嘘と誠
扉がとても重く感じた。
自分にはそこは敷居が高い場所のように感じられた。
毎日行っている行動がうまくいかず戸惑った。
意を決して扉を開ける。
決して彼女の方をまじまじと見はしなかった。
なんとなくそれは憚れた。
そのせいでどこに向けているのか分からない、
とても曖昧な位置にその言葉をかけてしまった。
喉は仕事を終えたようで、その言葉は少しの反響とともに消えてしまう。
いいままでもこうだったのだろう。
ただ意味もなく発せられて、消えていたのだろう。
そう考えると今までの行動はなんて無駄なことだったのだろう。
けして彼女から言葉が返ってくるだなんて思っていない。
意味のない、完全な自己満足での行いだったはずだ。
でも、心臓が痛くなった。
呼吸をすると喉のあたりが痛くなった。
なんでそうなったのかは、薄々気づき始めていた。
心臓が苦しくて、うまく呼吸もできないのに、頭は正常に働いてようで
薄々だったものをゆっくりと鮮明にしていく。
彼女に話し合えているとき僕はどうだったか。
日々感情が高揚していなかったか。
彼女に向ける表情を意識せずに自然に出来たときはどうだったのか。
僕は少し照れと喜びで、困惑したんじゃないか。
頭の中で投げかけられる質問はどれも
『自分』というものを作るのに欠かせないもののように感じた。
彼女が『本当の僕』を作ってくれた。
うわべだけの付き合いをうまく回すためだけに鍛えた表情筋も、
楽しくもないのに笑う自分も、うんざりだった。
結局のところそれも僕の大嫌いな『嘘』に過ぎなかった。
気づいていたはずなのに、気づかないふりをして誤魔化していたんだ。
自分にも僕は『嘘』をついていたんだ。
喉の痛みがなくなったころ、頭の中の言葉がピタリと動きを止めた。
この感情の答えを見つけたからだ。
それは簡単で、それでいて目に見えない。
僕には一番遠いところにあるものだと思っていた。
でも、彼女だからそれができた。
それに気づくと、彼女を見ることが難しくなってしまった。
でも今はそれをしなければいけない。
意味のないことだと嘘をついた自分に対する贖罪と、彼女に対する謝罪を籠めて。
「 ただいま 」
今度はちゃんと彼女をみて口にした。
さっきと違って、言葉が彼女の中に入っていくような感覚を覚えた。
そんなはずないのに、彼女と心が通じ合った気がした。
やっぱりそうだ。
彼女に話しかけると、心臓が高鳴る。
締め付けられるような感覚を覚える。
でも苦しくはない、切なくなるような感覚だ。
改めて確信した。
僕は彼女が『 好き 』なのだと。
こんな拙い文章をここまで読んでいただき有難うございます。
一週間以上投稿が開いてしまって、申し訳ありません。
週に2話ずつの投稿ペースだったのですが、崩れてしまいました。
申し訳ありません。万が一にも楽しみにして下さっていた方がいらっしゃいましたら
本当に申し訳ありませんでした。
しばらくは投稿ペースは崩れなさそうなので、見捨てずにいて下さると本当に幸いです。
ここまで読んでいただき本当に有難う御座いました。宜しければ次話もよろしくお願いします。




