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幼馴染にふられたので双子の義妹にひたすら甘える

人は疲れるんです。だって、それは生きてるってことなんだから……。

「俺と付き合ってください!!」


 告白とは人生における一大イベントのひとつ。しかも、俺の場合は小さい頃からずっと一緒に居た幼馴染にだ。

 小学生の頃まではそうでもなかったが、中学に入った頃から、やたらと幼馴染である新田にった空実そらみのことが気になるようになってしまった。

 

 この気持ちはなんだ? わからない。

 だけど、どうしても空実のことを目で追ってしまう。そのことを、親友である四島しじま夏騎なつきに聞いてみた。

 夏騎は、もう俺にはもったいないぐらいのイケメンな奴で、俺なんかと違って女性人気は絶大。ラブレターや告白の数は、十や二十じゃ足りないほど。


 ファッションモデルもやっているのに、俺なんかと一緒にアニメやゲームの話題で盛り上がれる。

 マジで完璧なんだ。そんな親友が、俺の質問にこう答えた。


一晴かずはる。それは……恋だ」


 衝撃だった。

 そうか。俺は知らぬ間に、幼馴染へ恋心を抱いていたんだと。その言葉に納得した俺は、決意した。

 この気持ちが嘘じゃないと証明するために、告白しようと。


 空実は、結構がさつな性格をしているが、そんなところが可愛いと意外と人気が高い。

 胸も大きく、男子どもの視線は釘付けだ。

 だからこそ、恋心だと理解した俺は行動に出る。空実が他の誰かと付き合う前に、俺が!


「……」


 誰もいない校舎裏。

 俺は、人生で一番の決め顔で告白した。九十度の角度で頭を下げ、まっすぐ右腕を相手に差し出す。

 さあ、これで後は空実の返事を待つだけだ。


「ごめんなさい」

「え?」


 はっきりとした言葉。

 聞き間違いじゃないかと顔をあげると、空実と視線があう。

 きりっとした強きに満ちた瞳。

 赤みがかった茶色の長い髪の毛は、風でなびき、美しい。


「一晴のことは嫌いじゃないけど。恋愛対象としては見ていないの。うん、嫌いじゃないけど」


 二回も嫌いじゃないけどと言い、空実は無言でその場を去っていく。残された俺はしばらく動かなくなり、空を見上げる。


「一晴……」


 そこへやってきたのは、我が親友夏騎だった。本気で悲しんでいる表情で、俺の右肩に手を置き、一言。


「ジュース、おごるよ」


 その瞬間、俺は現実に戻る。

 あぁ、俺……ふられたんだなって。



・・・・



 幼馴染に告白し、見事撃沈した俺は、夏騎の励ましもあって少しは回復したが。

 それでも、まだどこか今日のことが引きずっている。

 俺は、夕飯の時も、風呂に入っている時も、上の空だった。そのためか両親はかなり心配していた。

 口では大丈夫だと伝えても、やはり顔には出てしまっている。


「明日からどうしようかな……」


 話には聞いていたが、こうも撃沈すると落ち込むものなのか。

 明日のことを考えると憂鬱になる。

 明日からは、まともに空実のことを見れないし、話しかけられないだろう。

 

「あれ?」

 

 自室に入ると、俺のベッドに上に見知った二人が座っていた。

 白銀の髪の毛が特徴的なそっくりな少女達。

 琥珀色の瞳で、入ってきた俺をじっと見つめていた。その姿は、まるで人形のよう。

 

「ど、どうしたの? 俺の部屋で」


 彼女達は、俺の父親が再婚した母親が連れていた双子。

 俺から見て、左に座っているのがアルフィーちゃんで、右がエルウィーちゃん。本当にそっくりなので、髪型や服装を一緒にすると見分けがつかないが、最近になってようやく見分けがつくようになってきたんだ。


 最初に出会った時は、本当に人形のようで、何を考えているかわからなかった。常に二人一組で居て、一緒に暮らすようになって一年が経つけど、一度も声を聞いたことがない。

 というか、完全に嫌われている。

 だって、俺が話しかけても無視するし、一緒にゲームをしようと誘っても無視。近くには居るんだけど、ただそれだけ。


 なので、俺の部屋に居ることに驚きを隠せない。

 二人の部屋は、俺の隣だけど……間違えた、てことはないよな。ちゃんとドアの前にネームプレートが貼り付けてあるし。


「えーっと」


 やばい。どうすればいいんだ。今日の俺はただでさえ、精神的に第ダメージを負っているというのに。

 

「ドア、閉めて」

「え?」


 困惑していると、アルフィーちゃんが喋る。は、始めて声を聞いた。うお! めちゃくちゃ可愛い声だ。

 妹系キャラとかはまり役になりそう!


「……これでいい?」


 とりあえず、俺はアルフィーちゃんの言う通りにドアを閉めた。

 

「うん。じゃあ、こっちに来て」


 と、次はエルウィーちゃんが喋りながら俺のことを手招きする。

 エルウィーちゃんもなかなか。

 無表情ロリっこがはまり役になりそうだな。


「こ、こう?」


 指示通りに俺は二人の目の前まで移動する。手を伸ばせば、すぐ彼女達の顔を触れるぐらいの距離だ。

 というか、なんだ? これから何が始まるんだ。


「しゃがんで」

「こ、こうでしょうか?」


 やばい。緊張しすぎて、なぜか敬語になってしまっている。


「……」

「……」


 なんだ、これ。にらめっこか? 彼女達は、俺とにらめっこをしたいのか? くぅ! 一年も一緒に暮らしているのに妹達の考えが読めないとは! 兄として恥ずべきこと! いや、まだ一年なんだよな……しかもその間に、一度だって会話をしてないっていう。


「あのー」


 ついにしびれを切らした俺が声を出すと。


「ふふ」

「せーの」


 え? せーのって。


『えい!!』

「ふお!?」


 何をされるかと身構えたが、二人同時に俺のことを抱き締めてきたではないか。

 え、ちょ、なにが……いや、というか。


(あっ、なんだろうこの気持ち……心を安らぐ……不思議……)


 って、いやいや! マジでなんだこの状況は。

 今まで、俺のことを嫌っていたと思っていた妹達が、こんなにも積極的に抱き締めてくれている? 俺の理解が追い付かない! あー! どうなっているんだ!


「お兄ちゃん、ふられたんだよね」


 お兄ちゃん!? あぁ、なんて甘美な響き……ん? 


「な、なんでそのことを」


 そうだ。どうしてアルフィーちゃんはそのことを知っているんだ。俺がふられたことは、告白した相手である空実とそれを見ていた夏騎しかいないはず。

 他の人には教えていないから、家族でさえ知らないことを。

 驚きのあまり顔をあげる。

 そこには、小学生とは思えないほど艶のある表情で俺を見下ろしていた二人が視界に映る。


「私たちは、なんでも知ってるよ」


 と、エルウィーちゃんが言い。


「だって、ずっとお兄ちゃんのことを見てきたんだもん」


 アルフィーちゃんが、俺の頬に手を当てて続く。

 俺のことをずっと見ていた? 

 確かに、この一年は一緒に暮らしていたから観察されることはあっただろうけど……え? じゃあ、今日もどこからか観察されていたってこと?


「可哀想だねぇ、悲しかったよねぇ」


 まるで子供を慰めるように、優しく俺の頭を撫でるエルウィーちゃん。


「お兄ちゃんをふるなんて、ひどい女だよねぇ」


 ぐいっと。

 俺は、二人に引っ張られ三人仲良くベッドに倒れる。


「でも大丈夫だよ。私たちが、慰めてあげる」

「私たちにいっぱい甘えて、お兄ちゃん」


 両側から優しく抱き締められながら、両耳から甘いお誘い。

 ……マジで、どうなってるんだ。

 これは夢なのか? 正直、こんなに可愛い双子にお兄ちゃんと言われるだけでも幸せなのに、甘えてもいいだって?

 

「そんなこと言うとさ……」


 今の俺にはすごく効く。

 もう、甘いお誘いは。


「いいんだよ? 我慢しなくて」

「いっぱい甘えちゃえ」


 あっ、もう無理っす。

 それが最後のトリガーとなった。俺は、抱き締める妹達へ思いっきり抱きつく。


「うわあん!! ふられちゃったよぉ!!!」


 我ながら情けない声だと思った。

 しかし、なぜかこの二人には自然と子供のような言動になってしまう。

 そうか。これが今、流行りのバブみ! しかもロリバージョン!


「よしよーし。そうだよ、たくさん甘えて、泣いて、すっきりしちゃおうねぇ」


 あ、アルフィーちゃん!


「私たちはいつでもお兄ちゃんの味方だからね。ほーら、妹のちっぱいですよー?」


 え、エルウィーちゃん!

 俺は幼馴染にふられた

 生まれて始めての恋だった。

 生まれて始めての告白だった。

 生まれて始めての……バブみ。しかも、義理とはいえ、妹二人に。


「あんっ! そんなに顔を押し付けちゃ、くすぐったいよ」

「エルウィーばっかりずるいよ。ほら、お兄ちゃん。こっちにも」

「うおおおおっ!!!」


 理性なんて吹っ飛んでいた。

 ただ俺は失恋した悲しみから逃れようと、妹達にただひたすら甘える。ロリコン? シスコン? そんなこと知るか!

 俺は、理性を捨てる!

 この母性には勝てない! 負ける……吸い込まれる……。


 正直、バブみというのは大人の女性だからこそできるものだと思っていた。

 アニメや漫画、ゲームではロリっこのバブみが出てくる度に、疑問を抱いていた。だが、今の俺なら理解できる。これはやばい。これは堕ちる。抜け出せなくなる……!


「ねえ、お兄ちゃん。今日は、一緒に寝ようか?」

「マジで!?」


 アルフィーちゃんの提案に、俺は思わず顔をあげる。


「それいいね。どうかなぁ、お兄ちゃん」


 甘いお誘い。エルウィーちゃんの声が耳を擽る。


「も、もちろん!」

「やったぁ! じゃあ、当然だけどお兄ちゃんは真ん中ね?」

「うんうん。そして、私たち両側」


 あぁ……なんて幸せな時間。

 今日は、最悪の日として記憶に刻まれるかと思ったが。恐るべし妹達。しかし、彼女達はどうしてここまで俺に?


 正直、俺になつくような出来事があったとは思えない。

 この一年間、彼女達とはずっと距離があった。

 それなのにどうしてここまで? わからないけど……まあ、幸せだからよしとしよう。

 あぁ、自然と眠気が。


「お休み、お兄ちゃん」

「幸せな夢を見てね」


 こんなにも安らかな眠りは、始めて……。


『……』


 え? なんか二人とも言っていたようだけど。

 なんて言ったんだろう……。

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