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何時か世界を束ねし者 ~~Tales of the Returner~~  作者: ヒマジン
第4章 楽園統一編

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断章 第17話 遭遇編 意外な遭遇 ――同級生――

 八百万の神々の長である天照大御神ことヒメに対して顔見せが終わったカイトとティナだが、帰ろうとする前にツクヨミから声が掛けられた。


「あ、そうだ・・・私も何か渾名お願いします。」


 その言葉に、カイトがたたらを踏む。どうしてこうも唯我独尊なのかと疑問は尽きなかったが、とりあえずもうカイトはどうでも良くなった。


「ヨミで?ちゃんが良い?さんがいい?」

「はい。ちゃんで。」

「はぁ・・・じゃあ、もう行きますよ。うかちゃん、帰りもお願い。」

「はい。」


 にこやかにちゃん付けを申請したツクヨミ改めヨミの了承も得られたので、カイトが再び歩き出そうとうかに促す。だが、そこに再びヨミから待ったが掛けられた。


「あ、いえ。用事はそういうことじゃ無いんです。あなた方はスマホはお持ちですか?」

「?そりゃ持ってますが・・・」


 うかに案内されて立ち去ろうとした二人だったが、ツクヨミの言葉に立ち止まって首を傾げる。2020年代も中頃、携帯電話を持っていない方が可怪しかった。


「では、アドレスの交換でもしておきましょう。貴方達程の力量だと何かとあったほうが私達にも便利ですし。」

「あ、そっちが便利なんですか。」

「私にもタメ口で良いですよ。姉上もそれでいいですし、スサノオは別に気にしなくていいですし。」


 ヨミはそう言うが、カイトとしては悩む所だった。とは言え、総氏神である天照大御神に既にタメ口と渾名をおねだりされた挙句それを飲んでいるし、そもそもヨミに対しても渾名なので、今更不敬だなんだと考えても別にもう一緒かと思うことにした。


「まあ、それが望みというならそれでいいが・・・えっと、じゃあ赤外線モードで。」

「あ、去年出た最新型ですか。そのメーカーはデザイン良いですよね。」

「よく知ってるな。これ海外物だぞ。と言うかヨミもかよ。神様なんだから日本の使えよ。」

「最新型が出ると変えてます。今度も秋か冬に出るはずなんで、また変えるつもりですよ。月の神様なので徹夜はお手の物ですし。」

「徹夜組!普通に並んでんのかよ!」


 二人はお喋りしながらアドレスの交換を行う。どうやらヒメの方も交換したいらしく、スマホ片手に集まっていた。彼女は日本メーカーの物――今年出たばかりの最新型だった――を使っていた。尚、カイトのスマホはエネフィア転移前に自室に置いていた物だったのだが、帰還前に最新型に交換した物だ。危うく画面をロックするパスワードを忘れかけていたので危なかったらしい。


「・・・のう、一つ良いか?」


 そんな三人に対して、一応自分もとスマホを取り出していたティナが問いかける。どうやら何かが疑問だったらしい。


「はい?」

「神々も普通にスマホ使うんじゃな・・・」

「私の部屋はパソコンもエアコンも冷蔵庫もテレビも何でも有りますよ?日本の神々はそんな所気にしませんし。私はスマホの特集とか読むの好きですよ。」


 一足先にカイトとの交換が終わったヨミがティナの疑問に答える。どうやらヨミの部屋は普通に電化製品にあふれていそうだった。


「一応こんな場なので着物を着てきていますが、普段は普通に洋服ですし。姉上やうかみたいに普段も着物や神職が着る服なのが珍しいだけです。」

「・・・色々と、柔軟じゃな。」

「日本の神々の利点はそこですので。」


 少し呆れた様なティナに対して、ヨミが笑って告げる。まあ三貴子が平然と最新型の海外製スマホを使い熟すあたり確かに柔軟だった。


「伊達に八百万なんて言われてませんよ。それこそトイレの神様なんて居ますし。まあ、普通に有名ですけどね。」

「な・・・」


 日本人にはそれなりに知られた話だったのだが、ティナにはとんでもなく意外だったらしい。驚愕に目を見開いていた。


「ああ、そうだ。天神市に帰ったら近所のスーパー恵比寿に行ってみなさい。では。」


 最後にそう言い残し、ヨミは吊られたままくるくると回転しているスサノオへと近づいていく。どうやら脱出しようともがいた所為で回転が掛かったらしい。


「スサノオ。貴方のスマホにもお二人のアドレスを登録しておきますね。」

「んー。んー。」


 完全に口を覆われているスサノオは何を言っているのかわからなかった。再度アマテラスから口を塞がれたのだ。なのでヨミは勝手にそれを了承と受け取る事にして、スサノオの服のポケットからスマホを抜き取る。

 そうして、五人――うかはそもそも全員のアドレスを持っている――はアドレスを交換して、カイトとティナは高天原を後にするのだった。




 そうして高天原を後にして、再度伏見稲荷へと戻って来たカイト、ティナ、うかの三人。そうして職員限定の通路から出た所で、伏見なる宮司に出会った。


「ああ、伏見さん。一応お仕事終わりましたので、またこっちの仕事に復帰しますね。」

「そうですか、有難う御座います。」

「じゃあ、二人共。以後、お願いします。」

「ああ、こっちも頼む。」


 うかと別れの挨拶を交わした二人は今度こそ伏見稲荷を後にするのだった。


「ふむ・・・カイト。とりあえずこれで前半の用事は終わりか?」

「あー、一応終わりか。まあお盆前にまだ一個あるけど。」

「のう、カイト。では」

「好きにしろ。」

「うむ!」


 カイトの返答を聞き、ティナが嬉しそうに返事する。彼女が言おうとしたのは、家電量販店に寄ってもいいか、という事であった。どうやらゲームにドハマリした彼女は、自分用のゲーム機が欲しくなったのであった。購入資金は過日の賭け試合での儲けだ。現在進行形で増え続けているので、おそらく今売られている新作ゲームを全て購入した所で一切痛まない額になっていた。


「ここらだと・・・とりあえず一度電車でみなみが一番良いか。ここが伏見稲荷駅だからまあ、小一時間もありゃ着くだろ。」

「任せる。」


 ティナは基本関西の地理はわからない。そこは元とは言え地元民のカイトに任せる事にしたのであった。そうして、二人は京都を後にして一路大阪の繁華街へと向かうのであった。




 ここで、一つ告げておく。ティナは今まで大きな家電量販店には来たことが無かった。それ故、この状況はカイトにも予想外だった。


「おぉ!こんな電子レンジがあるのか!」


 大興奮で美少女が家電量販店を闊歩する姿は非常に人目を集めていた。とは言え、その視線は痛々しい物を見るのではなく、留学生の少女なのだろうと周囲は微笑ましげだった。まあ、ティナはそんな事を気にする余裕は無かったのだが。

 というのも、彼女は元々研究者にして発明家だ。それ故、自分のアイデアの足しになる未知の新しいアイデア達に出会って大興奮だったのである。だが、それに付き合わされるカイトは完全に赤面していた。


「・・・テ、ティナ。頼むからもう少し静かにしてくれ。」

「む、スマヌな。」


 このやり取りは既に三回目だった。そしてこの後も何度もこのやり取りは繰り返される。つまり、一時的な効果しか無かった。


「ほう・・・やはりパソコンが一番興味深いのう。」

「はぁ・・・ティナ。一応先に買い物だけ済ませるぞ。丁度夏休みセールやってるから、今ならポイント多く付くしな。」

「お主は相変わらず家庭的じゃのう・・・ここでもポイントを貯めておるのか。」


 カイトの言葉にティナも本題を思い出したが、続く言葉に溜め息を吐いた。エネフィアにポイント制度を持ち込んだのは実はカイトなのであった。


「それにパソコン用品ならこっから少し行った所に専門店があるらしいし、帰ってからアキバ行きゃいいだろ。あっちもすごいからな。」

「なんじゃ、そういうことは早く言わんか。では、先にゲーム機見るとするかのう。」


 そうして二人は一度階層を移動して、ゲーム機を置いてあるエリアに移動する。


「ほう・・・多種多様な色が・・・カイトが持っておるのは黒ばかりじゃから、黒だけかと思うとった。」

「ここのは初代以外は全部黒がデフォなんだよ。」


 売り場まで移動したティナが興味深げに観察を開始する。別にこの状況で迷子になるとは思えなかったので、カイトは一度自分も新作ゲームを見るかとそちらに移動することにした。と、移動した所で意外な人物に遭遇した。


「ん?」

「ん?」


 どこかで見た様な、二人の顔にそんな表情が浮かぶ。そうして声を上げたのは、相手側だった。まあ、カイトは魔術で保管した記憶を当たるのに時間がかかって遅くなったからなのだが。


「お前・・・もしかして天音?」

「もしかして草壁か?」

「おお!やっぱ天音カイトか!めっちゃ久しぶりやな!」

「やっぱ草壁 鏡夜(くさかべ きょうや)か!」


 当たり前だが、カイトは小学校は一時期此方に通っていた。それ故、此方にもその頃の友人が居るのだ。この鏡夜とはその当時の友人だった。実家の近くに住んでいるのでもしかしたら会う事もあるかも、とは思っていたが、まさかこんな所で出会うとは思わなかった。そうして、二人は握手で再会を祝い合う。


「なんや帰って来てたんか。」

「まあな。」

「相変わらず関西弁抜けとるなぁ。」

「色々あったんだよ。お前は相変わらず息災変わりない様で良かったぞ。」


 数年ぶりの再会なので、会話は弾む。二人共新作ゲームを見に来ていたのだが、そんなことも忘れていた。


「あはは。なにせ 身体が資本やからな。」

「社会人みたいな事いうなよ、おい。遊んでなんぼだろ。」

「お前は固っ苦しい言い方覚えよって。お、そや。お前これ買う?」


 鏡夜がそう言って指さすのは先週出たばかりの多人数でプレイする事が前提のゲームだった。そのタイトル自体はカイトも見知っていたし、今日見に来た理由の一つでもあった。


「んー・・・面白いか?」

「んー・・・まあまあ。前作のデータコンバート出来るから、そっちもやっとるんやったらそのまま行けるはずやぞ。」

「んじゃ、買うか。前作はプレイ済みだし。」


 鏡夜の答え感想を聞いて、カイトが購入を決める。カイトもカイトで活動資金でかなり稼いでいるし、『紫陽の里(しようのさと)』頭首就任に際して蘇芳翁が請け負っていた異族達の為の会社等の一部役職を受け継いだので定期収入もあったのである。そんなカイトの返答に、鏡夜が嬉しそうに口を開いた。


「お、じゃあ俺も買うとるから、後で通信やろうや。陵司とかも買ったつってたからそいつらも誘って。こっちの中学の奴もおるけどええか?」

「お、いいな。あいつらとも久しぶりか。まあ、そいつらが構わないんなら構わねえよ。こっちも多分留学生が参加すると思うし。」

「へー。やっぱ東京の方には普通におんねんな。俺も従兄弟が東京おるけど、そいつの小学校にもハーフとかおるゆうとったし。」


 少し意外そうに鏡夜が告げる。と、そこで彼の携帯が鳴り響いた。


「お、悪い。ちょと出るわ。」

「おう。」


 一応カイトに断りを入れた鏡夜はスマホを取り出して着信に応じる。どうやら父親だったらしいのだが、その顔は少し険しかった。


「あぁ?マジか。俺今丁度偶然カイトとおうたとこやったんやけど・・・あ?はぁ・・・あのおっさんは・・・わーった。帰る。」


 そう言って鏡夜はかなり渋い顔で通話を切断して、カイトにかなり申し訳無さそうな顔で告げる。


「悪い、何や親戚のおっさんがちょっとやばいらしいわ。で、親父が戻ってこいって言っとるから俺も行かなあかん。」

「ああ、まあ、会えて良かった。」

「っと、その前に一応アドレス交換しとこ。ゲーム出来んからな。」

「おっと、そりゃそうか。まあ、オレ親父の実家おるから万が一はそっち来りゃいい。一応9月までおるつもりやしな。」


 その言葉にカイトもスマホを取り出して、鏡夜とアドレスを交換する。二人共別れた時と数年前に一度会った時はお互いにスマホは持っていなかったのだ。尚、話している内に感覚が戻ったのか、カイトも関西弁に戻っていた。


「じゃあ、急でスマンな。」

「ああ、じゃな。」


 鏡夜はそう言うと少し急ぎ足で戻っていくのだった。そうして鏡夜が離れたのを見計らったかの様に、ティナが買った品持って戻ってくる。


「む?誰かと話しておらんかったか?」

「ああ、小学校時代の友人と偶然あってな。変な偶然ってあるもんやなー。」

「・・・そうか。」


 しゃべり方は気になったが、当人が過日を懐かしんでいるのなら水を差す必要は無いかと考えてティナは指摘しない。と、そうしてカイトはティナ持って来た物を見て、少し呆れ返る。


「お前・・・最新型全部買ったのか?」

「うむ!」


 ティナは元気よくご機嫌に頷いた。というのも彼女が買ったのは各メーカーの携帯ゲーム機全部だった。両手に袋を掲げていた。


「ソフトは?」

「む・・・とりあえずダウンロードコードというのがあるらしいからのう。そちらにした。流石にここでこの姿で大人買いしては目立とう。」


 既にこれだけ買っているのだから目立っているのだが、確かにソフト全てとなると最早不審に思われるだろう。さすがのティナも自制が働いたらしい。持ち帰りについては店を出た所で荷物を収納している異空間に突っ込めば良いので、それまでの辛抱だった。


「で、カイトよ。お主は何も買わんのか?」

「あ、オレもこれ買うからちょっと待ってろ。」


 カイトは少し急ぎ足で件のゲームソフト――当然ダウンロード版ではない――を購入する。そうして戻ってきたカイトに、ティナが問いかける。


「それは楽しいのか?」

「知らん。が、さっきあった鏡夜が面白いつってたし多人数プレイが出来るらしいからな。他のやつも誘ってやろうって事になったから買っとかないとな。」

「ほう、そんなゲームもあるのか。では、後で余も買うとするかのう。」

「一応お前も来るかも、つっといてやった。」

「それは助かるのう。」


 会話しながら、二人は帰宅の途につき始める。既に今日の用事だった高天原への挨拶は済ませたし、ティナの目的だったゲーム機についても既に買い終えた。そうして、二人はのんびりと日常を噛みしめるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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