第3話
ユンとラグナは裏門から城に入った。
裏門は直接応接間に繋がっていて、応接間から玉座の裏の通路を使ってセイラの部屋に行くことができる。
「ユンはよくセイラの部屋に行くのか?」
「あんまりかな。普段は家の倉庫にいるし」
「倉庫?ああ、あの地下にあるやつか。あんなところに一日中いるのか?」
「そうだよ、今は会話できる万能ロボットを作ってるんだ!」
「うん、会話のどこらへんが万能なのか全然わかんないけどなんか凄そうだな」
「でしょでしょ!完成したらラグナにプレゼントするよ!」
「い、いらねえ…」
セイラの部屋に到着すると、二人は一人の兵士に呼び止められた。
「ユンさん!ラグナ!」
二人が振り向くと、そこには見慣れた顔があった。
「クルアじゃないか!」
ラグナは彼の名前を口にした。
クルア前衛隊長。王国騎士団の弓使いで、元殿隊副隊長。今は殿を退き、最前線で城を守る前衛隊の隊長となっている。ラグナとは生まれたときから縁があり、レグリスの部下だったためか後輩は大切にするため、隊員からの信頼も厚い。
彼はなぜか正装や鎧を嫌っているため、百年祭である今日も相変わらずラフな格好をしていた。
「どうしたんだ?姫様に何か用なのか?」
「あ、ああ。まあそんなところだ」
ラグナはクルアに事情を知られたくなかった。心配性で心優しいクルアは、必ず二人の仲を取り持とうとする。兄のように慕った好青年に、迷惑はかけたくなかったのだ。
「姫様なら今ドレスに着替え中なんじゃないかな」
「ちょっとノックしてみるか」
コンコン、とノックしてみる。
返事はなかった。まだ着替え中なのだろう。
ラグナはもう一回ノックしてみて、今度は名前を呼んでみた。
しかし、部屋からは返事どころか物音一つしなかった。
「もしかして二度寝してるんじゃないの?」
ユンがやれやれと首をかしげる。確かに寝起きがものすごく悪いセイラならあり得るかもしれない。
しかし、ラグナは妙な胸騒ぎがした。何か、心にぶり返す何かがあった。
それはクルアも同じだったようだ。
ラグナは反射的にアイコンタクトを交わす。昔決めた二人だけの合図だ。
クルアにはこれで十分通じたようだった。
二人で両開きのドアに思いっきり体当りした。
ガーン!と大きい音をたてて扉が勢いよく開く。何事だと周りの兵士たちが集まってきた。
が、そんなことはどうでも良くなっていた。ラグナとクルアは、目の前の光景に唖然とした。
一言で言うならば、巨大な光の渦。
神秘的な七色の光を発生させながら、それは部屋の中心に浮かんでいた。
ただ浮かんでいるだけなら、それはさぞかし美しい芸術作品になっただろう。しかし、それは絶対に叶わない。
なぜなら、その渦はものすごい勢いで周りのものを吸い込んでいたからだ。
そしてラグナの目には、部屋の隅で必死に吸い込まれまいと半開きの窓ににしがみつくセイラが見えた。
「セイラ!」
扉を開けた途端渦の吸い込む音がひどくなり、ラグナの声はかき消される。少しでも油断すれば吸い込まれてしまいそうだ。
「クルア!何なんだよこれ!?」
「知らん!ただ、絶対世の中の役に立つ物ではないことは確かだ!」
「ユン!お前は大丈夫か!」
「なんとか…!」
周りにいた兵士たちはどうやら全員他のフロアに逃げたようだ。
「チッ、ろくでなしどもめ…」
クルアたちは未だ様々なものを掴んだままなんとか持ちこたえていた。
「………ナ、……ラグ……」
どこからか声が聞こえた。ラグナが声の方向へ振り向くと、セイラが片手を伸ばし何かを必死に伝えようとしていた。
「ラグ……まも…せ……めい……」
セイラはラグナに何かを伝えようと必死だった。しかし、風の音にかき消されよく聞こえない。
と、次の瞬間。
セイラの手が窓から離れたのが見えた。
「セイラ!」
「セイラちゃん!」
「姫様ー!」
セイラは瞬く間に光の渦へと消えていった。
そして、光の渦はセイラを吸収すると、小さくしぼみ、強烈な白い光を発しながら消失した。
「セイラーーーーーー!!!」
ラグナの叫びは、虚しく反響するだけだった。
第3話です。ついにヒロインが消えましたね。
恐らく今後セイラが出てくるのはかなり後になるかと思われます。
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