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血痕
一太の自衛が功を奏したのか、はたまた、最初から一太は犯人から狙われてなかったのか分からないが、一太は3人目の被害者にはならなかった。
3人目の被害者は、幹康だったのである。
翌朝、館内に幹康の姿はなかった。
その代わり、館の外にあるトイレに、大量の血痕が残されていた。
加えて、そこにはやはり例のバツマークが描かれていた。
幹康は、トイレに行くために外に出たときに、犯人に襲われたようであった。
しかし、簡易トイレに残されていたのは、血痕のみであり、幹康の死体はそこにはなく、ただ、死体を引きずったような血痕が、ある場所に向かってまっすぐ伸びていた。
その場所は、言うまでもない。
焼却炉である。
すでに焼却炉は燃え切った後であり、一太が焼却炉の扉を開けると、安曇と月奈の骨に、新たな人骨が加わっていた。
それは幹康のもので間違いなかった。
なぜなら、焼却炉には、幹康の腕の一部が焼けずに残っていたからである。
その腕は、太さや骨格からして間違いなく男性の左腕であり、さらに幹康が愛用していた銀とプラチナの腕時計が手首に巻かれていた。




