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何時か世界を束ねし者 ~~Tales of the Returner~~  作者: ヒマジン
第11章 ミズガルズ救援編

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断章 梁山泊軍編 第14話 北欧の試練 ――対ジークフリート――

 さて、ベーオウルフとフェルグスの戦いは結局、三日三晩戦い抜いただけで終わった。さすがに彼らとて本題が道士達との戦いである事は理解している。今まで攻めてこなかったから戦い抜いていたが、これ以上は本題に影響しかねない、と止めたのだ。

 と、そうして修練場が空いた事で、ようやくカイトの試練が行われる事になった。と言っても、これは先にオーディンが語った通り、自分お抱えの英雄達と戦え、という事だった。


「ふふ・・・」


 目の前のジークフリートが笑みを見せる。今回、カイトが戦う事になったのはジークフリートだ。ベーオウルフも戦いたそうにしていたのだが、ジークフリートからフェルグス・マック・ロイという英雄を譲ってやったのだからこの任は譲れ、と言われて渋々譲ったのである。


「北欧の大英雄。名にし負うジークムントの子。北欧有数の悲劇の持ち主」


 カイトは目の前の敵の来歴を思い出す。地球の英雄の良い所は、その来歴が簡単に調べられる事だ。英雄として知名度があればある程、弱点や強み、辿った道筋やその武器の特性等を知れるのだ。


「彼の武器はおそらく地球上で一番有名なドラゴンスレイヤーである<<魔竜殺し(グラム)>>。剣技は不明だが、<<魔竜殺し(グラム)>>が大剣である事を考えれば、一撃重視の剣士と推測される・・・鎧はおそらく伝説に語られるファフナーの鱗を使った物だな」


 今はまだ、お互いに間合いを測っている最中だ。初見の相手に迂闊な事をするのは熟練の戦士らしくはない。時にそれを逆手に取って、というのは良いのだろうが、多用してはそれが噂となって初撃で決められなくなる。あくまでも、奇襲というのは奇策故に滅多に取れぬ手だ。

 ちなみに、ジークフリートの肌は物語に語られる様な硬質の物ではない。普通に柔らかな人の肌だ。いくら彼がどれだけ優れた英雄でファフナーが凄い魔竜だったとしても、それの返り血を浴びただけで不死身になぞなれるわけがない。そんな事が出来ればこの世は今頃不死身の者で溢れかえっている。竜とて超常の生き物ではないのだ。出来る事には道理があり、限度があった。


「ふむ・・・ファフナーの肉を食って動物との会話が出来る様になった、というのは正しいとして・・・鎧の弱点は背中か。そこに、結合部分があるか?」


 カイトは大剣を背負うジークフリートを観察しながら、弱点を考察する。本来、カイトに英雄達に勝てるほどの腕前はない。ならば、弱点を突かねばならないのだ。

 彼は英雄になれたが、それは特別な血を引いていたわけでも、特殊な武術を学んだからでもない。本質的に彼は普通の戦士なのだ。華々しい勝利を得られた事なぞ殆ど無い。

 それ故、栄華に飾られた英雄の息子達や神々の子孫達に勝てる道理が無い。彼らとは土台からして違うのだ。その上で勝つには、知略を凝らし、手札を集めて勝つしか無いのだ。卑怯も上等だ。生きてなんぼだ。これが、本来の彼の戦い方だった。


「・・・良し」


 カイトが仕掛ける。使ったのは<<縮地(しゅくち)>>だ。手には双銃。遠巻きに射掛けて牽制するつもりだった。


「なるほど。魔銃というのは初めて見たな」


 射掛けてられる無数の魔弾を見て、ジークフリートが感心する。その顔にはまだまだ余裕が滲んでいた。この程度で負けては英雄の名が廃る。そうして、彼の鎧が黄金に光り輝いた。


「っ!」


 カイトが驚く。ある程度の距離まで近づくと、魔弾が消滅したのだ。それも単に消えたのではない。まるで分解されて吸収されたかの様だった。


「咀嚼しているのか・・・厄介だな」


 どうやら彼の鎧は普通の品では無いらしい。英雄が伝説で得た物である事を考えれば、当然と言えば当然だろう。魔力を分解吸収している様子だった。


「遠距離攻撃は無理か」


 幾度か魔弾を投射してみて、カイトは魔銃を仕舞う。効果は薄いどころか、効果は無かった。この様子だと低レベルの魔術も全て無効化される事になるだろう。

 そしてカイトは魔術師ではないので、一瞬で高レベルの魔術を練り上げる事は出来ない。ちょっと手間取った瞬間に、ジークフリートが接近しているだろう。というわけで、カイトは小細工をやめる事にした。


『旦那、来るぜ』

「ああ、わかっている」


 グラムの言葉に、ジークフリートも応ずる。所詮、今までのはどちらも単なる様子見、鞘当だ。お互いに剣士である以上、本域は剣でのぶつかり合いになる事ぐらいわかりきった話だった。


「<<遊女の舞(ゆうじょのまい)>>」


 兎にも角にもカイトはまず、ジークフリートの防御がどういう類の物なのか見極める必要があった。というわけで、カイトは魔糸を使って無数の遊女達を編み上げる。


「ほぅ・・・」

『旦那。ありゃ、全部魔糸で出来た女だぜ』

「凄い腕前だな。魔糸を妨害に使う事は思い付いても、ああやって使うのは思いつかないな」


 グラムとジークフリートは思わず感心する。彼らだって魔糸を作る事は出来る。が、あそこまで繊細な事が出来るか、と言われるとまた話は別だ。職人芸に近いからだ。そうして、カイトは創り出した10人ほどの遊女達を一斉にジークフリートへと襲いかからせる。


「ふんっ!」


 とは言え、だからなんなのだ。結局の所、これはやはり牽制や様子見の類だ。並の魔物であれば討伐出来る様な武芸であろうと、ジークフリートには大した意味は無い。地面へしっかり足を踏みしめて<<魔竜殺し(グラム)>>を一薙ぎするだけで、全て切り払った。


「ふむ・・・」


 そんな様子を、カイトは見ていた。彼はこのジークフリートの動きをどう取るか、と考えていた。そうして、カイトはとりあえず試しに斬撃を転移させて後から放ってみる事にする。


「<<次元斬(じげんざん)>>」

「ぬぅ!」

『後ろから!?』


 どうやらさすがにこれはジークフリートもグラムも驚いたらしい。一瞬驚きを浮かべるが、即座に<<魔竜殺し(グラム)>>を背負う様な形で後に移動させて、その腹で斬撃を防いでみせた。


『いちち・・・旦那、もうちょっと優しく扱ってくれよ』

「武器が戦いで傷付いて文句言うな」

『そこはそれって話よ』

「つくづく五月蝿い武器だな」


 茶化し合う様に、グラムとジークフリートは戦いを行う。ここらは、カイトとユリィ、モルガン達の間柄と一緒なのだろう。カイトとしては少し好感の持てる相手だった。


「ふむ・・・一定以下の攻撃は全部無効じゃなくて、魔術系統の攻撃を無効化する、と考えた方が良いか・・・?」


 数度斬撃を放ち、カイトはジークフリートの鎧をそう推測する。魔弾は系統としては魔術による砲撃と見て良い。基本的に魔銃とは本来は術者が行う事を全て魔石に刻み込んで代わりにやらせているだけだからだ。なので見方によっては、低レベルの無属性の魔力の弾を撃ち出す魔術を使っているのと大差がない。


「カートリッジリセット」


 カイトは再度魔銃を取り出すと、マガジンの部分に取り付けられている魔石を変更する。基本的に、ティナ作成の魔銃の魔弾はここで切り替えられる。カイトのアイデアを受けている事で、カートリッジ式になっていたのだ。


「ふむ・・・?」

『何考えてんだ?』

「意図は理解出来る。どれが効くか、と試すつもりだ」


 再び無数の魔弾を放ったカイトに対して、ジークフリートがその意図を把握する。今度の魔弾は無色ではなく、赤青黄等様々な色があった。が、今度はジークフリートとて情報をくれてやるつもりはなかった。


「ふんっ!」


 再びジークフリートが大地を踏みしめて、<<魔竜殺し(グラム)>>を一息に振り抜いた。その剣圧だけで、カイトの放った魔弾は全て吹き飛んだ。が、これで良かった。情報をくれるのならそれで良し。くれないでも、それはそれで次の手は考えてあった。


「ゼロ距離なら、どうなんだ?」

「っ!」


 大剣の懐に入り込んだカイトは、ジークフリートに向かってゼロ距離から引き金を引く。さすがにカイトの速さには目を見開いたものの、ジークフリートは想定される衝撃に対して一瞬身構えるだけだ。そうして、ずどん、という音が鳴り響いた。


「ふぅ・・・」

『どうでい! ファフナーの鱗で作られた鎧! 伊達に不死身とか言われてるわけじゃねぇぞ!』

「逐一情報をくれてやるな」


 グラムの言葉にジークフリートが笑う。この程度が見切られていないとは思っていないが、与える必要があるわけではない。ちなみに、勿論ジークフリートは無傷だし、鎧にも傷一つ付いていない。


「なるほど・・・不死身と渾名されるだけはある」

「出し物は終わりか?」

「ああ、そうしておこう」


 ジークフリートの問いかけに、カイトは今度こそ本当に魔銃を選択肢から外す。ゼロ距離射撃で得られた結果から考えれば、彼の鎧は相当に強固な力を有している様子だった。下手に力を消耗するよりも、一撃を確実に当てる方を選ぶのが最適に思えた。


「ちっ・・・厄介だな」


 結論から見て、カイトが舌打ちする。こういう動きが鈍重な相手に対して最善策と言えるのは、遠巻きに射掛けて嬲り殺しにしてしまう事だ。どれだけ力が強大だろうと、当たらなければどうということはない。更には敵に力を振るわせなければ尚更良しだ。

 が、ジークフリートはそれを封じてきたのだ。彼の鎧は大凡の攻撃を無効化してくる。こちらが近づいていって強大な一撃を直に打ち込まないといけないのだ。


「カウンタータイプか」


 基本的にジークフリートはこちらから仕掛けてはいかない。ファフナーの鱗で出来た強靭な鎧に、すべてを一刀のもとに切り捨てる猛烈な踏み込み。<<魔竜殺し(グラム)>>ほどの強大な武器。そこから導き出される彼の最適な攻撃方法が、このカウンターだったのだろう。

 更には彼の腕前であれば、初撃で撃破出来なくとも斬り合う事は可能だ。敵が自分の間合いに入ってくるまではひたすら待ち、入ってきた後は大剣による神速の一撃で斬り捨てる。

 しかもこの一撃は神速なだけではなく、力も伴っていた。どちらかと言えば日本の抜刀術にも近いだろう。防御諸共に斬り捨てられる。安易に踏み込めない。

 が、その間合いに踏み込まなければ、ジークフリートには勝てない。遠距離は効かない。流石北欧に名を轟かせる大英雄、と言わざるをえない状況だった。


「・・・ふぅ」

『旦那、覚悟決めたようだぜ』

「だろうな」


 カイトが力を抜いたのを見て、ジークフリートが腰を落とす。カイトが力を抜いたのは、力を入れる為だ。そうして、その次の瞬間。カイトが消える。


「ふんっ!」


 消えたカイトは一直線にジークフリートへと肉薄していた。それはカイトも一角の人物と賞賛して余りあるほどの速度だったが、ジークフリートはそれを完璧に捉えていた。

 そしてなればこそ、彼はカイトに対して<<魔竜殺し(グラム)>>を振り抜いた。と、次の瞬間だ。その軌道の上に、無数の刃が顕現する。


「ぬ!」


 ジークフリートの渾身の振り抜きは幾重にも重ねられた無数の刃を砕いていくが、如何に彼とてすべての刃を砕く事は出来なかった。あと少し、という所で刃に食い止められてしまった。この時点で、両者の間合いは後2歩だ。


「だが!」


 カイトがあと一歩の所にまで近づいたタイミングで、ジークフリートは自ら身を捻って<<魔竜殺し(グラム)>>を先とは逆向きに薙ぎ払わんとする。が、この回転の時点で、ジークフリートは思わず目を見開く事になった。


『あ、旦那! これ無理だ! 食われてる!』

「ぬぅ!」


 グラムに言われるまでもなく、ジークフリートは<<魔竜殺し(グラム)>>が強烈に引っ張られる感覚を得る。より正確に言えば、手からすっぽ抜ける様な感覚だ。<<魔竜殺し(グラム)>>にカイトの無数の刃が食い込んで動かないのだ。


「神速と剛力無双。その二つがあんたの切り札の根源だ」

「見事」


 無防備に脇腹を晒す自らの脇腹に掌底を打ち込んだカイトに、ジークフリートは賞賛を贈る。ここで刀等を選ばなかったのは、カイトが油断しなかったからこそだ。

 この強靭な鎧に斬撃がどこまで通用するかわかったものではない。ならば、取れる手は一つだ。鎧の内側に衝撃を伝えるのである。所詮、鎧は鎧。完全に浸透する類の衝撃を殺しきれるわけではない。

 そうして、どぉん、という音と共にジークフリートが吹き飛んでいく。が、ジークフリートは虚空に鎧の篭手の部分を突き立てて、強引に減速して停止した。


「ふんっ!」


 強引に停止したジークフリートだが、彼は<<魔竜殺し(グラム)>>を目指すのではなく、そのまま一直線にカイト目掛けて突っ走る。どうやら初めから想定済みだったのだろう。これまた胴に乗った正拳突きだった。


「っ!」

「ふんっ!」


 仰け反る形で正拳突きを回避したカイトに対して、更にジークフリートはかかと落としを繰り出す。が、カイトはこれを身を捩ってなんとか回避してみせる。外れたかかと落としは地面を砕き、その衝撃をカイトは受け流す事なく、その場を離脱する為に利用する事にした。


「鎧を身に纏った方が良いんじゃないのか?」

「蒸れるからヤダ」


 上空に追撃してきたジークフリートとカイトが一瞬、言葉を交わし合う。カイトが回避しか出来ないのは、強固な鎧を身に纏わないからだ。被弾すればそれが即座に死につながるのである。

 と、防戦一方に見えたカイトだが、実はこの時点で一つ対策を思い付いていた。そうして、ジークフリートはカイトの腕から伸びる鎖に気付いた。


「む?」

「竜には竜殺し。普通だよな」


 ジャラララ、という音が鳴り響いて、何かが急速にカイトの所へと近づいていく。そうして、『それ』を手に取った瞬間、カイトがいたずらっぽく笑みを浮かべた。


「<<魔竜殺し(グラム)>>ゲット!」

『あ、わりい、旦那。奪取されちまった・・・あ、ちょ! らめぇ! こいつ無茶苦茶上手い!』

「「気色悪い声を上げるな!」」


 現主(カイト)前主(ジークフリート)が同時に声を上げる。ちなみに、何が上手いのか、というと魔力の扱い方だ。これだけはカイトの得意とする所だ。なので絶妙にカイトは<<魔竜殺し(グラム)>>へと魔力を通してみせたのである。


「行くぜ、<<魔竜殺し(グラム)>>!」

『旦那! 無茶苦茶強い一撃来るぞ! てか行くぞ!』

「ちっ!」


 ジークフリートは虚空を蹴って、強引に間合いを離す。彼も<<魔竜殺し(グラム)>>による斬撃が自分に有効であると悟っていた。

 彼の鎧は竜の鱗で出来ているのだ。そうである以上、<<魔竜殺し(グラム)>>の効果範囲であるのである。どれだけ強力だろうと、竜殺しの力には逆らえない。

 そこに道理があるからだ。そうして、ジークフリートが間合いを離した瞬間、彼の居た場所に<<魔竜殺し(グラム)>>での斬撃が迸った。


「浮気者め!」

『あんたにだけは言われたくない! あ、ちょ! らめ! ほんとに気持ちいい! 堕ちちゃう! これ堕ちちゃうぅううう!』

「ちょ、この武器さっさと手放したい!」

「構わないが?」

「勝ち目なくなるだろ!」


 楽しげなジークフリートに対して、斬撃を放つカイトが声を荒げる。現状、カイトがジークフリートに有効打を与えられる一番の手札がこの<<魔竜殺し(グラム)>>だ。そしてこれを入手出来る状況はもう一度は無いだろう。手放すわけにはいかなかった。そうして、暫く。カイトとジークフリートは攻守逆転して戦う事になった。


「ふっ! はっ! てぃや!」

「ちぃ! しくじった! 手放すべきではなかったか!」

『あへぇ・・・』

「いや、やっぱり手放して正解だった」


 最早絶頂しているらしいグラムを見て、ジークフリートが呆れ返る。完全にカイトに良い様に使われていた。


「とりあえず、ふんっ!」

『んっぎゃあ! 旦那! 無茶苦茶痛い!』


 とりあえずカイトが大剣の脇腹で防ぐ事を見越したジークフリートの攻撃により、グラムが悲鳴を上げる。<<魔竜殺し(グラム)>>の性能は良いのであるが、兎にも角にも五月蝿い武器だった。


「よく長い間付き合ってられるな、あんた」

「・・・いや、だから・・・」

「ああ、なるほど・・・」


 ジークフリートの言外の言葉を、カイトが悟る。後に続いた言葉は、だから娘に渡したのだ、という事だ。体の良い厄介払いだった。

 と、そうして更に戦い続けていたカイトとジークフリートだが、ある時唐突にジークフリートが唐突に声を上げた。幾度も剣戟を受けて、諦めがついたのだ。


「待て!」

「うん?」

「ここまでにしよう。これ以上戦ってもこちらに勝ち目は無いだろう。<<魔竜殺し(グラム)>>を手放した時点で負けだったな。英雄は愛用する武器を喪った時点で堕ちていくものだ」


 ジークフリートはありとあらゆる物語に語られる英雄達の末路になぞらえて、自らの負けを告げる。このままやっても勝てる可能性はあるが、<<魔竜殺し(グラム)>>という彼の代名詞とも言える武器を喪っているジークフリートとそれを手に取ったカイトとではどちらに分があるかわかろうものだ。そして、カイトから武器を奪取するのは簡単な事ではないだろう。負けを悟るにはそう必要は無かった。


「オーディン神よ。私の負けで良い」

「・・・良いだろう」


 ジークフリートの求めをオーディンも認める。それは認められる事だった。ジークフリートの敗因は、カイトが武器を創り出せる事を見抜けなかった事と<<魔竜殺し(グラム)>>を使いこなせてしまった事だ。

 武器が一時的に使えなくなる事は戦場ではよくある事なので徒手空拳になったまでは良かったが、その後にまさかカイトが<<魔竜殺し(グラム)>>を使いこなせてしまう事は見通せなかった。ここを見抜けず武器を取りに行かず勝負を決めに言った事が、一番の敗因だった。


「ふぅ・・・使えて良かった」

「はぁ・・・浮気性な奴め」

『・・・』


 沈黙を保つ<<魔竜殺し(グラム)>>を返却されて、ジークフリートがその腹を軽く叩く。なんだかんだ言いつつも、これは相棒だ。なんだかんだ言いつつも、悪くは扱っていない。


「じゃあ、これで一人目」

「ああ・・・では、次だ。次は誰だ?」

「では、ロートルは引っ込む事にして、任せる事にしよう」


 オーディンの言葉を受けて、ざんっ、とジークフリートが<<魔竜殺し(グラム)>>を地面に突き刺す。そうして、彼が笑いながらカイトに告げた。


「こういうのは何だが・・・一度少し灸を据えてやってくれ」

「うん?」


 <<魔竜殺し(グラム)>>を置き去りにしたジークフリートが去り際、カイトへと小声で言い含める。そしてカイトが意図を問いただす前に、天女が舞い降りた。そうして、戦いは次へと進むのだった。

 お読み頂きありがとうございました。ジークフリート、かなり遊んでますね。

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