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11.仕事の依頼



 起業して一年ほど経ったある日の事。



 帝国女子の憧れである継承権第九位の皇女ヴィルヘルミナ・メルクーリ・カルデアから茶会の招待状が届く。


 しかも何故か継承権第一位のルートヴィヒ様が速達と言って手渡してきた・・・


「ふむ、冷たい紅茶も良い物だな。しかもこのグラスが美しい。」


 工房の応接用ソファーにデーンと座り、帰る気配を見せない。

 以前の私なら高位の皇子なんかが現れたら緊張でガクブルしてただろうけど、最近は行政府や宮廷の要人達ともよく接する機会があるので慣れっこなのですわ。


「ヴィーよ。オッサンどもの企みに協力している様だが、それは自らの意思か?」


 多分、神殿&聖女潰しの件でしょう。

 流石は第一位。バレッバレでしたわね。


「継承祝いの件でしたら、私自ら願い出ました。」


 私のその回答に、ルートヴィヒ様は難しい顔をしている。


「少しだけ聞いてもらいたい話がある。」

 

 ルートヴィヒ様にとって気掛かりなのは、真面目に真摯に祈る神官さん達もいると言う事だった。


 聖書に解釈は要らない。

 神々が下さったお言葉に別の意味を持たせるなどという事はあってはならない。


 つまりは原典主義者さん達が居るそうなのだが、その多くはクレモナ共和国の教会の神官と修道士達。

 勿論帝国国内にも居る。


 清貧な生活と祈りの日々。

 慈善活動や孤児院の運営もそういった派閥の人達が行っていた。

 小国群のある地方では弱者のためのセーフティネットとしても機能しているとも言う。


「そうだったのですか・・・。」

「例の件を決行するならば、代案が必要になるな。」


 代案と言う難しい宿題を置いて、ルートヴィヒ様は帰って行った。

 その件も有るけど治癒師の数も増やしたい。

 それに光属性の治癒は便利な応急処置でも有るし。


 宰相様は、神殿全てを排除したいと考えているし応急処置や治癒については宮廷魔導師やお師匠様に治癒ポーションの制作研究を依頼している。


 治癒ポーションは未だかつて誰もなし得なかった代物なんですが・・・

 魔女にも作れない代物なのに私達には無理じゃ無いのかしら?







***


 何故かお呼ばれしたお茶会当日、緊張しながらも帝都のカルデア邸へ向かうとそのデカさと豪華さに緊張がマックス!


 しかも何でわたくしがお呼ばれされたのか全く分からないのですわ!


「きょ、今日はお呼びいただきまして、誠にありがとうございます。」


 カミカミな上声が震えてしまいましたの!

 この屋敷の主人である大公夫人のヒルデガルド様にお出迎えされたらこうもなりましてよ!


「よくいらっしゃいましたね。ヴァイオレットさん。是非ヴィルヘルミナとも仲良くしてあげてちょうだいね。」


「初めまして。ヴィルヘルミナ・メルクーリ・カルデアよ。お茶会は建前、貴女とは少しお話をしたかったの。」

「こ、こここ光栄です!」


 帝国で一番人気のある調香師のヴィルヘルミナ様。

 今日も凛々しい上にお美しい!


 屋敷を案内されサロンへ、と思ったら通り過ぎて魔術工房へ案内されてしまったのです。


 そして開口一番・・・


「ノア・オルセン、レオンハルト・ベルガー、カスパー・テルティウス・オルテアに、パーヴェル・モルゲンシュテルン。後はヴィンセント・ストーメアもかしら。この中の誰が本命なのかしら?」


「んぼっふ!」


 余りにも身に覚えのない友人知人達の名前に盛大に咽せて吹き出してしまった。しかも何故に養父様まで!

 もしやこれはアレですの?

 わたくしの妄想を感知されてしまったとでもいうのかしら!?


「自覚無しか。」

「ず、ずみばぜん、言っている意味がゲッホゲホ」


 それに最近の最推しはレムリア王国の王子三兄弟ですの。

 他の方達は今、萌の休息期でしてよ?


「やはり予想通り何もないのね。」


 ヴィルヘルミナ様は、納得という表情をしているのだが、意味が分からない。


「貴女にまつわるお噂一覧にある殿方達よ。中でもカスパー殿下とオルセン卿は噂が出ただけでも命の危険があるわ。」


「ひぃ!皆様友人でございます!しかも養父様まで!私にやましい気持ちなど一切ございません!なのでセーフでございますよね!?」


「軽い噂でもアウトよ。」


 勘弁してくださいまし!まだやりたい事、やらなければならない事がいっぱいですの!

 死にたくないいいい!


「所で、貴女は派閥が掴めない。誰の意に沿い動いているのかしら?宰相と思いきやそうでもない様だし。カスパー殿下でも無いわよね。」

「えっと、派閥でございますか?一応無所属でございます。」


 強いて言うなれば・・・

 今は、レムリア王国の不憫王子×騎士王子派でございますの。


「貴女、私の派閥に入る気はない?」

「はいっ!?わ、わわ私がヴィルヘルミナ様の派閥に!?」

「そう。少し調べたけど、貴女に関わった女性は皆美しくなってゆくそうね。聞けば侍女達にもその技を施したとか。」


 もしかして前世メイクの事かな。

 スフレチーズケーキの時とは違って、全然広まらなかったからヴィルヘルミナ様のお耳に入っているとは思わなかった。


「私はルートヴィヒ派閥だけど、自分の派閥も勿論有るわ。と言うか商売仲間と言う方が正しいわね。」


 そして、彼女の持つ商会”メルキュールドパルファン“で化粧品部門を立ち上げたいと言う。


「だからヴァイオレット。貴女の力を貸してもらえないかしら?」

「はい喜んで!」


 ヴィルヘルミナ様も引くぐらいの即答だった。


 有力な皇子や皇女の後ろ盾が欲しかったのも事実。

 だが、それ以上に彼女の創り出す香が大好きだった。

 

 そして業務提携している大公夫人ヒルデガルド様のプルミエールブリエ服飾商会。こちらも帝国女子の憧れであり流行の発信と言えばここである。


 帝国女子に大きな影響力を持つ彼女の派閥は、立場の強化としては最高だしね。


「受けてくれて嬉しいわ。」


 そう言って下さった後、ヴィルヘルミナ様がプチーツァに声を掛ける。

 すると直ぐに伝令を伝えた様で、魔術工房へ騎士が入ってくる。


「お呼びと。」

「カミラ、こちらは私の新しい商売仲間よ。護ってちょうだい。」


「は!かしこまりました!」


 どうやら女性だ。くっころ感は無いけど女性騎士さんだった様で、護衛として私に付けてくれるのだと言う。

 中性的でとても爽やかですわ。


 ああ、そうか。

 ヴィルヘルミナ様はわたくしの命の危機を心配してくださったのですわね・・・!

 って、襲撃前提ですの!?


「ヴァイオレット・モルゲンシュテルンと申します。どうぞよろしくお願い致します。」


「カミラです。以後はお任せ下さい。」


 モルゲンシュテルン家には護衛騎士が居るけど、私はお師匠様の屋敷に住み込み状態なので特に護衛騎士を連れてはいなかった。


 それに、あのお屋敷に護衛は要りませんものね。戦力的な意味で。


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