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何時か世界を束ねし者 ~~Tales of the Returner~~  作者: ヒマジン
第10章 神話に語られし者達編
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断章 3つの試練編 第33話 第二の試練

 ついにゼウス達の知る所になった斜め上のカイト達の試練クリアであるが、オルフェウスがゼウス達からガーネットを貰っていた頃には、カイトはゴルゴン三姉妹の起居する神殿に辿り着いていた。


「うっわー・・・」


 そこは封ぜられた島だった。地理には乗っておらず、近代化なんぞ一切されていない。当たり前だ。なにせここには正真正銘の怪物が眠っているのだ。近代化出来るわけがなかった。そして、神話の再現と言うべき状況が、そこには眠っていた。


「これ、全部元はここに挑んだ奴ら、だよな・・・?」

『うむ。メドューサの魔眼によって、石化させられた愚か者共よ』


 近くの石像に触れたカイトのつぶやきを聞いて、大鷲がその推測を認める。島には、石像が乱立していた。それらは全て我が武名を世に知らしめんとした勇者にして愚者達の成れの果て、だった。


「かのメドューサの<<石化眼(せきかがん)>>か・・・」

『儂は神殿の中には入らぬぞ。と言うか、もうここから外に出る。もし万が一メドューサが外に出てくれば、儂さえ石化してしまいかねん』


 大鷲はそういうや否や、カイトの肩から飛び上がる。これ以上ここに居たくない、というのは事実なのだろう。


「監視どうするんだよ。殴ったかどうか確証出す必要あるだろ」

『無茶を言うな。魔眼は見られれば終わりよ。目を合わせんでも見られれば終わり、なぞ入ってたまるか。もしお主が一週間出てこれぬようならば、自動的に神々の神殿で合流できよう。安心しろ。石化させられてもゼウス神が元通りにしてくれよう』

「つまり、ここのこいつらはその価値も無い奴ら、というわけですか・・・」


 大鷲の言葉を正確に理解して、カイトはため息を吐いた。所詮、魔眼はどれだけ強くても解呪出来る程度の物だ。その価値も無い、という事は事実なのだろう。愚者を救ってくれる程、神様は優しくはない。


「で、どうするんだ? オレの確証は?」

『持っていけ。幾らメドューサといえども生体活動はしておる。これが触れれば、お主は確かに一撃を食らわせた事になろう』


 大鷲はカイトに対して、手の甲の部分に魔石が取り付けられた一組のグローブを投げ渡す。左右セットの物だ。どうやらメドューサを殴ったら、光る様に設定されているのだろう。


「はいはい・・・方法は、問わないんだよな?」

『ゼウス神はそうおっしゃっておった。二年の月日で忘れたか?』

「いや? じゃあ、好きにやらせてもらおうか」


 大鷲からしっかりと言質を取ったカイトは、背を向けて笑みを零す。確かに、方法は問わない、と言ってくれたのだ。ならば、方法は好きにさせてもらうつもりだった。そうして、カイトは神殿の中に足を踏み入れる。そこは入り口から光がほとんど届かない神殿だった。


「暗! 性格暗くなりそう・・・」


 意図はわかるが、暗いにも程があった。入り口からでさえ、3メートル先が見えれば御の字。歩けば歩く程、暗くなっていく。と、そうして5分程歩いた所で、気配を感じた。


「・・・また、誰か来た様ね・・・」

「何時まで外の男共はメドューサを狙うというのかしら・・・」


 澄んだ声だ。それが2つ、闇の中に響き渡る。それに、カイトは誰かを判別する。


「神話ではメドューサの呪いに巻き込まれたステンノとエウリュアレか」

「そうよ」

「貴方も、メドューサが狙いね?」

「ああ。ゼウス神から一発ぶん殴って来い、という命令でね」


 ステンノかエウリュアレかはわからないが、とりあえず声の問いかけに頷く。と、そうして答えた答えに、二人が憤慨した。


「あの神々は・・・」

「私達を散々弄んでおいて、まだ弄ぶというの・・・」


 とてつもない憎悪。それが二人から溢れ出る。当たり前だ。彼女らは妹の為に怒って、そしてアテネから呪いを受けたのだ。しかもそれで魔物扱いされた彼女らは迫害され追いやられ、遠くこの神殿に隠れ住む事になる。その上で、神々の息子――ペルセウス――によって妹は首を刎ねられたのだ。

 幸い神話の後に神々の間で幾つかのやり取りがあってメドューサは首を繋げられて復活したのだが、その時の二人の後悔といえば、果てしなかった。なにせ自分達が気付かれぬ間に妹が殺されて、その首は他ならぬアテネの防具にされてしまったのだ。怒り心頭であったし、憎悪も仕方がない。

 そうして、怒り心頭の女怪の片割れが、カイトへと肉薄する。その姿はかつて語られた美貌ではなく、見るも悍ましい姿だった。

 色白だった肌はところどころが鱗で覆われ、見えている部分とてまるで魚の肌の様に青白い。美しい髪はのたうち回る様な蛇だった。澄んでいた目は死んだ魚の様に、濁っていた。かつてを知る物ならば、思わず哀れに思う様な女神の成れの果て、だった。


「ほいっと」


 まあ、突っ込んでいったわけであるが、至極当然な話として、彼女らは神であっても戦士ではない。なのでカイトは突っ込んできた片割れの振るった剣を軽く躱して、逆に鎖で彼女を縛り上げた。


「くっ!」

「ステンノ!」


 どうやら突っ込んできたのは長姉のステンノらしい。であれば、もう一方はエウリュアレだろう。


「このっ!」


 ステンノが捕らえられたのを受けて、エウリュアレが魔術を展開する。いや、実はステンノが突撃してきた時点で魔術を展開していたわけであるが、怒りで連携が上手く行っていなかったのである。


「ふんっ!」


 エウリュアレの魔術に対して、カイトはひと睨みするだけでそれを吹き飛ばす。彼女らは元は女神だったのだ。だというのに、圧倒的な勝利。これが、本来のカイトだった。辛勝に持ち込めるスカサハが可怪しいのである。そうして、ひと睨みで魔術を吹き飛ばしたカイトは、そのままエウリュアレの方も鎖で縛り上げた。


「くっ・・・」

「おーっし。二人確保」


 ぱんぱん、と手を叩きながら、カイトは捕縛した二人を一箇所にまとめて座らせる。


「どういうつもり?」

「いや、あんたら不死っぽいんで、実験台になってもらおうかな、と」


 カイトは何処かイタズラっぽい顔で、ステンノの問いかけに答える。それに、二人はぞっとなる。幾ら化物になってしまったと言えども、心の方までは人のままなのだ。自分達を実験台にする、という発言には怯えるのは当然だろう。


「くっ・・・エウリュアレに手を出したら許さないわ・・・!」


 ぎっ、とステンノがカイトを睨みつける。自らはまだ良い。だが、これ以上妹達が手を出されるのは我慢が出来ない。そんな感情が濁った目からでも理解出来た。それに、カイトは笑顔を浮かべた。その発言は非常に彼の好みだった。


「はいはい・・・えっと、ここをこうして・・・」


 ということで、カイトはそんな睨みを全く気にもせず、習ったばかりの魔術を用意する。習ったばかり、なのでこれはルーンだった。基本的に、ルーンの魔術は文字を描いて使う物らしい。なのでカイトは自らの血を使って、地面に魔法陣を描いていた。


「この匂い・・・血!? あなた、ステンノに何したの!?」

「え?」

「え?」


 血の匂いに気付いたエウリュアレが怒鳴った声を聞いて、逆に何もされていないステンノが首を傾げる。二人共背中合わせにされていた――これに他意は無い――所為で、見えなかったのだ。


「・・・え? じゃあ、この血の匂いは・・・?」

「ちょい黙ってろ・・・えっと、ここをこうして・・・あー・・・暗いと見えにくいな・・・あ、失敗してる・・・えっと、確かここはこれで・・・明るくしたいんだけどなー・・・でもここ、明かり食われるからなー・・・」


 神殿の内部が暗い理由なぞ、カイトには簡単に理解出来た。その理由は、メドューサにある。彼女の魔眼は見て発動する類の力だ。

 逆に言えば、見られなければ問題がない。それ故、周囲の明かりを神殿にくわせて、暗闇を作り出していたのである。最奥にあるというメドューサの部屋はもはや自らの手さえも見えぬ程の暗さになっていた。


「よっし! 出来た!」


 作業の開始から、10分。この頃になるとカイトが何をするつもりなのか、と逆に興味を覚えて押し黙った二人だが、どうやらその作業はようやく終わりを迎えたらしい。


「まあ、ちょいと前に『影の国』へと行ってまして。そこでルーンの魔術を学んだんですが・・・二人は実験台になってもらおうかと」

「何をするつもり? 痛いのは嫌よ」

「これ以上醜くなるのも、ね」


 エウリュアレは何処か女神にふさわしい尊大さを滲ませて、ステンノは何処かの諦観と嘆きを滲ませて。準備終了と告げたカイトに対して気丈に願い出る。

 今の彼女らには何も出来ない。鎖は『吸魔の石』を練り込んだ物で、彼女ら程度に弱い女神では逃れられない物だった。まさにまな板の鯉だった。


「では、スカサハ直伝・・・<<解呪法(ぶっこわれろ)>>!」

「「きゃあ!」」


 カイトの口決を受けて、かっ、と地面に記された血の魔法陣が光り輝く。その強烈な光に、思わず二人の女怪が目を閉じた。なお、口決がえらく摩訶不思議なのは、スカサハに習った通りだからだ。


「・・・え?」


 光が収まって大急ぎで確認した妹の姿に、ステンノが目を見開く。肌は滑らかで、鱗なぞ何処にもない。青白かった肌には血の気が戻り、誰もが羨むような健康的な白さを持っていた。蛇の髪だった髪は彼女らが誇る深い海の色へと戻り、艶を取り戻していた。目は見えないが、この様子だと本来の緑色に戻っている事だろう。


「おっし! 大成功!」


 二人の姿を見たカイトが、ぱん、と満足気に一つ手を叩く。彼が使ったのは、呪いを解く類のルーン魔術だったのである。流石スカサハ直伝で使用者がカイト、という所で、オリュンポス十二神の中でも軍神に祀り上げられるアテネの呪いさえ解いてしまったのであった。


「ということで、ペシペシ」

「「きゃ」」


 鎖を解いた二人に対して、カイトは軽くデコピンを食らわせる。二人については何も言われていないが、万が一いちゃもんが出た場合の対処だった。それにこれぐらいはやらせてもらわないと、割にあわない。


「何が・・・」

「戻ってる・・・」


 二人は理解が及ばず、幾星霜ぶりに見た自らの真の姿に困惑する。実験、というのだから何か酷い事をされるのだ、と思っていた。なのに、終わってみれば元通りにされていただけなのだ。困惑も当然だろう。


「どういう・・・つもり? 私達を滅ぼしに来たんじゃないの?」

「いや、だってあんたら咎ねーじゃん。妹の為に怒鳴り込んで、ってのはオレも理解出来る。オレもお兄ちゃん、だからな。あんたら見捨てちゃいられないのよ。理解出来るからな。誰か解呪してやれよ、って思ったわけだが誰もやんなかったので、オレがやった」

「は・・・?」


 自分が同情した、というだけ。それだけの為に、ギリシアでも有数の実力者であるアテネに喧嘩を売るのか。二人はありえない物を見るかのように、目を見開く。どんな怒りを買うかわからない。それに対して、自分が気に入らない、の一言なのだ。馬鹿にも程があった。


「んじゃ、ちょっくらメドューサの方も解呪してくる」

「え?」


 ひらひら、と手を振ったカイトに対して、二人はただただその背中を見送るしか出来なかった。感謝を述べる事も、疑問を呈する事も、出来なかった。何故ここまでしてくれるのか。わからない事だらけだった。

 後に、カイトは語る。理由なぞ無い、と。自らが助けたいと思ったから、助けた。それに理由なぞない、あってたまるか、と。それこそが、アテネをも認めさせた勇者が勇者足り得る理由だった。そんなカイトは、そのままその場を後にして、更に神殿の奥へと進み続ける。


「最奥到着、と」


 目の前にある大きな扉を前にして、カイトが額を擦る。暗くて頭を打ったのであった。


「さて・・・開けゴマ、と」


 カイトは何ら迷うこと無く、扉を押して、中に入る。が、中は真っ暗で、何も見えなかった。


「・・・音がするな」


 シュルシュルと何かが蠢く音がカイトの耳朶を打つ。それは蛇が動く音の様でもあった。


『あぁあああああ!』


 嘆きにも怒りにも似た声が、部屋の中に響き渡る。元は綺麗な声だったのだろう。尚更いびつに歪められたそれには、嫌悪感しか感じられない。まさに怪物の声にふさわしい耳障りな音だった。


「・・・<<音叉(ソナー)>>」


 流石に姿形を確認しないでは捕らえる事は難しい。なのでカイトはコウモリの音波に似た魔術を使い、周囲の状況の詳細を把握する。すると、かの女怪メドューサの姿形が判明した。


「うっわ・・・」


 数多の魔物と戦ってきたカイトでさえ、ドン引きする。ここまでする事は無いだろう、という様な姿だった。どうやらメドューサは髪が長かったらしく、女怪メドューサは無数の蛇の塊の化物の様だった。おまけに完全に理性は取り除かれており、正真正銘の化物に成り果ていた。


「と言うか・・・これ、この大きさだとガキじゃん」


 精査を終えて顔を顰めたカイトが、その大きさから大凡の体格を割り出す。比較的小柄だったステンノとエウリュアレでさえ、身長は150センチ後半だった。

 だというのに、メドューサに至っては150センチも届かないだろう体格だった。というわけで、カイトは会ったこともないアテネに対して小声で愚痴を吐いた。


「器ちっさ・・・ガキ一人、と流せよ・・・どんだけプライド高いんだよ・・・」


 やれやれ、とカイトが肩を竦める。とは言え、そんな事はどうでも良かった。とりあえず問題なのは、どうやってメドューサを捕らえるか、である。


「蛇塗れだと捕まえてもスルリと抜けられるだろうし・・・」


 蛇の鱗は意外と滑る。実は剥がれない油が塗りたくられているから、なのであるが、カイトは旅の経験則からそれを把握していた。というわけで、どうするかを考える事にする。

 と、どうやらここに至ってメドューサもカイトが入ってきた事に気付いたらしい。声に似た音を上げながら、こちらに襲いかかってきた。


「うっぎゃ! ちょ、待て! 助けようとしてるだけだって! だから落ち着けって! 爬虫類ぶん回すな!」


 ひゅんひゅん、と首を伸ばして噛み付こうとする蛇に対して、カイトは大声を上げる。


『あぁあああ!』

「あー! はいはい! わからない、ね!」


 カイトの声を無視して攻撃を続けるメドューサに対して、カイトが勝手に意訳を当てる。それで正解で良いだろう。と、そうして少し近づきすぎたらしい。メドューサの目が、光り輝いた。


「ぐっ!」


 魔眼を食らってカイトの身体が石化する。名高きメドューサの魔眼だった。それでどうやら終わったと判断したらしいメドューサが、カイトから離れていった。

 そんなカイトに対して、一人の少女が提案した。石化についてはちょっと気合を入れるだけでぶっ飛ばした。この程度の魔眼で死ぬ様なカイトではない。


『ねえ、カイト。私の力を使ってー? 土で囚えてしまえば大丈夫ー』

「なるほど・・・じゃあ、土の大精霊の力を以って、神殿よ! 牢獄となれ!」


 神殿は石造りだ。であれば、ノームの力を使える。というわけで、カイトは神殿に強引に介入して、内部の者の動きを囚える神殿へと作り変える。そうして、メドューサの部屋がだんだんと小さくなっていく。


『あぁああああ!』


 怯える様に、メドューサがのたうち回りながら遠ざかる。しかし、この部屋とて有限の広さしかない。それ故、だんだんと縮まる部屋に、ついにメドューサが囚えられた。


「あ、これなら立体的に創れるな。ちょっとは血を使わなくてよさそうだ」

『貧血になるよー?』


 ノームが笑いながら、カイトに忠告を送る。まあ、言うまでもなかったが、ステンノとエウリュアレの呪いを解いた時に使った血もカイトの血だ。実はそれ故貧血気味で結構真っ青なのであるが、気にしない事にしていた。というわけで、カイトは再び腕にナイフを突き立てて、魔法陣を描き始める。


「よっし。これで終わり、っと・・・ありゃ?」


 カイトは先程よりも若干手早く魔法陣の記述を終えると、手を叩いて、そこでふらりと意識が歪む。貧血だった。ということで、カイトは魔法陣を始動させる前に、回復薬を口にする。と、そうして回復薬の力で貧血が収まった所で、後ろから二人の少女の声が響いてきた。


「メドューサ!」

「何処なの!?」


 どうやら神殿の異変に気付いて、大急ぎで来たらしい。部屋の残骸を目の当たりにして、悲痛な声を上げる。と、そうして見回していたら、カイトと奇妙な石室を見付けるに至る。そうして視線のあったカイトが、少し疲れた様子で手を上げた。


「よう・・・ちょっと疲れたから休憩中・・・妹さんなら、この中だ・・・囚えるの厳しかったからな。部屋小さくさせてもらった。後は始動させるだけだ」

「これは・・・」

「まさか・・・」


 自分達がされたのと同じ様な魔法陣を見て、二人が目を見開く。先ほどの一幕で何をしようとしているのか、なぞ理解している。そうして、少し回復した事で、カイトは気合を入れて立ち上がる。


「おっしゃ! やるか!」


 気合を入れたカイトに、二人の女神が息を呑む。信じたい。でも、信じて良いのかわからない。だが、邪魔も出来ない。そんな複雑な表情が浮かんでいた。


「<<解呪法(ぶっこわれろ)>>!」


 カイトの口決を受けて、魔法陣が光り輝く。そうしてそれが収まった後しばらく、沈黙が続いた。が、ある時、少し偉そうな声が響いてきた。


『あいたっ! なんじゃここは! 誰じゃ! 妾をこんな石の中に閉じ込めたのは! 妾は女神メドューサ! 偉大なる海神の血族なるぞ! あいたっ!』


 どうやらメドューサは動き回っている所為で何度か色々とぶつかっているらしい。それに、姉二人が顔を見合わせる。その声は数千年ぶりに聞いた、まともな妹の声だった。そうして、次の瞬間。カイトが力を込めると、それだけで石室が砕け散った。


「あいたたた・・・お主か! 妾をこんな所に閉じ込めておったのは! どういうつもりじゃ!」


 現れたのは、カイトが見て取った通り150センチにも満たない程の小柄な少女だった。髪は足まである長い髪で、色は姉妹達と同じだ。スタイルは子供なので、見るまでもない。胸はまな板だし、おしりは小さかった。顔は可愛らしい顔であるが、尊大さが滲んでいた。

 例えれば小型ティナ、という所だろう。口調も似ていたので、小さいバージョンのティナと並べると楽しいかもしれない、とは後にカイトが語っていた。そんなメドューサの普通の顔に、姉たちが涙を浮かべて、彼女を抱きしめた。


「あ・・・あぁ・・・」

「メドューサ・・・」

「? どうしたんじゃ、姉上? まさかこの男が何かしたのか!?」

「ううん・・・ううん・・・」


 カイトを睨みつけるメドューサに対して、ステンノとエウリュアレが涙を流しながら抱きしめて、再会を喜び合う。だがそんな姉二人にメドューサは混乱するだけだ。

 後の調査の結果なのだが、彼女は呪われている最中、ほとんど夢の中に居た様な感覚だったそうだ。この時はまだ、自分が呪われていた事にさえ現実感がなかった、とのことである。そうして、暫くの間、カイトはそんな三姉妹を観察することになるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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