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12.納品準備は着々と




 護衛騎士のカミラさんがお屋敷に通う様になり一週間。

 彼女は、職務に忠実で無口な騎士さんと言う感じだった。


「折角の護衛なのに、工房に引き篭もりっきりですみません。」

「いえ、構いません、ヴァイオレット様は作業を続けてください。」


 おサボりや息抜きをしづらい空気を感じますの。

 何だか護られてると言うより監視されている気がするのですわ!


 だが、ヴィルヘルミナ様へ、成果を報告する為の良い案が浮かぶ。

 素材が良いからきっとイケるのですわ!



「カミラさん、わたくしの研究に力を貸して頂く事は可能でしょうか?」

「私に出来る事であれば、何なりと。」


 何だかすんなり承諾を頂けたので、先ずはデモンストレーションですわ。


 そしてお馴染みの素顔公開タイムでございます。


 やはりこの瞬間、相手の驚く顔はとても楽しいのです。

 えっ!?どゆこと!?と言いたげなお顔は、私にとってご褒美とも言えますの。


「驚きましたか?」

「い・・・いえ、滅相もございません。」

「良いのです。これが、これこそが私の技術なのです。」


 地味顔で笑顔を作ると、さっきまでしていた毎日メイクではなく、お出かけメイクを始める。

 ズラリと並ぶ自家製の化粧品を見たカミラさんが、そんなに!?と驚愕していた。


 ええ、そうですの。

 前は市販品を試行錯誤して使っておりましたが、今は全て自作となっておりますのよ。

 材料探しに苦労したけど、お師匠様から習っている治癒と薬草学が意外と役に立ちましたの。


 そしてこの長いメイク工程に、最早これは絵画。と、言い始めたカミラさんの言葉には同意せざるを得ない。




「如何ですか?印象がだいぶ変わったと思うのですが。」

「ヴァイオレット様は、とんでもない才能をお持ちだったのですね。感服いたしました!」


 驚いている場合ではなくってよ?

 次は貴女の番なのですから!!


「さ、カミラさん。こちらにお座り下さい。」


「まさかアレを私に!?護衛はどうするのです!」

「このお屋敷の結界は伊達ではありませんの。それにドール達もおりますから。さぁさぁ!こちらへ!」


 ドアに設置した魔法陣を魔石で起動して戸締り完了。

 その様子を見たカミラさんは観念したのか、椅子に座ってくれた。

 そして、お師匠様が作ったドール達を普通のメイドさんだと思っていたらしい。

 彼女達は家事をこなしてくれるとても賢いメイドドール達だが、勿論しっかり戦闘機能もあるのだ。


「さて、カミラさん。貴女はとても綺麗な顔立ちをしているので私程時間は掛からないのです。」


 だから安心して座っていて下さいと声を掛け、早速お顔を拭いたら、まずは余分な眉毛伐採から行きましょう。


 その後は美容液と下地をぬりぬり。

 この世界の美容液って効果が高いのよね。やっぱり魔術がある世界って良いわぁ。


 よし。少年っぽい雰囲気だったから、真逆で行こう。

 騎士だから凛々しいお姉様風!


 そんな訳で基本のブラウンメイクを始めたけど、すっごい美人な予感。

 くう!羨ましいですわ!


 しかも卵型で綺麗な輪郭にはシェーディング無用!

 後はグローハイライターで艶感を補正するだけ。

 ただしもう少し優しい印象を足したいのでチークは最小量を少し下気味に入れて行く。


 リップは肌色に似合う様にパレットで混色してから塗って、最後は必殺ぷる艶グロス!


「髪も少し整えますね。」

 髪は短いけど整髪料でエアリーにふんわり整えて完成!


「はい、鏡をどうぞ。」

 そう言って大きめの鏡を向けると、驚きに目を丸くしてる。

 だがしかし別嬪は結局どんな表情をしても別嬪なのだ。


「なっ!?」


 騎士服のせいでくっころ感が出てしまったけど良い仕上がりだ。

 そろそろ夕方だし、カミラさんには成果報告の為にカルデア家のお屋敷に戻ってもらう事にした。




 そして、その日の夜ピッピちゃんがヴィルヘルミナ様のプチーツァから伝言を受信した様で、私の肩にとまりピピッと鳴いた。


『ヴィー!確かに成果は確認した!これ程とは思わなかった。実に素晴らしい!フハハハハ!』


 可愛らしいピッピちゃんから勇ましいヴィルヘルミナ様の笑い声が聞こえて、凄く違和感なのですわ。


「でも、喜んでもらえたみたいで良かった。」




 その後も毎日カミラさんに多種多様なメイクを施してはヴィルヘルミナ様の元へ送り続けた。


 カミラさんは今まで、帝都の少女達から向けられる熱っぽい視線に困惑していたと言う。

 まあ、爽やか少年風でカルデア領の騎士服着てたらね、そうなりますわよ。


 だが最近は異性の視線が多くなって、これが普通なのだろうと思う様になったそうだ。


 普通なわけあるかい!美人だから振り返ったり凝視してしまうんですの!





***



 今私は商売とお師匠様の助手に加え、勉強もしている。

 なので、ヴィルヘルミナ様の伝手を頼り化粧品の容器を外注にして、楽をしてしまいましたの。


 だって喫茶店クローリクに行く時間がなくなってしまうもの!

 わたくしの癒しタイムが無くなってしまったら、こんなに頑張れませんのよぉ!!



 そんな訳でして、私が参加するメルキュールドパルファンのコスメ部門準備は着々と進んでいっております。


 納入されたケースも凄くお洒落な装飾がされていて、詰める作業が最早ご褒美なのですわ!


 キラッキラで女子ウケしそうだけれど、値段が恐ろしい事になりそうです。

 化粧品素材のコストより容器の方が・・・ね。


 それにしたって、状態保存の魔術が便利。

 学園ではあまり上手く出来なかったけど、お師匠様の教えが良いお陰か今では普通に扱えるようになりました!

 だから、使用期限はあって無いような物なのだ。


 だから、どんどん作り溜めです。



「おお、大分出来ておるの。古来より女性の美にまつわる代物は金になると相場が決まっておるし、この帝国に別嬪が増えるのは良き事じゃて。」


「魔力操作の訓練にもなりますし、師匠の教えが役立っていますから。街に美人が増えるのは師匠の功績でもありますよ!」


「ハハハ!そうかそうか。して、魔力操作時の固定値はどうかの?」

「それが、まだまだ師匠には追い付けそうもないです。」



 そして、流石は元宮廷魔導師長。

 最近お師匠様が、私の魔力に異物が混ざっている事に気が付き始めているようなのです。

 最小で魔力を扱う際に、どうしても微量にアレが混ざってしまうので・・・


 でも、敢えて聞いて来ない辺り紳士というか気遣いと言うか・・・


 ずっと魔術や治癒術の勉強を教えてくれているし、弟子にもしてくれた。

 魔力量が足りなくて、魔導師試験には未だ受からないけど、その度に励ましてくれる。


 師であり、時には友達であり研究仲間でもある。


 モルゲンシュテルン家の養父様やお姉様以上に一緒に居る時間が長く、最早家族と勝手に思ってる。



 だからこそお師匠様には話しておきたい。

 けれど、何をどう話したら良いものか・・・

 



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