6.ダンジョンシティ
大渓谷から帝都に戻り、殿部隊の功績を引っ提げ就活に挑むも、敢えなく惨敗したとです。
「君くらいの魔術師ってゴロゴロ居るからね〜。魔導師認定取ったらまた来て見てね〜。」
大体皆こう言うとです・・・。
因みに、魔導師認定試験も落ちたとです。
ヴァイオレットです・・・。
「ふわぁん!また落ちたよ!」
喫茶店クローリクでコーヒーを飲みながら、今日も悲しみの報告をすると、余りの不採用っぷりに客も含めて皆不憫そうな目線を向けて来る。
「今の帝都は魔術師就活激戦区だからなぁ。」
アルマさんの旦那さん、もといウィルさんが言う。
そうなのですわ!帝都は常に魔術師余りで就活が難しいのですわ!
理由は、大渓谷に割いて居た人員がかなり帝都に戻って来てるというものであった。
数年続くかもしれないと言うリューシャちゃんの大魔術の効果マジっパネエですわ・・・。
だがしかし。コネが無ければ就職も出来ない!
その点騎士は良いよね。特に帝国騎士は・・・
あ、そういえばリューシャちゃんは無事クローリクに来店してスフレチーズケーキを食べれたそうですわよ。
ーーヴィーちゃんをお嫁さんにしたい位美味しかった。
とか言う伝言を残してくれた。
改良したのはアルマさんだから、その言葉はアルマさんに言うべきですわよ!
魔女となったリューシャちゃんのその褒め言葉は、助手にしたいと言う意味である。
なので女性魔術師や魔導師に対する最高の栄誉でもあるが、彼女の場合、ただの食いしん坊が炸裂しただけなのよね。
「ノアさん、やっぱり魔女って皆食いしん坊なのですか?」
「いや、リューシャ君だけが特別食いしん坊なだけだよ。従軍前騎士寮に遊びに来たついでに食堂でパスタ十人前食べてたからな。」
帝国騎士の頂点。トップオブザトップ!三騎士の一人であるノア・オルセン卿はこの喫茶店クローリクの常連さんなのですわ。
わたくしも従軍前にケツを叩かれ激励されたのです。
前世ならセクハラで訴えられそうな体育会系おじさまですのよ。
「あぁ、大食いなのですか。それじゃ予備食間に合わない訳だ。」
「多目に持って行かせたらしいが、それでも足りなかったか。」
他愛もない話題でのんびり茶を楽しめるのって良いよね。
それにこのお店に通う常連さんは皆気さくで良い人ばかりだし、今日も皆でファビオさんとコレットちゃんの甘酸っぱくて初々しい様子に癒されている。
就活の疲れが取れたが、そろそろ資金面がヤバイ。
討伐戦役でもらった報奨金も全部実家に送られたせいで、わたくしの元には鐚一文入ってこなかったのですわ!
これは、出稼ぎに行くしか無い様ですわね!
「しばらくダンジョンにでも潜って見ます・・・」
私がそう言えば、皆賛同してくれた。
魔術の良い鍛錬になるし、冒険者登録すれば実家に頼らずとも身分を保証してもらえると言う。
皆、気付いていても知らない振りをしてくれていたようです。
***
と言うわけでダンジョンシティ、ヴィーグリーズに来ちゃったのですわ!
早速冒険者登録も出来たし、上級魔術師なのでタグの色がシルバーです!
ただし、ぼっちです・・・
何件かメンバー募集に応募してみたけど不採用だったとです。
基本一属性と弱い二属性が不採用の理由なのだそうだ。水属性で治癒魔術が使えないと言うのも大きなマイナスポイントらしい。
回復要員求む!が結構多いからしょうがないのですわ。
ソロでも出来そうな案件を探しながら、先ずは森にでも行ってみよう。
流石にヴィーグリーズの森は大渓谷の森よりマシでしょうし。
ーーそしてこの日。
今後の私の人生を変えてしまう出来事が起こったのです。
それも唐突に。
わたくしがてくてくソロで森に入ると、そこにはリューシャちゃんと同じ髪色をしたイカしたメンズが登場ですの。
しかも此方に手を振っているのですわ!
自分じゃ無いよね?
と、辺りを見渡すもわたくししか居なかったのです。
『やぁ、佐伯夏菜さん。随分と君を探したよ。』
はっ!?
あれ?これ頭の中に直接声が!?
『そう、これは心話と言ってね。ソレーユと話した時もこうだったろう?』
あ、これあれだわ。神だわ。
自称女神と同じ雰囲気感じるもん。
『安心おし。ソレーユは正真正銘神だよ。因みに彼女は太陽神。この世界の成立にも深く関わっている。』
おっふ、聖書マジ歴史書だったり?
『アレはルールブックだよ。何故か人間は聖書って言うけどね。』
と言うことは貴方が水の神様って事?
『正解。全ての魔女の祖であり、黒き灰を浄化した者だよ。』
なら一度聞きたかったんですけど、何で神殿放って置くんですか?
神の啓示を騙り放題ですよ?
『やっぱり女の子は賢いね。男どもは幾つになっても少年だからね。君の頭の中はよく整理されていて話しやすいよ。』
はぐらかしました?
『いや、答えよう。放置していたと言うかアレはもう直ぐ滅びてしまうからね。』
えっ?滅びるってどう言う・・・
『太陽神ソレーユの眷属である君がこの世界に来て16年と少し。そろそろ魂も馴染んできただろう。』
あ、嫌な予感しかしない。
『本当に君は賢いね。そうだよ、その通り。君には神聖属性があるんだよ。』
ほげええええ!!やっぱり今更それが出てくる!
『そう。この世界に唯一の本物の聖女と言うことになるね。
神格以上が持つ神聖属性は、稀に神の子や眷属にも与えられる物だ。ソレーユも面白い事考えたよね。』
あの、水神様。
私の前例ってどうなってます?
『君と同じ位に誕生したよ。ああ、そうか。一朗は勿論、君は松永やオースティン、米川、倉田にも気付いたのか。』
他にも居そうですけど、偉人達や学者の中に何人か転移者見つけました。
ぼっちだったんで学園の図書室が唯一のお友達でしたから。
『いや、うん、なんかごめんね。』
別に良いです。慣れてますから。
所で、ソレーユ様って何で私を転生させたんです?
真・聖女の制作の為だけじゃないですよね?
『巡る時の中で、君がいつも酷い死に方をするからなんとかしたかったそうだ。実に女神らしい理由だろう?』
えっ・・・私何度も酷い死に方してたんですか?
『死因は言わないでおくよ。君は越境転生での成功例だけど、あんな無茶を出来るのはソレーユぐらいのものさ。よっぽど思入れがあった様だね。』
そうでしたか・・・。
自称とか言ってすみませんでした。
『それはさておき、孫がお世話になったお礼もしたい。ちょっとだけ珍しい素材を分けてあげよう。』
ひえっ!
この魔石、ヤバそうな魔力発してるんですけど。
『飲み込んでみると良い。神聖属性発動の切っ掛けになると思う。そうしたら、いずれ君の願いも叶うだろう。』
そう言うと直ぐ、水神様は消えた。
手には白く輝く魔石。
「こんなもん飲めるかっ・・・!」