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【番外編】聖女の姉ですが、家を追い出され売り払われ転売された先の娼館で日々楽しく幸せに生きております。②

評価やブックマーク、誤字報告をありがとうございます。






 クレモナ共和国セストと接するオルテア帝国ルラーキ男爵領。

 此方は国境門のある街では最も栄える場所です。


 帝国の上質な化粧品を購入する為この街へお使いに来たわたくしは、偶然にも学園時代の同級生に出くわしてしまいました。


「まぁ、こんな場所でお会いするなんて。お久しぶりですね、カトレア様。・・・ところでそのお姿、冒険者にでもなられたのですか?修道院はどうなさったのです?」


 きっとわたくしが修道院から逃げ出したと思われたのでしょう。以前のわたくしならありそうですわね。


「エリーゼ様、学生時代大変なご迷惑をお掛けしたにも関わらずお声がけ下さり誠にありがとうございます。修道院の件ですが、わたくしは神官達に騙され、売られ、転売されて今はセストにあるお店の雑用や用心棒をさせて頂いております。」


「なんてこと・・・それは大変なご苦労をされたのですね。それにしても聖女ルナリア教会に派遣されている神官達が考えそうな事です。・・・それにしても用心棒とは勇ましいですね。」


 意外と平然としていらっしゃいますが、娼館という言葉はエリーゼ・ルラーキ男爵令嬢のお耳に入れるべきではないですわね。

 きっと卒倒されてしまうでしょう。


 ですがわたくしはここで聞き捨てならない言葉を耳にしてしまいました。


「末妹のヴァイオレット様ですが、ご家族に無理矢理大渓谷の討伐戦役に従軍させられたそうですよ。」


 その言葉を聞き、頭をメイスで撃ちつけられた様な気持ちでした。

 あまりの衝撃に、わたくしはこの後エリーゼ様とお話しした内容も殆ど頭に入って来ませんでした。


 そしてその日、お使いを済ませてとぼとぼとセストの街へ帰ると、夜空に異変が起こりました。


 沢山の星が空から降ってきたのです。


 流星に願いを唱えると、天空の女神様が叶えてくれると言うおまじないがありました。

 勿論信じているのは子供ぐらいのものですが、わたくしは祈らざるを得ませんでした。


 どうか、不幸にしてしまった末の妹が無事に帰れますようにと。

 何度も何度も口に出して祈りました。

 だって今のわたくしには、これくらいしか出来る事がないのですもの。



 その後ヴァイオレットを案じ不安な日々を過ごしておりました。

 でも、気休めだったおまじないが意外と効果が有った様なのです。


 妹は討伐戦役から戻るとフォルトーナ籍を抜け、オルテア帝国宰相であるパーヴェル・モルゲンシュテルン侯爵の養女となったのです。


 優しい父親と優しい姉に迎え入れられて、とても幸せそうだとエリーゼ様からお伺いする事が出来ました。


 学園時代は犬猿の仲でしたが、ありがたい事に最近はこんなわたくしとも仲良くして下さっております。

 本当にお優しいお方ですが、何故こんなにも良いお方を嫌っていたのでしょうか?

 今となっては理由すらわかりません。


 妹に起こった良い報告を聞き、嬉しさが溢れます。

 出来ることなど殆どない私ですが、ヴァイオレットには貯めたお金を渡して独立を支援しようと思っていました。


 でも、そんな事は必要無かったみたいですね。

 彼女は彼女で頑張っているのだから、今更意地悪な姉であった私が出て行っては台無しなのです。


「今の貴方はとても良いと思うの。そちらが本当の貴女だったと言う訳ね。」


 エリーゼ様はそう仰いますが、過去は変えられないのです。わたくしが酷い人間だったという事は確かな事実です。

 特にヴァイオレットにとっては辛い想い出となっている事でしょう。


 謝罪のしようもありません。

 ですからわたくしはこの先も祈り備え続けるだけです。


 今後もしヴァイオレットに何かあった時、匿名で送金が出来る様にとエリーゼ様がお力添えをして下さいました。


 そして、もしもわたくしの様に国を追われる様な事になれば、今度こそ姉としてしっかり守ろうと思います。


 モルゲンシュテルン家に居るのであれば安心ですが、ルナリアがどの様な策を弄するか分かったものではありませんし、備えは大切です。


 でも、先ずはそんな事が起こらない様に祈る事も大事ですわね。





 

***



「なぁ、頼むよカトレア!命懸けで魔物化したレッドドラゴン討伐して来たんだぜ?今日こそジャンヌちゃん、もしくはマリアナちゃんでもいいから!!」

「どちらもダメに決まっているでしょう!あまりしつこいとモニカさんを呼びますよ?」


 マティウスさんのお手付きとなったパーティーメンバーのモニカさんはとても可愛らしい方なのですが怒るととても怖いのです。


 それにしてもどうして皆さんこんな浮気性の男に引っかかってしまうのでしょうか?

 両手では足りない人数の女性達がマティウスさんの毒牙にかかっておりました。


「それに、わたくしの得意魔術を知っておいでですよね?最近は冒険のお陰か精度も上がっております。マティウスさんの大切なモノを狙って傷付ける事も容易ですわよ?」


 そう言った瞬間、それは勘弁!と言い残すと退散してくださいました。

 この文句は使えますわね。


 新たな撃退法を習得致しましたので、これからもしっかり警備業務を頑張りたいと思います。


 わたくしは用心棒という事もあって肉体労働なのですが、仕事の後に食べる食事がとても美味しいのです。


 それに仕事終わりに飲むエールが最高です。


 貴族令嬢でいるよりも、大公家に嫁入りする事よりも、きっとわたくしにはこの生活が性に合っているのでしょう。

 

 





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