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水溜り

部屋の扉が開く音で目が覚めた。


得体の知れない闇に恐怖していたのも最初だけだった。

考えてみれば手首だけの私は『痛み』も『苦しくなる胸』もない。

そう考えるとこの場所は案外居心地が良かった。

今まで感じてきた凡ゆる苦痛を取り除いたような空間だった。

まるで無菌室のようだった。


彼によってその空間に菌が入り込んでしまった。

彼は酷く疲れた顔をしていた。蒼褪め、目は何処か遠くを見ているようだった。


私みたいだ…。


そう思っていると、彼は私をそっと持ち上げて机まで運び机に私を座らせた。

彼は座っている私の近くに突っ伏して私をじっと見つめている。その目に生気は感じられなかった。

彼はボソボソと小声で何かを言っているようだった。

あまりにも小さく力の入っていない言葉だ。

息をするのも辛そうで、彼はこのまま生き絶えてしまうのではないか、とまで思わせた。


彼は暫くしてから、唐突に涙をポロポロと溢してしまった。

涙は小さな水溜りを机に作ってしまった。

その水溜りは私の指先まで径を大きくし、彼の近くに座っている私の指先をラップ越しに湿らせた。

彼を慰める手段を私は持っていない。私はそのことを情けなく感じてしまった。

腕まで付いていれば、彼の頭を撫でてあげられたかも知れないのに。


この身体に少しだけの不便さを感じた。

こんな拙い文章をここまで読んでくださり有難う御座います。


前話はあまり時間を取れない中、無理に書いてしまいました。

そのせいで短く、読み応えのないものになってしまい、申し訳ありませんでした。

今回はいつも通りの内容量で書くことができましたので、前回よりはマシになったのではないかなと勝手ながら思っております。


どうか見限らずに、次話もよろしくお願いします。


ここまで読んでくださって本当に有難う御座いました。

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