覚悟と嬉し泣き
今日は彼の起床が遅い。
どうしたのだろうか。
体調が悪いのかもしれない。
彼は生きているのだ。
私とは違うのだ。
彼がベッドの上で起き上がったのは、昼頃だった。
起き上がったの彼の目はかなり前に彼が起きていたであろうこととを教えてくれる。
彼は何かを決意したかのように立ち上がる。
「 おはよう 」
すごく力強く、少しびっくりした。
『 おはよう…いやもう、こんにちはか… 』
彼もそのことに気が付いたのか、少し気恥ずかしそうに言った。
「 …こんにちはだったね 」
彼の優しい笑顔に安心する。
ここ最近彼は元気がないように見えた。
何かに思い悩んでいるように見えた。
理由はおそらく私だろう。
正確には警察に私が見つかる可能性があることにだろう。
彼の一人で抱え込んでしまう姿は、生きているときの私を見ているようで、複雑な気持ちになった。
私では力になれない。
それでも意味のない愚痴として、独り言としてでもその抱えるものを聞かせてもらえたなら、嬉しかった。
そう考えている事さえ、彼には届かないのを煩わしく感じてしまう
この姿でなければ、彼とこうして同じ空間にいる事さえ出来ないのに。
しばらく彼の部屋に沈黙が続いた。
正直重苦しく、息をする事さえ躊躇われるようなこの空間は居心地の悪さを悪さを演出するのにうってつけで、あの地獄の拷問室を彷彿とさせていた。
彼は何かを言いたげでいる。
口籠るような内容なのだろう。
いつか来るであろう『その時』が来たのだと悟った。
今日で彼とはお別れなのだ。
それは悲しい事だが、仕方のない事だ。
私はどのように処理されるだろうか。
ホルマリンの中から出された後、生ゴミの袋に入れられるのだろうか。
それとも、現場の近くに捨てるのだろうか。
それは不自然だと彼に告げたかった。
いくら無能な警察といえども、急に現場近くに遺体の一部が現れたと通報があれば、真っ先に『犯人』を探すだろう。もし彼が何か証拠でも残してしまっていたら、彼は警察に捕まってしまうだろう。
世間はそうなった彼をどんな目で見るだろうか。
他殺という線が再び浮上している今ならば、真実は捻じ曲げられ、ただ私を所持していたに過ぎない彼は、殺人犯として扱われる事になるだろう。
それを私は望まない。
彼が好きだからだ。
彼が口を開く。
どのように捨てられても、死んでいる私には心配いらない。
そう言い聞かせて、覚悟を決める。
「 お別れはしないよ。絶対に。 」
彼は何を言っているのだろう。
その選択は明らかに間違いだ。
もっと深く思案すべきだ。
自分のことを考えるべきだ。
彼の選択を否定する考えが頭にいくつも浮かぶ。
私は泣きたくなった。彼が捕まってしまうかもしれない。
でも今の私には涙腺はない。
涙は流せない。
彼の選択に対する嬉し涙も流せないのだ。
ここまでこんな拙い文章を読んでいただき有難うございます。
次回あたりで最後になると思います。
最後までお付き合いいただけると幸いです。
ここまで読んでいただき本当に有難うございました。
宜しければ次話もよろしくお願いします。




