気づきと高鳴り
彼が帰ってきてしまった。
まだ心の準備が完全ではない。
彼が階段を上っている音が聞こえる。
もうすぐここに来てしまう。
そう思うと、決心が鈍った。
部屋のドアが開いた。
彼はどこか落ち着かない様子で入って来た。
いつものように鞄を床に置き彼は口を開いた。
「 ただいま 」
こちらを見てはくれなかった。
当然だ。さっき私は自分でそれを飲み込んだはずだ。
なのにとても悲しくなって、心臓が締め付けられた。
私は言葉を返した。
もちろん彼には聞こえていない。
でも今までとは違う、虚無感に襲われた。
別に期待などしていなかった。彼に私の声は聞こえない。
そんなこと当たり前で、私がいちばん理解していた。
それなのに、モヤモヤとした感情でいっぱいになっていた。
このモヤモヤの正体を見つけようと私の脳みそは全力を尽くしていた。
過去に感じたどの感覚とも違う。
イライラしているようで、それでいて落ち着いている。
不安でしょうがないように見えて、どこか心地よく感じる。
この感覚はなんなのだろうか。
彼のことを考えているときに頻発するこの症状はなんなのだろうか。
もしかしたらこのときには気づいていたのかもしれない。
気づかないふりをしていただけなのかもしれない。
自分には無理だ。不釣り合いだ。
誰かにそう言われてしまうのではないかと怖かったのかもしれない。
でもその不安は、彼の一つの行動で解消され、この感情を肯定せざるを得なくなった。
彼はこちらを向いた。
はっきりと私を見ていったのだ。
「 ただいま 」
彼は少し気恥ずかしそうにしていた。
『 仲直り 』そう言われるものなのだろう。
心臓が締め付けられた。
でもさっきとは違う。
優しく、嬉しくなる。
私も彼に答えなくてはならない。
彼にはないだろう感情も籠めて。
『 おかえり。 』
親しさを出すために選んだタメ口もしっかりとできた。
彼はそれから何も言わずに勉強を始めた。
私もそれからは何も言わずに彼を見ていた。
彼を見ていると心が高鳴る。
私は今日人生初めての感情を知った。
私は彼が『 好き 』なのだ。
こんな拙い文章をここまで読んでくださり有難う御座います。
もうすぐ6月ですね。
だんだんと夏が近ずいて来ている気がします。
私は夏の風物詩は好きですが、夏特有の蒸し暑さや、蚊は大嫌いです。
きっと今年も温暖化の影響で暑くなると思います。
頑張って乗り切りましょう。
ここまでこんな拙い文章を読んでくださり本当に有難う御座いました。
宜しければ次話もよろしくお願いします。




