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「よい子のみんな、元気かなぁ?」
陽気に挨拶するお姉さんの隣で両手をバタバタさせる黄色い全身タイツ。
「はーい、大比企ホーム住宅住宅展示場にようこそ」
お姉さんのハイテンションな声が響く。
「かわいいマスコットカエルの大比企大河くんもごあいさつぅ」
黄色い全身タイツは手足に水掻きを付け、頭には頭上に飛び出た目が特徴のマスクを被っていた。
「はぁい、大比企ホーム住宅の、かわいいマスコット、カエルの大比企大河くんだよ、よろしくぅ」
中の人がインカムで話しているのがよくわかるモゴモゴ感でマスコットが陽気に言い、続けた。
「よい子のみんなはオイラ『カエルの大比企大河くんと遊ぼうね』があるよ」
「お父様お母様お祖父様お祖母様には先着順で、特別プレゼント、大比企ホーム住宅で使える割引券をはじめ、苔玉造り体験やビール手芸体験があります。住宅の中にはキーワードが隠されているかもしれませんから、よーくご覧くださいね」
お姉さんがにこやかに。
「まずはご家族お……ハッ……ハックション……ご家族お揃いで展示住宅をご覧くださ……ハッ……ハックション……ご覧ください」マスコットはぎこちなく。
「それでは、受付をはじめます」
どこかで見た不動産屋の男性社員が黄色い法被を着て、仮設テントの下で声を張り上げた。
「樋口さん、オレにも法被をお願いします」
マスコットがお姉さんに頭を下げた。
とたんに、マスコットはちびっこギャングエイジの群れにたかられた。
「腕にしがみつかないでくれるかな。ほらブラーン」
だったマスコットが数分後には。
「あぁ、蹴らないで!そこはダメダメダメ!だれだ!浣腸すんのは、前はひっぱっちゃダメ!」
子供の叫声にかきけされていった。




