異変の時2・・闘う暗黒の女王といにしえの魔法の王・・
御話の続き・・・前回の分
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異変の時・・目覚める暗黒の女王といにしえの魔法の王・・始まり
蘇った呪われた追放された神(仮の姿・・魔法使い)との闘い・・そして・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「それと その程度の魔法の防御や姿を消す魔法 結界魔法」
「気がついてはいましたよ・・手抜かりです
舐めてもらっては困りますね・・
アーシュ殿・・火竜王 最後の竜の王・・」
ハッとするアーシュとアシャアシャ
ゆっくりと上半身だけ姿を現す・・腰より少し下
下半身はまだ再生していない
魔法使いは
薄い灰色の古代の服まとい
腰は腰の黒に近い腰布で巻いている
その上から灰色のローブを被っている
顔にも被って 鼻先と口元した見ない
40歳前後の中肉中背の男
背は高い・・
「リア・・ナジュナジュ・・皆さん はじめまして
ナジュナジュさんは 魔力はないが 暗黒の女王の兄妹」
「しかも両性・・
なるほど 先程 暗黒の女王アシャアシャが言われましたね」
「黒だけでなく白の血も受け継ぎ持つ傍系のリュース家の血か・・
白の血ですね・・・両性がいるのは・・
白とリュース家か 白の王族に白の貴族・・その領地の者の達のみ・・」
「可愛い顔と綺麗な青の瞳ですね ふふ・・
後で特別に可愛がってあげましょう・・」
「その後 じわじわと嬲り殺す・・ふふふ・・」
顔色を変えるアーシュとアシャアシャ
アーシュとアシャシャ 二人はほぼ同時に炎の呪文を唱える
「炎の柱 敵の身体を灰燼に還せ! 我 火竜王が命じる
塵一つ残らず 焼き尽くせ!」
「させない! 指一本 ふれさせぬ!魔法使い 追放された神!
炎の槍! 敵を貫き 灰燼に還せよ!
火竜王アーシュランと暗黒の女王の名に
かけて!!」
「ナジュナジュ兄たん達に 近づくな!許さない!!」
怒鳴るアシャアシャ
大炎に包まれ燃え上がり 次には 身体中に 次々と無数の炎の槍に刺し貫かれる
魔法使い 追放された神
「うおおおつ・・つう・・なかなか 効きますが・・
まだまだだ! 火竜王アーシュラン! 暗黒の女王アシャアシャ
火傷一つない・・」
「まさか! バカな!」「・・そんな・・」アーシュとアシャアシャ
「貴方方の魔力をほぼ奪い尽くしましたから・・もう炎の攻撃は殆ど受けつけない・・
貴方方同様に・・ 今度は こちらの番・・ふふ」
そこにアルテイシアの水の魔法の攻撃
「我 水の王 水竜の女王アルテイシアが命ずる!現れよ水の大蛇!」
出現した水の大蛇は 大きく口を開き 魔法使いに飛びかかる
水の大蛇か・・成程ね・・
「光の盾!!」
輝く光の盾に当たり ざばっと 弾き飛ばされて水の大蛇は元の水に戻る
あちらこちらに 水飛沫が飛び散る 水の後だけ残る・・
「では・・もう一人の火竜王テインタルの攻撃はどう!魔法使い!」
「炎の竜!
いでよ 我が名は火竜王テインタル! 敵を焼き尽くせ!」
巨大な炎の竜が現れる 炎の塊を吐き出して その炎に包まれる
魔法使い・・
「・・我は天上の神の一人・・今すぐに消えよ!!炎竜!」
炎の竜が叫び声上げて たちまち消え去る
「水! 神が命ずる この魔法の炎を消し去れ!」
炎は大きな水の塊に包み込まれ 消え去る
「ふふ・・では お二人は 二人の魔法の王達と闘っていただきますよ・・」
「貴方方の影だ・・どうしますか? 力は互角・・いや 弱って力を失っている分
不利か・・・」
「暗黒の女王アシャアシャ・・貴方には 歴代の魔法の王の相手もしていただきますよ・・
火竜王アーシュランは もう一人の彼の影と闘う・・貴方を助ける事が出来るかな?
ふふふ・・」
アーシュ達に加勢しようとした リアンやアルテイシア達に
再び魔法の王の影達が現れて 襲いかかる
セルトは 水晶群の攻撃と巨大な岩のゴーレム達の相手に手こずり 身動きが出来ない
もう一つ・・水晶群が寄り集まり 形を変える 竜の形に・・
リアンやアルテイシア・・他の者達に襲い掛かる!
アーシュの影は 大人の姿 二十歳前後に見える青年
長身で背も高い・・細めであるが 筋肉質 黒の国の長い耳
黒髪を肩より少し長くして 細長い赤い布で縛っている
最後の戦い 出撃の時の服装・・下の服は 黒い長めのチュニック
袖はない
太もも部分から横が2つに分かれている 腰布は赤色
上半身だけ鎧を纏い両肩にも鎧の肩あてがついている
鎧の背中の二か所には 丸い穴が開いている
翼を出現させる時の為に
利き腕の左手には剣が握りしめている・・
手首には両方 黒い布が巻きつけられて黒い布には
上から 大き目の金の腕輪が乗っている
フチの部分が上下太く膨らみ その中心部分は
文様がついている
手首の黒い布と金の腕輪は アーシュの子供の姿と同じもの・・
頭には 太目の丸い銀の輪 魔法の文様が刻ざまれている
足にも膝部分と膝下に正面だけの足あての銀の金属
鎧と同じもの・・足先だけ金属のつま先
踵部分のみに革製の部分がついているサンダル・・
足首にはサンダルの固定に皮のベルト
目の空洞の部分に 焔の赤い光の塊と
もう片方には黄金の色に輝いている光の塊
テインタル王女の影は こちらも二十歳前後の女性
艶やかな漆黒の髪は流して 前髪は眉より上で切り揃えている 長い耳・・
古代の白い服・・肩と胸廻りに白い服の布が重なり合いウエーブしている
かろうじて 呪いの入れ墨が見えない・・
胸元のすぐ下 金刺繍の入った赤い腰布を巻いている
テインタル王女が死んだ時のそのまま服装
瞳は空洞・・瞳の部分は 赤い焔の塊の光・・
にやりと笑あう 二人の影・・
アーシュは 彼の影の剣の攻撃に 背を反えらせて ジャンプ 宙で回転して
左腕一つで地面に手を立てて 逆立ちして また半回転して 着地する
そこに ジャンプして 飛んできた彼の影の剣の攻撃 よけ損ねて
頬が少し切れて血が飛び散る
また剣を振り上げた彼の影の剣に対抗すべく 左手に魔法の剣を出現させて
剣でその攻撃を防ぐ カキイイ―ン 剣と剣がぶつかり合う音
そのまま 素早く何度も剣を振るわれ 何度も何度も 剣をぶつかり合わせる!
剣の腕は同格! 強い! 反撃の隙がない どうする!
あちらはまだ余裕がある
テインタルも同じく 自分の影と闘っていた 剣で闘っていた
強い!
とどめるのに精一杯どうしたらいい!
魔法使いは再生した上半身を宙に浮かせたまま
近づき・・ナジュナジュの首絞めて 持ち上げる
「兄たんに何をする!魔法使い! 手を放せ 許さない
この暗黒の女王が許さない!!」
「早くいらっしゃい・・お相手をしますから・・ふふ」
挑発するように・・ナジュナジュの唇に自分の唇を重ねて見せる
その後ゆっくり 自分の足元にナジュナジュを置く・・
膝をつき・・座りこみ ナジュナジュの青い瞳に涙が浮かんでいる
魔術で麻痺している 震えながらリアは怒りの表情をして
口を開き ぱくぱくしている 声が出ないのだ・・
アリステアの顔にも怒りの表情 魔法使いを睨んでいる
瞳を開き 茫然としているナジュナジュ
「やめないか!」アシャアシャ・・ 両手は握り拳
「もっと・・してみましょうか・・ふふっ」
ナジュナジュのシャツのボタンを2つ 外してみせる
「やめろと 言った!」アシャアシャ・・
ふふ・・更に 挑発する・・
一気に ナジュナジュの白のシャツを 引き裂く
片方だけシャツがかかり 上半身の半分があらわになり
白い肌が見える・・
ナジュナジュがまっ青になる 怒りに震えながら リアは 言葉を絞りだす
「や・・やめ・・ろ・・」
「おや 声が出ましたね・・対したものだ・・リア」
「やめろおお!許さない!許さない!!」アシャアシャ・・
今度は ナジュナジュの顔に指先をあてる
指先が淡く光る その指で ナジュナジュの頬をあて すううっと
横に指先を動かす・・ナジュナジュの頬の 指先が触れた部分に
少し切れて・・血が滲み・・血が流れて落ちる
そのナジュナジュの頬に滴っている血を指先に
取り・・舐める・・
「やはりな・・魔力はないが・・保有者だ・・
数十世代のち・・また貴方の子孫からも巨力な魔法使いが
出るかも・・機会あればだが・」
「ナジュナジュ・・貴方の血でも・・暗黒の女王の力を感じる」
「暗黒の女王は・・先祖返り・・だが突然変異でもある」
「・・果たして・・また出るかな・・ふふ
この魔法の力は・・歴代の王に並ぶ程の絶大な魔力持ち主は・・
いや超えているかも・・知れぬ・・」
「ナジュナジュ・・可哀そうに震えるな・・くくっ
本当に愛らしい顔だ・・ゆつくり・・楽しむ・・嬲り殺すのは時間をかけて・・
その可愛い声の悲鳴を聞きたい
嬲り殺す時は 血まみれにして・・一滴残らずその血も頂く・・」
「死にざまには その美しい深い青の瞳を見開いたまま
死なせてやろう・・さぞ美しいだろう・・赤い血で染め上げる・・」
麻痺の呪文で動く事も目を閉じる事さえ出来ずに
怯えて震えているナジュナジュ
怒りに震えるリア達
「・・テインタル・・あの死に顔も良かった・・あの美貌
やはり本当に一度 抱いておけばよかった・・」
「巨人族の王は 一度 手籠めにしようとしたが」
「無意識に発動した炎の魔法で 大火傷を負い
以来・・一度も触れなった・・」
「逆らった あの時に・・ ナーリンを閉じ込めた水晶を
私の手から取り上げて アルテイシアに返した」
「その罰として
魔法を封じて 巨人族の王に抱かせると脅したら」
「青い顔をして 舌を噛み切る 剣で喉を突くと
言い返された・・・ふふ・・」
「テインタルの心は いつも悲しみと緊張の連続だった・・
・・その心を支え 守っていたのは・・」
「幸せだった黒の王宮の幼い子供時代」
「運命の一対の 本来なら結ばれる運命の相手
異母兄 火竜王アーシュランへの愛・・」
「彼と幾度か 対峙いた時は 呪いの入れ墨により
生まれた心の中のもう一人の自分が
その最愛の兄アーシュを殺したくてたまらない
という気持ちで自分を抑えきれずに いっぱいになった・・・あの苦悩・・」
「巨人族にいた
しばらくの間生きていたエリンシア姫やアーサー達との交流・・」
「あの魔法画の幻影達 特に赤い子竜
・・よくテインタルに甘えて
その胸に抱きしめられて・・テインタルは笑っていた
アーシュと名をつけて・・
赤い子竜は 胸に自分の顔を埋めたり
小さな手でテインタルの胸を子猫のように
揉むので 「もう いやらしいわね・・アーシュ兄様」
と言いて 苦笑して楽しげに笑っていた・・」
「赤い子竜のモデルは 当時 まだ幼い黒の王子だった
火竜王アーシュラン・・その本質を描いたものだから・・」
「ああ・そうだ 目の前で 魔法画を燃やしても良かったか・・」
「自殺でも・・良かった・・死体でも良かったから・・」
「・・死ぬ寸前の瀕死の火竜王アーシュランの顔も
良かった・・あの8年間は 痛快だった」
「無数の水晶に貫かれ もがき・・苦しみ・・エルトニア姫の死を知った時の
絶叫に 涙・・気を失うまで・・泣き叫び続けた あの絶叫と涙・・
あれは 最高だった・・あれが一番いい・・」
「・・意識が朦朧として・・あがき 痛いで 時々 悲鳴をもらし・・
気を失って倒れる・・早く あのひどい痛みで目を覚まさないかと・・
いつも楽しみに待っていた」
「あがき悶え苦しみながら」
「幾度もあのエルトニアやアルテイシアの名を呼んだり 呟いていた
他の者達の名も・・気を失い・・眠っていた時も・・小さな声で呟いていた」
「意識が朦朧として また激しい痛みで飛び上がり 」
「あの美しい 二つの色 オッドアイの瞳を見開く・・
その時も良かった・・朦朧とした顔も・・
あと少しだったのに・・死体も取り込めたというのに・・残念だ・・」
「白の王族は 特に 見目 麗しく美しいが・・
黒の王族もまた・・・美しい・・
特に テインタルは母親譲りの類まれなる極上の美貌の持ち主・・
死に顔は一枚の絵のようだった・・やはり 一度 抱いてみても良かった・・」
もう一人の自分 影と闘いながらアーシュも聞いている
手を休めず 自分の影相手に
剣を振るい何度も剣を重ねて 鋭い音を鳴らせながら
顔を向ける事は出来ないが
「・・魔法使い・・貴様・・必ず焼き尽くし 灰塵にしてやる・・」
怒りに震えるアーシュ
テインタルも同様・・自分の影との激しく戦いを繰り広げて
余裕がなく 言葉も視線は向ける事は出来ないが
怒りで震え 自分の影を睨みつけて 涙を流している・・
リアンやアルテイシア姫たちもレグルス達やセルトも聞いている
剣を振るい 魔法の技で反撃しながら・・
リアンは 固い表情をしている 目は吊り上っている
アルテイシアは 怒りに震え 涙を流しながら闘っている
セルトも・・彼の瞳にも涙が浮かび 怒り狂う
「うおおお!」雄叫びを上げて 岩のゴーレムと水晶郡を
数々と 大剣で 叩き壊している
レグルス達は 水晶の竜と闘っている
セルトも どうにか 岩のゴーレム達が突然動きを止めたので
振り返り 走って 水晶の竜に立ち向かう
「出来るものならね・・先程わかったでしょう貴方達
炎の魔法は通じない・・」
「リアン殿や姫たちは 王の影や水晶の竜との闘いで・・
貴方は自分自身の影達と闘いで こちらを見る余裕もない」
「・・さあ・・早く 攻撃しなさい・・もっと・・しますよ・・ふふ」
無言で暗黒の女王は宙に浮かび 魔法使いを睨みつける
恐ろしい形相で・・ 左から剣を振り下ろそうとした王の影に
一瞬振り返り くるんと回転して 攻撃をかわす
王の影は呪文を唱える
「地の魔法! 岩の槍!」
王の影の瞳の代わりにあるのは 黒い光の塊・・
大地の魔法の王の影・・
下の地面から 無数の岩が槍となり 襲いかかる
寸前の所で避けて逃れる
対抗してアシャアシャは魔法の呪文を唱える
「大地の力! 我 暗黒の女王と火竜王アーシュランの名のもとに
命じる!
岩よ!岩の槍 砕かれよ!土に還れ!!」
バキイイーンと大きな音をたてて
崩れ去る 岩 粉々になる
水晶がアシャアシャを襲う!
巨大な水晶の竜 セルト達との闘いをやめて
振り返り 同時に飛びかかる!
上と下から 同時に襲われるアシャアシャ
「岩の盾!」アシャアシャの魔法で岩の盾で
一つの水晶群が飛び散る
そこを セルトとレグルスが水晶の竜を追って来た
彼らは 残りの水晶群をすべて叩き壊す!
「炎!」
アーシュが 空いている右手に魔法の炎を出現させた
ジャンプして くるんと回り 着地寸前に
その炎を自分の影の顔にぶつける!
よけようとして一瞬動きを止めるアーシュの影
その隙に すぐさま 服の上部分を緩めて少し脱ぎ
もちろん左片胸元の鎧はそのまま・・その分 右が大きくはだける
背中から 漆黒の翼を出現させて
飛び上がり アシャアシャに襲いかかる
水晶の竜に 魔法の呪文をぶっけるアーシュ
「炎! 炎の柱!
水晶の竜はたちまち炎に包まれる
更にアーシュは呪文を唱える
「大地の竜 いでよ!我が名は 火竜王 最後の竜の王アーシュラン!
呼びかけに答えよ!! 水晶の竜を倒せ!」
岩と土で出来た巨大な竜が現れる 大地の竜
大地の竜は 飛びかかり 水晶の竜の首元に噛みつく
ピキッとヒビが入る
「グオオンン!」声を上げる水晶の竜 首が落ちるが
残りの胴体の前足が今度は大地の竜を締め上げる
そこにアシャアシャの魔法の呪文
「どいて 大地の竜! 降りそそげ 岩の槍!
その水晶の竜を貫け!
火竜王 最後の竜の王アーシュランと
暗黒の女王アシャアシャの名において我 暗黒の女王が命じる!」
天上部分の岩が幾つもの大きな鋭い槍の形に変化をとげる
岩の槍が次々と降り落ちて来る!
素早く 大地の竜は 水晶の竜の前足を払いのけて
少し離れた位置に飛び移る
何本もの岩の槍に貫かれ 水晶の竜は 大きな音をたてて 砕ける
役目を終えた大地の竜は 岩と土に還る・・
アーシュは翼を身体の中にしまい 服を戻す
そこに あの火竜王アーシュランの影が漆黒の翼で来て
アシャアシャに斬り殺そうと 剣を振り下ろす
「危ない!」セルトがアシャアシャをかばい 間に立ち
振り下れた剣を受け止めるべく
自分の剣を構えるが・・しかし
アーシュランの影はにやりと笑い
少し 振り下ろす位置をずらして変える
ザッ! 噴き出した血が辺り一面に飛び散る
アシャアシャの顔や服にも 飛び散った血がつく・・
アシャアシャの頬を 沢山の返り血が濡らす
「くっ・・うおおお!」セルトの悲鳴
ゴロン・・転がり落ちる剣を握っていたままの
肘下から半分の右腕・・
「セルト!!」アーシュが蒼白になる
身動き一つ出来ない アシャアシャ
離れた場所で 闘っていたアルテイシアやリアン レグルス達も
それぞれ声を上げる
「セルト殿!」 「セルト様!!」
「ほら・・みなさんは そっちを見ている暇などありませんよ」魔法使い
また 新たに出現した 魔法の王達が アルテイシア達に襲いかかる
残った腕の先を抑えてうずくまるセルト
再び 硬直しているアシャアシャにアーシュランの影が
剣を振り下ろす
すぐさまアーシュが動き アシャアシャの前に立ちふさがり
剣で受け止める キインーン 鋭い音がぶつかりあう!
また何度も剣をぶつけあう
闘いながら 顔を向ける事は出来ないが アシャアシャとセルトに
声をかける
「大丈夫か! セルト! アシャ!」
「あ・・はいアーシュ様! あ・・セルト様 申し訳ありません!!大丈夫ですか!」
宙を浮きながら セルトの元に来るアシャアシャ
「私は大丈夫です アーシュ様 アシャアシャ殿!」
痛みをこらえながら言うセルト
「アシャアシャは 治癒の魔法は・・」
アーシュは言いかけて・・言葉を止める
一瞬だけ 両方の瞳が黄金色になり 輝く
そしてまた またオッドアイの瞳に戻る・・
「・・・わかった・・今 視た・・」
カキイイーン 自分の影とまた剣を重ねてぶつけ合うアーシュ
「たく・・きりがない!」
手は少しも休めず 闘いながら アーシュは言う
「・・少し苦手のようだ・・アシャアシャの魔法は・・
どちらかと言えば 戦闘向きか・・」
「治癒の呪文は俺が唱える
アシャアシャはセルトの右腕を拾って・・
・・拾えるか? 大丈夫か 怖くないか・・魔法でもいい」
キイイーン! 剣がまたしてもぶつかり合う
「くそ!たく・・」剣でおされるアーシュ
その間にアシャアシャは 宙から ポンと
二枚の白い布を出す
セルトの腕の出血止めと傷口を覆う為の包帯用
まず セルトの腕の上の方をぎゅっと絞る
それから 次にセルトの傷口に布をあてようとした時に
アーシュの声
「アシャアシャ 傷口は巻かなくていい」
カキーンン キイイーン音をたて 剣を振るい自分の影と剣で闘いながら
アシャアシャ達はまったく
見てはいないのだがアーシュは言う
「セルトの右腕を拾うか魔法で運ぶか・・ 傷口にあわせるんだ
一旦 俺が魔法で繋ぐ 消毒と痛み止めの魔法も入れる」
キイイーン またも剣のぶつかる音 まだ闘っている
話すのがやっとの状態のアーシュ
「仮に繋いだだけだから 簡単に また外れる
後でアルテイシアかリアン・・時の番人達に治癒の治療を・・」
ガキイイーン 剣を打ち合うアーシュ
「もし まだ闘う気なら
左で戦え セルト! 利き腕でなくても いざという時の為に
修練をつんでたろう・・」
ガチヤン 剣と剣が重なり そのまま押し合うアーシュとアーシュの影
「わかりました 我が火竜王」セルト
アシャアシャは 魔法で セルトの剣をにぎったままの右腕を浮かせて引き寄せる
セルトの大きな左腕を小さな両手で握りしめて
傷口に合わせると
見てはいないはずなのに アーシュが相変わらず剣で闘いながら言う
「よし!あわせたな!よくやったアシャアシャ!」
嬉しそうに 頬を少し赤くして アシャアシャは
闘うアーシュの背中を見ながら うなずく
「はい アーシュ様」
カキイイーン 再び剣が打ち合う 闘いながらも呪文を唱えようとするアーシュ
両目が再び 黄金の金色に変わる
「水と光・・癒しの力よ・・我 最後の竜の王が命令する
癒しの水・・腕をつなげ・・光よ その者の毒と痛みを消し去れ!」
水の玉が現れて セルトの腕を包み込み 弾けて消える
ほんの少し遅れて 淡い光がセルトの斬り落とされた
腕を包み込むように光を放ち ゆっくりと消える
腕はつながり・・もう痛みもない
セルトは 確かめるように 右手の指先を動かし 軽く右肩を上げ下げする
もう一つ アーシュは呪文を唱える
「水・・アシャアシャの顔と服についた血を洗い流せ・・
風・・優しく吹き・・服を乾かせ」
アシャアシャの顔と服についた
セルトの血がとれて元の姿になるアシャアシャ
呪文を唱え終わって再び元のオッドアイの瞳に戻ったアーシュに
影は 剣を振り上げて 勢いよく振り下ろす
キイイーン 剣がぶつかり合う
再びアーシュが剣でそれを受け止めて 抑える
「くっ・・」アーシュに少し疲れが出たのか・・
足が少しずつ 押されて下がる
「アーシュラン様 今 加勢に行きます」剣を左手に持ち返るセルト
「私も!」アシャアシャ
セルトが大剣を振り上げて アーシュの影にジャンプして襲いかかる
影は 左手は剣を握り アーシュを片手だけで 剣を重ねている
アーシュの方は 両手で剣を握り 押し返そうとするが 動きが取れない
荒い息を吐き 肩が少し上下に揺れている・・疲れはじめている・・
一方 アーシュの影はまだまだ余裕がある
空いている右手を 襲いかかったセルトにかざすと
振り下ろした大剣がアーシュの影のすぐ傍で ぴたりと止まる
動けずに目を開くセルト
「・・時の呪文 我の名は最後の竜の王アーシュラン・・
この者の時を止めよ・・時の力により 縛り上げよ!」
地上近くの空中で 左手で大剣を振り下ろしかけたままの姿で
人形のように 動けなくなるセルト 目を見開き 震えて動こうと少しだけ左右に揺れる
そこにアーシュの影がまた呪文を唱える
「炎!」
「うおおおつ!」セルトが声を上げる セルトの身体中が炎に包まれる
アーシュが剣を自分の影と重ねあわせたまま
慌てて魔法の呪文を唱える
「我が名は 火竜王 最後の竜の王アーシュラン! 我が命ず!
時よ 時の呪縛を解け! 炎よ 火竜王が命令する! 消え去れ!」
炎は消え去り 時の呪縛から解放されたセルトは地面に着地する
ぶるんと身体を振り 息を吐く
竜の鱗で覆われたセルトは
炎に包まれた時間はわずかだったので ほとんど火傷は負ってない・・
ところどころ 小さな火傷があるのみ
再び アーシュの影に襲い掛かる・・
アーシュの影はまず 重ね合っていた剣を素早く一旦引き戻し
左手首をひねり 剣を下に向ける
ひねった左手で剣を握ったまま アーシュの顎に向けて
パンチ! もろに剣の柄がアーシュの顎に直撃!
「あうつ!!」そのまま吹っ飛ぶアーシュ
そのまま アーシュの影は襲いかかて来たセルトに攻撃!
剣でセルトの大剣をぶつけて セルトの大剣が手から離れて 飛んで落ちる
セルトの身体に後ろ回しの横周りに後ろ蹴り!
大きな体のセルトが打ち倒されて倒れる
セルトにとどめを刺そうと 剣を持ちかえ 剣を下に向ける 両手に握り
その剣を振り下ろし セルトを刺し殺そうとする!
その直前 アーシュが立ち上がり ジャンプして影に剣を
斜め下に振り下ろす
「消えろ! 俺の影ええ!!」アーシュが叫ぶ
アーシュの影は身体を後ろの方に少し下がりアーシュの剣の攻撃をかわす
が・・しかし 少しよけきれずに 首筋横から斜めに血が滴る
着地して 片足の膝を曲げ膝をつく もう片方の足は膝をまげ
膝をまげた足の上にお尻を乗せている 少し座った状態
はあはあと 荒い息を吐くアーシュ
一方 アーシュの影は 静止している・・表情には余裕の笑み
口元の片方が少し上がっている にっと笑う
空いている右手をかざすと 淡く光りを放ち 首筋の傷は消える
再び後ろを振り返り 立ち上がろうとしているセルトに
また 剣を下に向けて 今度は左手のみで セルトの身体を刺し貫こうと
剣を振るうアーシュの影
「!!」 目を見開くセルト
「セルト!!」アーシュが叫ぶ!
剣の先がセルトの身体に突き刺さろうとした危うい寸前
暗黒の女王アシャアシャの魔法解き放たれる
「大地の力! 暗黒の女王アシャアシャと火竜王 最後の竜の王の名のもとに
我 暗黒の女王が命ず 現れよ!大地の槍!!」
アーシュの影のすぐ足元に 土と岩の塊が集まり 無数の槍の形に姿を変え
次々とアーシュの影を貫く
アーシュの影の口元から 黒い血が流れ落ち滴る・・呻き声が小さくもれる
今度はアーシュが立ち上がり 後ろから 「消えろ!!影!」
そう叫び 後ろ越しに自分の影に剣を突き刺す
胸元近くにアーシュの剣先が見える 黒い血が流れる・・
アーシュの顔や服にも黒い血が飛び散る
セルトも落ちた大剣を左手に持ち 「うおおお!」雄叫びを上げて
立ち上がりながら 大剣をアーシュの影に突き刺し貫く 背中からセルトの剣先が見える
セルトの顔と服や鎧にも黒い血飛沫が・・
セルトもまた アーシュ同様 顔や鎧を染める・・
下からはアシャアシャの魔法
無数の大きな大地の槍が突き刺さり
後ろと前からアーシュとセルトの剣が突き刺し貫かれている・・
アーシュランの影の身体
一瞬 ビクンビクンと震えた後 顔を上に上げて
大きく口を開ける 黒い血が口から流れ出る
ゆっくりと影は消える・・
一方 こちらはもう一人の火竜王テインタル
テインタルの影は 剣を振るいながら
攻撃の炎の魔法の呪文を唱える
「炎! 我の名は 火竜王テインタル!
炎の海よ!! 敵を焼き尽くせ!」
辺り一面 炎の海が広がる 炎がテインタルを取り囲み 包み込む!
「くっ!・・我は火竜王にして 先の竜の王の娘!
我が命ず! 消えよ! 炎の海!」
ゆつくりと消え去る炎の海・・テインタルの顔にも身体にも 複数の火傷の跡
テインタルの肩が上下して 息を吐きだす
「はあはあ・・先の竜の王の娘が祈り命じる 光の癒しと癒し水」
水の小さな丸い玉が複数現れて
それぞれ一つ残らず テインタルの身体の火傷を覆い 消し去る
ほぼ同時に 淡い光の塊が これも無数に表れて 火傷の痛みを消し去る
テインタルの影が今度は 剣を振るう
キイイーン 互いの剣がぶつかり合う
危ういところで テインタルがその剣の攻撃を剣で打ちとめる
再び今度は横からテインタルの影が斬りかける
カキイイーン! こちらも辛うじて テインタルの剣が
受け止めて食い止める
はあはあ・・息をつくテインタル・・
どうする・・そろそろ限界・・
テインタルの影が上から剣を振り落す
だめ!間に合わない 目を閉じるテインタル!
その時である
「テイ! 水竜の女王アルテイシアが命ず! 水の刃」
後ろからテインタルの影の背中に水の大きな刃は切り裂く!
「!!」硬直するテインタルの影 口元から黒い血が滴る
傷だらけになったアルテイシアが加勢に来た!
どうにか無数の歴代の王達の影を消し去り
残りの王達は レグルス達が引き受けた・・
「風よ! 最後の白の宗主が命ず! 無数のかまいたちとなり
敵を切り裂け! その命を奪え!」
こちらも傷だらけのリアン
無数の風のかまいたちが振り返ったテインタルの影を切り裂く
「今 とどめを刺す!消えて 私の影!」剣を両手に握りしめて
駆け寄り 後ろから自分の影に剣を突き刺すテインタル
テインタルの影の胸中心部分から テインタルの剣先が出ている・・
テインタルの服に黒い血が飛び散る
ぴくんと動き 顔を下に落とすテインタルの影 口からも黒い血が流れ落ちる
ゆっくりと姿が消えて 赤い大きな水晶の塊となり 砕け散る
レグルス達と 魔法使いが対峙していた・・
まだ 数人の歴代の魔法の王の影がいる・・
肩を上下して 息をするレグルス 魔法使いを睨みつける
バステイルは レグルスを魔法で守っている
「・・すぐに アーシュ様達 皆様も参ります・・
二人の火竜王の影は消え去った・・他の敵も・・」目を閉じて言うバステイル
魔法使いの後ろには ナジュナジュが宙に浮かび
浮かんでいる・・腕を横に広げて・・気を失っている
身体に数か所 浅い傷・・魔法使いが血を舐める為につけたもの・・血が滴り落ちる・・
廻りにはリア達が気を失い倒れている・・。
そこに声が響きわたる 綺麗な声
「風! 火竜王 最後の竜の王の最初の妻・・エルトニアが命令する
その にやんこな人達を僕の元に運んで!!」
一陣の風が吹く・・ナジュナジュやリア達の姿がゆつくりと消え去り
少し離れた場所にナジュナジュ達が姿を現す・・
魔法使いから逃れ 移動した・・
目を覚ますリアやナジュナジュ達・・身体が自由に動く
すぐ傍の赤い水晶群から姿を現す・・エルトニアことエイル
艶やかな黄金のウエーブがかかった少しくせ毛
金の髪 腰近くまである
髪は流して
横髪を両方少し白いリボンを加えて編み上げ
それを頭上から少し下あたりで カチューシャのように留めている
瞳は美しいオッドアイ 天空の深い青と金に近いうす茶色の瞳
白の国特有の耳・・
服は白い古代の服装・・やわらかい素材
首回りにウエーブを描く布が重なりあっている
両方の手首にも黄金の大きな腕輪 こちらも上下のフチが
少し膨れて 中は文様 様々な透明な色の小さな宝石も埋め込まれている
袖は二つに分かれ 横斜めになっている 長い袖 肩が見えてる・・
服は長く 膝下あたり・・ 上下に分かれてるのか スカートになっているのか
上の服は 腰は黄金で出来た 太い模様入りの腰留めの金の輪のようなベルト
で締められて 腰下で一旦途切れている・・
下のフチには金色の文様入りの細長い生地が縫いつけられている
下のスカート部分のフチにも 同じ細長い金の文様入りの生地が
こちらも縫いこまれている
足はサンダル 足先とかかと部分のみ 革製のもの
足先の部分には金で出来た大きな文様入りの飾りもついている
革の細長い紐でじるぐると 何度となく斜めに左に横にと
膝下近くまで巻かれている
片方の腕には・・肩より下あたりに
リュース公から貰った魔法の文様や宝石の入った
黄金の腕輪 フチの上下部分が細長く膨らんでいる・・
腕輪の下に隠された・・未だ消えない テインタルが火傷と焼き印の後
「白のエルトニア姫!!」呪文から解放されて目覚めたリア達が一斉に叫ぶ!
「大丈夫・・みんな・・可哀そうにナジュナジュ 傷だらけ・・
後で治癒の魔法かけてあげるね! 魔法すごく上達したの!」
エルトニアことエイル
「エルトニア様・・」涙ぐむナジュナジュ
「ナジュナジュ兄たん!!」
一番先に着いたアシャアシャ
泣きながらアシャアシャはナジュナジュの身体を抱きしめる
「来てくれて有難うアシャアシャ・・僕は大丈夫・・
白のエルトニア姫様が 治癒の魔法をかけてくださるって」
ナジュナジュを抱きしめて泣き続けるアシャアシャ
「・・!何故!! いつ起きた!何故来た!エイル殿!」
まっ青になるレグルス達
「・・アーシュが目覚めた時に 起きた・・でも
子供の姿のアーシュはすぐに僕を眠らせたけど・・
アーシュ達の声が聞こえて・・時の番人から場所を聞き出して
ここに来た 加勢に来たよレグルス・・ふふ」笑うエイル
「・・加勢って・・エイル殿・・」唖然とするレグルス
・・レグルスは思う・・場所を教えた時の番人 誰だ・・?
まず怒るアーシュ殿に焼き殺される・・生き返っても・・
アルテイシア姫やリアン殿が・・
もう・・だめだ・・私も許さんぞ・・その時の番人・・
「・・お願いです・・殺さないで・・」涙を浮かべるバステイル
「・・多分・・無理・・あきらめろ・・手遅れだ」レグルスは呟く・・
「なぜ来た!!危険だろうが! 姫!アーシュ殿達にどう言い訳したらいい!
下手すると 私も焼き殺されるぞ!!リアン殿にアルテイシア姫も怒るぞ!!」
半泣きになるレグルス おろおろして青い顔のバステイル
「・・話は後で・・レグルス・・僕もアーシュにはお小言が少しある・・
ちゃんと時の番人は 僕がかばうから・・
まったくもう・・風の矢!!」
弓を構えるポーズ そのまま魔法使いに 魔法の風の矢を放つ
無数の風の矢が突き刺さる 防御の魔法で封じたのに
一本だけ 腕に突き刺さる 少し驚いた表情をする魔法使い・・
無表情で その魔法の矢を引き抜く・・
「・・・みなさんが来るのをお待ちします・・
少し話もあるようだ・・待ってあげますよ・・ふふ」
「・・・では・・一旦・・失礼しましょう・・ふふ・・」魔法の王達の影とともに魔法使いも消える・・
「エイル 何故きた!」アーシュは血相をかえて叫ぶ!
「エイル!」「姫!!」「エルトニア!」「エイル!」アルテイシア
セルト リアン テインタルも
同様に 叫ぶ まつ青になっている!
「うん アーシュが目を覚ましたから 僕も起きた うふ」エイル
一斉に皆が アーシュの方を見る・・一同 怒っている表情
あのセルトもかなり怒っているようだ・・
「・・眠りの呪文・・しっかりかけたぞ!!俺はしっかりとな!」アーシュ
「ふふ・・ふうん! 僕の力を甘く見ないでね!アーシュ うふ
ほら 魔法使いに 風の矢を1本あてた! にやんこな人達も取り返した!
どう! 文句ある アーシュ!」にやんと笑うエイル
「防御の魔法も完璧!うふ」エイル
「じゃあ ナジュナジュ治癒の魔法かけるね」エイル
「・・あ・有難うございます」赤くなるナジュナジュ
「だ・・だめだ!よせ ナジュナジュが死んだらどうする!」
「お前 以前 威やしの魔法で 傍にあった黒の王宮の中の小さな塔を
吹っ飛ばして 全壊させた!!
俺の左手のかすり傷・・セルトとの練習試合でついたの・・
練習させようと思った 癒しの呪文をかけさせた
俺がバカだった・・
一瞬にして俺の手が血まみれになった・・手首まで傷が広がった・・」
「俺のキッチンの大爆発も6回も!
2回は魔法じゃないが 残りはお前の魔法が原因だろうが!!」
焦るアーシュ
「・・えっ?」
ちょっと青くなるナジュナジュとリアとアシャアシャ・・
アリステアは目をぱちくちさえつつも・・平然とまたメモを書いている・・
・・・ああ・・そういえば・・有名な話だったか・・まあいい
それからナジュナジュに声をかける
「・・多分・・大丈夫 良かったなナジュナジュ」
「・・3回目以降は・・僕にキッチンをくれたから あれは
僕のキッチン・・
癒しの呪文の失敗ははるか過去の事!ちゃんとあの時 謝った」
ふふんと笑うエイル 後ろを向き 後は無視・・
「・・ごめん ちょっと離れてねアシャアシャ・・」
ずっとナジュナジュを抱きしめていた涙ぐむアシャアシャは離れる
「・・癒しの水・・光の癒し・・僕は火竜王 最後の竜の王の妻
エルトニア この者を癒したまえ・・」
ナジュナジュの廻りに 沢山の水の小さな玉と淡い光りの玉が現れて
次々に傷を癒してゆく・・
「・・服も直しておこうね ナジュナジュ」
「・・光の魔法・・」エイル
エイルの手が白く輝き・・触れたナジュナジュの白いシャツが
元通りになる・・ボタンをつけてあげて 着せてやるエイル
「有難うございます!白のエルトニア様」頬を赤く染めてナジュナジュ
リアやアリステア アシャアシャも言う
「良かったねナジュナジュ兄たん! 有難うございます
エルトニア姫」
「有難うございます ナジュナジュも良かったね」リア
「助かりました 感謝します 有難うございます
伝説の姫様・・良かったなナジュナジュ 安心した」アリステア
「・・心配をかえて御免なさい・・有難うございます
アリステア先生 リア アシャアシャ 心配かけて御免ね 有難う」
「良かった 良かった!」にやんこの人達も嬉しそう・・
「うん! 元気になったね!良かった」嬉しそうに笑うエイル
唖然として驚っているアーシュの肩に手をポンと置くアルテイシア
「・・・エイルの魔法の腕前は・・安息の時間に入ってから
格段に成長しました・・正直 驚きましたわ・・」アルテシア
「・・伝説の効果もあるんだろう・・にやんこ達が信じているから・・」
アーシュ 目を丸くして 大きく見開く・・口元がゆがんでいる
「あ、 還ったら 僕のお手製の料理をご馳走するね!
小さなアーシュというか もう大人だったけど・・
一緒に作るからね!」
「さっき 見かけて 御話したけど 急いで来たから・・
まだ逢ってないでしょう? 僕達のアーシュ」
「・・ああ・・急いでから・・楽しみだな・・」微笑むアーシュ
しかし すぐに真顔になる
「それで・・アル・・料理の方は・・」振り返り 怖る怖る 聞くアーシュ
・・・黙って首を横に振るアルテイシア
「・・格段にある意味 上達して・・
酷くなっています 最悪です・・私達の小さなアーシュも 同様・・」
「私達もですが・・セルト殿達・・わん子さんも 時の番人も・・被害に・・」
「レグルスと父のリュース公は
ちゃかり 食べたふりして・・魔法で消していました・・」
「・・そうか その手があった!しまったな・・今後は・・」
アーシュ ぽんと手を叩く
「・・無理です・・じっ~と食べるところ 見ているでしょうから・・」
アルテイシア
「・・心配なさらずとも・・アーシュ様と 多分テイの分も 用意するでしょうから
今は・・アーシュ様やテイは 治癒が必要です・・
私達が自爆覚悟で 食べますから・・ここを案内しただろう・・時の番人にも!
当然 食べてもらいます 今回はレグルスにも!1口残さずに!!」アルテイシア
青くなるレグルス・・バステイルも青くなり つばを飲み込む・・
「・・案内?」アーシュ
「・・エイルは時を渡る事は 翼もあるから 出来ますが・・
貴方やテイと違い 時を見渡す力はありませんから・・」アルテイシア
「・・・どいつだ・・? その時の番人・・
後で焼き殺す・・」
目が据わって 鬼瓦の目のアーシュ・・怖い感じ
「・・止めません・・生き返ったら
リアン様と私も ととめを刺しておきます・・
また 生き返るでしょうから・・その時は見逃してやります・・ふっふふ」
にいいと笑う 怖い笑い顔・・アルテイシア・・
「・・・私も参加します・・」静かに言うテインタル 目が怖い・・
「・・いいや 俺がもう一度だけ・・とどめを刺す
また生き返ったら・・その時は・・見逃してやる・・」
まだ 鬼瓦の目のアーシュ 口元は・・ゆがんでいる
リアンも不気味な笑みを浮かべて・・レグルスを見ている・・
普段・・隠れている・・ダークサイドの部分
リアンは一度
誰もいないと思い エイルの頬にそおつとキスしようとした
おいたをした・・時の番人を一度 魔法で消滅させている・・
幸い・・生き返ったが・・
偶然 様子を見にきたリアンが 怒りを爆発させたのだ・・
止める暇もなかった・・
あの恐ろしい形相は・・長い付き合いのレグルスさえ 初めて見たと言う・・
それに 微笑んでいるがアルテイシアも エイルを猫かわいがりしていて・・
あ・・こめかみに怒りマーク・・口元も歪んでいる
「・・本当に・・消滅するな・・その時の番人・・」ぽつりと呟くレグルス
「・・お願い もうその時の番人はどうなってもいいです」
あきらめますから・・!!」
「お願い! せめてレグルスだけは見逃して
もうすぐレグルスは安息の時間に入ります!!」首を左右にふり 泣きながらバステイル
「・・レグルスは 普通の死に方じゃない!時の魔法で 身体が砕け散ったから・・
もう目を覚まさないかも・・時折 レグルスの影が現れるけど・・
少しの間だけ・・」泣きわめくバステイル
「・・フォロー有難う・・バステイル・・すまないな・・」レグルス
「・・そうそう・・わんこは付き合えない わん子は もういないぞ・・」
「・・わん子は時に選ばれて生まれ変わった・・
最後まで嫌がったが・・仕方ない
束の間いる間だけ わん子に戻る事もある
「転生を繰り返している・・今度はわん子に戻らないか ふたつに分離するな・・
多分・・今回で三回目だ・・」
「今は また 懲りずにまたも魔法使いの弟子をしている・・ふふっ」
「・・お・ま・え・・お前だ!」
リアを指さす にやりと笑うレグルス
「え・・ええ!僕!僕ですか?」リア
「ええ!リア・・」今度は驚きもせずに平然と暗黒の女王のアシャアシャ
・・どうやら・・覚醒の時に視たようだ・・
驚く にゃんこな一同様 リアやナジュナジュは口をパクパクさせている
さすがに アリステアも驚き 目を見開く・・
だがすぐに ポーカーフェイスの表情に戻りメモを取る
目を見開き 動けない絶句するリアンやアーシュ エイルにアルテイシア
・・ほけ~と見ているテインタル・・
一番 最初に口を開いたのはテインタル
「ああ・思い出した・・あの時 雪花祭りの少し後で
王都の広場で見かけた・・あのわん子さんね」
「・・知っていたのか?アル リアン セルト エイル
・・テイは俺同様・・一度も起きずに寝ていたな・・」
やっと口を開くアーシュ
うなずくテイ
「いえ・・私は 三度緊急事態で起こされ・・その分は魔力が必要ない仕事で
・・・忙しくて・・」
セルト
首を横に振るリアン
「・・一度 エイルが起きた時は 食事につきあっていましたが・・
・・そういえば・・そう」
「・・いないのは 私は気がついていましたが・・
起こされるのはアル同様 緊急時のみ・・
終わったら・・すぐに寝てしまう事も多いし・・
リュース公と小さなアーシュと話を少ししただけです・・
実は・・自然に目を覚ました事は アル 同様ありません・・」
リアン
「・・・僕も知らなかった・・びっくりしたあ・・・」
大きな瞳をぱちぱちさせているエイル
「・そうか わかった・・で・・レグルス・・安息の時間に入るのか?」
アーシュ
「・・ああ・・ついにな あの特別の時間の場所に行く・・」
「どこにするかな・・天空の青と青く輝く海の砂浜近く・・」
「それとも雪花が咲いている場所も・・黄昏の黄金の時間・・
朝日が照らす始まりの時の朝焼けの時間・・星の煌めく夜の中でもいい・・」
「他の名の無い多くのケンタウロス達は 忘れさられて・・
安息の時間の中で消え去った・・中には時に選ばれ転生した者もいる
未だ 生き残っている者もいるが・・
もちろん起こされないかぎり 起きない・・」
「時の魔法のオルゴールを作ったケンタウロスの賢者・・数人だけだ・・
・・・竜人も同様・・・セルト殿や伝説に残った者のみ・・あの魔法画の画家もいる・・・」
「私は起こされても 二度と目覚めないかも知れない・・
・・バステイルが言う通りだ」
「本来の役目でない 時の番人として 長く時を過ごして
力を使ったから・・」
「それに私の肉体は 魔法のオルゴールによって時の力で
砕けった・・
普通の死に方じゃない・・時には まだ私の影も現れるだろう・・」
「幸い 伝承や伝説に 加えて時の神殿の護り神として・・
それが忘れ去らないうちは・・・
霊体の肉体は・・まず消えないが・・」
「・・まだ小さなレグルスも生きている それが安息の時間に入るのが
遅くなった原因・・」
「・・知っているな アリステア」
「お前たち 魔法ギルドと時の神殿が匿っている
・・今は魔法ギルドにいる・・治癒の為に・・
上級魔法使い達 王と市長も知っている・・」
「・・身体はあの幼い子供のまま もう百年前から 痴呆が始まっていて
身体も弱っている・・時間の問題だ・・」
「私は もっと早く死ぬはずだったが・・伝説の話で
生きている現在の者達の力で・・生き延びたようだ・・」
「・・後で会いにいく・・いいかアリステア殿?」
「・・俺も行く
リア ナジュナジュ 皆 守ると言いたのに約束を破った
すまない ナジュナジュは特に怖い思いをさせて怪我までした
アシャアシャもすまないな・・」
「大丈夫ですアーシュさま」ナジュナジュ
「気にしないでください 大丈夫」
「大丈夫です」
それぞれ リアをはじめ にやんこな人達は首をそれぞれ縦にふりながら言う
「御心配されずに アーシュ様 お気づかい感謝します
レグルス様 もちろんです 歓迎します 極上のワインも用意します」
アリステア
「有難う・・」微笑むレグルス
「あ レグルス みんな・・あまりお小言で アーシュやテイを
責めないでね・・」心配そうなエイル
「あ、でも 僕はアーシュにはちょっとお小言を言うけど・・」
「アーシュには僕は小さなアーシュをあげたでしょう!」
「リアン兄様も・・僕に貸しがあるでしょう!」エイル
視線を上にむけて 漂わせているリアン
きょとんとするアーシュ 怪訝な顔をするアルテイシア
が・・アルテイシアがハッとする
「ま・・まさか たしか 一時 発情期に入っていましたよね
隠しておられましたが 気がついていました!」
「・・・まさか」
「・・うん・・そのまさか・・一度だけ・・
ごめんね アーシュ」
「僕は許したから アーシュもリアン兄さまに大きな貸しがあるでしょう」
「あ・・人前では リアン様って 呼んでいたけど・・
内輪の時には 兄さん・・て・・」焦るエイル
「待て!! 話があるリアン・・」ぶるぶると怒りで震えている
「・・お前・・人にはあんなに攻めたのに・・お前・・
エイルを無理やり抱いたな!手籠めにした!」怒り狂う 顔が怖いアーシュ
「エイル 全然お前は悪くない!可哀そうに・・被害者だ!!」
「全ての借りは帳消しだ!リアン! 許さん!」
指さしながら 怒り狂っているアーシュ
「一度だけ 発情期もあって おさえがきかず
無理やりでした・・認めます・・謝罪します・・」神妙な顔のリアン
「後で 御話しましょうね・・リアン様
エイルとは形だけの夫婦の約束だったはずです!
出産しても 未分化のままでしたよ エイルは・・」
・・静かな・・怒りを含んだ声のアルテイシア
「・・・後で 魔法か剣の練習試合でもするか・・?リアン
間違えたふりして トドメを刺してやる 必ず!!」
「さっきの時の番人を灰塵にしてからな!覚悟しろ!」
顔を赤くして目を見開き 吊がったている瞳 怒り狂っているアーシュ
「・・受けてたちます・・出来るかな? まだ姿は子供の姿・・
それに私の力を舐めていただては困ります・・
これでも2千年間 互角の戦いを黒の魔法の王族達と
繰り広げた白の王族の最後の宗主だ・・
その王族の中でも魔力はかなり強い!・・
選ばれて・・今この異変の戦いの中にいるのだから・・
・・幾度も武人として戦場にいました・・右腕は失いましたが・・
・・あの最後の戦では・・後方の戦いで戦いました・・
後方戦は勝利しました・・・
返り討ちにして とどめを刺してあげます」
居直り・・平然としてリアンは言う
「・・カケをしませんか? どちらが エイルと添い寝するか・・
あ・・エイル 決して手は出さないから 安心してね・・」
リアンはエイルの方を向き にっこりと笑う
「・・リ・・リアン兄さん・・」蒼白になり 顔を引きつかせるエイル
心の中で思う
・・しまった・・言うじゃなかった・・アーシュ怒り狂っている・・
アーシュの性格 よくわかっていたのに・・兄さんあんなに謝って謝罪して・・
軽いあいさつ程度のキス以外は決してしなかったのに・・どうしよう・・
リアン兄様の性格も・・あのちょおおとダークサイドな一面も分かっていたのに
アルも怒っている・・あう・・
「上等だ そのカケ乗った!!」アーシュ
「私も参加します お二人と勝負します!!」アルテイシア
「何をされるかわからないから・・
未分化のエイルに負担がかかりますから
私が勝ったら今後は私の傍でエイルは寝てもらいます!
・・・私の魔力も剣も・・なかなかですよ・・
・・・・水竜王の加護を持つ・・水の魔力・・
水の女王・・水竜の女王の名前を持っています・・
幾度かの魔法や剣の勝負で
アーシュ様に勝った事もあります・・ふふ・・
黒の王国の奪還に・・あの最後の戦では
アーシュ様がいない後では総大将とした戦いました・・
・・御二人のとどめは刺しませんから・・御心配なく!」
にっと笑う・・アルテイシア
「アル・・私もアルの傍でも一度眠っていい?」ちょっと子供のような表情を見せ
首を少し傾ける テインタル
「ええ! テイ 待っているわ・・」微笑むアルテイシア
「ええ・・受けてたちますとも・・愛しいアル・・元 私の妻・・
勝ったら アルも一緒に添い寝していただきます」
「今後は一人で寂しく寝てください アーシュ殿」余裕の微笑みのリアン
「・・じゃあ 俺が勝ったら アルも添い寝するか・・」
「悪くない・・俺の第二王妃!アルテイシア」にやりと笑うアーシュ
「もう解消されていますよ・・私と結婚した時点で・・
アーシュ殿にあきたら いつでも帰って来なさい 私のアル」微笑むリアン
「リアン・・私のアルだと!! 許さんぞ!
今 ここで あの魔法使いを灰塵にして 塵にかえしたら
ここでやるか!剣と魔法の勝負!! どうせ ここは灰塵に還すからな」
にいい~と笑い 片方の瞳だけ少し閉じかけて リアンを睨みつけながらアーシュは言う
「それもいいですね・・」にっと笑うリアン ちらりんと見せる不気味な笑み
「・・私は2つの王国の王 黒の国の王でもある
今は重婚も可能です・・エイル・・ふふ」と付け加えてリアン
口をはさむ暇もない・・口下手だし・・のセルト
「やめてください!! 私達の世界が間違いなく壊れます 崩壊します!」
「大災害が起こりますから!!やめて下さい!!」
青くなり アリステアとアシャアシャが叫ぶ
あ・・二人の目には 涙まで浮かんでいる・・
怯えてびびっている にやんこな皆さん
腕を曲げて互いの両手を握る まっ青のリアとナジュナジュ・・
「時の狭間も 同様だ!! 今 時の狭間 時空がどうなっているか
解っているのか!」
「魔法と剣の勝負なら場所は特別に提供 用意するから ちょっと待て
三人とも!!わかったか!!」怒鳴るレグルス
・・・三人の会話に・・すでについていけないセルト
冷や汗をかき・・ただ・・黙って立っている ・・蒼白なり絶句するバステイル
テインタルも同じく・・ただ静かに無言で黙っている
「三人とも・・ ちょっとおお もう過ぎた事だし
時の番人さんも苛めないで!」エイルが叫ぶ
「それに僕の意思は?」
おろおろしながら エイル
「ない!却下!」 口揃えて 三人
「・・ひ・・ひどい」ちょっと涙目・・くすん エイル
レグルスに近ずき テインタルはレグルスに話かける・・
「・・貴方でしょう・・眠っている私の傍にあの魔法画の幻影
小さな赤い子竜ちゃんを置いておいてくれたの・・
時々 目を覚まして 私の頬を小さな舌で舐めてくれたわ・・
有難う・・眠っていたけどわかったわ
あの三枚の魔法画の奇跡の話は知っている・・
夢で視た・・無意識に 私の黄金の竜の王の力が見せたの・・
・・もう消え去ると目は覚めなかったけど・・涙が流れているのは
分かった・・」テインタル
「・・・ああ・・ぼんやりとだが・・俺も視たな その夢・・
普通・・三つの大災害が
ほぼ同時に起こるなんて そうそうある事じゃないから・・」
アーシュ
「れ・・レグスル! 貴方!! 時の法に違反行為です!
また やりましたね・・」バステイルが レグルスを指さして怒る
横斜め上に視線をしばらく漂わせてから・・コホンと息つぎをして
バステイルに向かってレグスルは言う
「・・見逃せ・・特別許可をくれ・・どっちにしろ
もう魔法画の中にはあの赤い子竜は戻れない・・」
「時の狭間か安息の時間にしか存在出来ない
テインタル姫は 薄幸の人生を送り 若くして
死んだ可哀そうな子だ
それも呪いの入れ墨により命と魔力を奪われて
・・生涯のほとんどは・・
仇の巨人族や魔法使いに いいように扱われた・・・
・・・間者として・・奴隷のように・・
まだ幼い頃に目の前で家族を惨殺された
・・・叔父も叔母も・・従妹達も一人残らずに・・
・・親戚のヴァン伯爵は巨人族の手下・・裏切り者・・
最後には・・最愛の兄アーシュ殿の為に犠牲になった・・
幸せだった時間は僅かしかない・・救いもわずかだった・・
本来なら黒の王女として・・
誰より幸福な生涯を送るはずだった・・天寿もまっとうするはずだった・・
母親譲りの極上な美貌も
天上の神達は 惜しみなく贈った・・賢い子だ・・
白と巨人族の2つの言語もすぐに覚えた・・」
「剣も強い・・体術も・・間者として辛い鍛錬に耐え抜いて獲得した・・」
「絶大な焔と 幾つかの黄金の魔法の力も・・贈られた・・」
「約束された運命の一対 アーシュ殿を贈られて・・
天上の神々に祝福されていたのに・・」
「巨人族の間者として
いいように使われて・・一度は危うく 巨人族の王に襲われかけて
幸い未遂だったが
あの最悪な冷酷な魔法使いも言ってたろう 一度 抱いてみたかったと・・
・・惨すぎる・・」
「あんな呪い入れ墨までされて・・最愛の兄アーシュ殿に対面したなら
もう一人の自分が
愛するアーシュ殿を殺そうとする・・まともに生涯 幼い子供時代以外は
楽しい話も出来なかった・・」
「その入れ墨も消してやれない・・
私達の時の番人の力不足・・せっかくだから・・助けられなかった・・あの・・」
言いかけるレグルス
「・・・わかりました・・特別許可を与えます 私の権限で
で・・レグルスの事だから・・もう少しおまけをしろと 言うのでしょう・・
わかっております・・貴方が救えなかった 白いオッドアイの白鳥と
白い聖竜とユニコーンたちも私達時の番人か 歴代の魔法の王に頼み
救います・・白い白鳥は 幻影のみ連れてきます・・
あまり・・影響はないのですが 念の為 白い竜達は魔法画と共に
連れてきます・・ただし この時の狭間と安息の時間だけですよ・・
現世は許可しません・・まあ 出来ないでしょう・・時を渡る力はないから・・
それに現世に戻ろうとした途端 引き戻される・・」
ふうっとため息をつくバステイル
「有難う!感謝します・・レグルス! バステイル!」
涙を浮かべて喜ぶ頬を赤く染めテインタル
「・・俺からも礼を言う・・テインタルは 俺の犠牲になったから
俺は生涯・・妹のテイを救ってやれなかった・・すまないテイ・・」アーシュ
「アーシュ兄様・・」テインタル
「何を言っている 今からでも遅くない 出来る事があるじゃないか!!
アーシュ殿 ぐふっつ」にや~んんと笑う
「・・んっ 何んだレグルス 俺が出来る事なら 何でもするが・・?」
ちょっと不安げな怪訝な顔のアーシュ
「ふふふふ・・のふ・・聞いたぞ! 約束だ!
アーシュ殿 重婚も異母兄姉妹なら兄妹婚が許されている お前は黒の王だ!
一人 増えても構わんだろうが!!!
しかも 本来なら お前達は 天上の神達に祝福され約束された運命の一対
第三王妃を迎えろ! 今すぐここで!テインタル王女を嫁に迎えろ!!
結婚式の会場も! 初夜の場所も 安息の時間から
極上のとっておきの場所を用意してやる
どうしても言うなら 現世でも構わん!
この時の番人レグルスとバステイルがな!」
不気味に光る瞳・・にいいいい~
と笑うレグルス
「・・承知しましたレグルス おめでとうございます
アーシュ様 テインタル様」にっこりと笑うバステイル
「!!」両手を自分の顔に手をあてて まっ赤くなるテインタル
目を丸くするアルテイシアにエイル リアン
にやんこな人達・・ひたすら・・一言も漏らさずにメモするアリステア
ポーカーフェイス
「・・ちょっと・・ちょっと待て!!
俺には エイルやアルが・・!! それに絶対 母親のアリアン王妃が許すはずない!!
絶対無理だろうが! テイだって・・!」
「・・あの・・私は構いません・・嬉しいです・・アーシュ兄様・・
母のアリアン王妃なら 父が必ず説得しますでしょう・・
祝福してくれる
生前・・お前たちは 運命の一対と・・」
「・・私達は 構いませんが・・アーシュ様 ねえ エイル
おめでとうございます アーシュ様 テイ祝福しますわ」
にっこり笑うアルテイシア
「うん 僕も構わないよ・・
おめでとうアーシュ テイよかったね うふ」
微笑むエイル
視線を宙に漂わせんがら そおっと言うリアン
「・・いいですね・・羨ましい限りです・・
両手に花がてんこ盛りじゃないですか アーシュ殿・・
・・・しかし・・この激しい闘いの中での・・プロポースとは・・
流石は 戦乱を象徴する・・闘争の焔の世代・・・並じゃない・・
あきたら・・いつでも帰ってきなさい 私のアル エイル
テインタル姫もどうぞ・・」
話している最中 元通りに復活して微笑むリアン
「ええ・・リアン様」「わかったリアン兄様」
アルテイシアとエイル・・赤くなり 目を閉じているテインタル
「・・・なんなら 一度 四人一緒に夜を過ごされては?
アーシュ殿・・頑張ってください・・覗きませんから ぐふっ!」
とんでもない事を言う 笑いを堪えているレグルス・・
「いいや お前はきっと覗く!!
たくっ・・いい加減にしろよ レグルス! 本気で怒るぞ!
手加減なしで 燃やす!!」顔がまつ赤になるアーシュ 握り拳
「・・私は構いませんが・・エイル達とは
父のリュース公に勧められて 一緒に産後のエイルの療養も兼ねて
温泉に入っていた事が何度か・・ その時 テイも連れて行きましたし・・
・・皆 裸の姿も知っておりますから・・」
ほほっと笑うアルテイシア
「うん・・僕も大丈夫 がんばってね アーシュ テイは大丈夫?」
エイル
・・しばらくの沈黙の後 赤い顔で頷くテインタル
まっ青のアーシュは 冷や汗をかきなら
口をしばらくパクパクさせた後で・・やっと言葉を絞り出す
「・・俺の意見は・・俺の意思は?」アーシュ
「ない! 却下!」即座にエイルとアルテイシア
「・・おい・・」目眩を感じるアーシュ
「・・テイの事 結構 好きだったでしょう?
それに本当の子供の頃
アーシュの初恋の人 アリアン王妃だったでしょう?」
「・・肖像画を見る目を・・懐かしそうに少し笑っていた」
へろっと言うエイル
「・・あんなに お母様に苛めらて 暴言を言われていたのに
卑しい人族の子とか 死んでおしまい・・とか
物を投げつけらて怪我したりとか 階段から突き落とされたり・・
無視や 何もしてないのに 平手打ちまで されたのに・・」
驚くテインタル
「え! そんなに苛められてのアーシュ・・そうか
だから 僕と会った頃は あんなにかなり ひねくれていたのかものね・・
今もだけど・・口も悪いし・・」エイル
「・・確かに 以前 あのアリアン様一人だけの肖像画を外そうとしたタルべリイ殿
父のリュース公を 止めて そのままにしていてくれ・・って言った
あの時のアーシュ様の表情って・・大事な宝物を 盗られそうになった
子供だった・・」アルテイシア
「・・リアン兄様も 側室のお母様が 低い身分の方だったから
随分と 宗主の正式な妻の子供の・・異母兄弟の二人とその母親から
酷い苛めを受けていたみたい・・ 僕には 言なかったけど・・
何度も酷い怪我していた・・多分 お兄様たちのせい・・」エイル
「・・実は似たような子供時代ね・・リアン様もアーシュ様も・・
リアン様の御話は 本人から 少し聞きましたけど・・
・・・暗殺未遂もあったそうです」
アルテイシア
「・・アリアンお母様は 誇り高くて・・気が強気から
多分・・アーシュ兄様に会っても・・また 無視すると思います・・」
テインタル
「・・そう・・」エイル
「・・私達がいるから 大丈夫・・リアン様も・・」アルテイシア
ヒソヒソと会話する 仲が良い三人・・女性陣・・
三人の会話は 当然まったく聞いてないアーシュ・・
「・・エイル お前・・こっそり見たな・・俺の覚え書き・・日記」
振るえる指でエイルに指さして 冷や汗と未だ青い顔のアーシュの一言
「うん・・部屋をおかたずけしている途中で 偶然・・ごめん」
ちょっと舌を出すエイル
「・・自分の部屋はあんなに散らかして・・
俺が何度も かたずけていた 掃除もした・・まったく・・」
ブツブツと文句を言うアーシュ
「アーシュ お部屋を掃除するのも おかたずけも
上手だから・・御礼に・・と思って・・うふ」エイル
セルトは倒れる寸前・・全然会話についてゆけない・・
にやんこな人達もまっ赤である・・アシャアシャもリアもナジュナジュも
赤くなる どうしてよいか わからない・・
一人 ポーカーフェイスなのは アリステアのみ 平然とまだ メモをつけている
「・・ここは 素直に 約束して キスでもされては?」
やれやれという表情のリアン
「そうそう」うんうんと頷く恋のキューピット役(?)のレグルス
と・・バステイル
「・・三人もまとめての夜はパスする 俺の繊細(?)な神経がもたん!!」
「一人づつだ! 約束する! ちゃんと未分化のエイルには気をつけて対応する!
テイも・・その・・初めてだから・・気をつける・・」
「しかし 俺はこの少年の姿だぞ
戻っても 当分戻らんぞ この身体は・・ 百年かかるかも知れない・・」
「で・・いいな・・三人とも 構わんな!大人の姿に戻るのを
待つ気はないだろう!」赤くなって怒鳴るアーシュラン
コクコクと頷く女性陣の三人
「アルは 俺を押し倒して襲っても構わん!好きにしろ!全てお前に任す!
煮て食うなりなんなり・・どうしようと 好きにしろ!その代り
やる気がないとか・・ いまいちなんて 文句はなし!」アーシュ
そのセリフに反応して・・確実にしっかりとメモを取るアリステア
「はい アーシュ様 うふ」アルテイシア
「うん・・楽しみにしているから」エイル
「・・・・」無言で 赤くなっているテインタル
「テイ お前を三人目の妻に迎える・・それでいいか?テイ 後悔しないな」
「・・母親のアリアン王妃は お前を・・
これから 無視したりするかもしれないぞ覚悟はいいな・・」
アーシュ
「・・はい」赤い顔で嬉しそうなテインタル
つかつかと近づき テインタルの前に立つアーシュ
顔を少し赤くして 一瞬 視線をそらして
すぐ 視線を戻し まっ直くにテインタルの顔を見るアーシュ
「・・テイ 悪いが 少しかがんでくれるか? 今の俺は子供の姿で
お前より背が低いから・・約束の証・・キスを・・」少し顔が赤いアーシュ
「はい!」嬉しそうに笑うテインタル
屈んだテインタルの顔をそおおと 両手に包み
そっと唇を重ねる・・
「・・約束した・・テイ」
「はい アーシュ兄様」テイは嬉しそうに頬を赤く染めて 涙ぐむ
そのままテインタルの耳元で囁くアーシュ
「・・これからは 兄はよせ・・お前は俺の妻だ・・」
瞳を半分閉じてアーシュは言う・・
「・・はい・・アーシュ様」涙を流すテインタル
パチパチと拍手する魔法使い・・笑っている
「・・聞かせて 頂いた御話は とても楽しかったです
実に面白かった・・なんと微笑ましい・・」
「仲がよろしいですね 皆さん・・・」
「・・三人目の花嫁に正式なプロポーズとは・・実にめでたい
私からも お祝い申し上げます・・しかも・・この激しい闘いの最中に・・
まさに・・戦の時代を象徴する火竜王に相応しい・・
すぐに未亡人にしてあげますよ・・・・
いや・・妻の方々も すぐに殺して 消し去りますから・・
寂しくもないでしょうね・・ふふふ・・」魔法使い
「・・消え去り 灰塵になるのは お前の方だ・・
魔法使い」ゆっくりと振り返りながら アーシュは言う
「・・本当に無事に私を倒して ここを私もろとも
灰塵に還せると・・ふふふ・・」
「そろそろ・・始めませんか?」
魔法使い
「・・そうだな・・待たせたな 魔法使い」
魔法使いを・・睨みつけるアーシュ
魔法使いの廻りの赤い水晶群と 白い透き通る透明な水晶群が
光り 輝きを放つ・・
再び現れる歴代の魔法の王達の影・・再びあのアーシュランとテインタルの影も・・
「・・・それから・・ハンデイも頂きます・・ふふ・・
また・・あのもがき苦しんでいる様が見たくなってきましてね・・」
右手でゆっくりアーシュとテインタルの方に向けて ゆらりと横に動かす
「!!っつ・・」 「うっ!くっ!」アーシュとテインタルの二人が
苦しそうに お腹や胸元を両手で押さえる
口元から血が滴る・・そして服も血がにじみ出て ぽたぽたと落ちる
「アーシュ!!テイ!!」「アーシュ様! テインタル様!」
それぞれ皆が叫ぶ!
「は・・早く私の中へ アーシュ様 テインタル様!」
「・・いや まだだ・・まだ大丈夫 奴に直接 一太刀は浴びせる!」
「・・テイ お前はアシャアシャの中へ!」アーシュ
「・・いいえ 私も大丈夫です アーシュ兄様 いえアーシュ様」テインタル
二人はそれぞれ 癒しの呪文を自分自身にかける・・
一旦 傷は塞がる・・
立ち上がるアーシュとテインタル二人は魔法使いを睨みつける
「・・また開きますよ・・暗黒の女王は間に合うかな・・」
「・・黄金の竜の王クランの呼びかけに答えよ
出現せよ幻獣!」敵の黄金の竜の王の影が呪文を唱えた
白い翼をもつライオンが現れる
「大地の精霊 我に力を! 出よ岩の巨人!」
土の上に転がった 岩の数々がより集まり 岩の巨人となる
白の翼のライオンが 飛びかかり テインタルの肩に噛みつく
「くっ!きっああ」悲鳴を上げるテインタル 肩から血が噴き出す
「テイ!」「テイイ!」アルテイシアとアーシュが剣をライオンに突き刺す
「ぐおお!」ライオンが声を上げ テインタルの肩から口を外す
アーシュは 剣を引き抜き 再び剣で ライオンの身体を斬り裂く
ライオンが消える
アルテイシアはそのまま 風の王の影に駆け寄り 剣を横に振り斬り倒す
王の影は消えた・・
リアンとセルトは 岩の巨人に駆け寄る
「水! 水よ 氷の槍となり 敵を貫け!」リアンの攻撃
5本の大きな氷の槍が 岩の巨人が突き抜ける ぐらりと動きを止める
そこにセルトが高々とジャンプして 巨人の頭上から
左手だけで大剣を振り下ろす
ドン!音をたてて 着地するセルト すぐ後から 少し斜め縦に
二つに割れて 崩れ落ちる岩の巨人
そのままリアンは 王の影に 攻撃魔法を唱え放つ
「風! 風のかまいたち! 最後の白の宗主リアンが命ず!
無数のかまいたちよ! 敵を斬り裂け」
王の影は 対抗魔法を唱える
「大地の盾!」大地の盾は 無数の風のかまいたちに斬り裂かれ
崩れさり消える
そこにリアンが今度は剣で斬りかかる カキイイン
一度 剣がかち合った後で リアンの次の剣の攻撃が王の影を突き刺す
王の影が消える
レグルス達は 一人の王の影を剣で倒した後
三人の王の影に 水の攻撃魔法を唱え闘う
「水 水の刃」
一気に三人の王の影が斬り裂かれ 消える
バステイルが魔法を放つ
「闇の刃!」
黒い刃が王の影を斬り裂く
宙に浮かぶアシャアシャが 魔法使いに向かって
攻撃の魔法の呪文を唱える
「ナジュナジュ兄たんに ひどい事をした! 許さない!」
「闇の力・・時と闇の力よ! 我 暗黒の女王アシャアシャと
火竜王 最後の竜王の名において 命じる
闇の剣となり あの闇の魔法使い 神の一人を貫け!」
宙に黒い闇の剣が浮かぶ
「いけ!」アシャアシャが腕を振る
それを合図に 黒い闇の剣が一直線に 魔法使いに向かう
「大地の盾!」魔法使いの前に土と岩で出来た大きな盾が出現する
闇の剣は 大地の盾をすり抜け そのまま魔法使いの身体を貫く
「ぐおお! ふ・・ふふ 効きましたよ・・これは」
口元から 黒い血が流れる 貫いた剣の身体からも黒い血が流れ落ちる
黒い闇の剣に手をかける魔法使い
「光! 金の光り 神が命令する! この闇の剣を消せ
そして 我を癒せ!」
金色の光が魔法使いの身体を包み込み 傷と闇の剣を消す
「今度は こちらの番・・手加減はしません 幼い暗黒の女王!」
「炎! 我が敵! 暗黒の女王を炎で包み込め」
一気に炎が燃え上がり アシャアシャの身体を包み込む
目を閉じているアシャアシャ
幼い身体は 光の丸いシャボン玉のような物に守れて
そのシャボン玉の中心にいて 炎はシャボン玉を包んで燃え上がるが
アシャアシャの身体に触れる事は出来ない・・
「消えろ 炎 我 暗黒の女王と火竜王 最後の竜王の名におき
命令する 消えろ!」
ゆっくりと・・炎が消え去る
瞳を開けるアシャアシャ 青く煌めく瞳・・
ゆつくりと 瞳は 黄金の金と赤い焔の色に変わる
「・・今度は 私の番・・」静かに呟くアシャアシャ
こちらは にやんこな人達を守るエイルことエルトニア
「風・・風の矢!」 弓を構えるポーズを取り 矢を放つ
次々と駆け寄って来た
魔法の王達の影 数人を消し去る
魔法で加勢するアリステア達
「水! 水の刃水の女王アルテイシアの名のもとに消し去れ」
アリステア
「風!風のかまいたち! 二つの王国の王 最後の白の宗主リアンの力を
借り受けて 敵を倒せ!」
魔法の王の一人を二人の魔法で消し去る
ゆっくりと・・エイルことエルトニア達に近づく 一人の男・・
火竜王アーシュランの影
空洞の目の位置には 黄金の金色と赤い焔の色の光の塊
「・・消えろ 結界魔法・・火竜王 最後の竜の王が命令する!」
バチン!と音をたて 薄く光る透明な魔法の結界が弾けて消える
「あ・・」青くなるエイル
一気に駆け寄り エイルに向かって剣を振り下ろすアーシュの影
もうダメ!「アーシュうう!!」エイルの声
「エルトニア様!!」
ハッとするアーシュ達 振り返る
また 服の上部分を緩め
漆黒の翼を出現させて広げるアーシュ 飛び立つ
続けて リアンも自分の白い翼を羽ばたかせる
エイルは無意識に 右手で 傍の赤い水晶群を握りしめる
すると赤い水晶は輝き 中から一人の男が出現する
大人の姿のアーシュラン・・同じ鎧姿・・左手に剣を握っている
閉じていた目を開ける 瞳がある・・色はどちらも同じ赤い焔の色
キイイーン 剣が打ち合う鋭い音 剣で攻撃を打ちとめる
攻撃して来たアーシュの影は 一旦少し離れた位置に移動する
エイルを守るように 自分の背に移動させる・・
振り返りニコリと笑うアーシュの幻・・
「お前が俺を呼び・・赤い水晶が俺を出現させた
この闘いが終われば・・俺はすぐに消える
それまで・・守る・・そこの者達も・・」
「・・白の王族の力だ・・俺は幻獣のようなもの・・」
エイルの頬にキスをするアーシュの幻
「炎!」敵のアーシュの影が魔法の炎を投げつける
「消えろ!炎!」アーシュの幻が叫ぶ
炎が消えて 敵のアーシュの影が 飛びかかり剣を振り振り上げる
素早く 横に剣を振り 斬り裂く 黒い血が飛び散る
影が消えさる
テインタルの影も駆け寄り 剣で アーシュの幻に斬りかかる
すつと横に避けて 斜め下から一気に斬り裂く 消えさるテインタルの影
「俺のエイルから 離れろ!影!」黒い翼で飛んで来た
アーシュは剣を振り下ろす
「エイル! 今 助ける!」リアンも剣を手に飛びかかる
「だめええ!二人とも やめて!!アーシュ リアン兄様」
エイルが叫ぶ!
アーシュの剣を空いている右手でがっしりと握り締めて
攻撃を止める 右手から赤い血が流れる
カキンン!
続けて打ち下ろされたリアンの剣は 左の手の剣をかち合わせ
うち止める
「お前! その血の色・・瞳がある・・前の俺と同じ色」驚くアーシュ
「・・一体・・これは・・」
にこっと笑うアーシュの幻
「アーシュの幻だって・・赤い水晶が出現させたの・・触れたら現れた
僕の白の王族の魔法の力で 生み出したんだって・・」微笑むエイル
アーシュの幻が言う・・
「先程 アーシュの影とテインタルの影は消した」
「俺はエイルの幻獣・・この闘いが終われば消える・・」
「魔法使いが消えれば・・俺は力を失い消える幻・・
その赤い水晶に触れるがいい リアン・・白の王族の一人」
「・・・」リアンが言われた通り・・手で 赤い水晶に触れる
ふわりと・・テインタルの幻が生まれる
にこりと笑うテインタル
「・・俺たちがエイルと他の者達を守る・・まかせてくれ・・
大丈夫・・役目が済んだら・・消える・・
ああ・・ちゃんと 他のアルテイシアやセルト レグルス達
アシャアシャも
テインタルにも伝えてくれよ 味方なのに 攻撃されたら 困る・・」
ふふっと笑う
「・・わかった 頼む」アーシュ
「・・最後に消える前に褒美として エイルのキスをもらう・・
それぐらい見逃せ・・結構 独占欲も強くて
焼きもち焼きだからな・・俺は・・それにリアンも・・」アーシュの幻
ため息つく 二人
「・・わかった・・」アーシュ
「・・・了解ですよ・・見逃します・・」リアン
「・・・もう一つ頼みがある・・理解しているだろうが
あの魔法使いの力は絶大で 強大だ・・
・・ここを灰塵にしても・・また再生する可能性がある
奴は遅かれ早かれ・・俺達・・幻獣に気がつく・・
その時は この俺・・幻獣の俺達は いたぶられ 時間をかけて なぶり殺されるだろう
あの魔法使いの事だから・・テイも・・乱暴される・・
ここでの闘いで傷つき血を流した以上
リアンやセルト アルテイシアの幻や影も生み出される
恐れがある・・ナジュナジュも あの子の血を舐めていた・・
娯楽代わりに何をするか・・
最後に俺を殺す前に・・俺の身体を使って 内側から 封印を壊すだろう・・
必ず・・赤い水晶が再生される前の 封印の外側から 中の赤い水晶だけでも
破壊してくれ・・
それに嬲り殺されるのも 目の前で テイが乱暴されても・・
それは嫌だ・・赤い水晶群を一つ残らず魔法で破壊して
俺達は自害する・・テイの幻が嫌がっても その時はテイを俺は殺す
じゃないとテイの身体を使うだろうから・・内側から 封印を破壊する
ああ・・そうだ・・ナジュナジュの幻を使うかも 知れない
保有者である ナジュナジュには 暗黒の女王の力が眠っている・・
どちらにしろ・・再び現れた魔法王の影達は 俺が消し去るつもりだが・・
多勢に無勢・・勝てるかどうか・・暗黒の女王アシャアシャもいない・・
奴の事だ・・ナジュナジュの幻にも何をするか・・
想像がつく・・いたぶり尽した後で楽しみながら
じわじわと殺すだろうから・・
俺は 赤い水晶を破壊して その後すぐ 自害する・・
リアンこれを・・赤い水晶の欠片を幾つか差し出す
これを・・どうしろと・・リアン
一つだけでも
大丈夫 他のは 他の魔法の王か にやんこな者達の魔法使いか
暗黒の女王アシャアシャに・・
これは 火竜王 最後の竜の王アーシュランと
もう一人の火竜王テインタルの血と魔力を吸い込んだ物・・
属性がなくとも
これを持ち 魔法の呪文に俺の名前を使えば 黄金の竜の王の力も
火竜王の力を使う事が出来る
保有者のナジュナジュも魔法が使える・・ただし
暗黒の女王アシャアシャと魔法の王達以外は 魔法の威力は半減以下だ・・
白い水晶もよく研究するように 伝えてくれ・・魔力を秘めているから
何かの役にたつ・・アシャアシャの力を入れる事も出来るだろう・・
わかった・・有難う・・感謝する アーシュ
感謝します 必ず 見回りにきます
万が一の時の為に・・赤い水晶を握り締めるリアン
もう行くがいい・・一人であの幼い暗黒の女王が 魔法使いと対峙している
ここは エイルとこの者達は 俺が必ず守るから 安心して行け
わかった 行く アル達にも伝える
有難う たのむぞ!アーシュ
また後でエイル 皆
有難うございます 頼みます!
じゃあ エイル また リアン
アーシュ リアン兄様・・エイル
二人は翼を広げて まずセルトやアル テインタルのもとに飛んでいく
丁度 三人は魔法の王の影たちを全て 倒した処だった
「炎! 炎の柱!」テイの呪文で 最後の王の影が焼かれて消え去る
皆 はあはあと息を吐く
「ああ!大変!」顔色を変えるアルテイシア
エイルの傍に あのアーシュの影が立っている
慌てて翼を広げて 飛んでゆこうとする
アルテイシアの腕をつかむリアン
「大丈夫! 彼は味方だ! エイルが偶然 赤い水晶に触れて
エイルの白の王族の力が発動した 彼女の幻獣だ
闘いが終われば 彼は消える・・リアン
今度はアーシュが言う
詳しい話は 魔法使いの元に向かう途中で話す
アシャアシャが一人で戦っている 急がないと!
行くぞ! ここはかたづいたな
ああ レグスル達も来た アーシュ
皆 魔法使いと幼い暗黒の女王アシャアシャの元に向かう
「炎の槍! 神が命令する いでよ・・我の敵を貫き 燃やし尽くせ!」
まっすぐとアシャアシャを指さす
宙に 2つの赤く燃えがる 太く長い炎の形が現れる
「ゆけ!!」魔法使いが叫ぶ
炎の槍は 勢いよく飛び アシャアシャの元に向かう!
「水! 水の盾 我を守れ! 火竜王 最後の竜の王と暗黒の女王が
その名のもとに命ず! 出現せよ!」アシャアシャが叫ぶ
アシャアシャが浮かんでいる その前に 巨大な縦長の水の塊が生み出され
現れる
水の巨大な盾により シュウウン!と音をたて
1本の巨大な炎の槍は 砕け散る それと同時に
水の盾も 消え去る
アシャアシャの眼前に 炎の大きな槍が迫り来る
瞳を大きく見開くアシャアシャ
その瞬間 アーシュの呪文の詠唱が響き渡る!
「炎の槍! 火竜王 最後の竜の王が命ずる!
消え去れ!!」
アシャアシャの鼻先のすぐ傍 直前 一瞬で消え去る
はあ・・と息を吐くアシャアシャ 幼い顔に汗が一すじ 流れる
「アーシュラン様!」 漆黒の翼で飛んできたアーシュに声をかける
アーシュはアシャアシャを守るように アシャアシャの前に立つ
「一人でよく頑張った 遅くなってすまない」
アーシュは顔だけアシャアシャ向けて 微笑む
「大丈夫です アーシュ様 有難うございます」
嬉しそうに笑うアシャアシャ
うなずき 振り返り 正面の魔法使いを見るアーシュ
「・・・来たぞ!覚悟しろ 魔法使い!」
アーシュは魔法使いを睨みつけて言い放つ
「では・・これは・・」魔法使い
再び現れる 魔法の王達の影達・・
「無駄だ! 炎! 炎の海 いでよ 我 火竜王 最後の竜の王が
命令する」アーシュ
ゴオオ・・パチパチと音をたてる 大きな炎の海が
魔法使いや 現れた魔法の王達を包み込み 勢いよく 燃え上がり
魔法の王達の影は 消えさる・・炎の中 一人残された 魔法使い
「・・ふむ・・さすがです・・やりますね・・」
服も燃えない 火傷一つ負ってない・・
「水・・消え去れ 炎の海! 神が命ず」
水が 炎の海を消し去る
「・・では これは?」魔法使いは笑う
「ぐつ!あうっ!」突然 アーシュが腹や胸元近くを両腕で押さえて
苦しみだす・・口元から 血が流れる 胸元や腹からも出血する
「アーシュ様!は、早く私の中へ!」血相を変えるアシャアシャ
「・・大丈夫だ まだ・・一刀 あの魔法使いに・・ぐっ!」アーシュ
「ああ! アーシュ様!」「兄様ああ!」
遅れて到着した まっ青になるアルテイシアとテインタルも声を上げる
苦しげに それでも顔をあげてアーシュは言う
「・・アル テイ アシャ・・大丈夫だ・・悪いが 水の癒しを頼むアル
・・それとテイ・・兄様は なし・・お前は俺の妻だ・・」
「はい 今 水の癒しを・・」アルテイシア 彼女はアーシュに手をかざす淡く光る
「・・御免なさい・・アーシュ様」テインタル 「・・それでいい よく言えたテイ・・」
涙がこぼれ落ちたテイの頬を優しくなでる
「アーシュ様」涙ぐむアシャアシャ
「・・大丈夫・・アシャ・・」今度は アシャアシャの頭をなでるアーシュ
「魔法使い 覚悟しろ! 死ねええ!」セルトが大剣を左手に持ち
魔法使いの後ろから 駆け寄り 振り返った魔法使いに大剣で一気に 刺し貫く
「ぐふっ!」口から黒い血だまりを吐きだす魔法使い・・
「・・ふっ・・効きましたよ・・さすが無敵の竜人・・セルト将軍・・だが・・」
手で 飛びだした剣先を 簡単に押し戻す
「! 馬鹿な 私の剣を押し戻した!!」
「吹き飛べ! 竜人!! 風! 風の突風!」魔法使いが叫ぶ
勢いよく噴いた強い風の突風に 弾き飛ばされるセルト 岩壁に叩きつかれる
「ぐっ・・」ゆっくりと立ち上がるセルト・・
先程 アーシュの影から 斬り落とされた右腕の傷後が少し開く 赤い血が流れ出す
「・・癒しの水と光・・」魔法使いが自分の傷に手をあてる 淡く光る
癒しの水と光が魔法使いの傷を癒す 服も黒い血の跡も消え去る・・
「アル 俺はもう大丈夫だ・・有難う セルトの方を頼む」アーシュが立ち上がる
「は はい」アルテイシア
「行くぞ・・」アーシュ
剣を左手で握り ジャンプして飛び上がる 「魔法使い!!」アーシュが叫ぶ
魔法使いの頭上から斬りかかる
避け損ねた魔法使いが 身体を深く斬られる 右肩近く・・
「うおおっ!」黒い血が噴き出す 声を上げる魔法使い
そこにリアンの風の魔法
「風!! 風の矢!!」弓を構える そして指先を外す
ビイインと 何もないはずなのに 弓の弦の音が響く
シュウウーツ 無数の突風が吹き貫ぬく
無数の風の矢が魔法使いの身体を突き貫く 黒い血が噴き出す
続けて 駆け付けたレグルスの攻撃魔法
「水! 氷の槍!」
一つの水の玉が宙に現れて それが形を変えて 細長い氷の塊となり
魔法使いの身体に突き刺さる
「ううっ・・やってくれる!!
火竜王・最後の竜の王アーシュラン それに白の宗主リアン
時の番人 ケンタウルスのレグルス!!」
口元から黒い血が幾すじも 流れ落ちる・・
口を歪めて・・
ローブで隠れてよく見えない顔・・しかし口もとから 怒りの表情が読み取れる
「・・最後だ・・魔法使い」アーシュがジャンプして飛び上がり くるんと一回転
着地間際に 横に剣を振り 魔法使いの首を斬り落とす
「・・うっ・・」小さなうめき声 首が転げ落ちる
黒い血が辺り一面に 飛び散る・・沢山の黒い血の跡・・
・・倒れ崩れ落ちかける 魔法使いの胴体
斬り落とされて 首からも 氷の槍が突き刺さった部分からも
黒い血がどくどくと流れて 胴体の服を黒く染めている
・・だが 胴体は ゆらりとそのまま静止する
秘儀腕がゆっくりと動く 身体に刺さっていた 氷の槍を引きぬく・・
それを投げつける ガチャーンン 音をたてて砕け散る
首が浮き上がり 胴体近くの上の宙にふわふわ 浮いている・・
「・・相変わらず いい剣の腕前・・動きは 素早く 軽やかだ・・」
にいい・・笑う・・
「・・神というより・・化け物だな・・お前」睨みつけながらアーシュは言う
「炎・・炎よ・・あの化け物を 燃やし尽せ 灰塵に還せ!!
我は 火竜王テインタル この名のもと 炎・・現れよ!」
テインタルの魔法攻撃
炎に包まれる 首と胴体・・
「消えろ・・炎・・神が命ず・・」ゆっくりと炎が消える
「・・闇の力・・我は天上の黄金の神の一人・・
闇よ・・我に力を・・闇の刃 敵を一人残らず 斬り裂け!」
黒い闇の塊が 複数 生みだされて 黒い刃となり アーシュ達に襲い掛かる
まずアルテイシアとセルトを襲う
「み・・水の盾!!」アルテイシアの水の魔法・・
縦長の水の塊がアルテイシアの前に現れる
最初の一撃の闇の刃の攻撃を防ぎ 水の塊・・盾は砕け散る
次の闇の刃が アルテイシア達を襲う!
「!!」目を見開くアルテイシア そこにセルトがアルテイシアの前に
立ちふさがり 彼女を守る
闇の刃の攻撃をまともにくらうセルト
「うおお!」セルト
「セルト!」 「セルト将軍!」「セルト殿」皆がそれぞれが声をかける
「セルト将軍」 倒れたセルトをアルテイシアが抱き起す
胸元近くが 真横に斬り裂かれている 幸い 銀の固く厚い鎧のお蔭で 傷は浅い
「み・・水の癒し 癒しの水 光の癒し!!」
傷を癒すアルテイシア ほのかに淡く光る手・・癒しの水と 淡い光の塊が生まれて
セルトの傷を癒す
「・・有難うございます・・姫」
「いえ・・私の方こそ 有難う・・セルト将軍」アルテイシア
「・・私達 竜人は 黒の王族を守るのが役目・・御心配なく・・」セルトが微笑む
アーシュ達にも 漆黒の闇の刃が襲いかかる
一つが 避けたリアンの足をかする 赤い血が少し飛び散る
「つうっ・・」リアンは少し顔をゆがめる
次の闇の刃が再びリアンを襲う
「光! 白の最後の宗主リアンが命令する 光の刃 闇の刃を打ち消せ!」
光の刃が現れて 闇の刃とぶつかり合い 互いに消滅する
はあ・・と息を吐くリアン
レグルスに襲い掛かった 闇の刃の一撃
「バステイル! 頼む!」レグルス
「はい レグルス! 時と闇の力・・私は 時の番人であり 神の一人
我に 力を・・闇の刃を打ち砕け!」
漆黒の闇の塊が 二人の寸前で出現 闇の刃を包み込み 砕け散り消え去る
テインタルとアシャアシャの前に 闇の刃が襲う
アシャアシャとテインタルは 目を合わせて頷きあう
テインタルの瞳は金色に変わっている・・
二人は互いの手を結び 空いている方の手をそれぞれ
襲い来る 闇の刃に手をかざす
同時に同じ呪文を詠唱すろ
「光よ・・我々の名は 火竜王 竜の王の娘テインタル
暗黒の女王アシャアシャ・・この2つの名のもとに命ず
光の盾と刃 現れよ! 闇の刃を防ぎ 打ち砕け!」
光の盾が 闇の刃の一つを防げき キイイーンと感高い音をたてて
砕け散る
もう一つの闇の刃は 光の刃が防ぐ 互いにぶつかり合い 砕け散る
しかい・・次の闇の刃の呪文 「危ない!」慌てて漆黒の翼を広げて
小さなアシャアシャを抱きかかえて庇うテインタル
闇の刃に背を向けるテインタル 「テインタル様!」アシャアシャの叫び声
黒い羽が飛び散る
瞳を開けて 後ろを振り返るテインタル
唖然としてアシャアシャは正面を見ている
アーシュが闇の刃を両手で 握り締めている
握り締めている手から赤い血・・
手が少し震えている・・目を見開き 歯をかみしめているアーシュ
腹の部分に闇の刃の剣先が突き刺さっている・・ぽたぽたと 赤い血が滴る・・
「アーシュ様!」それぞれ叫ぶアシャアシャとテインタル
「・・大丈夫だ・・」
アーシュは呪文の詠唱
「光り・・光の力よ・・我が名は 火竜王 最後の竜の王アーシュラン
その力により この闇の刃を消し去れ」
闇の刃の上に光りが眩しく輝き 闇の刃を消し去る
「ふう・・」息を吐くアーシュ
「今 癒しの水の呪文を唱えます! お待ちください アーシュあ・・いえアーシュ様」
テインタル
「ああ・・頼む 有難う・・俺の妻テインタル アシャは大丈夫か?」微笑むアーシュ
「大丈夫です 有難うございます」アシャアシャ
「はい」テインタルも微笑む
「・・治癒が済んだら・・宿敵・・魔法使い
あの化け物を灰塵に還す・・止めを刺す・・
力を貸してくれ テインタル・・アシャアシャ
俺達二人が アシャアシャの中に入り・・三人で呪文を詠唱する・・
闇の槍と炎の槍で・・消し去る・・奴を灰塵にしたら・・
水晶に閉じ込められいる人達も救いだして・・ここを灰塵に還し
皆で・・ここを永遠に封印する・・魔法ギルドと俺達が1年に1度
見回りに来る・・恐らく・・あの化け物は再生するから・・あれは不死の神だから・・」
ため息をつくアーシュ
「はい・・二人とも 私の中へ・・どうぞ」アシャアシャ
「・・わかりました・・少し待ってください・・呪いの傷口も
開きましたから・・少しだけ・・時間をください・・数分程度です・・」
テインタル
ハッとするアーシュ 両方の瞳が黄金の金に変わる
何かを視ている
「・・あ・・」アーシュの声
アーシュの異変にテインタルも 瞳を金色の瞳に返る
そして視る・・
「・・いけない!」テインタル
二人の変化と声に驚きアシャアシャも 廻りを 視てみる
ハッとする・・
「危ない! 奴が 気がついた! 白のエルトニア様!!」アシャアシャ
「!!」リアンやアルテイシア達も振り返る
魔法使いは 少し離れた位置で
にやんこの人達を守るアーシュとテインタルの幻・・
エルトニアに気がつく・・
にいい・・と不気味な笑みを浮かべる
「・・なるほど 面白い 赤い水晶で味方の幻獣を造りだすとは・・
あの火竜王の最愛のエルトニア姫の存在を消しさってやる・・
消えるだろう・・今はいわば・・精神体・・くくく・・
風の矢で・・神たる私を傷つけた・・あの無礼者! 闇の刃よ・・」
「・・神たる我が 命ず あの黄金の髪を持つ オッドアイの瞳の持ち主
火竜王の妻エルトニア姫とその幻獣達を 消しせれ!!闇の刃!」
襲いかかった 魔法の王の影を アーシュの幻とテインタルの幻達の剣が
ほぼ同時に 斬り裂く 消え去る魔法の王の幻・・残るのは黒い血の跡
次に襲って来た 王の幻に テインタルの幻が攻撃魔法を詠唱する
「炎! もう一人の火竜王テインタルの名のもとに 燃え上がれ
敵を焼き尽くせ!!」
現れた炎は大きく燃えて 王の影を焼き尽くす・・
「え・・あ!」エルトニアが瞳を大きく 見開く
その声に ざわめく にやんこな人達・・
「うん・・あ!」メモを取っていた アリステアがペンを落とす
きょとんとするリアとナジュナジュ・・
「んっ・・しまった! 奴が気ついた!」蒼白になるアーシュの幻
防御の呪文を唱えようとした アーシュの幻に
テインタルの幻が叫ぶ
「間に合いません! 私が盾になります!次の攻撃魔法に備えてください!」
「テイ!!」「よせテイ!!」 アーシュの幻とエイル それぞれが 叫ぶ
テイは 皆の前に立ちふさがり 迫り来る 闇の刃に向かって
正面を向き 両腕を大きく開く!
最初の一撃 闇の刃が 彼女を容赦なく斬り裂く!
「きやあああ!」テインタルの幻の悲鳴
口元から赤い血・・
大きく斬られた 斜めの切り口・・
胸元から 腹にかけて・・
傷は深く 身体が半分近く裂けている・・
獲物を斬り裂いた後 目的を果たした闇の刃は消える
崩れ落ちるテイの幻
テイの幻を抱きかかえるアーシュの幻
「・・いい・・早く 防御の呪文を・・アー・・」そう言いかけて
目を閉じるテインタルの幻 赤い血の跡だけ残して 消え去る・・
「テイ!!テイ!!」エイルの瞳に涙が浮かぶ
にやんこな人達も 涙を流す・・・
アリステアが目を閉じて 小さな声で感謝と祈りの言葉を捧げている
すっくと立ち上がり アーシュは次に向かって襲い掛かる闇の刃に
立ち向かう
「炎の盾! 火竜王サラマンデイア・・アーシュランが命ず
炎の刃 闇の刃を斬り裂け」
炎の盾が皆の前に立ちふさがり 襲いかかた闇の刃を打ち消す
グオオオーン キュウウーン 大きな音を立てて ほぼ同時に消さる
すぐ次に襲いかかって来た 闇の刃を炎の刃がぶつかり合い
砕け散る!
「!! もう一つある!」アーシュの幻は 大きく瞳を見開く
剣を抜き 襲い掛かった闇の刃を弾き飛ばす
闇の刃は 弾き飛ばされたものの・・少し先で 静止して それから
再び アーシュの幻の元へ飛んできた!
アーシュの幻は剣を下に持ち代えて 盾にして 動きを止めようとするが・・
ザクッ! 闇の刃の一部が 胸元近くに突き刺さる
「ぐふつ!」 赤い血を口から 吐きだす
「アーシュ!!」「アーシュラン様!!」
エイルもにやんこな人達も声を上げる
剣を手放して 闇の刃を振るえる両手で握り締める
両手から 血が滴り落ちる・・
ゆっくりと闇の刃がアーシュの幻の身体に食い込んでくる・・
「ぐっ・・あいにく・・俺は時と闇と光の力の大きな魔法を使えない・・仕方ない
黄金の瞳はない・・
炎! 黒の王 火竜王サラマンデイア アーシュランが命令する
俺ごと この闇の刃を焼き尽くせ!」
ゴオオオ! アーシュは大きな炎に包まれる!
「アーシュ!」 「アーシュラン様!」 エイルと にやんこな人達が叫ぶ
「エイル それかアリステア どちらでもいい!
誰か・・ 風の呪文・・風に声を乗せて 仲間を呼べ!
お前一人だけでは・・皆もお前自身も守りきれない! 危険だ! わかったな!」
炎に包まれて・・アーシュの幻が顔だけ 振り返り エイル達に向かって叫ぶ
炎の中で まず闇の刃が燃え尽き砕け散る
「だめえええ!アーシュ!
み 水の魔法! 火竜王 最後の竜の王の妻
白のエルトニアが命ず! 消えて 炎!」
巨大な水の塊が宙に現れて 炎を包み消し去る
魔法の水は役目を終えて・・消え去る
ぐらりと倒れたアーシュの幻にエイル達が駆け寄り
エイルがアーシュの幻を抱きかかえる
「アーシュ・・アーシュラン・・」涙を流すエイル
「・・幻の幻獣とはいえ・・俺の炎の魔法を消すとは・・たいした物だ・・
魔法 上達したな・・すごいぞ・・エイル」アーシュは微笑む
口もとに赤い血・・身体中は火傷だらけ・・傷口からとめどなく
血が流れ出ている
アリステアとリアの二人が急いで 二人のすぐ傍にきて
癒しの呪文を唱える
「リア・・私の言葉の後に続けて同じ呪文を詠唱するんだ・・」
「わかりました アリステア先生!」
「癒しの水と癒しの光! この御方を癒したまえ・・
水の女王アルテイシア姫と白の宗主 片腕の王リアン様の名のもとに・・
その力を示せ!」
宙から 無数の小さな魔法の水の塊と 淡く光る塊が出現する
それらがアーシュの幻の傷を癒してゆくが・・
癒し 消えたはずの火傷や 傷が再び 現れる・・
「俺は幻獣だ・・傷を負った時点で そこを再生する
・・無駄だ・・すまないな 有難うリア アリステイア・・」
「・・申し訳ありません・・お役にたてずに・・」
悲しそうな顔をするアリステア
「御免なさい・・」涙を浮かべるリア
ナジュナジュも傍に立ったまま泣いている
他のにやんこな人達も泣いている・・
「アーシュうう・・」エイルが泣きながら声を上げる
その涙を左の指先でそっと拭う・・アーシュの幻・・
「・・エイル・・泣くな・・どうせ魔法使いが消えたら・・
俺は消える・・ただの幻獣だ・・気にするな・・
・・・最後まで 守ってやれなくて すまないエイル・・」
アーシュの幻は言う
エイルはアーシュの幻に唇を重ねて キスをする
「・・約束のご褒美・・有難う・・アーシュ」
涙を浮かべて微笑むエイル
「時の神殿に貴方の名を刻み・・毎年 年の終わり
行われる祈りの儀式に 時の番人達と歴代の魔法の王達の名とともに
貴方達の名を加えて・・祈りを捧げます・・感謝いたします
アーシュラン様 白のエルトニア様の聖なる幻獣・・」
アリステア・・
傍にいた 魔法ギルドの長も頷く
「・・それは光栄だ・・感謝する・・」アーシュの幻
「あの封印の見廻りを・・必ずしてくれ・・1年に1度でいい
封印の外側から 再生した赤い水晶群を残らず破壊してくれ
俺達を復活させないでくれ・・頼む・・」
アーシュの幻がアリステアに言う
「・・わかりました・・お任せ下さい・・黒の王 火竜王サラマンデイア・・」
アリステア
一瞬だけ 金色の瞳に変化する
両方の瞳の色が変わる・・だが すぐに元の赤い焔の色に瞳は戻る
「・・ああ 今 レグスルとバステイルの二人が来る・・
異変に気がついていたから・・もう大丈夫・・本物のアーシュと幸せに・・エイル」
アーシュの幻は微笑み・・目を閉じる ゆっくりとその身体は消えてゆく
「・・アーシュ・・有難う・・」目を閉じて涙を流すエイル
「私達が来ました もう大丈夫です!」バステイル
「・・アーシュ殿の幻と・・テインタル姫の幻がいない・・
そうか・・役目を終えたか・・」ため息をつくレグルス
一方 アーシュ達は 神である宿敵の魔法使いと最後の闘いを
繰り広げていた・・
「風の疾風!敵を斬り裂け 現れよ!風の幻獣キリアン!
白の宗主 片腕の王リアンが命ずる!」
リアンが魔法使いに風の魔法を放つ
強い風の疾風が吹き荒れて
首の目元近くや頬を斬り裂く
次に 風の幻獣 ヴァルウダが姿を現す
大きな怪鳥の姿・・怪鳥の幻獣は 胴体に襲い掛かり
鋭いくちばしや 足の爪で 何度も胴体を裂いてゆく
胴体は 幻獣の怪鳥の身体を握り 翼を引き裂く
キュオオオーン 声をあげて幻獣は消え去る
胴体は 無数に斬り裂かれ 血まみれとなっている
ふらふらと 宙に浮いている・・胴体
いつの間にか・・首は何処かに消え去っている
今度は リアンが胴体にジャンプして飛びかかり
「はああーっ!」声を上げ
左手で握った剣を勢いよく振り下す
胴体から斬り落とされて ゴロンと転がる右腕
胴体の方は切り口から 黒い血が溢れだす
残った腕・・左手で傷口を押さえている・・
だが・・転がり落ちた右腕は切り落とされた部分から
黒い血を流しつつ・・
震えるように ぴくぴくと動いた後
宙に浮かび リアンに飛びかかる
「なっ!!」 リアンの首を強く絞める
「リアン!」アシャアシャの中のアーシュが叫ぶ
「リアン様!」 「リアン殿!」アルテイシアとセルトも叫ぶ
「ぐうう・・っつ」
リアンは まず すぐ傍の宙に 自分の剣を浮かせ
手を放し 今度は自分の首を絞めている魔法使いの右腕の手首を
握る・・
どうにか 暴れる右腕を引き離す
「白き穢れなき光りの力 我は白の宗主にして 2つの王国の王
片腕の王リアン! 我に力を! この化け物の腕を粉みじんにしろ!!」
リアンの握っていた魔法使いの右腕が 白く輝き 粉々になる
黒い血飛沫が リアンの頬を染める・・その黒い血の跡を手で拭い去る
リアン・・小さな息を一つ吐く・・目が吊がり 怖い形相を見せている・・
肉の欠片となって・・黒い血の跡とともに 地面に転がり落ちる・・元の右腕・・
・・・だが・・しかし 寄り集まり 再生しようとする・・再び元の右腕の一部がもう
再生している・・
「・・しぶとい!!この化け物が!今 灰塵に還す!」アーシュの声で言うアシャアシャ
「炎! 火竜王 最後の竜の王が命ず! その化け物の肉の欠片を灰塵に還せ
燃やし尽せ」
再生しようとしていた 右腕を灰塵になるまで焼き尽くした 炎に包まれて
再生しかけた右腕は もがくように暴れて動き そして・・黒い・・塵だけが残った・・
残りの胴体に アルテイシアが水の攻撃呪文を唱える
「氷の槍! 水よ 水の女王アルテイシアが命ず
敵を突き貫け!」
2本の氷の細長い塊が現れる・・先はどちらも鋭く尖っている
その氷の槍が 胴体を貫く 胴体を貫き 氷の槍は 消える
胴体に 大きな2つの穴が開いている
黒い血が溢れ出る・・地面を黒い血がまた染めてゆく・・
白い廻りの透明な水晶群にも黒い血飛沫で 黒く染まる・・
胴体は まだゆらゆらと宙に浮かび 今度は残った左腕を振り上げて
今度はアルテイシアに襲い掛かる
アルテイシアは剣で 素早く 胴体を斬り裂く
セルトが襲いかかり やや斜めに縦に斬る
黒い血を噴き出しながら 二つに分かれる魔法使いの胴体
そこにリアンが片腕だけで 弓を引くポースを取り
風の魔法を唱える「風の矢!」
無数の風の矢が 胴体を貫く
ふらりと倒れかける胴体 だが まだ動き・・二つに分かれた身体が 再び
繋がろうとしている
「させるか!!」セルトが叫び 銅体を粉々になるまで 斬り砕く
黒い血飛沫が セルトを黒く染める・・ 辺り一面は 黒い血の海・・
大剣で まだ 動き繋がろうとする 肉の欠片を切り刻む
アルテイシア達もそれに加わり 剣で 粉々になるまで 叩き斬った
アシャアシャは 宙に浮き 無言で 睨みつけながら 左手に炎を灯し・・
灰塵にしようとしていた・・
三人がその場をしりぞくなり アーシュの声でアシャアシャは言う
「炎・・その化け物の肉の欠片を 灰塵に還すまで 焼き尽くせ」
目を閉じため息一つ・・そして再び瞳を開き なにもない空を睨みつける
そして 少し首を回して ある一方向を見ている・・
リアンも同じく 同じ方向を見て 睨んでいる
「・・そこだな・・そこに隠れている・・視えるぞ
リアンにも・・視えている・・」
「お前の胴体は 灰塵に還した・・再び 再生するのには とても長い年月がかかる・・
いや・・もう 再生出来ないかもな・・黄金の竜の王の力と火竜王の力・・
もう一人の火竜王テインタルの力・・
更には・・暗黒の女王アシャアシャの闇と時の力も 加えた魔力で消し去ったから・・」
にやりと笑うアシャアシャ
ゆっくりと 宙に現れる追放された神・・闇の魔法使いの首
顔にはもう・・傷一つない・・瞳は閉じている 40歳前後の男の顔・・
髪は灰色を帯びた・・銀色 短く切り揃えられている・・
口元がにいい・・と笑う・・瞳を開く・・様々な色に変化する瞳の色
漆黒の黒・・大地の黒みががった茶色・・天空の青・・薄い淡い空色の青
黄昏の紫に 淡い黄緑色・・深い緑色・・黄金の金色と・・
保有者であるナジュナジュの血を通して・・
暗黒の女王アシャアシャの瞳と同じ色 深い青・・煌めく・・
最後に・・
赤く輝く焔の色・・奪い取った魔力を象徴する瞳の色・・
赤い美しい焔色は 奪った魔力から・・
火竜王アーシュランともう一人の火竜王テインタルの瞳の色
あらゆる・・魔法の王達の瞳の色・・・
「・・果たして そう上手くいくかな・・身体が欲しい時は
私の身体が 再生するまで・・」
「お前達の幻の幻獣の肉体を使うから・・御心配なく・・くくっ
アシャアシャと白のエルトニア姫 時の番人達以外の血は吸い取った・・
暗黒の女王アシャアシャの魔力は
わずかだが・・兄である保有者のナジュナジュから 頂いた・・」
「最初に ナジュナジュの幻の幻獣を呼び出そう・・何も力がない
愛らしい玩具だ・・あの可愛らしい顔で泣き叫び
あの綺麗な青の瞳に涙を浮かべて
震えて許しを願うだろう・・テインタルも・・実に楽しみだ・・
あの煉獄の時間を再現する・・永遠に・・
お前の・・火竜王アーシュランの幻を 水晶群に突き貫く
・・気が済むまで さんざん嬲った後で・・
そうだ・・白の宗主のリアンの幻も忘れずに・・水晶群に貫く・・
白のリアンの幻の方は数か月か数週間しか・・もたんがな・・
不死に近い黒の王族と違うから・・ふふふ・・
火竜王の幻は 怒り狂うだろう・・
本当に発狂するかも・・しれぬな・・
舌を噛み切っても死ねない・・私と赤い水晶群がある限り くく・・
何度でも生き返らせる・・永遠に苦しめる為に・・」
「あはははっ!」笑いだす魔法使いの首・・
恐ろしい表情で睨みつけるアシャアシャ
そして アシャアシャは声を発する・・
唸るアーシュの声と・・次にアシャアシャの声
「・・貴様・・」アシャアシャの中のアーシュ・・
「・・決して許さない 穢れたこの化け物!」アシャアシャ
アシャアシャの中のテインタルは・・無言で怒りに震えている
他の皆・・傍にいないエイルや時の番人レグルス、バステイル 他の者達以外・・
皆・・口を開かず 怒り狂っている・・
皆 怒りを秘めた恐ろしい表情をしている・・
アルテイシアが 口を開く
「・・決して・・許さない・・私の黒の王・火竜王アーシュ様を
8年の煉獄で苦しめ続けた・・数か月しか持たなかった 痛みで苦しみあえいだ
身体をあまり動かせずに ベットの上で過ごした・・
食事も ほとんど受け付けなかった
スープやポタージュ 粥・・あの好きな林檎のジュース程度だった・・
テイの人生も滅茶苦茶にして・・苦しめ続けた・・
救いと幸福な時間はわずかだった・・アーシュ様以外の血族は すべて殺した
まだ幼い彼女の目の前で・・残酷に惨殺した・・幼い弟も容赦なく・・
呪いの入れ墨を彫り込んだ あの美しい白い身体に・・
許さない・・許さない!!」悔し涙に 怒りで震える両手を握りしめる
リアンが話し出す・・
「・・私も同じ気持ちです・・アル・・ここまで冷酷で残酷な者など
見た事もない・・清らかな黄金の天上界から
追放されたのも当然だ・・
アーシュ殿やテインタル王女の人生を狂わせて・・苦しめ続けた・」・
「アーシュ殿・・黒の国を奪い返して
再建するのは・・さぞ・・大変だったろう・・」
「テインタル姫・・王女として生まれ 類まれなる美貌を持ち
天上の神々から惜しみなく
沢山の贈り物を贈られたのに・・
約束された幸福な人生は・・奪われ・・粉々になった
ほとんどの人生の時間は
日陰で 間者として 使われたものだった・・」
「一度・・巨人族の王に手籠めにされそうに・・なったという・・
あの呪いの入れ墨を入れられた彼女の嘆きと痛みは・・
どんなに・・辛かったろう」
「そして 最後は 愛する兄の身代わりとなり 死んでいった・・
亡骸は 水晶群から外せず 艶やな美しい黒髪ひと房のみ残した・・」
「埋葬と葬送の義の為に
アルもアーシュ殿も彼女の死を嘆き悲しんだ・・」
「父親のアーシュ殿には見せなかったようだが・・
息子の小さなアーシュも彼女に可愛がられて慕っていた・・
葬送の義式と埋葬の時には 静かに泣いていた・・時々泣いていた・・
母親を失ったばかりだったのに・・」
「・・・惨いものだ・・奴のしでかした事は惨すぎる・・」
「大事な私達のエイルも・・奴のせいで死んだ・・若くして矢で射ぬかれて即死した
幼い一人息子を残して・・犯人は奴の手下だった者・・」
「私の息子 アーシュ殿の息子の小さなアーシュ
本来の血の繋がった父と母親は幼くして失った・・
「煉獄の8年はどんなに残酷で苦しかった事でしょう・・
激しい痛みと苦痛で 目を覚ましては気を失う その繰り返しだったと
あの残された時間 数か月の間・・一度だけ 彼は言った・・」
「奴の自らの欲望の為に この世界は2千年も戦いの時代が続いた
どれだけの人々が戦火に焼かれて・・家族を失い嘆き悲しんだか
戦火の中でどれだけの戦士や兵士たちが死んでいったか・・」
「・・人でなしの この化け物・・」
リアンは 左手の剣の柄を強く握りしめる
セルトも無言で頷く・・
「みなさん・・やる気に満ちていますね・・
とても いい顔だ・・いいでしょう・・くくっ!」
笑い続ける 追放された神・・魔法使い
「・・漆黒の闇の力・・我は天上の黄金の神の一人・・我が命令する・・
そして・・焔・・炎よ・・その炎の力により・・いでよ・・」
「我が憎き宿敵 火竜王 最後の竜の王サラマンデイア・・アーシュランと・・
それに関わり 力を貸し与えている者ども全てを 漆黒の闇の炎の海となり
焼き尽くせ・・!」
追放された神・・魔法使いは呪文を詠唱した・・
漆黒の闇色の炎の海が現れている 辺り一面が黒い炎の海に変わる
「灰塵となり 永久に消え去るのは お前達の方だ!
アーシュラン! あの時の番人達も 白のエルトニア達も消しさってやる!ハハハッ」
追放された神・・魔法使いが笑う
黒い炎がまっすぐに 地面を走り エイルやレグルス達の元に襲いかかて来た
「き・・きやあああ!」エイルが悲鳴をあげる 続けて アリステイアやリア達も
悲鳴を次々と上げる
「うわあああ!」「たあ・・助けてくれ!!」「きやああ!」「ひいい!」「あっちち!」
みんなを取り囲み 今にも燃やし尽そうとする 黒い炎の海!
にやんこの人の一人のしっぽに火がつく 慌ててエイルが水の魔法で消す
「バステイル!」「はいレグルス!」
「食い止めます!! 時と闇の力よ 我は 時の番人にして神の一人
バステイル 我が名により 命ず!
あの暗黒の炎の海より 我らを守れ! 時と闇の盾となれ!」
呪文の詠唱とともに
両腕を 肩ほどの高さまで 上げて 前に突きだして
手の平を黒い炎の海に掲げる
ビイイーン 弦が弾くような音が響く
皆を守るように 半透明の球体が 皆を守り包み込む
「・・・くっううう・・」バステイルが唇をかみしめる
少し汗を流して・・少々苦しそうだ・・
「どうしたバステイル!」
レグルスがバステイルの様子に心配して レグルスが声をかける
「バステイル?」エイルも他の皆も心配そうだ・・
「・・・今は大丈夫です・・でも そんなに持ちません!
強すぎます! 本来の神としての力・・
歴代の全ての属性の魔法の王に 加えて・・」
「あの絶大な ついに焔の力も手に入れ」
「保有者であるナジュナジュさんから・・
暗黒の女王アシャアシャの力も少し・・
手に入れた あの神の一人 追放された神 魔法使いの力が強い!
・・ギリギリまで 頑張ります!」
後は・・アーシュ様達の健闘を祈るのみです!」
バステイルは 両手をかかげ 皆を見ずに
正面の黒い炎の海を見つめながら そう告げた
アルテイシアが少し火傷を負う 髪や服にも 黒い火がつき
それを急いで手で払いのける
「うっ・・み・・水の魔法 水の女王が命ずる!
水の護りの盾 我らを守れ!」
慌てて 水の護りの呪文を唱える
出現した水の塊が アルテイシア達を守ろうと するが
ほぼ一瞬で 弾け飛び散る!
「そんな!」アルテイシア 今度が リアンが身を挺して
アルテイシアを守そうとする
アルテイシアの身体を片腕で包み 抱きしめる!
「リアン様!」 「つうう!う・・」リアンが鎧を付けてない
服の背中部分に黒い炎で焼かれる
セルトは左腕を振り回し 迫りくる黒い炎の海を
蹴散らす
銀色の鬣にも 黒い火がつき 服にも黒い火がつく
「!!」目を見開くセルト
その時である 呪文の詠唱の声・・
アーシュとテインタルとアシャアシャの声が 同時にアシャアシャの口から
同じ 言葉が 発せられる・・
「時と闇と水と炎・・黄金の光の力よ・・
我々は 火竜王 最後の竜の王サラマンデイア・・アーシュラン
もう一人の火竜王サラマンデイア・・黄金の竜の王の娘
テインタル・・
暗黒の女王アシャアシャ・・」
「我らの名の元・・我らを守れ・・そして・・この黒い漆黒の闇の炎を鎮めよ」
ピイイーンと音がして・・リアンやアルテイシア・・セルトの廻りにも・・
アシャアシャの廻りにも 虹色に輝く 半透明な球体に包まれる
黒い炎の海は・・少しも 彼らに触れるどころか・・近づく事も出来ない・・
セルトや リアン・・アルテイシアの服や髪についた黒い炎が消える
服や 焼け焦げた鬣は 焼け跡は 残るが・・火傷の跡は 消えて
痛みもない・・
ゆくっりと・・黒い炎の海は静まり・・消える・・
エイルやレグルス・・バステイル達を取り囲んでいた
黒い炎の海もこちらも・・ほぼ同時にゆっくりと消えてゆく
「・・消えた・・」 「・・はい」レグスルとバステイル
「・・アーシュ達が消してくれた・・僕にはわかる・・感じる
三人の力・・」エイルが言う
歓声を上げて 互いを抱きしめあう
にやんこな人達・・
リアとナジュナジュも お互いに抱きしめあっている
ちょっと涙を浮かべているのは・・ナジュナジュ・
・
アリステアは ほっとした顔をして・・
静かにアーシュ達の場所の方を見ている・・
それぞれ ため息をつく
「・・有難うございます・・」
セルトとリアン アルテイシアが
アシャアシャとアシャアシャの中にいる
アーシュの意識とテインタルの意識に礼を言う・・
「・・リアン様・・先程は 有難うございます・・」
リアンの頬に軽くキスをするアルテイシア・・
つらん! じと目で アルテイシアを見る
アシャアシャの中の・・アーシュの意識・・
アーシュの意識に テインタルの意識が声をかける
うふふ・・兄様・・と・・じゃないアーシュ様
あれぐらいで もう焼きもち・・くすくす・・
可愛い! うふふ・・
見逃してあげなさい・・万が一 アルに逃げられても
エイルと私がいます・・愛しています・・うふふ
大丈夫・・アルの貴方への愛は強い・・心配ないですよ・・
・・わかった・・テイ・・アーシュの意識
声をだして アシャアシャは言う・・
「・・奴に・・あの化け物・・
とどめを・・永遠の闇に消し去りましょう・・
灰塵に還します・・」
「蘇るなら・・意識を・・永遠の禁断の地に封印します・・
赤と白の透明水晶群が蘇るなら・・封印の外側から・・破壊します
「・・先程のアーシュ様の幻・・
エイル様の幻獣の会話は・・アーシュ様の意識に触れて
知りました・・」
・・行きましょうアーシュ様・・テインタルの意識が言う
ああ・・決着をつける・・永遠の闇に・・灰塵に還す・・・
アーシュの意識が答える・・
宙に浮いているアシャアシャが飛びあがる
ハッとするアルテイシアとリアン セルト
魔法使い・・追放された神の首の頭上近くに 飛んできた
アシャアシャを驚いて見る
「来たぞ・・あの黒の炎の海は 通じなかったな!
ここで お前を灰塵に還す! 決着をつけてやる
意識が残り ここを再生して・・蘇っても 無駄だ! 何度でも戦ってやる!」
アーシュの声でアシャアシャは言う・・
次にアシャアシャは テインタルの声で言う・・
「・・私の生涯を滅茶滅茶にした・・私を半裸にして
呪いの入れ墨を彫り込んだ 憎い魔法使い・・」
「入れ墨を彫り込まれた・・あの時は本当に辛かった・・
幾度か舌を噛み切ろうとも思った
・・剣で喉を突こうとも・・」
「・・呪いの入れ墨のせいで 狂気に満ちたもう一人の私が生まれ
何度・・愛しいアーシュ兄様に 剣と魔法を放った事か・・
幼い子供時代以外・・まともに話をする事が出来なかった・・」
「・・私のアーシュ様にした・・あの8年の水晶群に貫いた
煉獄の悍ましい苦しみ・・
惨い仕打ち・・決して 許さない・・皆の人生を狂わせた・・」
「私の一生は 巨人族とお前に支配されて・・
間者として 奴隷のように
いいように扱えられて 日陰で・・過ごす事になった・・」
「私の家族・・血族・・幼い弟さえ惨殺した・・
私の目の前で・・
生き残ったアーシュ様と私も・・ずっと・・
お前に最後まで・・生涯 苦しめられた・・」
「・・・そして・・今日・・聞いた お前の暴言・・全て許さない・・」
「・・覚悟するがいい!」
今度は アシャアシャが言う・・
「・・最後だ・・大事なナジュナジュ兄たんを 傷つけた・・私・・
この暗黒の女王アシャアシャを・・完全に怒らせたな・・
終わりだ・・・」
にいい・・と笑う魔法使いの首
「返りうちにします・・とどめを刺してあげますよ・・」
「・・どうかな?」アーシュの声のアシャアシャ
「大地の槍!」魔法使いの攻撃呪文
洞窟の天上の岩が動き出して 変化する
大きな鋭い尖った槍の姿に・・
幾つも落ちてくる・・
アシャアシャに直撃しようとする!
「光の盾!」アシャアシャとアーシュ・・テインタルの声が重なりあう
天上に向けて 腕をのばして 手をかざす
光の大きな塊がアシャアシャの頭の上に出現する
カキイイーンン 大きな音をたてて・・
無数の大地の槍がほぼ同時に砕け散る
「大地の槍!」
再び魔法使いが 大地の魔法を使う
今度は地面の土と無数の岩が盛りがり
無数の槍の形に変化する・・そして 飛び上がる
アシャアシャの身体を貫らぬこうとする・・
「大地の盾!」
下に腕をのばして 手の平を地面に向ける
地面から岩の欠片や大地の土の塊が 浮かびあがり
魔法使いの放った 大地の槍より 早く アシャアシャの前に
立ちふさがり 大地の槍が砕け散る・・
しかし 二本すり抜けて アシャアシャの直前まで飛びかかる
アシャアシャの中から 上半身だけ抜け出して
すうと・・アーシュの姿が現れる
半分は 下半身はまだアシャアシャの中・・
ヒユーンンと 左腕を横に振る
ガキイイーン 剣と槍がぶつかり合う 音がした!
左手の剣で 1本を跳ねのけて 真っ二つに割る
残りの1本は 右手で捕まえる
「砕け散れ!」
その声に反応して グワシャアア!
アーシュの右手の中の大地の槍は砕け散る
再び アーシュは目を閉じて アシャアシャの中に入る
「風の矢!」
上の宙にうかんでいる 魔法使いの首に
リアンが風の魔法を仕掛ける 弓を引くポーズを
片腕で取り 放つ
振り返り すうーつと 上手に何度となく
動いて 魔法使いの首が避ける
アルテイシアが水の呪文を唱える
右腕を勢いよく振る
「水! 水の刃」
シユウウーンンン
音を立てつつ水の刃が 魔法使いの首の方へ向かう
水の横長の塊・・水の刃が 魔法使いの首もと近くまで
迫りくる
「炎の盾!」魔法使いの呪文!
大きな横長の炎の塊が現れる・・
炎の盾と水の刃がぶつかり合う!
ジュユウウウ 音をたてて蒸発する
しかし・・水の刃の欠片が 魔法使いの首の頬を
かする 頬から・・少し黒い血が流れる
「・・少しかすりましたか・・」呟く魔法使いの首
小さな淡い光の玉が現れて 頬の傷を癒す
駆けて来た セルトが飛びかかりジャンプする
「死ねええ! 魔法使い」
左腕一つで 大剣を振るう
シュウウーンン 風を斬る音
「ぐつ・・おおお!」悲鳴を上げる魔法使いの首
左目が セルトの大剣の攻撃を直撃して・・
左目が斬られる 黒い血が飛び知る
悲鳴をあげながら 宙をぐるぐると廻る魔法使いの首
「・・決して この痛みは忘れぬぞ! 竜人!」
怒鳴る 片目を閉じて・・黒い血を流しながら
魔法使いの首は 言いた
地面に着地するセルト
「・・セルト将軍・・後は アーシュ殿達が・・」
リアン・・
頷くセルトとアルテイシア
そこに 同時にアーシュとテインタル・・アシャアシャの叫び声
「終わりだ!!魔法使い 追放された神 この化け物!」
三人の声が 同時に 洞窟に木霊する
「・・黒き漆黒の闇の力・・時の力・・
我々は 火竜王 最後の竜の王サラマンデイア・・アーシュラン
その妹であり 妻である・・もう一人の火竜王サラマンデイア
竜の王の娘 テインタル!
暗黒の女王アシャアシャ・・
我らは命じる・・いでよ 暗黒の闇の剣!」
両腕を天にかかげる アシャアシャ あわせた両手から
漆黒の闇の塊が生まれて 細長く形を変えて 黒く輝く
その黒い剣を振り下ろす アシャアシャ
「うおおおお!」黒い血が吹きあがり 飛び散る
黒い血飛沫が 点々と 辺り一面に広がる
アシャアシャの頬や頬を黒く染める
二つに斬られて 魔法使いの首が転がり 落ちる
だが・・二つに分かれた 首は 立ちあがり
地面を転がり廻る・・黒い血を流しながら・・
「・・ぐっつ・・私は死なん! 死なんぞ!
必ず復讐してやる!」魔法使いの首が叫ぶ
「・・・水・・魔法の水・・」
アシャアシャの中のアーシュ
アーシュの声・・・
女の子だから・・と気をきかせるアーシュ
宙からあられて 小さな魔法の水の玉は
アシャアシャの頬や服の 黒い血飛沫を洗い流して 消える・・
「・・とどめを・・永遠の闇に消え去れ!
まだ 蘇るなら・・意識が残るなら・・」
「永久に・・封印した この場所で
俺達をいたぶり楽しんだ事でも思い出して・・
笑っていろ・・永遠に・・」
カッ! 瞳を大きく見開く アシャアシャ
瞳は まず 深い青に光輝いた後
2つの色・・オッドアイ
黄金の金と・・赤い燃え上がる焔の色に変わる
肩ほどの高さに腕を上げて 腕をまげて
小指と薬指を握り締めて・・指先の三本
口もとにあてる・・
そして・・詠唱する・・・
三人の声が・・同時に響き渡る・・
「・・黄金の光の力 赤き燃えゆる焔の力・・・我々が命ず・・
三人の名のもとに・・火竜王 最後の竜の王アーシュランと
もう一人の火竜王 竜の王の娘テインタル
暗黒の女王アシャアシャ・・
黄金の金の炎の海・・いでよ・・
その追放された 呪われた神を灰塵に還せ!」
洞窟一面に 黄金の光が溢れる! 光輝く!
まぶしさに アルテイシアも リアンも
セルトも 目を閉じる・・そして・・少しだけ目を開ける・・
三人は 黄金の光の中にいる・・
アルテイシアの瞳から・・涙がこぼれる
「・・やっと 終わった・・この呪縛から・・解放される・・
私達の運命に 影を落とし 生涯・・苦しめられた者から・・解放される
苦しめて来た あの追放された神・・化け物から・・」
「・・アル・・」微笑むリアン
「・・姫・・終わりましたね・・」セルトも微笑んだ・・
黄金の光は 離れた場所にいる エイル達にも到達して
光輝く
瞼を閉じかえる エイルや レグルス バステイル・・他の者達も
「・・美しい・・」アリステアが呟く
「・・アーシュ達・・やったね・・解放されたね・・」
エイルの笑顔が浮かぶ・・
「・・リア・・」「ナジュナジュ・・」
互いに顔を合わせて笑う二人
「・・アシャアシャが戻ってくるね・・」
「・・そうだね・・リア」
にやんこな人達にも 笑顔が浮かび
それぞれ顔を見合わせ・・互いに抱きしめあう
「・・終わった・・やっとこの闘いが・・異変が終わった・・」
レグスルが呟く・・
「はい・・レグルス・・」バステイル
黄金の金色の炎の海が・・魔法使いの首を燃やし尽す・・
ゴオオオッ・・パチパチ 音をたてる・・
「・・私は死なん! 決して死なんぞ! うおおお・・」
二つに分かれた魔法使いの首が 悲鳴を上げて
もがきながら・・焼かれてゆく・・
やがて・・声は途切れて・・ただの黒い塊となり・・
黄金の炎の海の中・・灰塵になり・・塵とかして・・
消え去る・・
やがて 役目を終えた黄金の光の炎は・・ゆっくりと消え去る
すう・・と アシャアシャの中から 二人が出てきた・・
ため息をつくアーシュ テインタルは笑みを浮かべて泣いている
地面にゆっくりと降り立つアシャアシャ
満面の笑みが浮かんでいる
「・・後始末が残っている・・
今まで・・面倒をかけてすまなかった
アシャアシャ・・有難う」
アーシュはアシャアシャを抱きしめる
次にテインタルも抱きしめる
「アシャアシャちゃん 有難う・・本当によく頑張ったわ・・
すごいわ・・」
微笑み 左手は抱きしめたまま
抱きめた右手を離して
アシャアシャの頭をなでる・・テインタル
「ありがちょうごじゃいます(有難うございます)
わたちたち のせきゃいは しゅくわれまひた
(私達の世界は 救われました)」
言葉がつたなくなるアシャアシャ・・
時の力が 発動させた
アシャアシャの意識 暗黒の女王の力が
役割を終え・・元のアシャアシャに戻そうとしている
時の力が 再び元の幼い少女に押し戻そうとしている
瞳が元の深い青に戻っている・・
優しくアシャアシャの頭をなでるアーシュ
「・・戻ったか・・そうか・・」
「・・アーシュ様」テインタルがアーシュの背中から
後ろ越しに抱きしめる
そおっと左手で・・テインタルの抱きしめる腕を
なでるアーシュ 顔だけ振り返り 笑いかえる
振り返ったアーシュの頬に そっとキスするテインタル
だが・・しかし・・
アシャアシャは二人の身体に触れて・・再び目を覚ます
アシャアシャの瞳が
アーシュと同じオッドアイ・・黄金の金と赤い焔色に
変わる・・
「元に戻っても・・この記憶は消えません・・
でも 一旦・・戻ったら・・私が14,15歳の年齢に
なるまで・・魔法のコントロールは出来ません」
「言葉や意識は・・幼い女の子に 戻ります・・
・・封印の件がありますから・・
すでに・・時の力が動き始めましたが・・」
「まだ 時の力を押し戻そうとしても
しばらく・・逆らいます・・」
「封印に私の名も加えます・・
暗黒の女王アシャアシャの名を刻むまで・・」
「ただし 例外があります・・
ここが再生して またあの異変が始まったら・・
・・再び 覚醒します・・
見廻りには 必ず同行させて下さい
・・たとえ・・
元に戻った幼い私がぐずり・・いやがったも・・
無理やりでも・・」
「異変が まだ始まりにすぎずに
もし覚醒しなかったら・・・貴方方の力で覚醒させて下さい
それが時に命じられた・・ 私の新しい宿命です・・」アシャアシャ
「・・わかった・・必ずそうする・・
すまないな・・長い年月が過ぎても
消えなかった・」
・
「いにしえの古代の時代に 奴を消せなかったのは
俺達の罪なのに・・
お前達 未来の人達に重い荷物を残してしまった
負担をかけてしまった・・」アーシュ
三人の会話を 傍で聞いているセルトやアルテイシア
リアン 皆 微笑んでいる・・アルテイシアの瞳から
また涙がこぼれ落ちる
「おおい!」手を振るにやんこな人達やエイル レグルス達
離れた場所にいた者達が駆けて来る・・
・・皆が集合する・・歓喜して喜び合う皆
「アーシュ!みんなああ!」エイルが駆け寄る
アーシュを抱きしめる
「・・・よく頑張ったね・・とうとう倒したね・・
あの僕達の生涯を狂わせた・・魔法使いを倒したね!」
「ああ・・ついにやった!やったぞ・・エイル」
二人は抱きしめあう・・
エイルの耳元で・・アーシュはそっと呟く・・
「・・だが・・奴が・・いなければ
俺は 白の国の人質とならず・・お前と出会う事なく・・
テイかアルと結ばれたかもしれない・・」
「・・大丈夫 きっと出会えた・・
そしたら・・きっと 僕は順番から 言って
第三王妃かな・・ふふ・・」
アーシュは抱きしめられたまま 苦笑する
アーシュは背伸びして エイルに軽くキスする
「アーシュ・・」
一瞬・・考え込むアーシュ わずかな数秒だが
両目が 黄金の金色に変わる・・
「んつ・・どうしたの?」きょとんとするエイル
「・・悪い・・かってに発動した過去見の力・・
そうか・・あのお前の幻獣・・俺の幻 そうやって死んだか・・
・・役目を果たし・・褒美のキスも貰えた・・」
「・・相打ち覚悟で
自らから・・闇の刃と炎で燃え尽きようとするとは・・」
「エイル・・水の魔法で よく俺の魔法を打ち消した・・
・・すごいぞ エイル・・対したものだ・・
じゃなかったら・・褒美のキス もらえ損ねる処だった・・」
アーシュ
・・アリステアにも感謝しないと・・時の神殿で祈ってもらえる・・」
「・・さっき ここに来る途中 僕も御礼を言ったよ・・」
アーシュ
「・・そうか・・」アーシュ
そして・・傍の近くで
ナジュナジュが大きく広げた腕の中に
飛びこむ 満面の笑みのアシャアシャ!
「兄たん!!」
「偉い!すごいよ よく頑張ったねアシャ・・」
アシャアシャを抱きしめて 涙ぐむナジュナジュ
そおと アシャアシャが服のポッケから
ハンカチを取り出して ナジュナジュの涙を拭く
「んっ・・有難うアシャアシャ」
だが まだ涙がこぼれてアシャアシャを強く抱きしめる
リアが二人を上から抱きしめる 彼の瞳にも涙が浮かんでいる
「本当によくやってくれた!」
「有難う!アシャアシャちゃん 君は小さな英雄だ」
にやんこな人達が三人を取り囲み 笑顔で口ぐちに言う
本当に嬉しそう・・
アリステアも微笑んでいる・・
だが・・まだまだ 本当は アシャアシャの事を
これから 起こる未来の大騒動を・・
まだ・・知らない・・
何故に アシャアシャが暗黒の女王と呼ばれるのか・・
すでに2つの大騒動は起こしている・・
大量の飴玉で・・街の一部を破壊して 飴玉の洪水を引き起こし
一時 大量の飴玉に街は埋もれた・・今 犯人はリアとされているが・・
やがて・・真相が明らかになる・・
山火事を 消す為に あろう事か
空中に 巨大な・・うん○を魔法で出現させ
そのまま ぽとりと その巨大なう○こを
山に落として 埋もれて山火事は納まった・・
しかし・・その 巨大な うん○は
魔法で消し去る事も出来ずに そのまま放置され
未だに そのりっぱな トグロをまいた形で・・
固まり・・未だにひどい異臭を放っている・・
大雨が降っても 嵐も台風もあったが
形が崩れる事がない!誰も近くにいかない
あのいにしえの魔法の王達に並ぶ 絶大な魔力
直系の血を受け継ぎ・・白の魔法を扱えるリュース公の傍系の血も
受けついだ・・遅るべき先祖返りの突然変異
しかも・・黄金の竜の王しか 扱えない
闇や時・・光の力も自在に扱える・・
実は性格も・・ちょおと癖がある・・
結構・・いたずら好き・・悪さも少々・・
ナジュナジュは 甘々・・でアシャアシャを育てている
・・・冒頭でも・・述べたが・・
両親は・・遠くの国に仕事で出かけて・・いない事になっている
・・・実はすでに亡くなっていて・・
まだアシャアシャには知らせてない・・
幸い保険に もう一つ養育保険も 財産を残してくれた
小さな家も・・両親のいない二人は 国の法律で
成人するまで 税金は無税・・少々 お金も配布されている
身よりのない二人の保護者はアリステア先生・・
完璧完全無敵の絶大な魔力!
・・しかも何故か
後に・・体術や剣も達人の域までいく事になる
こののほほ~んとした世界に敵はいない・・
未来に 伝説に残る・・大騒動を沢山沢山 引き起こす・・
暗黒の女王様アシャアシャ
果たして・・そんな彼女を嫁に出来る強者はいるのか・・ありえない・・
アシャアシャが押し倒すしかない・・頑張れ アシャアシャ!
「アーシュラン様!」「アーシュ様」
アルテイシアは駆け寄り 涙を浮かべている
今度は アーシュは
泣いているアルテイシアと抱きしめあう
「・・やりましたね・・とうとうあの化け物を退治した・・
私達を生涯 苦しめた宿敵を灰塵にして・・消し去った」
「ああ・・ついにやり遂げた・・やったな・・アル
アルもよく頑張った・・」
アーシュは呟く・・「・・水の癒し・・光の癒し・・」
アルテイシアの身体の傷や 黒い血の返り血も
小さな水の玉や淡く光る玉が アルテイシアの身体から
全て・・消えし去る・・
「・・これ程の美人なのに・・黒い穢れた血の跡や
傷を残したら もったいない・・よく頑張った有難うアル」
指先で そおっと涙をぬぐってやるアーシュ
「・・アーシュラン様」また涙ぐむアルテイシア
「・・アル・・代わってくれる・・」微笑んでいるリアン
「あ・・はい」アルテイシア
リアンがアーシュの身体を片腕で強く抱きしめる
「・・お疲れ様です・・苦労しましたね・・やっと敵が討てた
貴方のおかげです・・」リアン
「・・いや みんなの力だ・・有難うリアン
お前には・・沢山世話になった 感謝している・・」
「・・・だが・・剣と魔法勝負の件は別だ・・
ひさしぶりに 手合せもいいだろう・・」
「そう簡単に俺は倒せない 覚悟しろよ」
笑っているアーシュ
「ふふ・・私もそう簡単に倒せませんよ!
覚悟してください! 一人で寂しく寝てくださいね!」
「・・そうそう 貴方の手料理も食べたいのですが・・
・・・・決して エイルや小さなアーシュには料理の手代いを
させないでください・・お願いです・・」リアン
「了解だ・・安心しろ! デザートも付ける
・・そうだな・・レグルスが
にやんこの人達の極上の酒をもらうそうだ・・
お前ももらえば・・リアン」 ニッと笑うアーシュ
「それはいいですね ぜひそうします」嬉しそうなリアン
一旦 抱きしめた腕を離す
「・・セルト将軍が 貴方を抱きしめたいようですから・・
どうぞ・・将軍」
「・・アーシュ様・・我が主君・・」
セルトがアーシュの身体を強く抱きしめる
「こ・・こら 苦しい お前は怪力なんだぞ!
分かっているのか!」
「剣や体術勝負は
お前は 強かった・・互角か・・お前か俺が勝った・・って
聞いてないだろう! それに右腕 そんなに使うな!
また外れたら どうする! まだちゃんとした治癒は・・・」
アーシュを抱きしめたまま震えて泣いているセルト・・
「・・アーシュ様・・」
セルトは・・彼もまた あの魔法使いの犠牲者だ
あの最後の戦いで 壮絶な死を遂げた・・
十年以上 水晶玉に
義理の妹であり 後に妻のナーリンを閉じ込められ
人質にされて・・
心を封じる 魔法の魔具の首輪を首にされた
・・味方の黒の国の城を幾つも灰塵にした
アーシュの父王を殺したのも彼だ・・
首を切り落としたのも・・
魔法の首輪で その頃の記憶はないが・・
黒の王宮の陥落の時・・
目の前で 丁度 そこにいた 当時の白の国の人質
羽琴の姫君と言われたエイルの実母・・
エリンシア姫が 兵士に襲われているのも見ていたという・・
・・もちろん・・記憶はない・・
ただ命じられたまま 操り人形のように
いいように使われただけだ・・
・・テイと同じように・・
セルトを魔具から 解放しても
リュース公はしばらく 彼を許さなかった・・
焼き尽くした城の一つに 大事な部下が何十人もいたから
警戒して 水の牢獄にセルトを閉じ込めた・・
下半身を水の中に入れて・・両方の手首に鉄の手かせ
意識を封じて・・寝らせた・・
檻には 封じの魔法をかけて・・処刑寸前だった・・
どうやら・・当時 まだ黒の王子のアーシュラン・・
俺が リュース公をやっと説得をしたらしい・・
当時の記憶は今の俺・・アーシュにはない
消えた記憶の一つ・・
覚書・・日記には・・リュース公に
高い代償を払わされたとだけ書いてあった
・・一度 経緯をリュース公から 聞こうとしたが
彼は 微笑んで はぐらかされた・・とても良いものを
頂きましたと俺に告げた・・何の意味だが・・
・・・大人の姿に戻って・・リュース公の隠していた
性癖を・・知ったが・・驚いた・・両刀使いだった・・
側室はないが・・愛人が何人もいた・・男も・・
アルは当然知っていたが・・
心の広い彼女は刃傷沙汰だけ
起こさないようにと 注意しただけで
知らん顔をしていた・・
もし 彼女の母親か 結婚しようとしていた
羽琴の姫君エリンシア姫がいたら
父の性癖は納まっていただろうと俺に言った
一度・・リュース公の城に
一晩泊り・・リアンと一緒に巨人族の言語を習った事がある・・
あの夜の記憶がない・・少し身体がよく朝 少し痺れていた・・
リアンも同じ事を言った・・だ・・大丈夫だっただろうか?
何かされたのか・・彼は幻惑の魔法にも長けている・・薬の扱いも
俺もリアンも無事だったのか・・アルは丁度・・留守だった・・。
それに・・
あの時のセルトを解放した経緯を聞いた時の
含み笑い・・・
本当に何の代償を払ったんだ俺は・・多分知らない方がいいような気がする
ああ・・そうだ・・
最初の雪花祭りの時に・・彼がエイルに魔法の腕輪を贈った時に
彼と少し話をした・・うっかりリュース公は口が滑った
最初の相手は・・当時 恋人だった
俺の父王だったという・・
エイルと同じく両性体で子供の時は女性だったという話だが
・・結ばれた時は・・どっちの性だったのだろうか?
・・・だめだ・・恐ろしすぎて・・リュース公にも父王にも聞けない
恐ろしすぎる・・忘れるに限る・・
しかし・・万が一・・俺の黄金の力・・過去見の力が
無意識に発動したら・・今の俺なら・・あのリュース公なら
心を過去見 出来る・・
父王は無理だが・・
父王も・・あの極上の美貌の完璧なアリアン王妃がいたのに
・・俺の母親や白のエリンシア姫を手に入れている・・
・・結構好き者だ・・まったく・・
俺の母親は
セルトの婚約者で結婚直前のセルトをいわれのない
罪で 追放してまで 手にいれている・・
万が一 詳しい事を知る事になったら
・・その時は・・その時だな・・過ぎた事だ・・
忘れるに限る・・
口元を歪ませて 微妙に苦笑するアーシュ・・
泣いているセルトの背をなでてみようとするが・・
強く抱きしめられているので 身動き一つ出来ない
セルトが更に力を入れて泣きながら抱きしめる
「たく・・痛いぞ・・セルト・・」
アーシュを強く抱きしめ 肩を震わせ 泣き続けるセルト
「・・・」ため息をつき 上に目をやり・・視線を横にみる
「んっ! あ・・」アーシュ
なんと!リアンが アルテイシアを抱きしめ デイープキスまでしている
アルテイシアは逆らわず・・腕をリアンの背中に廻している・・
・・ここは・・一旦・・見逃してやるが・・
必ず 魔法や剣の試合の時に
間違えたふりして 必ずとどめを刺してやる!
覚えていろよ! リアン・・俺のアルに・・よくも・・
アーシュの口元がゆがんでいる
キッと睨みつけるアーシュ
ちらりん アーシュの視線に気がつき アーシュの方を数秒だけ
見るが・・知らん顔をして
まだアルテイシアとキスを続けるリアン
・・り・・リアン・・気がついているのに・・彼奴・・
必ずとどめを刺す! ・・アルは俺のもんだ!!
逃がさんからな アル!!
そんなに一人寝が寂しいなら 誰か別の者にしろ!
モテるだろうが! お前は!!
エイルも当然 俺の物だからな!!
嫉妬深く・・焼きもち焼き・・独占欲も強い・・
単に 我儘かも知れない・・アーシュ・・
「こらこら・・セルト将軍 そんなに強く抱きたら
アーシュ殿の背中や腕の骨が ヒビが入るか 折れるかも
知れんぞ! いいのか!」レグルスの助け舟・・
「も・・申し訳ありません!!」
泣きはらした赤い顔のセルトは
慌ててアーシュから 飛び退く
「・・大丈夫だ・・心配するなセルト・・
本当によくやってくれた・・有難う・・礼を言う
ついにあの宿敵を倒したぞ!」
「・・早く その右腕・・本当の治癒を受けなくてはな・・
後で困るぞ・・」微笑むアーシュ
「はい! 火竜王様」
セルトが嬉しそうに答える
「・・それとリアン殿・・そろそろアルテイシア姫を解放されては
どこぞの焼きもち焼きが 睨んでいるには 気がついているだろうに・・」
ため息をつくレグルス
慌てて まっ赤になり リアンから飛び退くアルテイシア
「わ・・私・・!!」
「・・私のアル・・アーシュ殿にあきたら
エイル共ども 戻っていらしゃい・・」
「そうそう・・剣と魔法の勝負で
私が勝ったら・・貴方とエイルは
強制的に 私の傍で眠ってもらいますからね・・
アーシュ殿は 一人寂しく寝てもらいますから・・」
「約束ですよ アル・・ふふ」爽やか笑顔で微笑むリアン
視線をそらし・・まだ赤い顔のアルテイシア
「はい・・わかりました・・」と答える
「・・一人寝は お前の方だ!リアン」
まだ軽く睨んでいるアーシュ でも口元が少し笑っている
「返り討ちにしますから 覚悟しておいて下さい」
またしても爽やか笑顔のリアン
「ねえ・・皆 今日は夜にはお祭りのパレードがあるって・・
花火も揚がるらしいよ!
ここを破壊して・・封印をして
さっき 今晩は泊まっていて 夜のお祭りを楽しんで
明日は 小さなレグルスに会おうね!
お泊りの事は アリステアさんと時の番人レグルスとバステイルから
頂いているし・・お部屋も大人数でも 大丈夫だって!」
エイル
「・・魔法ギルドの御屋敷に 泊る事にしました・・
あそこなら この人数でも部屋は余ります・・
魔法ギルドの長は 快く了解してくれました」微笑むアリステア
「僕が料理を作るね!! うふ!」無邪気な天使の笑顔のエイル
その言葉に全員がまっ青になる・・
すでに伝説や
アルテイシアやリアン セルト達の日記で・・
エイルとその息子の破壊的な料理の事と
被害者の哀れな末路は知れわってたっいる
・・ちなみにリアンの日記は
黒の国に白の国の武官として着任した後は
他国 黒の国の言語で書かれていた・・
あまり解読されたなかった白の国の言語でなく
練習の為だろう・・
ゆえに子供時代の日記は 現在やっと解読が進んでいる
あの人と違う長寿な者達で・・
あの大被害・・しかも治癒の魔法も
薬も効かない・・アリステイア一人なら
彼は食べたふりして 魔法で消し去るだろうが・・
普通な人間のにやんこな人達は 本当に死んでしまうかも
知れない・・
「・・料理は俺が作る・・心配するな!
この天才的な料理の腕を持つ 俺が作る
デザートもちゃんと作ってやる!材料を頼む
決して手伝わんでいい 近づくな!キッチンを破壊したら知らんぞ!
たとえ俺の妻でも 責任は取らん!!
アルもテイも待っていろ!心配ない
絶対 お前だけは手は出すな!エイル
あ・・ナジュナジュは あの美味いキッシュを作ってくれ 頼む」
アーシュはきっぱりと言う!
「・・はい」すねるエイル
「は・・はい キッシュを作ります
他にも 得意料理ありますが・・」ナジュナジュ
「うん 頼む」にこっと笑うアーシュ
「・・あのパレードの見物とかは・・
私は普通の者と違う 竜人で・・腕の事もありますから・・」
セルト
「・・心配いらない セルト殿・・
私もよく使っているが 時の番人の魔法で
姿を隠す事も 姿を変える魔法もある・・この時代にも あの変身の魔法玉もある
万が一 視える者に見つかったら祝祭の祭りの仮装とでも言えばいい
バステイル リアン殿 アーシュ殿なら
記憶を消す事など 造作もない
ああ・・普通の人間なら テインタル王女でも可能か・・
腕の治癒は
バステイルかアルテイシア姫に頼むといい
時の狭間で また治癒をする・・
・・服の方は・・アリステア・・
貴方方にアーシュ殿達も含めて 頼んでも?」
レグルス
「はい 招致しました・・もし 噂が立っても
すぐに消えます・・御心配なく」アリステア
「・・俺は記憶を消す事は
出来るが あまり上手くない
微調整が 苦手だ・・
たまに 昨日の出来事まで 消した事がある・・
リアンの方が上手だ・・白の王族の得意技の一つだ・・
テイの方は?」
首を横に振るテインタル・・
「幻惑や麻痺の呪文なら
間者として・・よく使いましたが・・記憶操作の方は
不得意です・・」
「・・必要な時は私がします・・バステイル殿もお願いします」
リアン
「・・後で封印の事もあるが・・詳しい話や今後の事も
検討しないといけない・・事情の説明は 俺の黄金の竜の王を使って
直接 全員の心に伝えていいか? その方が早く済む
俺が手をかざす・・それだけだ・・」アーシュ
「・・了解です アーシュ様」「わかりました」
それぞれが頷く・・
洞窟が少し揺れている
「・・この中で 大魔法を連発したから・・
この場所自体に ひずみが生じている・・
さっさと 水晶に閉じ込められた 者達を水晶から
解き放ち・・助け出してから・・水晶群 全て破壊して
灰塵して・・塵に還す 入口を塞ぎ 全員で入口を永遠に封印する・・」
アーシュ
セルトが大剣で
水晶群に閉じ込められた者達を救い出す
残らず叩き割り 中に入っていた者達が目を覚ます・・
「・・これは・・一体・・ああ! 竜人だ!!
その顔・・肖像画展示会で・・本でも見た!」
「伝説の黒の王 火竜王
アーシュランの守護者セルト将軍!」
「ふっ・・その伝説の黒の王火竜王サラマンデイア・・
アーシュランも ここにいる・・」
「水の女王アルテイシアも もう一人の火竜王テインタルも
白のエルトニアに 最後の白の宗主2つの王国の王片腕の王リアンも・・」
にっと笑う アーシュラン
「・・まさか!そんな・・確かに・・見た あの肖像画の魔法の王・・
今の姿は・・少々 大きいが・・まだ黒の王子だった頃と同じ姿
同じ顔!!その特徴的な長い耳・・しかし 瞳の片方は・・金色・・
片方は確かにあの絵と同じ赤い焔の色・・・オッドアイ」
助け出されたラルラ教授は 震える指をさしながら アーシュに言った
「・・今の俺は 焔の火竜王であり最後の竜の王でもある」
アーシュ
「・・私は時の番人ケンタウロスのレグルスだ・・
隣は 同じく時の番人であり 神の一人バステイル」
レグルス
にこりと笑う バステイル
「・・異変に気がつき・・皆で・・あの追放された神・・
魔法使いを倒して・・貴方方を救けに来ました・・
もう心配ありません・・ここを灰塵にして 塵に還します・・
入口を永遠に封印します・・悲劇が 繰り返されないように・・」バステイル
ルナ教授が まずラルラ教授を助け起こす
「・・詳しい話は 後ですぐにしますから ラルラ教授」
ルナ教授
ぐらりと また揺れる
「ここは 危険です・・早く出ましょう・・それからです」
ルナ教授
「・・はい 解りました ルナ教授
有難うございます・・感謝します」ラルラ教授
「・・これで 全員か? 漏れはないな!
動けるか・・」アーシュ
「全員です 漏れはありません・・皆 動けます」
「・・大丈夫だな・・みんな」ラルラ教授とルナ教授
救いだされた全員が頷く
「・・必要な物や 持ってきた物は忘れずに・・
赤い水晶や 白い透明な水晶も沢山持ってゆけ・・
研究に役立ててくれ・・それで救われる者達や
災害の防止・・
魔法の研究も進むだろう・・」
「我々 魔法ギルドも良いですか?」
長
「好きなだけ持ってゆくがいい
それと 水晶に閉じ込められた者達の治癒も頼む
かなり 消耗しているはずだから・・
しばらく安静にしていたら大丈夫だとは思うが・・」
「念の為に 私が視てみます」 バステイル
「了解だ 頼む・・」アーシュ
「ここを灰塵に還すのは・・」言いかけるアーシュ
「私も加わります それが出来るのは 黄金の竜の王の力
全てを焼き尽くす赤い焔の力」テインタル
「私も加わります・・時と漆黒の闇の力も加えましょう」
バステイル
「白の聖なる光の力も加えて下さい」 リアン
了解だ 頼む アーシュ
「アルテイシアは セルトに癒しの魔法を頼む
アルいいか?」
「解りましたアーシュ様」 頷くアルテイシア
「エイルは にやんこな連中の手伝いを頼む・・
風の魔法で 水晶や彼らの荷物やら
運ぶのを手伝ってやってくれ
無理をしている者がいたら・・風の浮遊の魔法で
運んでくれ・・
レグルスもだ・・風の呪文も得意だろう 頼む」
「了解 アーシュ殿」 レグルス
「わかったアーシュ おまかせしてね」 エイル
私も 荷物を運ぶのを手伝います セルト
「いや! だめだ! 大人しくアルから治癒の魔法を・・
って・・ほら! 傷口が開いているじゃないか!」
アーシュは慌ててセルトの元に飛んでゆく
「僕が 治癒の呪文をしようか?」 エイル
「あ、あの私が治癒の呪文を・・」アルテイシア
「私もそれぐらいの治癒の呪文なら・・・」リアン
「あの・・私も・・」時の番人のバステイル
というアルテイシアやエイル、リアン バステイルの台詞を
まったく聞いてないアーシュ
セルトの右腕を右手で取り 左手をかざす
「癒しの水 癒しの光!」
左手が淡い光を放ち 癒しの水の玉と 淡い光の玉が
現れて・・セルトの傷を癒してゆく
「これでいい・・祝祭のパレードや花火を見物するから
無理はしなくていい・・黒の王の命令だ・・」アーシュ
「・・わかりました
治癒を感謝いたします・・我が主・・」セルト
「暗黒の女王アシャアシャも加わります アーシュ様」
「えっ! まだ 戻ってないの 」リア
「ええつ!」 びっくりしているナジュナジュ
アリステアは ただポーカーフェイスで
アシャアシャの変化を黙って見守っている
「うん・・そう あと少し」
アシャアシャの青い瞳が再び変化を遂げる
あのオッドアイ・・黄金と赤い焔色に
「兄たん達は 先に行って・・
私はまだ 暗黒の女王としての仕事が残っている
入口の封印に名を刻んだら・・元に戻るから・・待っていて・・」
「わかった・・頑張ってね アシャアシャ」 リア
「待っているよ 僕のアシャ」 ナジュナジュ
外の時間は 昼の3時頃・・
青い空に 心地良い風が吹く・・
沢山の荷物や沢山の赤い美しい透明な水晶と白い水晶が置かれている
「・・これで 全部だな・・全員そろっているか?
気分の悪い者はいないか?」
「大丈夫です!!」元気な声で にやんこな人達・・
もちろん リアやナジュナジュ アリステアもいる・・
「ばっちりだよ! ちゃんと風の呪文で運んだよ!」エイル
「こっちもだ よくこき使ってくれる この魔法の王様は・・」
苦笑するレグルス
「悪いな・・有難う二人とも」 アーシュ
「・・セルトは・・
よしよし ちゃんと治癒の呪文を大人しく
受けている」
「・・御心配をおかけします・・」セルト
「こちらはご心配なく お任せください 私の黒の王 火竜王」
セルトに治癒の呪文をかけつつ ウインクするアルテイシア
「有難うアル・・
ああ・・調査団の飛竜はどうするだ・・?」アーシュ
「私ども 魔法ギルドが 魔法で元の場所に帰しておきます
大丈夫です・・細々とお世話をおかけして申し訳ありません
有難うございます
伝説の魔法の王様・・火竜王 最後の竜の王アーシュラン様」
アリステアと魔法ギルドの長
本当に世話焼きのアーシュ 一人で全部・・仕切っている
「じゃ こちらへ・・」アリステアと魔法のギルドの長・・
「ルナ教授に ええと・・ラルラ教授・・」レグルス
「はい・・」彼らは 呼ばれて アーシュの傍に行く
「そこでいい・・そこにしばらく立っていてくれ
すぐに終わる・・」アーシュ
左手をかざす 淡く光る・・
しばしの沈黙の後で まず ルナ教授は口を開く
「・・全て伺いました・・私達は 役目を果たします・・」
魔法ギルドの長とアリステア・・ラルラ教授も頷く
「・・時の狭間・・時の番人の事はまかせてくれ・・
バステイルにも伝える その後のサポートも
一年に一度の見廻りも・・大丈夫・・心配ない」
レグルス
「・・では・・俺はあの禁断の場所の
あとかたずけに行く 灰塵に還す・・
他の皆も待っているから・・行ってくる・・」
「・・わかりました 御帰りをお待ちしております
火竜王 最後の竜の王」
アリステア
「お戻りをお待ちしております・・いにしえの魔法の王・・」
魔法ギルドの長
「・・どうかよろしくお願いいたします・・感謝します」
ルナ教授とラルラ教授
「・・エルトニア姫達は あっちにいて 聞いてない・・
伝えておく・・頼んだぞ・・火竜王 最後の竜の王
アーシュラン殿」
「ああ・・あの荷物の山と入口の中にいる者達は 外へ・・
戻ったら・・すぐに入口を閉じて 封印する」アーシュ
「・・入口の岩は私が魔法で閉じておく・・他の者達にも
手伝って もらう」レグルス
「・・セルトが手伝うと言うと思うが・・」アーシュ
「・・大丈夫・・私が言う事を聞かないなら 麻痺の呪文をかける
それでも 動くなら 時の番人の力を使う・・
一時 彼の時を止める・・身動き一つ出来ない・・
本当に世話好きだな お前・・アーシュ殿・・くすくす」 苦笑するレグルス
「・・悪いな世話をかける・・俺はセルトの主・・ちゃんと見てないと
すぐ 無理をする・・後は宜しくなレグルス 」アーシュ
ふう・・と息を吐くアーシュ
「・・時と風の力よ! 我は 最後の竜の王
あの禁断の場所 呪われた地に 我を連れて行け!」
アーシュの呪文の詠唱に答えて 強い風が彼を包むように吹きぬけて
彼の姿が消える・・
洞窟の中でアーシュの帰りを待っている者達・・
「お戻りになられました」 目を閉じたまま バステイルが言う
アーシュが宙からフッとその姿を現す
とん と直地する
「お帰りなさい お疲れ様です アーシュ様」
それぞれアシャアシャとテインタル 笑顔・・
「お戻りをお待ちしておりました
お疲れ様です・・」
微笑むバステイル
「お帰りなさい・・後始末お疲れ様です アーシュ殿
本当に世話好きですね」 苦笑するリアン
「俺がいなかったら お前がしたと思うぞ リアン
世話好きだから・・」
にっと笑うアーシュ
「待たせて悪かった・・さあ始めようか・・灰塵に還す・・」
アーシュ
皆頷く・・
リアンが最初に始めた・・
「・・白き 聖なる光の力・・
これから始まる浄化の炎と破壊に力を与えよ
最後の白の宗主 2つの王国の王 片腕の王リアンが命じる」
白い光が輝き 白い光が辺り一面を照らす
「闇と時の力よ・・我は時の番人であり神の一人であるバステイル
我が 命ず・・この地を破壊せよ これから始まる浄化の炎に力を・・
力よ・・盾となり 崩れゆき燃え立つ中から 我らを守れ!」
白い光の中・・天上の岩が幾つも落ちてくる・・赤い水晶群の一つが
ヒビ割れて 砕け散る それを合図に 次々と砕け散る
だが・・まだ多数の水晶群が残っている
洞窟全体が揺れはじめる・・
半透明の虹色の球体が それぞれ一人一人 皆の身体を包み込む
ふわり宙に浮くアシャアシャ・・目を閉じている・・
小さく息を一つ・・瞳を開く オッドアイ・・
輝く黄金と赤く燃える焔色
「燃え上がれ 漆黒の闇と地獄の炎・・黒き暗黒の闇の炎・・
この地を砕け! 燃え上がるがいい!
暗黒の女王アシャアシャが命ず・・その力を示せ!」
白き光が照らす中 ゴオオツ 漆黒の黒い大きな炎が出現する!
辺り一面に黒い炎が広がる!
突然 残りの赤と白の透明な水晶群が 砕け散り
廻りの大きな岩も砕け散る 天上の岩もまた 幾つも落ちてくる
洞窟の揺れも大きくなる・・聖なる白の光はまだ辺りを照らしている
アーシュランとテインタルが目をあわせて互いに頷く
二人がほぼ同時に同じ呪文を詠唱する
「赤く燃え上がる焔の力よ・・すべてを司る黄金の力・・
目覚めよ・・我々が命令する・・我らは・・
火竜王にして最後の黄金の竜の王アーシュラン
・・
もう一人の火竜王黄金の竜の王の娘テインタル
黄金の炎の海・・すべてを燃やし尽せ 灰塵に還せ 塵となれ!
すべてを破壊せよ!」
その詠唱がまだ終わらないまに 黒い炎の中に黄金の炎が現れる
2つの炎の色は混ざりあいながら・・すべてを焼き尽くす
炎の海・・
灰塵に還してゆく・・
ぴし・・パキン パキーンとわずかに残っていた水晶の大きな残骸も
完全に砕け散り・・粉々になる・・
廻りもまた 大きく天上の岩も落ちてくる
大きな岩の塊も・・バステイルの護りの魔法の盾にはびくともしない
落ちてきた岩は 魔法の盾にはばまれ 砕け散る
白い聖なる光がゆっくりと消える・・それが合図のように・・
漆黒の炎も黄金の炎の海もゆっくりと消えてゆく
やっとすべてが終わった・・皆がそう思った瞬間
どこからともなく響き渡る・・男の声・・
「ひやあああははは・・あははは・・我は死なない!消えない!
我は蘇る・・ここを復活させる・・蘇る また繰り返してやる
あの2千年の戦乱の時代を 悲劇を!!再現する・・封印をしても無駄だ!
必ず破壊する・・
待っているがいい・・必ずだ・・あははは・・」声が消える
蒼白になり・・絶句するリアンとバステイル・・
「・・そんな・・信じられない・・」バステイル
アーシュとテインタル・・アシャアシャは
ただ無言で 廻りすべてを睨みつけている
アーシュが口を開く・・
「・・ここの封印が壊されたら
またお前を跡形もなく灰塵にして塵に還す・・
何度でもな・・繰り返そうが・・構わない・・
それが宿命なら 受け入れるまでの事!
我らは・・戦乱の時代を終わらせる為に現れた
焔と黄金の力の世代・・
望み通り・・闘ってやる・・追放された神・・
狂った化け物・・覚悟するがいい!」
頷くテインタル・・アシャアシャも頷く・・
「・・私は暗黒の女王・・
私が生まれたのは・・この異変を食い止める為に
時の力が・・私を出現させた・・!この時代に残っているのは・・
穏やかな平安な時しか知らない人々・・微弱な魔力しかない者達・・
彼らを救い護る為に・・
歴代の魔法の王達の力に匹敵する力を与えた・・
時の力が・・保険代わりに・・
万が一の時の為に用意した人々への贈り物
それが暗黒の女王・・アシャアシャ・・私・・
それが私の宿命・・運命!
たとえこの生涯が終わり・・人としての時が終わっても
時の力と神々はすでに約束している・・契約している
私を誕生させる前から・・
この私を 歴代の魔法の王達とともに
永遠に 安息の時間で眠らせると・・
異変の時に・・お前が蘇ったら・・
必ず 時の番人が私を呼び起こす!
聞いているか! 腐り果てた化け物!」
アシャアシャは2つの色 オッドアイを輝かせて叫ぶ!!
はあはあと息を吐くアシャアシャ
宙に浮いた彼女の元に ふわりと飛んで来るアーシュ
二人を包んでいた虹色の魔法の護りの球体は
重なりあい 一つの丸い玉になる
そしてポンと左手で・・頭をなでなでする・・アーシュの顔は微笑んでいた
「その時が来たら必ず 俺も・・皆も参上して ともに戦う・・誓う・・
奴を戦うのは 燃え上がる焔とすべての黄金の力を与えられた俺達の宿命・・
・・ただ・・レグルスはいないかも知れない・・」
「ここを封印したら帰ろう・・アシャアシャ・・
記憶は残るが・・今のアシャアシャの意識は一旦眠りにつく・・
再び目覚めの時・・およそ十年後まで・・ゆつくりと休むがいい
楽しい時を過ごすんだ・・俺達と違って・・
それは時と神々は 異変が起きねば・・平安な生涯を約束している・・
・・・頑張っていい男を捜すんだぞ・・じゃないと・・
一生独身だ・・いっそ押し倒せ アルみたいに
お前は強いから・・」
にいいい~と笑うアーシュ
赤くなって上目使いでアーシュを見るアシャアシャ・・
「まあ・・その為に・・神は お前を支え守る意味もだが
血を残す為に
ナジュナジュを用意した・・誰を選んでもいいように
街 一番の可愛い美貌と穏やかで愛情深い優しい気質と
2つの性の両性体にした・・まだエイルと同じ未分化・・
ナジュナジュを・・
ナジュナジュやリア・・アリステア達もみんな 待っている
お前を心から愛して・・守るだろう・・
たとえ・・・お前がやらかすはずの大事件も彼らは・・
ちゃんと後始末をする
もう・・2つ・・すでにやらかした・・視た・・知っている
一つはリアが犯人になっているが・・
そのうち真犯人は お前だとばれる
まっ・・心配するな
すでにリアが身代わりとなって尻を叩かれたから
お叱りの罰もリアが済ませた・・
リアの本質はあのわん子だ・・気にするな
絶対 お前を叱らない・・
どうせ・・あのわん子だ・・全然気にしなくていい!
また・・押しつけていい・・俺が許す・・くくくっ」
含み笑いをするアーシュ・・ちょっと酷いかも・・
「大丈夫・・その頃は時効だ・・
誰もお前を叱らない・・後が怖いから・・
お前を叱るのは せいぜいアリステアか・・
甘めに叱るのはナジュナジュぐらい・・」
にやりんと笑うアーシュ
ドキ!として 慌てて視線をそらすアシャアシャ・・
ちょっと冷や汗
アーシュの話を聞き・・視線を漂わすリアン・・
目が言いている・・この末恐ろしい魔力を秘めた小さな女の子は
果たして 今後何をやらかすんだ・・?
それに2つ・・もうやらかしたと・・言った・・
何をしたんだ・・それにあの異名・・よくよく考えれば
暗黒の女王とは・・ただ事じゃない
あの絶大な魔力の二人の王・・火竜王を軽々と受け入れる力も
桁はずれ・・
歴代の魔法の王達に匹敵する魔力・・下手したら・・超えているかも知れない
リアンは寒気を感じた 汗が流れ落ちる・・
テインタルは 青い顔で
半開きのじと目になっている・・冷や汗が一すじ・・
・・時の番人のバステイルも一応 全ての時の事柄は知ってはいるが
今回の異変で 多くが変化した・・
不安を感じる・・頭をかかえている・・
一方 アーシュは案外と明るく笑っている
アシャアシャはちょおと 上目づかいで赤い顔で
アーシュを見ている
「・・そんなに言うなら・・アーシュ様が私を
もらってくれます?・・私と対等に渡りあえるのは
アーシュ様ぐらい・・それかリアン様でもいいですが・・」
アシャアシャの頭をなでるアーシュ
右腕はまげて右手を 自分の腰にあてている
くすくすと笑っている
「こらこら・・俺達は いわば精神体・幽体
無茶言うな・・アシャが安息の時間に来た時 独身だったら 考える・・リアンも一人身だ・・
それも悪くない・・いい奴だ・・
美男子で優しく我慢強くて・・穏やかな性格で・・
ちょおおと隠しているが・・ダークサイドな一面もあるが・・
・・あの伝説の・・城を陥落させた
うん○作戦・・・レグルスから聞いたが・・笑える・・
本質は案外似た者同士かも・・ふふ・・」
アーシュ
「・・その伝説のう○こ作戦・・有名な御話で絵本になっています
・・盗賊たちに占領された異母兄弟の兄
・・兄である白の宗主の城を取も出す為に
当時・・白の武官で・・一部隊を率いる将軍の一人だった
リアン様は・・兄に命じられて 討伐隊となった・・
作戦として思いついたのは・・う○こ作戦・・
飛竜や竜達に下剤を与えて 大量のうん○を作って
そのうん○を滑車や魔法で長々と次々と投げ込み
降参の白旗振ったのもまったく無視して・・
白亜の美しい城が壊れるまで投げ込んだ・・
城は・・放棄されて・・元の姿に戻る事はなかった・・
数年も悪臭が漂い続けた・・
・・・異母兄は・・リアン様を幼い頃から苛めていた
その腹いせもあったとか・」
くすくすと 笑うアシャアシャ
さり気に横を向くリアン・・冷や汗 一つ・・
誰だ・・そんな絵本を書いたのは・・
心の中で密かに思うリアン・・
その御話は知らないので・・きょとんとしている
テインタル・・
「・・安息の時間の時に入る時は必ず迎えに来る・・」
「約束ですよ・・」アシャアシャ
「ああ・・約束した・・」アーシュ
「さて・・封印の仕事が済めば・・
後の御褒美
お楽しみの祝祭のパレードや花火に
料理の天才の俺の手料理だ!」
「帰るぞ! 帰還の時間だ!エイル達が待っているぞ!」
アシャアシャを抱きかかえるアーシュ
赤くなるアシャアシャ
はあ・・とため息をつくバステイル
「まったく・・全部仕切るんだから・・アーシュ殿は・・
それにまた・・もてもて ですね 本当に羨ましい限りです
アシャアシャちゃんか・・エイルかアルかテイを私に渡しなさい
まったく・・
いい加減にしないと リアにさっき軽口を言っていたのを
リアに ばらしますよ!」
「わん子・・リアが可哀そうでしょう!
それから手料理 楽しみにしていますよ!」
アーシュに声をかけるリアン
左手で 右肩近くの残った腕の部分を青いローブの上から
抱えて 苦笑するリアン
「まかせろ! 俺の料理は 期待は裏切らない!楽しみにしてろ
デザート付きだ
アルとエイルの事は 俺に勝負で勝ったら言え
その時は お前が一人寝だ!」
「リアに ばらしたかったら 好きにしろ!
言い返すから・・中身は わん子だから・・大丈夫
許してくれる・・」
笑いながら言う アーシュ
そおとほほ笑むテインタル・・
「リアさんの本質が わん子さんとわかって
いきなり扱いが変わりましたね・・アーシュ様
リアさんが 気の毒です・・
あまり 苛めないでくださいね・・今は普通の人間ですから・・
それにナジュナジュさんが泣きます・・仲よしだから・・・
それに・・ナジュナジュさんの事 可愛いなんて思ってらしゃる
視えますから・・知っています・・」
「三人も麗しい心の広い美人の妻に・・
可愛いアシャアシャちゃん(?)までいるのに・・
贅沢です・・
四人で十分です・・それに貴方の身体が持ちませんよ
まだ長い月日が掛かる治癒が必要な身体
また・・力が足りなくて大人の姿が維持出来ず
少年の姿に戻ったのに・・
早くても 大人の姿に戻るのに 百年はかかります
・・戻らない可能性もありますよ・・」
「今回の戦いで負った治癒もしなくては いけません・・」
「それに・・そんな状態なのに アルテイシア姫とリアン様との
剣と魔法の大勝負・・本当に・・するでしょうね・・
焔の世代の本質は闘いを欲しっている・・闘争の本質・・」
「アルテイシア姫や白のエルトニア姫・・テインタル王女との
初夜もある・・大丈夫ですか・・あの二人以外・・
あの二人は許すでしょうが
アルテイシア姫を ちゃんと満足させないとリアン様の元に
帰られるかもしれませんよ!」 バステイル
「おい・・アシャアシャもいるから・・その話は ほら」
赤い顔している・・テイも・・」ちょおと焦るアーシュ
だが・・バステイルは聞いてない・・話をくどくどと続ける
「安息の時間の中で眠ったら・・下手すると
十年は眠ってしまうかも知れない・・知りませんよ!
異変が起こったら・・今度は容赦なく 叩き起こします」
「レグルスは恐らく参加出来ない・・
誰か代わりに一人か二人連れてこなくては・・それでも・・足りないかもしれない・・
あの追放された闇の神の相手では・・」バステイル
「・・ああそうだ・・ 奴の声を・・聞いたろう・・
まだああやって 意識が生きている・・あの狂気の神・・化け物は・・」
アーシュ
「そう・・ですね
貴方方二人の力が絶対必要・・それは宿命・・時の力が
今・・私にそう告げました・・」バステイル
「・・そうだ・・首を斬り落とし 二つにまた斬られても
まだ・・あの首は生きていた・・とんでもない化け物だ・・
暗黒の女王の絶大な力を・・時と神々が用意するはずだ・・」
アーシュ
「・・でも・・本当に・・知りませんからね
今後の事・・アーシュ様」
じと目で見ながらアーシュに注意勧告する・・バステイル・・
「了解だ バステイル・・苛めないから・・
その辺で勘弁してくれ頼む・・
帰ろう・・帰還の魔法を頼めるか・・
俺もテイも・・少々 消耗した・・リアンは一人なら
帰れるが・・この人数は無理・・」アーシュ
その言葉に こくりと頷くリアンとテインタル・・
「手料理の準備もある・・バステイルも食べてみないか?」
微笑むアーシュ
「・・わかりました・・皆様を この洞窟の入口の外まで
お連れします・・本当にレグルスに性格が似ています
・・逆らえない・・
手料理楽しみにしております・・」
ふう・・とため息 やれやれという表情のバステイル
「では・・参ります
時と光と闇の力よ・・その力の元
我らを・・外へ・・
この洞窟の入り口のすぐ傍の外へ連れてゆけ
私の名前は 時の番人であり神の一人バステイル
我は命ずる・・我・・その名の元に力を示せ!!」
彼らを護っていた 虹色の球体が
光を放つ・・洞窟の中から・・姿を消す・・
続く・・