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32.騒動の終わり

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 禁術使用の許可を取り、ルナリアへ自白効果のある術式を使用した宮廷魔導師達は困惑した。


「アンタみたいな無能に何を言っても無駄よ。でもきっと眷属様なら分かってくれるわ。私が一番優秀で素晴らしいのだと!」


 聖女を妹に持つエルフリーデは、その姿を見て大きなショックを受けていた。


 妹のロザリーはユヴァーリ領都で強大な魔物へと変容したが、魔女が出るまでも無く呆気なく領軍に討伐された。


 だが共に計画を立てたと言うルナリアは、まるで狂人の様に喚き散らすだけ。

 しかも、自身の妹に呪術式を打ち込もうとしていたという。


「きっとその内に眷属様が私を見出してくれて、あんた達は皆裁きを受けるんだわ!!その時が楽しみ!!」


 太陽神の眷属を排除しようとしていたにも拘らず、そんな発言を繰り返すようになったルナリアは反省など一切していないようで、術式発動以前の憔悴しきった姿と謝罪の言葉も演技だと言うことが分かり、その演技力に皆が驚いていた。


 聖女なんかやっていないで、劇場で女優にでもなれば良かったのにと、誰もが思う。


「もうこれ以上は意味がない様です。」

「そ、そうだな。刑が決まるまではどうする事も出来んだろう・・・。」


 彼等が尋問を止めて、部屋を出るとルナリアの笑い声が聞こえて来た。


「神の眷属の裁きで皆死ぬのだわ!お前達も、あの愚かな妹も!みんな、みんな死ぬのだわ!!あははは!」


 狂気をはらむ寒気のする捨て台詞だが、その神の眷属こそが愚かと言った己の妹だと言う事にも気付かずに高笑いを続けていた。


 そんな声を聞き、幽閉する以外無いだろうと誰しもが納得した。


 それに彼女と引き離された取り巻き達も少しずつ冷静さを取り戻しつつある様で、宮廷魔導師達の関心は次第にそちらに移っていった。







***


 神殿組織の解体も完了し、教会と聖女の件もあっという間に片付いた。


 でも、報告書を読むとルナリア姉さんのぶっ壊れっぷりが怖すぎる。




「ヴィーが無事で良かった。」


 ルナリア姉さんの狙いが、私の魔物化と言う恐ろしいものだったと知ったカスパー殿下もといティルが労いに来てくれました。


 それにしても宮殿や行政府の破壊にわたくしを使おうとしていたとは・・・

 大怪獣ヴィーにならずに済んで本当に良かったのですわ!

 


「ブレスを吐くと言う経験なんてしたくないよね。」

「ヴィーならブレスレベルの水魔術使えるし、わざわざ魔物化させる意味なんてあったのかな?」


 偶にヴィーグリーズで日帰り冒険する時に、高水圧の水魔術を使って魔物を倒す事がありましたので、その事を言ってくれているのですが・・・これって一応慰めてくれてるのですよね?


「口から高圧のお水を吐くという事も有り得たよね。見た目的にもかなりの不安があるから、魔物化しなくて本当によかった・・・!!」

「ヴィーは瘴気を常に浄化してるんだよね?だったら怨嗟と瘴気の呪術杭は刺さらないで消えちゃったんじゃないのかな?」


 ティルが冷静に指摘してくれた通り、どっちにしろ私が魔物化する事は有り得ませんでした。


 改めてこのチート能力に感謝しなければ。

 ソレーユ様ありがとうございます!



「あ、そう言えば。ティルは進路どうするの?」

「えっと、一応大臣職は辞退できたよ。後は宰相府の任官試験受けて国外情勢調査官に志願しようと思ってる。」


 ティルは自分の夢のために向かってちゃんと行動を始められた様です。

 ちょっと安心しました!


「ヴィーに異国のお土産いっぱい持って来るから楽しみにしててね。」

「それは超絶楽しみ!コーヒーやチョコレートみたいに新しい発見があるかもしれないよね。」

「そうそう。新しい食べ物も楽しみだし、南方の遺跡群にも興味があるし。」


 目標を話してくれるティルの爽やか笑顔はやはり尊いのですわぁ!


 この後もお茶を飲みながら色んな話をしたけど、初めての冒険仲間だもの。

 ちょっとだけ寂しく思ってもしょうがありませんわよね。






***


 代替わりの準備が続く中、神の眷属としての役割は一応終わったのですが、やはり神聖属性魔力はもりもりと増えてしまっており、今までの生活を続ける事が困難になって来てしまいました。


「ユヴァーリ侯爵ヴィクトリアの申し出によれば、魔女領ソーラメテオールか大魔女領サントアーリオに空きがあるそうだ。」


 移住先の手配をして下さるのが先帝ヴィルヘルム様。


 モルゲンシュテルン領でも良いのでは?と思ったが、眷属を有する領になるのはパワーバランス的に宜しくないと、養父様が仰っておりました。


 となると、ユヴァーリ領しか残っていないという事になるのです。


「ヴィーよ。パーヴェルはジークリンデでは無く姪に領地を継承するそうだが・・・。」


 そうなのです。養父様も皇帝陛下の退位と共に引退されてしまう上、爵位も次代に譲ると言うのです。


「ケイトリン様は私の派閥仲間でもあります。とても素晴らしい商売力と統治力をお持ちですので問題ないかと思われます。」


 きっと養父様も何か目標を見つけたのでしょう。最近そんな気配があります。


 そしてお師匠様は、教える事がまだまだあるので魔術工房さえ準備できれば何処でも良いんじゃない?と軽いノリで言って下さいました。


 私も学びたい事がいっぱいあるのでとても嬉しいのですが、魔女領でも一緒に来てくれるでしょうか?


 毎日が里帰りどころか、出戻りになってしまうのですわ。

 そこだけちょっと不安ですの・・・。


「そしてこれは儂からの願いだが、聞き流してくれて構わん・・・」


 ヴィルヘルム様は、ノアさんを魔女領に一緒に連れて行って欲しいと仰いました。


「あ!なるほどです!それならきっと燃え尽き症候群も治るかもしれませんね!」

「燃え尽き症候群か。面白い事を言うが、まさにそんな有様だ。・・・移住の件、其方が良ければそれとなく伝えてやって欲しい。」


 ただ、喫茶店クローリクから離れてしまう事がとても心残りでもあります。

 生涯常連で居たいけど、私は歳を取ることが出来ないのだと言われております。


 変わらない姿はエルフや一部の獣人でない限り、とても不自然な事になってしまうでしょう。


 いや?なんかそう言うのあまり気にしなそうな面々だし大丈夫かな?


 まぁ、それはさておき。

 迷惑をかける訳にも行かないので、偶にお邪魔する位になってしまうのは、きっと帝都に住み続けても変わらないのかも知れません。


 それにアイテム工房も化粧品制作も何処でも出来ます。


 ただ商品出荷が早まって、地獄を見そうな気もするのですが何とかなるでしょう!


 ・・・なりますわよね?

 なんとか・・・なりますわよね!?



 そう言えば、ユヴァーリ領から帝都までの配送に最速でも四日は掛かるのです・・・っ!!


 作り置きっ!作り置きですわ!!




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