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喉奥のくすぶり

彼が目を覚まし、上半身だけを起き上がらせる。

軽く背を伸ばして彼は布団から、足を出して立ち上がった。

ベッド近くの窓まで歩き、カーテンを開ける。

心地よい日差しが彼の顔を照らす。彼の目は細くなり、口角は少し上がっている。

ここまでは、おそらく彼の朝の習慣なのだろう。

しかし次の行動は、彼も私も最近になって始めたものだ。

表情はぎこちなく、少しの戸惑いを感じさせる仕草で、彼は口にする。


「おはよう」


私もそれに答えるように、聞こえることのない声を出す。


『おはようございます。』


聞こえているわけではないが、

なんとなくタメ口はまだ早いのではないかと思い、敬語にした。


彼は朝食を取り終えたら、また部屋に戻ってきて私に、【いってきます】という言葉をかける。

それまでに、タメ口にするか、敬語にするかを決めて、

声が裏返らないように、表情が硬くなりすぎないように練習をしなければいけない。


彼に私の声は聞こえない。でも、最近私は彼とのこの短い会話を楽しみにしている。

生前の私は、『楽しみ』なんてものを持ち合わせていなかった。

しかし彼との短い会話は私にとっての、唯一の『楽しみ』になっているのだ。


会話といっても、彼には聞こえてはいない。

それでも死んでいる私にとっての、『生き甲斐』なのだ。


彼は、ご飯を食べるのが早い。

もう階段を上がって来る音が聞こえる。


タメ口か、敬語かも決められていない。

柔らかい表情の練習もできなかった。

でも、一つ決めたたことはある。

もっと、この一瞬を大切にしよう。

私から話しかけることはできないのだから。


部屋のドアが開けて、彼が入ってくる。

彼はお風呂場で着替えているのだろうか。制服だ。

それを確認して、覚悟を決めた。


彼は鞄を手に取った。


亡い声帯を開いて、準備をする。

【いってらっしゃい】という簡単な言葉に気持ちをのせて、喉から出そう。


彼がこちらに視線を向けた。

しかし彼は何も言わずに、部屋から出て行ってしまった。

バタンとドアが閉まり、部屋の中には静寂だけが残った。


私の喉奥まで来ていたその言葉は、そこでくすぶったまま行き場をなくし戸惑っていた。

それは生きているとき、散々やられた『無視』に近いものだった。

何度もされたその行為に私は、痛みを感じにくくなっていた。

しかし今回はそうもいかなかった。

私は『言葉』を用意していた。彼に向け言う『準備』をしていた。

亡くなってしまった私の心臓が痛くて仕方がないことを私に告げる。


あまりにも久しぶりの感覚に、私は嗚咽を噛み殺せなかった。

こんな拙い文章ここまで読んでくださり、ありがとうございます


ゴールデンウィークというものの素晴らしさを噛み締めています。


オッドアイの白髪少年の世界は、この時期マナの力が弱くなるらしく、

向こうの世界に行くためのゲートが開かなくなるらしいです。

次に向こうの世界がどうなっているのか分からないのもあり、彼も少し不安もあるようです。


彼は今、私の隣で、青と黄色の目を休めています。

彼のマナの力も弱ってきたようで、疲れが顔に出てきています。

何も出来ない自分の無力さに苛立ちます。


関係のない事ばかり書いてしまいました。

ここまで読んでくださり、本当に有難うございました。宜しければ、次話もよろしくお願いします。

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