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何時か世界を束ねし者 ~~Tales of the Returner~~  作者: ヒマジン
第3章 全ての始まり編

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断章 第23話 集結編 エピローグ・1―1つの終わり―

 倉庫街での乱闘を終え、由利先導の下で辿り着いたのは、ソラ行きつけのゲームセンターの向かいのファミレスであった。当たり前だが居酒屋や何処かのバーを使えるわけでもなく、選択肢は少なかったのだ。


「ここかよ・・・」

「文句言うなよ。タダ飯なんだから。」

「まあ、それもそうだな!」


 元々空腹に耐えかねていたソラは、ごきげんにファミレスのドアを潜った。そうして、その後ろをカイトも潜る。彼にしても空腹なのだ。こんな所で揉めるよりもさっさと入ってご飯にありつきたかったという事が大きい。店員たちは入ってきた面々に大いに驚くが、それでも客は客だし、何かトラブルを起こしたわけではない。何か特段の対処するわけにもいかなかった。


「さて・・・では・・・どれが何じゃ?」

「おいおい・・・」


 そうして全員が席に着いた所で、怯えながらも店員がやって来て注文を取ろうとしたところで、ティナがメニューがわからずに首を傾げた。それに、カイトは呆れながらもメニューを教えていく。


「さて・・・」


 そうして、いろいろな意味で騒然となるファミレス内を他所に、ドリンクが行き渡った事で奇妙な集団による宴会が開始される。そんな中、カイトは若干居心地悪そうな御子柴達の側に腰掛けて、何かを言いたそうな彼らに問うた。


「お前らはこれからどうするんだ?」

「同族を探す・・・予定だったんだが、どうやら思う以上に世界は広いらしいな。どうしたもんか・・・」


 カイトの問い掛けに御子柴が答えた。元々彼らは日本各地を回り、カイトと同じく魔力を扱える者やカイトの師でも見つけ出せれば、と思っていたのだが、今日それが困難であることは悟った。元々彼らはその者に弟子入りして、再起を誓うつもりだったのだ。

 だが、どうやら自分達の間にも色々な種別があり、色々な差がある事を知ったのだ。もしかしたら、探し出しても教えを請えないかもしれない、という不安に駆られたのである。


「はん・・・俺は未だにこいつが同族と認めちゃいねえぞ。」

「ああ、残念ながら、同族じゃない。」

「あ?」


 三島はただ単に苦し紛れに言った事なのだがカイトがそれを平然と肯定したので、首を傾げる。そこに嘲り等の嘲笑の感情が無かったのだ。更に仲間たちの誰もそれを否定しないのを知り、更に顔に困惑を浮かべた。


「オレのは大別すれば、龍族と呼ばれる者の力だ。お前らが何なのかは、知らない。」


 そうしてカイトはうっすらとだが、蒼色がかった虹色の光を創り出す。龍族が何なのか、と御子柴達は疑問に思うが、それが彼の種別なのだろう、と判断する。それと同時に、自分達のことは彼にわからない、という事も。


「これぐらいは出来るか?」

「ああ・・・」


 カイトが笑い、御子柴に問い掛ける。それに御子柴は少しだけ意識を集中し、手のひらにうっすらとした白色の光を創りだした。


「他には?」


 その問い掛けに、三島を除く全員が手のひらに小さな魔力の光を生み出す。涼太が黄緑色で、陽介が橙色色、和平が鈍色だ。それを見て、三島が目を見開いて驚いていた。


「お前ら・・・」

「何も俺達だって入院中何もしてなかったわけじゃない。」

「つっ・・・」


 少しだけ非難混じりの御子柴の答えに、三島が少しだけ辛そうに顔を歪めた。自分が知らない内に、彼らはきちんと先に進んでいたのだ。

 三島は少しだけ、仲間の話を聞かなかった自分を恥じ入り、恥じ入った自分に少しだけ、驚く。少し昔ならば、一切気にしなかったのだ。驚くのは無理がなかった。そんな三島を見て、涼太が苦笑して告げた。


「希さん、考えんの苦手なんっすから、考えんのは任せてくださいよ。」

「・・・だから、希って呼ぶなっつってんだろ。」


 涼太の言葉に三島がそっぽを向くが、その声には少しだけ、残念さが滲んでいた。そんな一同に、カイトが問い掛ける。残念ながら、料理が来るまで時間はあまり無いのだ。のんびりと青春をしている暇は無い。どうせ食事が始まれば、そんな暇も無くなるだろうからだ。


「青春やってるとこ悪いが、進めていいか?」

「あ、すんません。」

「見えるだろ?全部違う。まあ、これが別に異なっていたからといって、何かが異なるわけじゃないんだが・・・取り敢えず、1つの差だ。さて、ここからが、力の使い方だ。」


 カイトは更に光を操る。そうして浮かぶのは、奇妙な紋様だ。それに、一同が息を呑んだ。それはまるでゲーム等で語られる魔法の様で、彼らは真実そうなのだろうと思った。


「な・・・」

「これが、魔術。これの1つには、身体能力を向上させる物も普通に存在している。お前らが使っているのは、指向性の無い魔力による一番簡単なブースト・・・いや、単なる補強だ。指向性を持たせてやれば、もっと効果は高くなる。」


 幾つも現れる複雑な紋様に、彼らは驚きしかない。今まで全然知らなかった世界だった。そうして、驚きを隠せない彼らに、カイトが問い掛けた。


「さて・・・1つ聞いとくぜ。オレの下で修行するつもりは無いか?」

「無い。」

「だろうな。」


 御子柴の即断に、カイトが笑みを浮かべて頷いた。打ち倒そうという者の下で教えを請う事が出来るほど、彼らは丸くなれていない。なのでここからが、本題だ。だが、その前に彼らの今後を聞いておく必要があった。


「改めて聞くぜ?これから、どうするんだ?」

「・・・まあ、良いか。俺は元々京都に居た。一度京都に戻って自分のルーツを探ろうと思う。そこから自分の力を知るつもりだ。」


 御子柴はカイトの問い掛けに一瞬今後の予定を考えて話すべきか悩んだのだが、別に隠す必要は無いと考えて答えた。それに合せて、各々が告げる。不安ではあるが、取り敢えずの方針は変わらない。


「俺は東北っすね。孤児院にも行ったんっすけど、俺だけ情報無かったんで。東北は遠野っつーのあるでしょ?なーんかあるかな、って。」

「俺は中国だ。」

「俺は四国だな。希、お前は居残りな。お前元々こっちらしいし。まあ、部屋とか空けとくのも問題だしな。」

「あ?」


 陽介の言葉に、三島が目を白黒させる。一同は元々同じ孤児院の出身だ。彼は知らなかったが、実は御子柴達は一度孤児院に戻り、頭を下げて自分達がどこから来たのかを調べてもらったのだ。

 顔から険が取れ、自分の来歴を探り一度自分を見直したいという彼らに、孤児院は彼らの来歴を教えたのであった。彼らにとっても場合によっては捨てた親との再会もあり得た決断だったが、それを考慮しても、この判断を良しとした。


「月に一度は集合するか、連絡を取り合う。いいな。」

「サボるなよ。あ、あと部屋はきちんと掃除しとけ。帰ったら使うからな。」

「あ、おう・・・」


 御子柴の総括と陽介の茶化しに、三島が少しだけ戸惑いながら、答えた。


「うん。まあ、そりゃいいんじゃね?」


 それを見ていたカイトが、そう告げる。自らで取り敢えずの指針が決まっているならば、問題は無かった。だが、それ以上に彼らには見てもらいたい物があった。だから、カイトが少しいたずらっぽく口を開いた。


「なあ、お前ら。お前らみたいに普通に魔力が使える奴、集まってるって知ってっか?」

「何!?」


 カイトの言葉に、5人は大いに驚いた。今までずっと、探してきた物だ。だが、ずっと見つからなかった物だ。それが唐突に現れたのだ。驚くのも無理は無い。


「行ってみる気は無いか?」

「っ・・・」


 この問い掛けに、彼らは真剣に、かなりの時間悩み続けた。そうして、答えは出た。その答えは当然の物であった。


「・・・ああ。だが・・・今はまだ、だ。」

「そうか・・・今はまだ、自分を見つめ直したいか。」


 ようように口を開いた御子柴は、当たり前だが少しだけ未練を残しながらに答えた。それにカイトは、年を経た、穏やかな表情で頷く。


「もし、行ってみたいなら・・・ちょっと待ってろ。」


 そうしてカイトはスマホを取り出す。連絡先は蘇芳翁だ。


「おう、蘇芳の爺。怪我は大丈夫か?」

『何じゃ、カイトか。ようように抜糸が済んだ所じゃ。明日には退院じゃな。』

「そうか、わざわざ時間の掛かる科学技術でご苦労さんなこって。」

『にしても・・・ずいぶんと活躍したようじゃな。』

「ああ、あの監視は爺さんのとこのか。」

『何じゃ、気付いておったか。なら、伝言を頼むぞ。』


 当たり前だが、あれだけ魔力と魔術を使用した戦闘を行っていたのだ。誰かに見られても可怪しくないよな、と思っていたし、監視もあった。どうやら彼の所の監視らしかった。まあ、1つでは無かったので、おそらく他にも居るのだろうが。


「あいよ。で、やっぱあの刀は使うには合わねえな。また今度、きちんと調整してくれ。」

『かかか、まあ、仕方があるまい。病み上がりの鍛錬には丁度良いじゃろう。で、何のようじゃ?そんな事を言いに来たわけでもあるまい。』


 蘇芳翁は雑談もそこそこに、本題に入る。それに、カイトも本題に入った。ちなみに、蘇芳翁は大御所芸能人の為、その入院先は隠されている。その為、個室なので別段こんな時間に電話を掛けても大した迷惑はかからない。まあ、呼び出して直ぐに出た所を見ると、彼もよほど暇だったのだろう。


「おう、ちょっと魔力使えるけど進路に悩んでるガキ5人ほど見つけた。」

『・・・孤児か?』

「らしい。」


 カイトの言い方に妙な物を感じた蘇芳翁は事情を察して問い掛け、カイトもそれを認める。だが、この後のセリフは、蘇芳翁には少しだけ予想外であった。


「でだ、進路相談にそっち行くかもだから、一応連絡な。」

『何?回収とかでは無いのか?』

「んにゃ?別にいらんらしい。取り敢えずオレにリベンジしてから、だとよ。」

『は?』

「んじゃあ、そういうことだから。ま、また決まったら連絡する。」

『あ、おい、ちょっと待て!』

「これで良し。」


 蘇芳翁の声を無視して、カイトは通信を切断する。それを見て、御子柴達は目を白黒させていた。


「じゃ、これで終わったから、もし行きたくなったらオレに連絡しろ。」

「あ、ああ・・・」


意外な強引さを見せた――と言うより御子柴達をここに強引に連れて来た様に、カイトは強引なのだが――カイトに目を白黒させる神子柴達だが、彼らがその後どうしたのか、どうなったのかは、また、別の話である。




「なんだ?あの一団は・・・」


 丁度その頃。幸人は家族を連れて、ファミレスに来ていた。ここ当分忙しかったことと、予想外に襲撃犯の逮捕が為された事、襲撃犯と誘拐犯達がまだ目覚めないことで、後始末を他の刑事達に任せ、天神市、警視庁問わずで捜査一課の面々には数週間ぶりに早めの帰宅が許されたのである。

 まあ、ここ数週間彼らがあまりに激務であったので、何かミスを起こされる前に、と疲れている彼らに休みを与えたる事になったのだ。そうして早めに帰宅たら、久しぶりに父親に会えて大喜びの息子が外食をねだった事もあり、家族サービスか、と苦笑して家の近所のファミレスに来たのであった。


「ずいぶん、賑やかね。」

「ああ。8中近いし、そこの学生さんか?もしくは少し離れた天桜学園の学園生かもな。」


 妻の言葉に、幸人の顔は若干苦々しかった。なにせ、犯人逮捕の報よりもずっと前に集まっていた様な感じだったからだ。年齢的に言うことを聞きにくい事は理解できていたとは言え、一親として、警察として、いい顔が出来なかったのである。


「幸人さん。」

「あ、おっと。」


 そうして、険しい顔をしていたのを妻に見咎められ、幸人は顔に苦笑を浮かべ、料理に集中する。妻にはただでさえ苦労を掛けているのに、ここであまり仕事の険しい顔を見せたくは無かった。


「ちょっとドリンク取ってくるよ。お酒、飲んで良いか?」

「はい。」


 そうして料理が到着し少し口に付けた所での幸人の申し出に、妻が苦笑して、それを受け入れる。この数週間、夫は様々なバッシングを浴びながらも大忙しであった事を理解しているのだ。実は少し酒好きな彼の楽しみを遮るつもりは無かった。そうして、妻の苦笑した顔に微笑みを浮かべて、幸人は席を立つ。


「あ・・・」

「由利・・・」


 そうして、席を立ってドリンクバーに併設されているお酒のエリアへと行ったところで、金髪の小柄な少女を連れた自分の娘を発見する。


「おぉ、この間の。」

「ん?君は・・・ミストルティンさん、だったかな?」

「うむ。なんじゃ、由利。お主家族で此方に来るつもりじゃったのか。」


 実は当たり前だが由利も知らなかったのだが、それはティナのあずかり知らない事であった。そうして、親子の間に気まずい沈黙が流れる。当たり前だ、どちらもこんな所で出会うとは思っていなかったのだ。どうすればいいのかわからなくなったのである。


「あ、おねーちゃん。」


 と、そこへ、幼子の声が響いた。その横には、若い女性だ。喉が渇いた言った悠二――由利の弟――に手を惹かれ、彼女も此方に来たのだ。


「あ・・・」


 2つの困惑の声が響いた。2つとも、女の物だ。二人はお互いにお互いの姿を認めると、どうすれば良いのか困惑して、気まずい空気が流れる。


「何じゃ?どうした?」


 困惑した親子を見て、ティナが首を傾げる。何故親子の間に困惑が起きるのか、孤児であるティナには理解出来なかった。そうして、問われた由利は家庭の事情だし、語りにくい内容であったのでどうするべきか悩む。そして、その苦悩を見て、ティナが口を開いた。


「えっと・・・」

「むぅ?何か悩みでもあれば、相談に乗るぞ?では、参るか。」

「は?」


 ティナは戸惑う由利の手を取って、親子が腰掛けていたであろう席へと彼女を強引に引っ張っていく。この点、この当時の彼女はまだ魔王として、年長者としての面倒見の良さと強引さが前面に出ていた。


「え、あ、おい・・・」


 それに最も困惑していたのは、自らが全ての原因と把握している幸人であった。だが、同時に彼はティナの強引さを感謝してもいた。仕方がなくはあるが、こうやって強引にでも引き合わせる事が出来なかったのが、彼の後悔だ。

 もう既に腰掛けて、魔王としての巧みな話術を使って由利から原因を聞き出そうとしているティナに、彼と彼の妻は顔を見合わせる。悩む二人を強引に現実に引き戻したのは、彼らの子供だった。彼は不満げに告げる。


「おかーさん、こっぷー。」

「あ、うん。じゃ、どれにしよっか。」

「・・・俺は先に行ってるよ。悠二は頼むな。」

「・・・はい。」


 夫婦は少しだけ意を決した様に頷き合う。そうして、奇妙な一団の縁で、更に奇妙な家族会議が開催されるのであった。



 それから暫く。家族会議が一段落した所で、幸人がトイレに入り手洗い場に立つと、その横にカイトが立った。


「・・・いや、本当に申し訳ありません。」

「いや、俺の方こそ、今まで出来なかった事をしてくれて助かったよ。」


 カイトにティナの強引さを謝罪された幸人であったが、彼女の強引さのおかげで家族間の問題まで何故か解決して肩の荷が完全に下ろすことが出来たので、少し苦笑交じりであったが、それを良しとした。そうして、二人は歩き出し、お互いのテーブルに分かれる所で幸人が問い掛けた。


「にしても・・・これは一体何の集会なんだ?」

「さて・・・まあ、彼女の強引さが成した事ですよ。」

「ははは、そうかい。まあ、分かる気がするよ。」


 見れば警察でさえ行方不明と噂されていた御子柴達さえ参加している宴会に始め幸人も困惑していたが、ティナの仕業と聞いて、半ば納得する。まあ、御子柴達が参加しているのは、カイトの仕業が大きいのであるが。

 だが、そこで幸人が渋い顔をする。まだ、蘇芳翁の襲撃犯逮捕の一方は出たが、この天神市の事件の犯人が捕まったとは報道されていないのだ。殆ど犯人だと確信している幸人だが、一応は忠告しておくことにした。


「だが、関心しないな。今の天神市は危ない、って聞いてないのか?」

「大丈夫ですよ。」

「え?」


 まだ確報が出ていないが故に忠告として送った言葉に、カイトが意味深で、それでいて自信に満ちた笑顔で答えた。それに、幸人の顔に満面の困惑が浮かぶ。事件について知っているであろうカイトの顔には一切の不安が無かったからだ。


「もう、彼には再起が可能な力は残っていません。吸い取る事も吊るす事も、裏返す事も不可能です。拘束している警官の方は安心して大丈夫ですよ。まあ、どうやったのかの説明は・・・いえ、それは元々無理だったのかも知れませんね。力に振り回されている様な感じでしたし。まあ、事件の調書を取らねばならない小鳥遊のお父さん方には頭が痛いでしょうけどね。」

「君は・・・一体、何を・・・」


 幸人の頭に更なる困惑が浮かぶ。吊るしの事件は、数時間前に彼らが告げた様に、報道されていないのだ。それは、あの捕えられた襲撃犯が犯人だと確定するまで、報じられることは無い。そして、幸人は捜査一課が帰宅する直前、鑑識と救急隊が幾つかの疑問を呈していた事を思い出した。

 まず、あのマンションにはガスは通っていなかったらしい。それ故、ガス爆発が起きた可能性はありえない筈だ。もし万が一何かの要因でガスが通っていたとしても、マル被には爆発で負うであろうやけど等の傷がない、あったのは殴られた様な痕跡だ、と。

 それを知っているならば。そうして、幸人の頭には、ある可能性が浮上する。


「何を知っているんだ、君は・・・」

「ふふふ、さて、ね。単なる他愛ない推察ですよ。」

「推察って・・・」

「っと、そんなことはどうでも良いんです。園山って課長さんいるでしょ?その人に伝えておいて下さい。」


 そうして、カイトは急激に雰囲気を変える。何も彼と駄弁るために来たわけではない。そうして、急激に漂った寒気に、幸人の背筋が凍り、呼吸を忘れる。カイトは圧倒的な気配を漂わせながら、幸人に告げる。


「次、いらねえ事したらマジでてめえらを潰す。警察だ国だとでけえモンの影に頼ってんなら、相手間違えんじゃねえ。オレはあいにく警察がバックだろうと国がバックだろうと気にはしねえよ。そこんとこ、覚えとけ・・・では、お願いします。」


 意味深な笑みを浮かべるカイトが、背を向ける。幸人は、ただ呆然とそれを眺めるだけだ。そうして、カイトが居なくなった時には、幸人は誰と話していたのか、綺麗に忘れてしまっていた。残ったのは、聞いた内容と、告げなければならない言葉だけだ。

 数日後。彼はカイトに聞いた事が事実だと知ると共に、記憶を捻じ曲げられ誰に告げられたのかわからなくなった意味不明の伝言を、彼にも理解不能なのになぜか園山に伝えるのであった。それを聞いた時、園山は顔を苦々しく歪めていたという。

 お読み頂きありがとうございました。

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