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21.里帰りのお供

誤字報告や評価ブックマークありがとうございます。




「そろそろ実家に顔を出すとするかのぅ。」


 衛生局への治癒ポーション納品と皇帝陛下への謁見を済ませたお師匠様が、急に里帰りすると言い出した。


「ふむ、ならば旅の伴としてヴィーを連れて行かれよ。」


 養父様が何故か私にユヴァーリ領への同行を勧めて来ました。

 しかも旅費を出してくれると言うのだが、治癒ポーション完成記念の休暇という感じだろうか?


 だがしかし!あそこは魔境なのですわ!

 日々の襲撃のお陰で最近ちょっとずつ強くはなって来ているけど、流石にまだ早いと思いますの!


「少しの間身を隠しなさい。ユヴァーリに追手を遣わす愚か者はそうおらぬであろうしな。」

「は、はい・・・?」


 最近、帝都では皇子皇女だけでなく貴族間の抗争が激化して来ているのだそうだ。

 私はヴィルヘルミナ様という高位の皇女派閥に属しているし、これまで以上に狙われやすくなってしまっているという。


 養父様曰く、半端な順位の皇子皇女の最後の足掻きの真っ只中。

 その為、少しの間だけ帝都から避難して欲しいと言う。

 


「ジークリンデにもモルゲンシュテルン領へ行く様にと、そう言ったのだがな・・・」


 領へ戻す以前に、ジークお姉様はあの難易度ルナティックで有名な宰相府任官試験に合格してしまっていたのです・・・。

 さすおねなのですわ。

 あ、実際はさすおになのですが。


 養父様もびっくりしたそうですが、勿論試験に介入等してはおりません。

 しかも最も危険な特務監査官という役職に志願しているのだそうで、今我が家はちょっとした親子喧嘩勃発中なのですわ。


 言い合い方もクソほどレベルの高い親子喧嘩過ぎて、わたくし全くついていけませんの!

 喧嘩っていうか、ただの議論なのですけれど。


「ヴィーだけでも少しの間だけで良い。アルマロス殿と共に旅行に行ってはくれぬか?」


 このしょんぼり顔の養父様の顔を見たら否とは言い辛いけど、よく考えたらとんでもない魔境に送り込もうとしてませんこと!?


「儂も少し気になる事があっての。ヴィーを連れて行くことには賛成じゃよ。」

「でも入領申請通りますかね?前回は半年って言われましたよ?」


「それについては問題ないだろう。今は規定の魔素瘴気耐性値に届いている。私からも領城に通達しておこう。」


 耐性値・・・!確かにこの二年で魔力が増えると共に向上はしましたけれど!


「そうじゃな。儂も実家に顔を出すと先に便りを出そうかの。」


 ああ、これ駄目だ。行くのはもう決まってしまっておりますわね。


「分かりました。行きますよ!でも、カリーティカへの化粧品一括納入の後にして下さいませ!」


 それについては勿論だと言われ、結局作り置き分を一気にヴィルヘルミナ様に提出することになってしまった。

 しかもあの素敵なケースへ詰め詰めする楽しい作業が出来ないこの悲しみ・・・。


 でも、同郷の漂流者さんに会えるチャンスだ。

 大賢者の称号を持つ転移者佐藤氏は醤油や味醂と言った、あの懐かしい調味料を沢山作ってくれている。

 会食で照り焼き味に出会った時は死ぬ程驚きましたのよ!


 ユヴァーリ領都の商会でも買えるそうだし、頭を和食に切り替えて行きます!








***




 どうしてこうなった・・・


 いやね、飛行船貸し切りは分からなくもないんですの。手配したの養父様ですし。


 でもね、ユヴァーリ領の領都アレニロークの発着場にですね、何故か魔女様がお出迎えとは思わないでしょうが!!


「わぁい!ヴィーちゃん久しぶり!」


 星降の魔女となったリューシャちゃん。

 そして・・・


「碧光の魔女ディオーナの娘、マイヨーラと申します。アルマロス様には母が生前大変お世話になったと伺っております。お会い出来て光栄ですわ。」


 武器製作の名手、金剛石の魔女様マイヨーラ様ぁ!!

 何これ魔女様二人もお出迎えとかどうなってますの!?


「お初にお目に掛かる。我が名はヴィクトリア・ウェンティ・ユヴァーリ。大魔導師アルマロス・グリゴリ殿の百年振りのご帰還をお喜び申し上げる。」


 はい領主様でございます〜。やり手商人領主としてもとても有名な方でございますのよ。


 ところで、何でこんなにも歓待受けてしまってるんだろうか・・・。


「あれ?なんだかヴィーちゃん前と変わった?」

「ああ、お化粧の事かな?」

「違う違う。そうじゃなくて、何っていうのかな。じっじみたいな感じなの。」


 そう言うと、うーむと唸りながら小首を傾げるリューシャちゃんなのだが・・・


 この場でとんでもない事を仕出かしてくれたのだ。



「あははは!マイヨーラ叔母さん見てみて!ヴィーちゃんに跪けるよ!」


 そうです。おかしな事を言った後いきなり片膝をついて祈りのポーズを取ったのだ。


 魔女は貴族にも皇帝にも誰にも傅くことのない、神と人の狭間の生き物だと言うのに!


「あら、本当だわ!」


 って、おいいいい!!

 マイヨーラ様まで何してくれちゃってるんですのおおおおおお!!!???

 お祈りポーズやめてくださいましぃぃ!!!


 ほらぁ!!領主様やらその護衛騎士やらが驚愕の表情して固まってるじゃないのぉ!!!


「やはりそうか。予想通りじゃて。」

「ハァ!?お師匠様何言ってるんですか!?」


「太陽神ソレーユ様の眷属ならば、魔女達も気軽に膝を折れるのではないかと思っとったんじゃよ。」

「気軽にって!何を言ってるんですか?!」


 どうやら魔女様達は、人間等に向かって跪いたり祈りのポーズが何故か出来ないらしい。精神的にも物理的にも。

 それは魔女同士ですら出来ないとお師匠様は言う。


 唯一それが出来るのは水神様位のものなのだそうで、もしかしたら神の眷属ならイケるのかも?とお師匠様は思ったそうだ。


「わーい!祈りのポーズその3!」


 それは大地の神への祈りのポーズですわよね・・・


「リューシャちゃん・・・完全に遊んでるね。」

「だって、祈られる事ばかりだし。私だって祈ってみたかったの!それに干し肉とケーキのお礼の祈りも必要でしょう?」


 やはり食べ物・・・二年経って少し大人びた見た目になって来たと言うのに相変わらずですわね・・・


「やっぱり太陽の女神様への祈りの型が一番しっくりくるわね。」


 片膝をつき、右手を天に掲げて、左手は後ろ手ポーズの金剛石の魔女様・・・


 交互にやったら凝りほぐしに良さそうですわね・・・


「もうっ!お願いしますからお二人とも勘弁して下さいまし!」


 私が慌ててそう言えば、二人の魔女は楽しかったありがとうとお礼を言ってきた。

 本当に唐突過ぎて、訳がわからないのですわ!


「よかったのう、二人とも。その縛りは中々に不便じゃったろうからな。・・・それにしても、ディオはもう逝ってしまったのか・・・残念な事じゃて。」


 お師匠様は少しだけ寂しそうだったが、碧光の魔女様は叔母に当たる方の様で子供の頃からとても可愛がってもらったのだと言う。


 て言うか魔女様ってお師匠様以上にめっちゃご長寿じゃないですか!?



 いくら来賓用ゲートで人目は少ないと言っても、発着場から既にこんなカオスな状況になってしまったのですが・・・


 この先が不安ですの。

 避難どころじゃ無くなってしまった気がするんですの!




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