裏切られた確信
昨夜は一睡もしていなかったものの、不思議と眠気は襲ってこなかったため、一太は、未優とともに1階の広間へと降りて行った。
未優には十分な睡眠時間があったはずなのに、顔色は優れなかった。
一太と幹康が廊下で見張っていたものの、完全に安心することはできず、ベッドの上で眠れない時間を過ごしたということかもしれない。
未優が殺人犯にビクビクしていたことは明白で、その証拠に未優は、広間に着いてもソファーに腰掛けることなく、しばらくウロウロと歩いた上で、
「月奈さんは無事かしら」
と震える声で言った。
「無事なはずだよ。犯人がどんな奴であれ、俺と幹康が見張っていた以上、昨夜に人を殺すことはできなかったはずだから」
「それは分かってる。でも、心配なの」
つまり、未優は、一刻も早く月奈の生存確認をしたいということだ。
窓がない館であるため、陽の光が差し込んでくることはないが、時計を確認すると朝の8時を回っていた。
もしも月奈がまだ寝ていたとしても、起こしに行ったことで文句を言われるような時間ではないだろう。
一太は、未優とともに、月奈の客室へと向かうことにした。
無論、割れたシャンデリアを避けるため、降りてきた方とは別の階段を使って。
未優が不安になる気持ちも分からなくはなかったが、合理的に考えて、月奈が無事でないはずはなかった。
そのため、月奈の客室のドアをノックしたとき、すぐに月奈の返事が返ってくることを、一太は確信していた。
しかし、何度ノックしても、月奈からは何の反応もなかった。
最悪の事態を察した未優は涙目で一太の顔を見上げる。
一太の腕を掴んだ手は小刻みに震えている。
--そんなはずはない。
きっと、月奈はイヤホンで音楽でも聞いていて、ノック音に気付いていないだけなのだ。
「入るぞ」と一言断り、一太がドアノブを引く。
安曇のときとは違い、チェーンロックに阻まれることなく、ドアはスーッと最後まで開き切った。
未優が悲鳴をあげる
果たしてベッドの上にいたのは、ひも状の物が首に巻かれ、醜い形相のまま事切れた月奈の遺骸であった。