表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
メビウス館の殺人  作者: 菱川あいず
止まらない殺人
27/30

ねじれ⑶

 次に、月奈殺しである。



 これも、メビウス館のねじれさえ理解していれば、そう難しいトリックではない。



 つまり、被害者たちの認識とは違い、月奈の客室は3階に存在しており、()()()()()()()()()()()()()()()()()、それだけのことだ。



 幹康が月奈を殺したのは、幹康が、タバコを理由にして中座をしたタイミングであった。


 タバコを理由にすれば、10分程度席を外していても不自然ではない。



 そのときに幹康は、3階の月奈の客室に行き、事前に用意した紐で月奈の首を絞め、殺害した。



 月奈はチェーンロックこそ掛けていたものの、拍子抜けするくらいに無防備であり、幹康が「一杯どうだ?」と言って誘うと、すぐにチェーンを外してくれたのだ。



 一太は、幹康が犯罪を行うとすれば、一太が2階を見張っていないタイミング、すなわち、一太が中座をしているタイミングだと考えていたようだが、実際はその逆であり、幹康が自由に犯行を実現できたのは、幹康が中座をしているタイミングだったのである。



 一太は、メビウス館のねじれに完全に翻弄されたのだ。




 月奈の遺体を焼却炉で燃やしたのも、言うまでもなく、幹康である。

 

 これも安曇の死体を燃やしたのと同様、「幹康殺し」の伏線に過ぎない。




 そして、3つ目が「幹康殺し」である。



 無論、幹康が幹康を殺すはずはなく、実際に「幹康」として殺されたのは、地下1階の広間に監禁されていた沙耶斗である。



 沙耶斗は、このためだけに、このときまで生かしておいたのだ。



 幹康は、沙耶斗をトイレに連れて行くと、ナイフで胸を刺して殺害した。



 その後、ノコギリを使って、沙耶斗の左腕を切断した。



 切断した左腕には、幹康の腕時計を巻く。


 これにより、「幹康の左腕」を作り、それをあえて燃やさず、焼却炉で燃え残ったものと見せかけることによって、殺されたのが幹康だと見せかけたのである。


 被害者たちの認識では、不磨島にいる男性は、幹康と一太だけなのであるから、焼却炉から男性の腕が見つかれば、一太が五体満足である以上、それは幹康のものだと断定するはずである。



 安曇と月奈の死体を燃やしたのは、この「幹康殺し」のときに焼却炉を使うことを不自然に見せないためである。



 「幹康の死体」だけが「消失」したのであれば、幹康は実はどこかで生きているのではないかと疑われかねない。




 残りの未優殺し、一太殺しに関しては、トリックはない。



 ただ単に、地下1階の広間に隠れていた幹康を2人が見つけられなかっただけである。




 未優は、犯人を相当警戒しており、幹康がドアをノックしてもなかなかチェーンを外してくれなかったが、幹康が声を掛けると、夫がまだ生存していることに希望を見出したのか、ドアを開け、抱きついてきた。



 未優の幹康に対する警戒心はその程度のものだったから、未優を広間のメビウスの輪の像の前に連れて行き、そこでナイフで殺害するのは容易なことだった。



 そして、一太に関しては、そろそろ地下1階の広間の存在に気付くところであったが、もう少しだけ考えが足りなかったようだ。



 地下1階と隠し通路でつながっている2階のナンバープレート2の部屋で休んでいた幹康は、2階のナンバープレート5、4、3の客室のドアを一太が開け閉めしていることに気付き、このまま2の部屋におびき寄せて殺害しようと企てた。



 そこで、部屋の奥にある隠し通路へと隠れた。

 そのとき、一太が2の部屋に誰かいることに気付くよう、わざと大きな音を立てて隠し扉を閉めた。



 そして、幹康の狙いどおり、2の部屋に入ってきた一太を、幹康は銃殺した。




 以上が、「メビウス館の殺人」の全容である。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ