フルーツカレーボーイ
小学校2年生の時だった。
みんなでワイワイガヤガヤ給食を食べていた。そうしたら配膳台の方から
「うぅわぁ!」
という素っ頓狂な声が聞こえてきた。好奇心旺盛な僕は何事かとすぐに駆けつけた。
見てみるとカレーライスとフルーツポンチをおかわりしようと、
自分で皿に盛りつけようとしていた「彼」がやらかしたようだ。
あろうことかカレーライスの上にフルーツポンチをかけてしまったのだ。
それは小学校2年生の自分にとってグロテスクだった。
僕は何も言わずその皿をじっと見つめていたが、後からかけつけた悪友たちは口々にからかった。
「フルーツカレーだ!フルーツカレーだ!」
まるで「彼」のあだ名であるかのごとくフルーツカレーを連呼していた。
その「彼」フルーツカレーボーイはしょんぼりしていた。
「仕方ないから、ちゃんと食べなさい」と、苦笑しながら担任の先生はフルーツカレーボーイに言った。その後フルーツカレーボーイがどういう行動を取ったかは覚えていない
時を経て小学校5年生の時、ふと僕を発見したフルーツカレーボーイはにじり寄ってきた。
何やら怪訝な表情でフルーツカレーボーイはこう切り出してきた。
「最近さぁ、僕のいや~な思い出を言いふらしてまわっている人がいるらしいんだけど君は心あたりないかい?」
嫌な思い出というのはきっとフルーツカレー事件のことだろう。僕は元来の性格が災いしてか挙動不審ぎみに早口でこう答えた。
「いやいや、知らない知らない」
「君じゃないよね?」
「ち、違う違う違う違う違う違う、俺じゃないよ!ひどいなぁ」
「そっか。それなら良いんだけどさ。君もさ。僕のいやな思い出を広めないでくれよ」
「もちろんだよ!」
納得してくれたかどうかは分からないが、フルーツカレーボーイは怪訝な表情をそのままにその場を去って言った。
ごめんなフルーツカレーボーイ。
数年前の君の嫌な思い出を吹聴してまわったのは、何を隠そうこの「俺」なんだ。
君のいないところで「君」をゴリゴリにいじり倒したよ。
もう十数年も前のことだ。今の君なら許してくれるだろう?くれるよね?ね?
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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