖女の認定を辞めさせて、神殿をぶっ潰すこと。

 金で買った聖女と言う名で好き放題やらかしてる奴らはマジでなんとかしないといけないと思う。

 私も酷い目に遭って来たけど、それ以上に沢山の人を不幸にして来たと思うしね。


 ただ・・・そうしたいけど、その前に治癒師をもっと増やして置かないと。

 あんなクソみたいな奴らでも光属性の治癒術は応急処置としては優秀だし、大渓谷にはあの力を無償で振るう彼女達が必要だから。


 ま、そのせいもあってここまでなぁなぁになってきちゃったんだろうけど。




 結局私は水神様の言う通り、魔石を呑み込んだ。

 試しに神聖属性魔力を外部出力してみるも、まだ放出範囲が狭く指先程度だった。


 体によく馴染んだし、今まで微量にあった神聖属性魔力が身体中を巡っているのが分かる。


 だけど、まだ時期じゃ無い。


 もっと地位を固めて置かないと簡単に神殿勢力に潰されてしまう。

 アイツら坊主の癖に金と権力持ち過ぎなのですわ。



 つまりは、やる事は一つ。


 出世ですわ!

 後は有力な皇子や皇女の後ろ盾が欲しいけど・・・


 うん、フォルトーナ家出身じゃ超絶無理ぃ!







***



 次の日、ソロでも出来そうな依頼が無いか確認してみる。


 そんな中、隣で掲示板を眺めていた青年とぶつかってしまった。


「すみません。依頼に夢中になってしまって。」

「いえ、こちらこそ不注意ですみません。」


 お互い即座に感じ取ったボッチ特有の空気。

 あ、これお仲間だわと思っていると食堂でお茶でもどうかと誘われた。


 人生初のナンパですわよ!

 まぁ実際は謝罪の意味だろうねー。

 それになんだか貴族のおぼっちゃま感あるわこの人。


「喜んで。」


 そう気軽に答え、食堂でコーヒーを一杯。

 目の前のお坊ちゃんはティルと名乗るも、明らかな偽名!

 私と同じ家がヤバい系かな?


 19歳で少し年上だが、甘そうなカフェオレを美味しそうに飲む姿が少年感凄いんですけど。可愛い。


 隣に素敵な殿方がいれば完璧だと思うのですわ。

 あらいけない。つい貴腐人がひょっこりはん。


「ヴィーさんもソロなの?」

「ええ、そうなの。帝都で就活したけど全然ダメで。今は魔術師余りだから、出稼ぎに来たの。」


 ティルは剣士だと言うが、恐らく騎士だろう。

 爽やかイケメンで良い目の保養になりますわねぇ。


「わた、俺も出稼ぎで。どうしても欲しい素材があったし。」


 一人称は私か。飲食が優雅だし本当にいい所のお坊ちゃんなんだろうなー。


「良かったら出稼ぎ中組まない?」

「良いんですか?是非お願いしたい!」


 お誘い成功!

 ようやく仲間が出来たよ!


 こうしてボッチの自称剣士とボッチの魔術師はバディとなったのでございます。


 では早速、ティルが欲しがってる素材があるという第一ダンジョンへGO!







***


 まぁね、分かってはいたけど流石帝国騎士だわ。

 ティルが強いのなんの。

 最低でも魔術騎士だわこれ。


 ダンジョン上層から中層なら一人でも余裕じゃないの?

 何で誘いを受けてくれたのかしら。


 いや、ボッチとボッチは仲間同士で惹かれ合ったのだよ。


「俺、火と氷の二属性なんだけど、混合式で漸く水が作れる程度なんだ。」

「凄く珍しい属性ね。主属性で火と氷はどちらかしか発現しない事が多いのに。」


 あんれー?

 この珍しい属性どっかで聞いたことありますわねぇ。

 大賢者とか魔女だったかな?

 ・・・思い出せないけど、まいっかですわ!


「さて、下層はまだ未攻略な場所が多いけどガイドにはスケルトンがいっぱいと書いてあるわね。」


 長い間未攻略のこのダンジョンは下層にアンデッド系満載しているそうです。


「アンデッドには水属性か雷属性だよね?」

「うん。だからここから先は宜しくお願いします!」


 雷属性は持ってないけど、水はざっぶんざっぶんするくらいありましてよ!オーッホッホッホ!


「観測術式発動っと。よし、誰も居ないわね。」


 魔法陣で安全確認しつつ早速このフロアにお水をダバァーしたいと思います。


 ダンジョンの中は魔素数が安定している。

 修行の為にも出来るだけ魔力変換したいと思いますわ。


「溢れよ!ヴァッサーファル!!」


 詠唱すれば滝のような水流が一気にフロアに流れ込む。

 ただ、予想以上に水量が多いし魔力も余り減らなかったので、自分でも驚いてしまった。


 なら水流操作はどうだろうかと考え、洗濯機の様にグルングルンと洗うように水を操作する。


「うわぁー、渦が見えるね!」


 驚いて目を見開きその光景を眺めるティルのわくわく顔が眩しい。

 穢れなき笑み過ぎる。尊い!



 暫く洗っていると更に下層に水が落ちて行き、水達は私の操作範囲から離れていった。


「では、行って見ましょ。」

「ありがとうヴィー。水魔術お疲れ様。」


 大渓谷の沈静化のお陰だろうか?

 魔物が弱い上少ない気がする。






***



 下層に降り奥まで進むと、とんでも無いモノがいた。


「いやぁ〜、助かったわい!アンデッドに囲まれてどれくらいかの?ようやくの解放じゃて!」


 魔物アンデッドは総じて黒いが、この喋る真っ白骸骨さんは・・・一体なんなのでしょうか?


 大魔導師のローブを羽織った骨・・・



「儂は宮廷魔導師長、アルマロス・グリゴリである!」


 その名前、確か・・・百年前に行方不明になった人だよね?


「ヴィー!見て見て!骨が喋ってる!」


 ワクワク顔ではしゃぐティルと、自己紹介したのに反応が薄くて困惑する骨。


 カオスですわ・・・


「きゅ、宮廷魔導師長、アルマロス・グリゴリである!」


 しかも2回も言っちゃうし・・・


「初めまして。冒険者の魔術師ヴィーとそちらが剣士ティルです。」

「おお、良かった。儂の声届いてないのかと不安になったんじゃぞ?そいで今は帝国暦何年なのだ?」


 年を教えると、百年経っている事に驚いて骨がカタカタ鳴っていた。

 十年から二十年位のものだと思っていたらしい。


「アルマロス様は帝国史では失踪した事になってますよ。」

「俺は、最果ての地への旅に出たって聞いたよ!」


 世界の最果てどころか、近場のダンジョンに閉じ込められていた訳ですわね。


「やはり神殿の罠じゃったか〜。」


 アルマロス様はこのダンジョン下層に閉じ込められた経緯をさらっと話してくれた。

 神殿という言葉が気になっていたけど、彼の語録には神殿と教会を廃止せよと言う物がある。


 神殿側は彼の失踪を神罰と宣言していたから、謀殺されたって事だったのね。


 死んで無いけど。

 いや、生きてると言えるのかしらこれ。


「だがしかーし!お目当てのラピスカサロの黒曜石大量ゲットじゃわい。」

「あ!それそれ!俺もそれを探しに来たんだ!」


「なんじゃ、それならもう一階層降りた所にゴロゴロあるぞい?」


 洗浄力の高い黒曜石はとても貴重で、アルマロス様が今持っている物の大きさなら国宝級の物になる。


 十年前ならね・・・


「これが有れば、上下水道も夢ではない!」


 もう帝国全土で完備されてますと言うとアルマロス様は地面に崩れ落ちた。


「今は安い水魔石と浄化石が有りますので。」

「そっか・・・百年じゃからの・・・」


 そしてティルがこのダンジョンに来た理由が分かった。


「疫病の薬と言えばラピスカサロの黒曜石だし、こないだも疫病が起こったばかりで、今は国中で薬が足りないんだ。だからずっと探してたんだ!」


 ティル優しい子!尊さ爆上げ!


 もしかしたら大災害で疫病被害を受けた地域の領主一族とかなのかな。


 この下の階層では、落ちて行った水魔術の効果もあり安全に黒曜石を回収出来たが、全回収後直ぐ、水魔術の効果切れで魔物が湧き上がって来たので、急いで撤退した。




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