パリスティンのある世界
冒険者カード。
それは俺が異世界に行き、冒険者ギルドで王族の一部と間違われて貰ったプラチナランクの冒険者カードである。
これは、現実世界では使い物にならない、ただのプラスティックのカードだ。
そう思っていた。
だが、それは完全に間違いだった。
このカードは、現実世界では数百億もの価値があるモノだった。
冒険者カードに限らず、現実世界では異世界のモノがありえない価格で取引されてたい。
俺がその事実を知ったのは、異世界についてネットで調べた時だった。
異世界で聞いた名前、”アト―フ大陸”、”ベーリエ大陸”、”カーグワ”、あと俺の名前をもじった”アッキーデ”。
この4つの名前をパソコンで検索してみると、なんとアト―フ大陸、ベーリエ大陸、アッキーデの3つが検索結果に引っかかったのだ。
調べていくうちに、この世界にも異世界に行った人が何人もいることがわかった。
現実世界ではその異世界のことを”パリスティン”と呼ばれているらしい。
アト―フ大陸はパリスティンで一番大きな大陸であること、ベーリエ大陸はパリスティンで最も強大な魔獣が住んでいること、アッキーデはアト―フ大陸でもっとも力のある王族ということ。カーグワだけはそんな有名じゃない街だからか、載っていなかった。
地球上でパリスティンに行った人は過去を含めて数千人もいるらしい。しかも、その中には歴史的偉人や著名人がたくさん含まれている。
ネット上ではこのパリスティンに行ったことがある人、行ったことがない人が様々な議論を交わしていた。
パリスティンに行ったことがある人の中には、パリスティンは宇宙にある地球とは別の星であると主張し、行ったことがない人の中には、全て妄想であり、誰かが言い出した戯言である、と主張している。
さらに調べていると、50年前にパリスティンからモノを持ち帰った人がいた。それを世界中の研究所で調べたところ、地球上には存在しない、未発見の物質でできていることがわかった。
一部の大富豪たちは、パリスティンのモノには特別な力があると見て、大金を出してそのモノを手に入れようとしたらしい。
50年前にオークションにかけられたそのモノは、パリスティンから持ち帰ったとされる剣だった。当時の価格で、500億円もの値が付きどこかの大富豪の手に渡ったらしい。
それ以来、パリスティンから持ち帰ったモノとして様々なモノがオークションにかけられた。そのオークションでは当然偽物も出品されるため、30年前にパリスティンのモノ専用のオークション会社が設立された。その会社の名前がパリスティナである。パリスティナは世界中の研究者を集め、パリスティンから持ち帰ったとされるモノを調べ上げて、本物か偽物かを断定するのである。本物であればオークションに賭けられ、大富豪に売られるのである。
だが、未だにパリスティンへの行き方や、帰り方など詳しいことはわかっていない。パリスティンに行った人の中には、永遠に帰ってこなかった人や、2~30年後にふらっと帰ってきた人など様々であるが、全員が口を揃えていう事がただ1つある。
「気付いたら現実世界に戻っていた」と。
ネット上ではパリスティンへの詳しい行き方が書いてある。それを実践した動画などたくさんあるが、どれも何も起こらずにパリスティンへは行けてなかった。
だが、よく考えると本当にそれでパリスティンへ行けたのだとしたら、動画など出すことができないだろう。失敗はわかっても、成功は確認ができないのだ。
パリスティンとは、人類の未知の世界であり、知る人ぞ知る世界であるのだ。
一通り調べ終えると、俺は一呼吸して上を見上げた。
俺は、パリスティンに行ってきたのだ。そう確信した。
たった1日だけだったが、冒険者カードを手に入れて。
パリスティンは実在する!これは俺が一生涯、主張し続けるであろう。
冒険者カードを見てみる。それはただの透明なプラスティックのようなカードで、中にアッキーデ・ナナという文字が銀色に輝いている。
俺はこれをパリスティナへ持っていこうと決意した。